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特定技能で4職種追加、タクシー運転手や駅係員で検討中

人手不足の業界で外国人を採用できる在留資格に「特定技能」があります。その「特定技能」に、新たに4職種の追加が検討されていることをご存じでしょうか。現在想定されているのは、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業です。

本記事では、特定技能に追加検討されている4職種について、各業界の現状を踏まえながら従事できる業務について解説します。

CONTENTS

  1. 1.特定技能について
  2. 2.特定技能の分野に追加を検討
  3. 3.追加4分野の業界の現状
  4. 4.「飲食料品製造業」「製造3分野」の業務追加も検討
  5. 5.今後も対象が増える可能性大
  6. 6.まとめ

1.特定技能について

対象の拡大が検討されている在留資格「特定技能」は、人材不足が深刻な特定14分野を対象として、2019年4月に創設されました。2022年4月に製造業の3分野(素形材産業、産業機械製造業、電気電子情報関連産業)が結合されたため、現在は12分野が対象になっています。

在留資格「技能実習」との大きな違いは、即戦力として外国人材の受け入れを目的としているところです。そのため、「特定技能」の取得には一定の技能を有している必要がある一方で、企業は人数の制限なく受け入れることができます。

特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の在留資格があります。

これまで「特定技能2号」の取得は「特定技能1号」からの移行のみでしたが、2023年秋以降は他の在留資格からの移行も可能になりました。ただし、いずれの場合も各分野の技能試験をクリアし、熟練した技能を有していると認められる必要があります。

今後は「特定技能2号」取得者の増加が予想されますが、資格の定めは一律ではありません。
本項では、「特定技能1号」と「特定技能2号」それぞれのポイントを解説します。

対象分野

「特定技能1号」の対象となる職種は、「介護」「ビルクリーニング」「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」「建設」「造船・舶用工業」「自動車整備」「航空」「宿泊」「農業」「漁業」「飲食料品製造業」「外食業」の12分野14業種です。この中から「介護」を除いた12分野13業種が、「特定技能2号」の対象職種となります。

「介護」が「特定技能2号」の対象分野外となる理由ですが、これはすでに専門的・技術的分野の在留資格「介護」があるためです。

在留期間

「特定技能1号」は、1年・6カ月・4カ月ごとの更新で上限5年となります。「特定技能2号」では3年・1年・6カ月ごとの更新で、更新回数に制限は設けられていません。

家族帯同

「特定技能1号」では、基本的には認められていません。

「特定技能2号」は、在留資格「家族滞在」の要件を満たしている場合、配偶者と子に限って帯同が認められます。

転職

「特定技能1号」「特定技能2号」ともに、転職は可能です。しかし、無条件に転職できるのではなく、外国人材の要件(異なる分野への転職の場合は新たに就労予定分野の技能試験に合格、出入国在留管理局への在留資格変更許可申請の提出など)に加えて、受け入れ先企業も要件(対象職種に該当している)を満たしていなければいけません。

また、在留資格変更許可申請中はアルバイトとしてであっても他社で働くことができないといったリスクがあるため、転職のハードルは高いといえます。

支援団体

「特定技能1号」は受け入れ機関または登録支援機関の支援対象となりますが、「特定技能2号」は支援の対象外となります。

2.特定技能の分野に追加を検討

ここまで「特定技能」について解説してきましたが、現在は新たに4分野の追加が検討されており、実現すれば対象分野は16分野に拡大します。本項では、追加が検討されている業種と従事できる業務範囲について解説します。

追加される4分野

追加が検討されているのは「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」です。いずれも人手不足が深刻で、外国人材の要望が高い職種となります。

4分野で従事できる業務範囲

それぞれの分野で想定されている業務ですが、「自動車運送業」はバスやタクシー、トラックの運転手、「鉄道」は運転士や駅係員、軌道・電気設備整備、「林業」は育林、「木材産業」は木材加工となっています。

3.追加4分野の業界の現状

特定技能制度への追加が検討されている4分野ですが、現在はどのような状況なのでしょうか。それぞれが直面する現状を解説します。

自動車運送業

他産業と比べて低賃金、長時間労働の傾向にあることから新たな担い手が少なく、人手不足と高齢化が顕著になっています。特に人手不足に対してこれまで時間外労働で対応していた物流業界に重くのしかかっているのが、働き方改革関連法で2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限される、いわゆる2024年問題です。これによって労働時間の改善が見込まれる一方、労働時間の削減による収入減が既存ドライバーの離職につながる恐れも指摘されるなど、さらなる労働力不足の深刻化が懸念されています。

鉄道

国土交通省が2023年10月に全国172の鉄道事業者を対象に実施した調査では、77事業者(うち地方鉄道事業者70)が「現行ダイヤの運行に必要な運転士数が足りていない」と回答するなど、特に地方部における深刻な運転士不足が浮き彫りになっています。運転士が不足する背景には、夜勤勤務を含む長時間拘束かつ不規則な働き方や、低賃金といった労働環境が影響していると考えられます。

林業

林野庁によれば、林業従事者は長期的に減少傾向でしたが、2015年からは横ばいに転じて2020年の林業従事者は43,710人、平均年齢は2005年の54.4歳から52.1歳になるなど若返り傾向も見られます。しかし、従事者が増加していない中での若返りは高齢者層が辞めていった結果と考えられ、現在25%を占める高齢者層の引退が続けば、人手不足はより深刻さを増していくと思われます。

木材産業

他産業と比べて、労働災害が起こりやすい産業が木材産業です。2019年における厚生労働省の「産業別死傷年千人率」(労働者1,000人当たり1年間に発生する労働災害による死傷者数)は10倍以上、2位の製造業との比較でも約4倍の発生率になっています。このことから、危険と隣り合わせの木材産業への入職が避けられていると考えられます。

4.「飲食料品製造業」「製造3分野」の業務追加も検討

すでに対象12分野に含まれている「飲食料品製造業」「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」においては、業務追加が検討されています。

飲食料品製造業

2024年6月までに「特定技能1号」で87,200人の受け入れが見込まれる飲食料品製造業では、工場などの事業所における飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生への従事が認められています。一方で、スーパーや百貨店のバックヤードやテナント業務は小売業とされるため、受け入れの対象外となっていました。今後は、スーパーでの惣菜調理などの業務も対象とするかが検討されていきます。

素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業

製造分野を担う「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」では、機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理が「特定技能」の対象となっていました。今後はこの製造分野に、繊維や印刷を含むか否かが議論されていきます。

5.今後も制度対象が増える可能性大

現在4分野の制度追加が検討されている「特定技能」ですが、人材難にあえぐ日本の現状を見ると、さらに対象が拡大される可能性が高いといえます。

本項では、今後の追加が見込まれる2分野を解説します。

コンビニ

すでにコンビニで働く外国人の姿が見受けられるように、コンビニの外国人需要は非常に高いといえます。現在は在留資格「留学」などで在留する外国人が資格外活動を取得して、週28時間以内のアルバイトとして働いているケースがほとんどです。しかし、「特定技能」は原則として正社員もしくはフルタイムとなるので、制度に追加されれば雇用形態に大きな変化が起こるかもしれません。

廃棄物処理業界

廃棄物処理業は、業務において爆発性・毒性・感染性の恐れのある危険物を取り扱うことから、ひとつ間違うと甚大な健康被害が発生する可能性があります。そうした特殊な事情もあって、現状ですでに深刻な人手不足となっている業界だけに、「特定技能」を持つ外国人材を求める声が少なくありません。ただし、導入するには、他業種よりも厳しい安全基準が必要になるでしょう。

6.まとめ

今回は検討が進められる「特定技能」の対象拡大について解説しました。制度に新たな分野や業務が加わることで、「特定技能」で雇用できる外国人の絶対数が増え、人手不足解消の一助になることは間違いありません。今後の動向を注視し、自社業務が対象になるのかをしっかり見極めましょう。



追加参考
特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定) https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/03_00067.html

特定技能ガイドブック
https://www.moj.go.jp/content/001326468.pdf

全国地方鉄道の半数が「運転士不足」、低賃金など背景に 国交省調査
https://www.asahi.com/articles/ASS2252KZS22UTIL00Z.html

第1部 第2章 第1節 林業の動向(3)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r4hakusyo_h/all/chap2_1_3.html

(3)木材産業における労働環境の改善等
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r3hakusyo_h/all/tokusyu2_4_3.html

木材産業の事故実態と効果的な作業安全対策
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/sagyou_anzen/attach/pdf/itaku-6.pdf

飲食料品製造業分野における特定技能外国⼈受入れの制度について
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/soumu/attach/pdf/tokuteiginou-80.pdf

製造業における特定技能外国人材の受入れについて
(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/gaikokujinzai/pdf/20221020r.pdf

特定技能の業種追加|コンビニ・トラック・廃棄物処理業界
https://www.myanmarunity.jp/tokutei_ginou/19980/

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