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外国人技能実習生の受け入れは今後どうなる?

先日、政府が技能実習制度の廃止について検討していることが公表されました。
外国人技能実習生の受け入れは、国際貢献という本来の趣旨と実態との大きな隔たりが問題視されており、実習生が配属された現場ではさまざまな課題を抱えているのが現状です。
そこで今回は、外国人技能実習制度の廃止を受けて今後どのように変わっていくのか、概要を解説していきます。

CONTENTS

  1. 1.外国人技能実習制度とは
  2. 2.外国人技能実習生受け入れの需要
  3. 3.特定技能と技能実習の違い
  4. 4.外国人技能実習制度の廃止について
  5. 5.廃止による今後の技能実習生の受け入れ
  6. 6.外国人技能実習生受け入れの方向性
  7. 7.まとめ

1.外国人技能実習制度とは

外国人が日本で働くには、就労が認められる「在留資格」を取得している必要があります。そして、現在日本で働く外国人労働者数204万8675人のうち、20.1%に当たる41万2501人の方が取得しているのが外国人技能実習制度に基づく「技能実習」という在留資格です。

外国人技能実習制度の目的

1993年に創設された外国人技能実習制度の目的は、開発途上国の経済発展を担う人材育成および外国人技能実習生を通じて、日本の技能や技術を開発途上国へ移転することです。これは「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」第一条に定められています。つまり、本制度は人材不足を補う労働力を得るためのものではなく、日本が先進国としての役割を果たすための国際貢献を主旨とする制度であるといえます。

外国人技能実習制度の概要

制度が適用される技能実習生は3年ないし5年間、日本の企業での就業が認められます。継続して技術や技能の習得を目指すため、技能実習期間の転職は基本的にできませんが、雇い入れた会社都合による他企業への転籍、もしくは技能実習2号から3号への切り替え時に限っては転職を選択することが可能です。

また最長5年で帰国しなければならないため、在留資格の「永住」を取得することはできません。一方で「技能実習2号または3号を良好に修了していること」「技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号の業務に関連性が認められること」の2つの条件を満たしている場合は「技能実習」から「特定技能1号」への在留資格の移行ができます。

雇い入れる企業にも「技能実習生の住居を確保すること」「日本人同様の賃金」などの要件が設けられるほか、受け入れ可能な技能実習生の人数にも制限があります。

2.外国人技能実習生受け入れの需要

国際貢献を目的に策定された外国人技能実習制度ですが、日本が抱える社会問題の影響もあり、実際には技能実習生の労働力が期待されているのが現実です。しかし、目的と運用が懸け離れてしまったことで、さまざまな課題が表面化しています。

労働力不足の現状

外国人労働者数受け入れの増加要因にもなっているのが、日本の少子高齢化に伴う労働人口の低下です。総務省の「国勢調査」によれば、15〜64歳の生産年齢人口のピークは1995年の8716万4721人。そして2023年5月22日に総務省統計局が発表した「人口推計」によれば、2022年12月1日の生産年齢人口は7420万2000人ですから、27年で約1300万人もの労働可能な日本人材が減少したことになります。

年々深刻さを増していく人材不足の解消策として期待されているのが、外国人労働者です。日本政府も外国人技能実習制度や特定技能制度を実施するなど、外国人の受け入れ政策に取り組んでいます。

技能実習生受け入れの推移

技能実習生の在留状況は2015〜2016年を境に急増に転じます。在留資格「技能実習」における外国人労働者数は2015年10月末では16万8296人でしたが、2016年10月末に21万1108人となり、2020年10月末には過去最多の40万2356人となりました。

この間には東京五輪の開催に向けた建設ラッシュもあったことから、建設業をはじめとする人手不足はより深刻化しました。そうした状況から、企業が技能実習生の労働力を頼りにしたことが急増の一因であると推察されます。

また2021年以降の減少ですが、これはコロナ禍の影響で日本への移動が制限されていたためと考えられます。しかし、その後のアフターコロナにより入国制限が緩和され、2023年には過去最多の2020年を塗り替える41万2501人の技能実習生が日本へ入国しています。

労働力の確保のみを目的として実施してはならない「技能実習」ですが、中小企業を中心に依然として高いニーズがあります。それでも本来の目的とは異なる雇用には、やはり問題があると言わざるを得ません。実際に企業と技能実習生の間でトラブルになるケースが増えています。

技能実習から特定技能への移行が進む

このような需要と供給目的の不一致を解決するべく、人手不足が深刻な特定産業分野において即戦力としての労働力の確保を目的とする新しい制度「特定技能」が2019年に創設されました。

以下は特定技能で働く外国人労働者数の推移です。

引用)「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)|厚生労働省

発足当初の2019年にはわずか520人だった特定技能外国人ですが、翌年2020年には7262人の前年比なんと1296.5%、2021年2万9592人(前年比307.5%)、2022年7万9054人(前年比167.1%)と年ごとの増加率はすさまじく、ついに2023年には13万8518人(前年比75.2%)にも達しています。

特定技能を取得するには、2つのルートがあります。一つは従事する対象分野の技能評価試験と日本語能力試験の両方に合格する試験ルート、そしてもう一つが技能実習からの移行ルートを使う方法です。「技能実習の職種・作業内容からの関連性があること」「技能実習2号を良好に修了すること」の2つの条件を満たせば、技能実習から特定技能への移行が可能です。

実際、特定技能の内訳をみてみると、技能実習からの移行ルートを使って在留資格を取得している外国人が約8割を占めており、今後も技能実習から特定技能への移行は続くと考えられます。詳しくは後述しますが、現在審議中の「育成就労」についても、特定技能への移行を想定する制度であり、少子高齢化が進む日本において、少しでも長く外国人労働者に日本産業を支えていってもらいたいという狙いがあると考えられます。

3.特定技能と技能実習の違い

特定技能と技能実習、どちらも外国人労働者を雇用する制度ですが、内容は大きく異なります。
主な違いは以下の通りです。

表内の制度の目的にあるとおり、技能実習が日本国内の人手不足解消を目的としていないのに対し、特定技能は人手不足の解消そのものが目的です。かつては外国人労働者を雇い入れる方法が技能実習しかなかったため、日本国内で人材を集めることができない中小企業は技能実習生を雇用するしかありませんでした。

国際貢献が目的の技能実習生を、実際には「労働力」として活用するというこのズレが、多くのトラブルや問題の元になっていたと言えるでしょう。特定技能は、政府が外国人労働者を労働力の確保のために雇用することを公式に認めた初めての在留資格です

4.外国人技能実習制度の廃止について

目的と実態とのギャップを受けて、2022年11月に政府の有識者会議が設置されました。その中では、技能実習制度を廃止して新たな制度への移行を求める声が大きくなっています。

外国人技能実習制度の廃止の理由

外国人技能実習制度の問題の根本には、経済的メリットを享受するために企業と外国人の双方が制度を利用するケースが多いこともあります。

外国人技能実習制度を利用して来日するほとんどの外国人は3年ないし5年間、日本に在留します。つまり、企業は技能実習を理由に、その期間においては安価かつ安定的に労働力を確保することが可能になります。技能実習生にしても、母国よりも高収入を得られる日本で働くことを希望して来日するという人も多いです。

他にも、下記のような問題点が挙げられます。

(1)労働基準法に違反する、低賃金での長時間労働の強要や残業代などの賃金トラブル
(2)技能実習生が暴力を受ける場合や、職業選択の自由が制限されるなどの人権問題
(3)来日前に聞かされていた業務と来日後の業務が異なる、業務内容の食い違い

これらを理由にして、2021年には7167人の技能実習生が失踪しています。この点については企業のみならず、技能実習生をサポートし企業を監督する立場である監理団体の責任も大きいと言えるでしょう。

このように、本来の目的から懸け離れてさまざまな問題を抱える現在の外国人技能実習制度に対して、廃止や新たな制度が検討されることは必然なのかもしれません。

5.廃止による今後の技能実習生の受け入れ

では、現在議論が進む新たな制度で、外国人技能実習生の受け入れはどのように変わるのでしょうか。政府の有識者会議が発表した中間報告書のたたき台から、そのポイントを確認していきます。

国際貢献から労働力確保へ

今後も技能実習制度の目的に「人材育成を通した国際貢献」のみを掲げたままで、労働者としての受け入れを続けることは望ましくないことから、新制度では「人材確保」も目的に加えることが提言されています。これは「技能実習生の受け入れは労働力の確保である」ということを正面から認める大きな転換と言えます。一方で、技能移転や国際貢献という観点と、労働力としての人材確保は両立し得ることから「人材育成」という目的も継続される予定です。

転職が可能になる

人材確保を目的に位置付ける制度の趣旨や外国人保護の観点から、これまで基本的には認められていなかった転籍が可能になります。ただし、無尽蔵に可能になるわけではありません。受け入れ企業などでの人材育成に要する期間や負担する来日時のコスト、安定的な人材確保や日本の労働法制との関係など、新制度が目的にする人材確保と人材育成とのバランスを見ながら、総合的な観点で一定の制限は設けられる予定となっています。

適切な監理団体の運用

海外の外国人材と企業の橋渡しや外国人材に対する支援機能などの必要性から、監理団体における従来の枠組みは現行制度から引き継がれます。一方で、受け入れ企業などの人権侵害や不適正な就労の防止と是正を行えない監理団体も散見されることから、要件を厳格化し、不適切と認められる団体は排除していく方向で調整が進められます。

日本語能力の向上

来日して日本で暮らしていくためには最低限の日本語能力が必須となることから、就労前の日本語能力N5習得の義務化が検討されています。また、適切な技能形成および長期就労の実現には日本語能力の段階的な向上が必要になるため、就労が始まってからも日本語教育の機会を充実させる仕組みが設けられる予定です。本取り組みで必要となるコストですが、来日後の日本語教育にかかる費用は、受け入れ企業が負担する方向で検討されています。

6.外国人技能実習生受け入れの方向性

現在問題になっている目的と実態のギャップを解消するため、従来の外国人技能実習制度は廃止した上で、人材確保と人材育成を目的とした新たな制度が創設される可能性が高いと予想されます。ではこの新たな制度によって、外国人技能実習生の受け入れはどのように変わっていくのでしょうか。

求められる新たな制度のあり方

人材確保の観点では、国内における人手不足の状況に対して的確に対応した制度でなければなりません。人手不足である状況の把握や受け入れ見込み数の設定においても、さまざまな関係者の意見やエビデンスを踏まえて判断される仕組みにするなど、透明性や予見性を高める制度の改正が期待されます。

人材育成の面では、対象職種や分野を特定技能制度と一致させ、新たな制度から特定技能制度へと円滑に移行できるなどのキャリアパス制度を構築し、外国人が中長期にわたって日本で活躍できる仕組みが必要です。これにより外国人技能実習生が習得した技能や技術をさらに日本で生かすことが可能になります。

これを踏まえ、政府は新たに「技能実習」に代わる「育成就労」制度の創設を盛り込んだ入管難民法の改正法案を現在審議中です。

育成就労では「外国人材の育成と確保」を目的に掲げ、これまで技能実習制度に深刻な影を落とし続けてきた「転籍ができないことによる実習生の失踪問題」を解消し、長く働き続けられる道筋が明確化されることになりました。また対象分野を特定技能と揃えることで、特定技能2号移行後の永住権取得も視野にいれられるよう門戸を広げています。
一方で、永住者の増加には、税金や社会保険料の故意による未納、住居侵入や傷害など犯罪リスクが高まる懸念もあります。そのため改正法案には、一定の罪を犯した場合に永住許可を取り消せる規定が盛り込まれました。しかし、外国人の権利についても配慮すべきとの声もあり、最終的には当該外国人の生活状況に十分に配慮した上で判断する旨の一文が追加されています。

本法案が成立した場合、公布から3年以内に施行されます。長年、技能実習が掲げてきた国際協力が幕を閉じる日も近いでしょう。

7.まとめ

目的に人材確保が加わるなど、大きく変わることが予想される外国人技能実習制度。新たな制度の創設後は、表立って外国人技能実習生を労働力として認めることができる一方で、働き手の自由度も増すことになります。外国人労働者に長く働いてもらうためにも、今から労働環境の見直しを始めることをおすすめします。

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