技能実習制度とは? 受け入れ方法と今後の課題
2024.06.18
技能実習制度は、外国人の人材育成のために設立されています。2022年には制度の見直しが始まり、今後、特定技能と統合される可能性もあります。
現状では、技能実習生の育成と海外からの受け入れも継続していますので、実習生を受け入れる場合は、制度内容や在留資格の要件などについて確認しましょう。
本記事では、技能実習制度の概要と今後の課題について解説します。
CONTENTS
1.技能実習制度について
まず技能実習制度の概要を説明します。
制度の目的
技能実習制度は、「技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図り、もって人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術または知識の移転による国際協力を推進すること」を目的として1993年に創設されました。 あくまで開発途上国の「人づくり」に貢献することが目的であり、日本の人手不足を解消するための制度ではないことがポイントです。
技能実習制度のしくみ
技能実習生は、企業単独型か団体監理型のいずれかの方式で受け入れます。
企業単独型では、自社の海外拠点や取引企業の職員を企業が直接受け入れて技能実習を実施します。一方、団体監理型は、監理団体と呼ばれる非営利団体が技能実習生を受け入れ、加盟企業で技能実習を行います。実際にはほとんどの企業が団体監理型で実習生を受け入れていますので、監理団体が現地の送り出し機関と技能実習生受け入れの契約を締結することになります。
2.技能実習制度の在留資格について
技能実習生として日本に在留するには、技能実習ビザを取得する必要があります。
技能実習ビザの種類
技能実習ビザは企業単独型と団体監理型で分かれており、入国1年目は技能実習1号、2・3年目は技能実習2号となります。
企業単独型「技能実習1号イ」の要件
企業単独型の在留資格「技能実習1号イ」の受け入れ要件は以下の通りです。
<受け入れ対象者>
<対象業務・作業>
・帰国後当該技能を必要とする業務に就く予定があること
・母国において修得することが不可能または困難な技能であること
<違法な金銭要求の禁止>
・技能実習生との間で労働契約の不履行に係る違約金を定める契約等を締結しないこと
<講習>
・日本語(語学)
・日本での生活一般に関する知識
・法的保護に必要な情報(専門的知識を有する者による講義に限る)
・その他、日本での円滑な技能等の修得に資する知識
※海外で1カ月以上かつ160時間以上の事前講習を実施している場合は、12分の1以上の時間でも可
<報酬>
<実習体制>
・実習実施機関に技能実習生の生活指導を担当する職員が置かれていること
<受け入れ人数>
※常勤職員には、海外事務所の常勤職員および技能実習生は含まれない
<技能実習生のサポート>
・実習実施前に労災保険の届出をしていること
・技能実習生の帰国旅費の確保をしていること
<報告義務>
・技能実習実施状況に係る文書を作成し、事務所に備え付け、実習修了の日から1年以上保存するとされていること
<在留期間>
団体監理型「技能実習1号イ」の要件
団体監理型の在留資格「技能実習1号ロ」の受け入れ要件は、以下の通りです。
<受け入れ対象者>
<対象業務・作業><違法な金銭要求の禁止>
<講習>
<報酬><実習体制><受け入れ人数><技能実習生のサポート><報告義務><在留期間>
「技能実習2号イ」「技能実習2号ロ」への移行要件
技能実習1号から2号へ移行する場合の要件は、以下の通りです。
・1号と同一の実習実施機関で、同一の技能について行われること
・2号移行試験に合格していること
その他、受け入れ人数は制限がなく、在留期間は最長2年です。
3.技能実習制度の対象職種は?
技能実習制度の対象職種は以下90職種165作業です。(令和5年10月31日時点)
①農業関係(2職種6作業)
②漁業関係(2職種10作業)
③建設関係(22業種33作業)
④食品製造関係(11職種18作業)
⑤繊維・衣服関係(13職種22作業)
⑥機械・金属関係(17職種34作業)
⑦その他(21職種38作業)
〇社内検定型(2職種4作業)
4.技能実習生受け入れの流れ
技能実習生を受け入れる方法、手順について説明します。
以下、団体監理型で受け入れる手順です。
手順①:パートナーとなる監理団体を選び、契約する。
手順②:監理団体と相談しながら募集人数を決定する。
手順③:監理団体が現地の送り出し機関へ求人依頼をする。
手順④:送出機関が候補者の面接を行う。(所要期間は通常1カ月程度)
手順⑤:送出機関が選定した候補者の中から、採用する人を決定する。
手順⑥:技能実習計画を作成し、外国人実習機構(OTIO)へ技能実習計画申請を行い、技能実習計画認定通知書の交付を受ける。
手順⑦:出入国管理庁へ在留資格認定証明書交付申請を行い、在留資格認定証明書の交付を受ける。
手順⑧:在留資格認定証明書を技能実習生候補者へ送る。
手順⑨:技能実習生候補者が現地の日本大使館などに査証(ビザ)申請を行い、発給を受ける。
手順⑩:入国日を決定し、技能実習生候補者へ航空券を手配する。
手順⑪:技能実習生が入国し、監理団体にて1カ月の入国後講習を行う。
手順⑫:実習実施企業へ配属する。
5.技能実習制度の課題について
技能実習制度の目的は「人づくり」を通じた国際貢献ですが、現行の技能実習制度は人手不足解消のための労働力として利用されている実態があります。昨今、この目的と実態の乖離が技能実習制度の課題となっています。
技能実習生の失踪問題
技能実習生の失踪問題は深刻です。これは技能実習制度が転籍を認めていないことが背景にあります。いじめやパワハラから逃れるためや入国にあたって実習生本人が負担する借金返済のために、より稼げる職場を求めることが失踪につながっています。
新たな制度の創設に向けて
現在、技能実習制度を廃止し、本来の目的である「人材育成」と特定技能制度における「人材確保」を目的とした新たな制度の見直しが検討されています。
新制度では技能実習生の受け入れ対象分野を特定技能制度と共通化した上で、「主たる技能」を設定して育成・評価していくことが検討されています。また失踪の原因となっていた転籍不可の要件を緩和し、本人意向による転籍も認めること、さらに、監理団体の許可要件厳格化や、二国間取り決め(MOC)による送り出し機関の取り締まり強化も政府の最終報告書に盛り込まれています。
6.まとめ
近い将来、現行の技能実習制度は新たな制度に移行する可能性がありますが、発展途上国の人材育成を通じた日本の国際貢献は新制度でも引き継がれていきます。
ぜひ、本記事を参考に定着率の高い技能実習生の受け入れを行っていってください。
外国人採用に関するオンライン無料相談やってます!
- 雇用が初めてなのですが、私たちの業務で採用ができますか?
- 外国人雇用の際に通訳を用意する必要はありますか?
- 採用する際に私たちの業務だとどのビザになりますか?
- 外国人の採用で期待できる効果はなんですか?
上記に当てはまる企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
関連記事
もっと見る人事担当者が知っておきたい外国人の年金脱退一時金制度
2024.07/30
【技能実習】1号・2号・3号の違いと移行する方法を解説
2024.03/27
【最新】外国人技能実習生の受け入れ人数|国籍別では?
2023.10/05
新着情報
もっと見る
Case33 習慣的にあり得ない
━日本人って、なんでファミリーネームで呼び合うの?
2024.10/11
特定技能制度に金属製サッシ・ドア製造業が追加|人不足の課題に海外人材採用への期待
2024.10/07
Case32 習慣的にあり得ない
~ベトナムの命名事情に迫る!~
2024.10/04
こんな記事が読まれています
もっと見る-
技能実習生は税金を払う?外国人の所得税と住民税をわかりやすく解説
在留資格「技能実習」2024.09/04
-
技能実習生はどこに住む? 住まいに関するルールと住居形態
在留資格「技能実習」2022.05/26
-
講習は何時間必要? 技能実習生の研修を来日の前後に分けて解説
在留資格「技能実習」2022.06/22
人気の記事
もっと見る-
在留資格「技能実習」
2024.09/04
-
在留資格「技能実習」
2022.05/26
-
在留資格「技能実習」
2022.06/22
おすすめキーワード