外国人保育士は雇用できる? メリットと注意点を解説
2024.03.19
いまだ減少の一途をたどる保育士不足の現状の中で、厚生労働省は2024年度までに、児童約14万人分の保育の受け皿を整備することを掲げており、有効な解決策の提示が急がれています。一方で、外国人労働者は増え続けています。この外国人労働者を保育士として雇用することができれば、待機児童解消はもとより、グローバル化する保育現場で園と子どもをつなぐ架け橋となれるのではないでしょうか。
本記事では外国人労働者を保育士として雇用する方法、メリット、注意点などについて詳しく解説します。
CONTENTS
- 1.外国人労働者は日本人と同じ方法で保育士になれるのか
- 2.外国人が日本で働くために必要な在留資格
- 3.<在留資格別>外国人を保育士として雇用する方法
- 4.保育士という枠組みにとらわれずに雇用する方法
- 5.外国人保育士が必要とされる背景
- 6.外国人保育士を雇用するメリット
- 7.まとめ
1.外国人労働者は日本人と同じ方法で保育士になれるのか
日本人が保育士になる方法は、以下の通りです。
1-1.養成学校を卒業する
「保育士」となる資格が取得できる厚生労働省の指定する養成学校(大学・短大・専門学校など)を卒業する
1-2.保育士試験を受験する
保育士試験を合格し、「保育士」資格を取得する
では外国人労働者は、この方法で保育士資格を取得できるでしょうか。
答えはノーです。
2.外国人が日本で働くために必要な在留資格
保育士にかかわらず、外国人労働者が日本で働くためには、「就労ビザ」と呼ばれる在留資格を取得することが必要になります。
この在留資格の種類によって、日本国内で行える活動が異なります。
在留資格は「職種・業種問わず働くことができる在留資格(居住資格)」「一定の範囲内の職種や業種などに限って仕事ができる在留資格(就労資格)」「就労することができない在留資格(非就労資格)」に分けられます。
2-1.「職種・業種問わず働くことができる在留資格(居住資格)」
「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4種類があります。「居住資格」とも言い、この4種類のいずれかの資格を取得している外国人は、日本国内での活動に制限がないため、好きな仕事に就くことができます。
2-2.「一定の範囲内の職種や業種などに限って仕事ができる在留資格(就労資格)」
「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「興行」「技能」があります。これらの資格を取得している外国人は、該当する職業であれば日本で仕事をすることができます。
2-3.「特定活動ビザ」
「特定活動ビザ」は、一般的な在留資格には当てはまらないその他の活動として設定されている在留資格です。その中に、「特定活動46号」というビザがあります。
これは、2019年5月30日に新設された制度で、従来認められなかったサービス業の現場での就労を可能にするビザです。それまで外国人留学生の就労ビザは、外国人の特性を生かした知識や語学力を使う限定的な職業でしか就労が認められていませんでした。
これを解消し、日本の大学を卒業した外国人留学生が幅広い職種に就けるようにできた制度で、ワーキングホリデーや経済連携協定に基づく看護師・介護福祉士などもこの特定活動46号ビザで就労が可能となっています。
2-4.「就労することができない在留資格(非就労資格)」
「留学」「家族滞在」などが非就労資格に該当します。ただし、非就労資格であっても、許可があれば資格外活動(アルバイト)として就労することが可能です。
3.<在留資格別>外国人を保育士として雇用する方法
在留資格別に、保育士として雇用する方法があるか解説します。
3-1.「職種・業種問わず働くことができる在留資格(居住資格)」
日本での活動に制限がないため、日本人同様に保育士試験を受けて、保育士として就労することができます。
3-2.「一定の範囲内の職種や業種などに限って仕事ができる在留資格(就労資格)」
保育士の職務内容に該当する就労資格はありません。そのため、就労ビザで保育士としての雇用はできません。
3-3.「特定活動ビザ」
特定活動46号ビザを取得することで、外国人労働者を保育士として雇用することが可能になります。
特定活動46号ビザを取得するためには、「日本の大学を卒業または大学院を修了していること」「日本語能力試験(JLPT)でN1、またはビジネス日本語能力テスト(BJT)で480点以上であること」の条件を満たしている必要があります。その上で、「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」 に就くことが決定した場合に取得できます。
つまり、採用を検討している外国人労働者が学歴と日本語能力という2つの条件を満たしている場合には、内定を出すことでビザの取得が可能になります。
4.保育士という枠組みにとらわれずに雇用する方法
保育士としての採用でなくても、保育士に準じた職務内容で雇用できる方法を紹介します。
4-1.語学教育を行う外国人として採用する
保育園や幼稚園内で、園児向けの語学教育を行う「外国人教師」という職務での雇用であれば、「技術・人文知識・国際業務」の業種で就労ビザが取得できる可能性があります。
4-2.インターナショナルプリスクールで採用する
「教育」もしくは「技術・人文知識・国際業務」の業種で就労ビザが取得できる可能性があります。
4-3.子育て支援員制度を活用する
2015年からはじまった「子ども・子育て支援新制度」に基づいて新設された「子育て支援員」という職業を活用し、外国人を資格外活動(アルバイト)として採用する方法があります。保育士不足の問題を解決すべく新たに設けられた民間資格で、保育士のように国家資格を必要とするものではなく、研修を受けるだけで取得できる資格のため、外国人でも積極的に活用できます。
5.外国人保育士が必要とされる背景
日本で働く外国人労働者の数が増加している理由は、単に、技能実習生の受け入れや留学生の資格外活動(アルバイト)が増えていることだけではありません。居住資格である「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」が増えたことによって、外国人労働者が増えている現状があります。このことは、居住資格を持つ外国人の子どもが、日本の保育園・幼稚園に増えることを意味しています。
6.外国人保育士を雇用するメリット
外国にルーツを持つ子どもへの保育を「多文化共生保育」と言います。2018年4月から適用されている保育所保育指針において、「保育士等はそれぞれの文化の多様性を尊重し、多文化共生の保育を進めていくことが求められる」と示されていますが、加速する保育園・幼稚園のグローバル化の中で、言葉の壁というハードルは想像以上に高く、子どもや保護者とのコミュニケーションに困難を感じている保育士が多いといわれています。
外国人保育士は、ネイティブに子どもや保護者とコミュニケーションが取れるため、保育園・幼稚園のグローバル化を強力に支える頼もしい人材となります。
7.まとめ
外国人保育士を雇用することは、グローバル化する保育現場において、大変頼もしい存在である一方で、現状では、国の外国人保育士の受け入れに対する制度の用意がなく、保育士としての雇用はできません。
これは、保育士の職務内容に合致する就労ビザが用意されていないことが原因となりますので、海外から労働者の雇い入れを考える採用担当者は、他の手段を考える必要があります。「特定活動46号ビザが取れるかどうか」「資格外活動の許可があるか」に注意して、保育士または保育士に準じる職務での求人、採用をご検討なさってはいかがでしょうか。
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