【外国人雇用法規制】労働基準法と入管法をチェック
2024.03.18

外国人労働者にも、日本人労働者と同じ待遇をしなければならないことをご存じでしょうか。これは日本の法律で定められ、保証されています。一方で、外国人を雇用する際には、日本への出入国管理について定められている法律に基づく採用をしなければなりません。
本記事では外国人雇用において押さえておくべき法律のうち、最も重要な2つの法律「労働基準法」と「出入国管理及び難民認定法(=入管法)」について詳しく解説します。
CONTENTS
1.はじめに~外国人労働者との雇用契約における準拠法
本題に入る前に、外国人と契約を結ぶ際には、日本と外国のどちらの国の法律を適用するかを規定する「準拠法」という法律が存在します。
日本の法律では「法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の方による」と定められており、契約を結ぶ当事者自身が、どちらの国の法律を適用するかを選択できます。外国人雇用を考える実習実施企業としては、日本の法律を適用して雇用契約を締結したいと考えるでしょう。そのため、外国人との労働条件を決める雇用契約の準拠法は日本の法律となり、日本の労働基準法が外国人労働者に対しても適用されることになります。
2.労働基準法とは
労働基準法第3条において「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱いをしてはならない。」と定められています。労働基準法は、労働条件面での国籍による差別を禁じており、外国人であることを理由に低賃金にするなどの差別は許されません。
3.労働条件の最低基準
労働基準法は、労働条件に関する最低基準を定め、労働者の保護をはかっています。
3-1.労働時間
労働時間
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。②使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
引用:e-Gov「労働基準法」
労働時間は1日8時間、1週間で40時間が上限です。
休憩
第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。引用:e-Gov「労働基準法」
休憩時間は6時間超8時間までの勤務で最低45分、8時間超勤務で最低1時間が必要です。
休日
第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。②前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
引用:e-Gov「労働基準法」
休日は最低週に1日か、4週間を通して4日以上必要です。
時間外及び休日の労働
第三十六条 使用者は、(中略)書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。引用:e-Gov「労働基準法」
残業などの時間外労働や休日勤務は、時間外労働協定(通称:36協定)を締結する必要があります。時間外労働協定(36協定)の届け出を行わずに超過労働をさせた場合は、労働基準法違反となります。
※時間外労働協定(36協定)とは、時間外・休日労働に関する協定届のことで、超過労働の上限時間は月45時間、年間6カ月までの年360時間です。繁忙期など上限を超える場合は、特別条項で年720時間、複数月平均80時間以内、月100時間未満です。
3-2.有給休暇
年次有給休暇
第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。引用:e-Gov「労働基準法」
雇用から6カ月経過し、全労働日の8割以上出勤した場合は、10日の有給休暇が付与されます。有給休暇中の賃金減額はありません。
3-3.賃金、最低賃金
賃金の支払
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。②賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。
最低賃金
第二十八条 賃金の最低基準に関しては、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)の定めるところによる。引用:e-Gov「労働基準法」
最低賃金法は、労働者の生活の安定、労働力の質的向上のために創設された制度です。最低賃金は地域別最低賃金と特定最低賃金があり、いずれか高い方を最低賃金として設定します。
万が一、最低賃金より低い賃金で雇用した場合は、その雇用契約は無効となります。
また、最低賃金を支払わなかった場合には最低賃金法違反になり、50万円以下の罰金が課せられます。
3-4.割増賃金
時間外労働や休日出勤は、割増賃金を支払う必要があります。時間外労働は通常賃金の1.25倍、休日労働は1.35倍、午後10時から翌日午前5時までの深夜業務は1.25倍の賃金を支払う義務があります。
3-5.解雇
(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。引用:e-Gov「労働基準法」
解雇は、30日以上前に通告する必要があります。
3-6.その他の条項
(労働条件の明示)
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。引用:e-Gov「労働基準法」
外国人労働者が理解できるよう、母国語で解説することが必要です。
(強制労働の禁止)
第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。(中間搾取の排除)
第六条 何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。(賠償予定の禁止)
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。(前借金相殺の禁止)
第十七条 使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。 引用:e-Gov「労働基準法」4.入管法とは
入管法の正式名称は「出入国管理及び難民認定法」と言い、全ての日本人と外国人の出入国の管理、および日本に在留する全ての外国人の在留管理と難民認定の手続き整備を目的とした法律です。外国人労働者を受け入れる企業は、入管法に基づく採用、および在留資格管理をしなければなりません。在留外国人の増加に伴い、近年の入管法は改正が多く、また今もなお審議中の議論もあることから、今後の動向に注意が必要です。
5.就労可能な在留資格
外国人の在留資格は入管法に定められており、在留外国人の活動内容は、在留資格によって制限されています。もし、在留資格外の活動をした場合は不法就労となり、外国人労働者本人並びに雇用主である企業も罰せられますので、在留資格の確認は非常に重要です。
5-1.就労に制限のない在留資格
「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」
5-2.在留資格の範囲内で就労できる在留資格
「外交」「公用」「教授」「芸術」「宗教」「報道」「投資・経営」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「特定技能」「技能実習」「高度専門職」など
5-3.就労できない在留資格
「文化活動」「短期滞在」「留学」「研修」「家族滞在」
ただし「留学」や「家族滞在」であっても、在留資格外の活動をする許可を得ることができれば、就労が可能です。資格外活動は本来の活動を妨げない範囲で認められますので、アルバイト程度であれば許可を得ることができます。
6.入管法の改正
2019年、日本の人口減少に伴う労働力不足を補うために、外国人労働者の受け入れ政策を見直し、外国人雇用を拡大させる改正が行われました。これにより、新しい在留資格「特定技能」が創設されました。
7.在留資格「特定技能」
これまで就労が可能とされてきた在留資格では、単純作業は認められません。しかし、「介護」「ビルクリーニング」「建設」などの分野では人手不足が深刻で、人材募集をしても改善が難しい実状がありました。その解決策として、特定産業分野14分野においてのみ、即戦力となる外国人を受け入れることができるように新設された在留資格が「特定技能」です。
技能実習から特定技能への移行が可能になるため、これまで最長5年だった在留期間も延長でき、より長く働いてもらえるようになりました。
8.まとめ
近年の入管法改正の動向は、高度人材の受け入れは拡大させ、技能実習生や留学生の受け入れや管理は厳しくする方向にあります。2023年、難民認定にかかわる改正入管法が成立し、外国人の収容・送還ルールが強化されました。
もし、雇用する外国人が違法行為をした場合や不法就労であった場合には、これらの厳しい措置が取られます。そうならないために、外国人労働者を雇用する企業は、入管法に沿った雇用管理、そして労働基準法に違反しない就労の励行を徹底してください。
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