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【専門家コラム】技能実習生に対する暴力事件を考える

専門家コラム

2022.03.08

技能実習生だから・・・・・・・・】受けている人権侵害なのか?

時折、センセーショナルな映像や写真を使って、技能実習生に対する暴行事件が報道されますが、その報道では「技能実習制度(が悪い)のもとで、技能実習生に対する暴力などの人権侵害行為がまかり通っている」等のステレオタイプな論調が目立ちます。

ちょっと待ってください。映像や写真、よく見てみると、何か違和感を感じる時がありませんか?

例えば、暴力や暴言行為を行っている人は、あまりにも堂々としていて、演者のようにも見えます。映像もクリアです。これは、つまり、撮影することを了承している、あるいは、わざわざ撮影させている可能性さえあります。また、大半の受入れ企業は、一人ではなく複数人数の実習生を受入れているはずなのに、映像の中で暴行の対象になっているのは、たいてい「特定」の実習生1名です。
何かおかしいですね。

そうです!これは、まさに「子供たちの学校で起きているいじめ問題」と同じなのです。

実は社内で起きている「パワハラ問題」

確かに、実習生の場合、外国人であるがゆえに、日本語の問題もあって、仕事がスムーズに進まないイライラから「いじめ」の対象になりやすい側面もあると思いますが、いわゆる「いじめ」なので、同じ実習生仲間が、いじめに加担している場合も多いのです。社内での「いじめ」の特徴は、「パワハラ」と連動していますから、加担する実習生は、日本人社員(社内のパワーバランスを利用)を煽ります。実習生から煽られると、いじめは更にエスカレートします。
撮影しているのが同僚の実習生というパターンも結構多いですね。ニュースになるのは、決まって暴行の対象が実習生の場合ですが、もちろん、その対象が日本人社員の場合もあります。ターゲットが、A実習生からB社員、そしてC社員・・・と変遷することもあります。ですから「技能実習制度が悪い。実習生だから暴力をふるわれている」という単純な答えではないのです。

その選択、間違っていませんか?

職場で起きているパワハラについて、社長や上司が薄々気づいている場合があります。

「〇〇さんにヘソを曲げられると仕事が回らなくなるから・・・(〇〇さんの行為は目をつぶる)」という言葉をよく耳にします。

目先のことだけ考えれば、〇〇さんを処分することで、そのとき会社は困るかもしれませんが、〇〇さんの存在によって、社員が定着しなかったり、部下が育たなかったりすれば、結果的に、業務効率も生産効率も上がらず、常に不安定な運営に悩まされることになります。それこそ、殺傷事件などの事件にまで発展すれば、会社の存続さえ厳しくなるかもしれませんし、会社が被害者から損害賠償責任を問われることもあるかもしれません。

そして、もう一つ重要なことは、実習生は「子供ではなく、一人前の大人」であるということです。日本語能力の問題から「幼稚に」感じる日本人が多いようですが、彼らは、周りをよくみています。人間関係やパワーバランスもよく把握しています。自分の考えを持っていますし、あえて口には出しませんが、社員や上司、そして会社に対する評価もしています。日本人同士にありがちな「ムラ意識」はありませんし、親の言うことを盲目的にきく子供でもありません。

実習生の中には、自分の立場を良くするために、〇〇さんの存在を利用して、手下感を醸しだし、いじめに加担したり、他社員を巻き込んでいじめを煽ったりすることもあります。また、会社に対して悪い感情を持っている場合には、いじめをエスカレートさせたり、わざと事件を起こさせて写真や映像をとって、後々恐喝の材料にしたりする場合もあるのです。

問題解決は「王道」で!

暴行等のいじめ・パワハラ問題があった場合に、見て見ぬフリをしたり、隠したりすることは、会社にとってマイナスにしかなりません。問題は、恐れずに表に出して、一日でも早く解決し、軌道修正することが重要です。問題が大きくなってからでは、取返しがつきません。エスカレートするいじめは、命に係わる危険さえあるのです。
軌道修正のためには、誰からも納得が得られるように、公明正大に、関係当事者全員から事実を聞き取り、二度と同様の過ちが起きないように、就業規則の懲戒規定に則って適正な手続きを経て、公平に処分することが大切です。事案によっては警察への通報や労働基準監督署への報告も必要になるでしょう。
実習生が関与(被害者であっても加害者であっても)している場合は、貴社が団体監理型受入れ企業であるならば、監理団体への報告も必要になります。監理団体には、臨時監査に来てもらい、聴取等にも協力してもらいましょう。そして、監査結果を必ず外国人技能実習機構に報告してもらいましょう。

場合によっては「転籍」の検討を

パワハラ問題によって、実習生と従業員や実習生同士が、修復できない人間関係に陥っていたり、被害実習生が今の就労環境では回復できない精神状態に陥っている等の場合には、実習生の意向を確認したうえで、必要あらば違う企業への転籍も検討しましょう。「実習生は転籍できない」と、よく言われますが、そんなことはありません。
実習生の保護のためならば、同じ受入れ職種・作業の企業に転籍することができます。社内で、解決できない場合には、監理団体に相談してください。適正な監理団体であれば、転籍も含め、力になってくれます。そして、外国人技能実習機構の支援(マッチング支援=転籍企業候補の紹介)もあります。

2022年4月からパワハラ防止措置が中小企業にも義務付けられます!

2020年6月にパワハラ防止法が施行され、2022年4月からは、防止措置が中小企業にも義務付けられます。厚労省の調査データ(平成28年)によると、2社に1社が、パワハラの相談を1件以上受けたことがあると回答しており、実際にパワハラに該当する事案の発生があったと回答しているのは、3社に1社強の割合です。大変身近にパワハラ問題が起きているということです。ニュースになるのは実習生ばかりですが、実は実習生に対しては、技能実習法等によって、かなり手厚く保護される機能があります。罰則等の処分規定の存在は抑止効果も生んでいます。

むしろ手薄なのは日本人に対してであって、労働者の絶対数から言えば、被害者の大半は日本人社員になるのではないでしょうか。いじめやパワハラは、実習生に対してだけ起きる特異な問題ではなく、私たちが生きている「どうしようもない人間社会」だから起きてしまう現実かもしれません。放置すれば、エスカレートする怖い問題です。
厚労省にパワハラ防止法に係る特設ページ(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/)が開設されていますので、この機会に、ぜひご確認いただき、自社のための具体的な対応策をご検討ください。

野口かおる

技能実習生受入れコンサルタント
株式会社Kensyu.Net 代表取締役

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