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【令和5年4月1日 改正】技能実習運用要領で何が変わった?

「技能実習制度運用要領」は、実習生を受け入れる実習機関がスキル指導の際に守るべきルールです。
この「技能実習制度運用要領」が2023年4月1日に全体にわたって大きく改正されました。

本記事では、技能実習制度の法改正で何が変わったのか? 技能実習運用要領について変更したポイントを解説します。

CONTENTS

  1. 1.技能実習生の在留状況
  2. 2.技能実習運用要領とは?
  3. 3.技能実習制度の法改正の目的
  4. 4.技能実習運用要領改正の具体的な内容
  5. 5.まとめ

1. 技能実習生の在留状況

最初に「技能実習制度運用要領」が改正された背景、技能実習生の現況について振り返っておきましょう。

外国人技能実習制度は、日本で培われた技能・技術・知識を開発途上国などに移転することで現地の経済発展に寄与することを目的として、1993年に創設された制度です。

長らく多くの問題を抱えたまま運用されてきましたが、2017年11月に施行された「技能実習法」によって、大きく見直されることになりました。

新たに監督機関である「外国人技能実習機構」が設置され、技能実習の正しい実施や技能実習生の保護、制度の拡充が図られました。新制度下において日本にやってくる技能実習生の数も拡大。ここ数年は新型コロナによる影響があったものの、昨年6月末の技能実習生数は32万7689人(前年比+18.7%)にまで回復しています。在留資格別では全体の11.1%を占め、永住者に次ぐ第2位の数字となっています。

ただ、この制度には「本来の目的と異なり、労働環境が厳しい業種が人手を確保する手段にもなっている」という指摘も少なくありませんでした。そのため政府は昨年から有識者会議を立ち上げ、現行制度を廃止して新たな制度へ移行するための検討をスタート。2023年5月には検討結果をまとめた中間報告書が提出されました。

今回の「技能実習制度運用要領」改正は、そうした状況下で実施されたものです。

2.技能実習運用要領とは?

技能実習運用要領の役割と改正の目的について解説します。

2-1. 技能実習運用要領の役割

「技能実習運用要領」は日本に来る技能実習生が、適切に正しくスキルを習得するために、実習生を受け入れる実習機関がスキル指導の際に守るべきルールです。2017年11月、技能実習法の施行とともに制定されました。

技能実習制度の目的である「開発途上国に対するスキル伝達を通した国際社会発展への貢献」という、先進国としての我が国の役割を果たすために欠かせないガイドラインとなっています。

企業や団体が技能実習計画の認定を受けるときや監理団体が実習機関をサポートするときには「技能実習運用要領」に則って、実習やスケジューリング、諸手続きを行います。

2-2.2023年4月1日に改正

「技能実習運用要領」は毎年のように改正されてきました。今回の改正についても、目的は同様で「技能実習のスムーズな実施」「実習生の在留生活の充実」「実施機関と監理団体の連携強化」を実現するためのものとなっています。

3.技能実習制度の法改正の目的

「技能実習運用要領」改正の目的を、具体的な変更内容を見ながら解説します。

3-1.技能実習制度を円滑に進める

実施機関が技能実習制度をスムーズに進めることは、改正の大きな目的のひとつです。たとえば、これまで「安全衛生関連業務」について「各業務の1割以上」と定められていましたが、その算定基準が曖昧でした。それが今回の改正により「安全衛生関連業務/安全衛生関連業務+それ以外の業務」で1割以上と改めて明確化されています。

また実習を中断・再開する際の手続きの簡素化、対面だけでなくオンラインでの入国後講習が認められたこと、「生活指導員の常勤性が確認できる書類」や「技能実習期間中の待遇に関する重要事項説明書」の提出が原則不要となったことも、円滑化を目的とした改正内容のひとつです。

3-2.実習生の日本での生活を充実させる

これまでの「技能実習運用要領」では「実習生が宿泊施設を利用する場合の私物を収納する設備」について、具体例が記載されていませんでした。そのため、実習生が持参したスーツケースを転用する例が多く見られ、実習生が日本での生活を充実させる上で問題になっていました。今回の改正では「私物収納設備は実習機関が用意すべきものである」というルールがより明確になり「設備は実習機関が責任をもって用意し、実習生のスーツケース転用などは認めない」ことが明記されています。

さらに、監理団体が実習生から実習や日常生活に関する相談や悩みに対するアドバイス・カウンセリングを行う際、これまで時間帯については明記されていませんでしたが、今回の改正では「夜間や休日の対応も想定した体制を組む必要性がある」と記されました。

3-3.実施機関と監理団体の連携を効率化させる

実習生に対する日本語学習のサポートについて「学習サポートを実習実施者がおこなう場合は、監理団体がそのバックアップをする」ことになっていますが、これまでは具体例がなく、バックアップが不十分と感じる実習機関から不満が出ていました。

改正された要領では、監理団体が「日本語講習の教材を用意する」「外部講師を手配する」「日本語学校通学の金銭的サポートを行う」といった具体的な項目が追加されています。このように、実習実施者と監理団体の役割分担が明確化され、連携の効率化が図られたのも「技能実習運用要領」改正におけるポイントです。

4. 技能実習運用要領改正の具体的な内容

技能実習運用要領で改正された内容は多岐にわたります。具体的な内容について、項目ごとに記します。

4-1.技能実習計画関係

○「常勤職員等である旨の誓約書」を提出することで、技能実習責任者、技能実習指導員、生活指導員の常勤性が確認できる書類の提出は原則不要になりました。

○技能実習計画認定申請のときに「技能実習期間中の待遇に関する重要事項説明書」の提出が不要となり、実習実施者が保管することになりました。

○技能実習を中断した後に再開する際の手続きが、下記のように変更されました。

・技能実習を中断した後に再開する際の手続きにおいて、従来の新規認定が不要になり「技能実習計画の変更認定手続」により行えることになりました。
・技能実習を中断した後に再開する場合は「中断した理由及び再開するに至った経緯などを記載した理由書(様式自由)」を提出する必要があります。
・妊娠、出産などを理由に技能実習生が帰国することを希望した場合は「妊娠等に関連した技能実習期間満了前の帰国についての申告書」を保管する必要があります。

4-2.監理団体許可申請関係

監理団体許可申請において、財産的基礎に関する書類として「法人の事業に係る出入金が適正に行われているか確認できるもの」を提出することが追加されました。

4-3.優良な実習実施者および監理団体の基準関係

〇「優良な実習実施者」に関する基準について、下記の考え方が追記されました。

・技能実習生の実技試験の合格率の計算方法において、やむを得ない不受検者に当たらない例
・技能実習生の昇給率において、直近の技能実習事業年度に対象者がいない場合の取扱い

〇「優良な監理団体」に関する基準について、下記の考え方が追記されました。

・直近過去3年以内に適正な実習監理を行っていなかったことを理由として改善命令を受けたことがある場合、項目①Ⅰは加点対象として認められない
・直近過去3年以内に技能実習生からの相談に適切に応じなかったことなどを理由として改善命令を受けたことがある場合、項目④Ⅰは加点対象として認められない
・地域社会との共生に関する具体例など

4-4.監理団体の業務の実施に関するもの

〇監査、訪問指導の頻度における起算月の考え方が記載されました。

〇監理団体と雇用契約がない者を作成指導者として、技能実習計画の作成指導を行わせた場合、名義貸しに該当するおそれがあることが記載されました。

〇帰国旅費の負担および「必要な措置」に関する考え方について、下記が追記されました。

・監理団体が負担する帰国旅費には、技能実習生が出発する空港までの移動費が含まれます。
・帰国のためのPCR検査費用について、技能実習生に費用の負担が困難な事情がある場合「必要な措置」の一環として、監理団体が負担する必要があります。

〇技能実習生からの相談体制について、技能実習を行っている時間帯のみならず、夜間・休日にも適切に相談応需体制を整備する必要があることが追記されました。

〇令和5年6月以降、監理団体の業務の運営に係る規程は、原則、インターネットにより公表する必要があることが追記されました。

〇監理費を預託させた場合の取扱いについて、預託させた金銭から監理費として精算した時点が徴収時点となり、預託額が監理費として精算(徴収)した額を上回った場合、それ以降の預託額の減額などにより実習実施者に返還せずに他の用途に費消した場合には、法律で禁止されている手数料または報酬を受けたものと見なされる場合があることが追記されました。

〇監理事業の業務を委託する際には、委託の範囲を明確に定め、契約書などによる書面での契約が望まれることが追記されました。

4-5.様式の変更

〇技能実習計画認定申請に係る提出書類が変更され、一覧・確認表が更新されました。なお、一部の書類に関しては、過去の申請または届出時から内容に変更がない場合、当該書類を提出した日または申請番号(認定番号)を明示することで、提出を省略することができます。

〇監理団体の許可申請の添付書類一覧表が更新されました。

4-6その他

〇監理団体(企業単独型技能実習の場合は実習実施者)が試験実施機関から技能検定などの合格証書などを受領した場合は、監理団体や実習実施者が保管することなく、速やかに技能実習生本人へ手交するよう追記されました。

〇技能実習指導員の配置について、さまざまな現場に出向いて技能実習を行う場合や交代制勤務の場合などにおいても、認定計画に従って直接指導する体制を整備する必要があることが記載されました。

〇宿泊施設の消火設備、私有物収納設備に関して以下の内容が追記されました。

・火災が発生した際に機能するよう実効性のある場所に消火設備を設置し、日頃から点検すること
・技能実習生の私物の利用では、私有物収納設備を設ける措置を講じているとは認められないこと

〇技能実習生が定期に負担する居住費について、借上物件であっても貸主が監理団体または実習実施者と同視できる場合は自己所有物件に居住させる場合と同じ考え方とすることが明確にされました。

〇以下のいずれかに該当する場合は技能実習生の人数枠における常勤職員として差し支えない旨が追記されました。

・所定労働日数が週5日以上および年間217日以上であって、かつ、週所定労働時間が30時間以上
・雇用保険の被保険者であって、かつ、週所定労働時間が30時間以上

〇技能実習生の妊娠・出産などを理由に技能実習生の意に反して一方的に技能実習を打ち切った場合、またその場合に監理団体がそれを知りながら、何らかの措置を講じていなかった場合は、技能実習計画の認定の取消しまたは監理団体の許可の取消しの対象になることが明確になりました。

5.まとめ

今回の「技能実習運用要領」の改正は、外国人技能実習制度の役割を改めて適正化し、実施者や監理団体がスムーズに運用できるように、技能実習者が日本でより快適にすごせるようにするためのものです。

実習生が日本でスキルを身に付けて祖国へと持ちかえる、という技能実習本来の目的を遂行するためにも、細心の「技能実習運用要領」をしっかり把握しておきましょう。

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