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case1-4価値観的にあり得ない
【私有地で家庭菜園?! ━他人の土地に勝手に植えてはいけません!】

生活関連

2023.12.15

合理的にあり得ない
~キャリアアドバイザー青山智香の解明~第4話

解明

上野東京ラインに揺られ××駅に降り立つと、通勤通学の人々で向かいのホームが込み合っていた。 8月に入り一段と暑さが増したように感じるのは、気のせいだろうか。駅に出入りする誰もが俯きがちに額の汗を拭っている。



この日、青山は茨城県××市に居た。
例の珍事を解明すべく、始発電車で事件現場に向かっている。朝のこの時間でこの蒸し暑さは異常だ。正直、気力をそがれそうになる。
広場に咲く向日葵だけが元気いっぱい太陽を見上げていた。

さて。
今、何が起きているのかいないのか、チンプンカンプンの人も多いだろう。
本件のあらましはこうだ。

主人公はインドネシア人技能実習生のダリヤさん。
ある日突然、自宅アパートの空き地で家庭菜園を始める。
誰の断りもなく……。
野菜たちが無事に(?)芽を出し始めた頃、事件が発覚する。
まずは、第一発見者による解決が試みられる。
だが、何の面識もない人間の接触がまずかったのか、声をかけるも逃げられてしまう。
続いて、大家さんによる待ち伏せ、からの誘導尋問。
しかし、こちらもあっさりと正面突破されてしまう。
─見事な逃亡劇になすすべがない一同。



おそらく、このあたりで警察に通報されてもおかしくないような状況下で、事態を見かねた大家の娘さんから物件管理会社に相談が持ち込まれる。
ざわつく物件管理会社の皆さん…
の中で、この珍事を冷静かつ客観的に把握した職員さんが、容疑者の勤務先に一報を入れる。

ダリヤさん、もしかして、日本語が通じてないんじゃないですか?

こうして、運よく解決の道筋が見えたというわけである。


足早に改札を抜け、ロータリーに並ぶタクシーに飛び乗り、目的地を告げた。
集合場所は、ダリヤさんのアパート前。

「こんな顔合わせ、なかなかないわ。どんなメンツやねん(笑)」

今日は、大家さん、大家の娘さん、第一発見者である近隣住民の方、物件管理会社さん、ダリヤさんが勤務する会社の担当のAさん、そして私の6人でダリヤさんを囲もうとしている。 もちろん、しばくとか、どつくとか、そんな物騒な話ではない。冷静に、事態を把握したい、事情を聞かせてほしい、その一心で集まった面々だ。



━謝罪のために出向く身でありながら、どこか他人事のような冷静さを持っていられるのは、コーディネーターという仕事が板についてきた証拠だと思う。
外国人材と向き合うことは、ちょっと結婚生活と似ている気がする。
元はといえば赤の他人、そんな相手と生活を共にしていくには、主張したり許容したりしながらどこかに妥協点を見出す…そんな作業の繰り返し。文化も価値観も何もかも違って当然なのである。



道路脇の街路樹がなくなり、急に視界が開ける。
丘を下った先に広がる田園地帯に住宅地が点在していた。家々の隙間や通路を覆う草花が野性味を帯び、空き家や人の手が入ってなさそうな土地も所々に見受けられる。
タクシーは、白いアパートの手前で止まった。

ジリジリと照り付ける日差しを避けるように、木の影に人がたむろしている。
皆、時間通りに集合してくれていた。こんな住宅地の一角に、明らかに業種の違うスーツや制服の大人たちが顔を突き合わすなど、なかなかない光景だ。

「皆さん、お世話になっております。キャムテックの青山です」
そう言いながら輪の中に入っていくと、木陰のさらに奥の方でこちらを伺う視線と目が合う。ダリヤさんだ。きっと皆さんとの会話に参加できず、どうしていいかもわからず、ただただ私を待っていたのだろう。

対応策については既に協議済みで、プランターに植え替え、ベランダで育てることになっている。
謝罪が済んだら午後から、二人で道具を買いに行き植え替え作業をする予定だ。



「ダリヤさん、何してるの?大丈夫よ!ちゃんと謝りましょう!!」 不安そうなダリヤさんの腕を引き、輪に戻る。

緊張しているのか、突っ立ったままの彼女に目くばせをしつつ「皆さん、この度はご迷惑おかけしました!」と深々と頭を下げた。

ダリヤさんも見よう見まねでぺこりと頭を下げる。二人ほぼ同時に顔を上げると意を決したのか、たどたどしい日本語で言葉を紡ぎ出す。

「私の国は、みんな家で野菜を育てます。日本は野菜を植えたらいけませんでした。日本語、あまりわからないです。早いですから、難しいです。すみません。知らない人、驚きましたから逃げました。すみませんでした……」

下手なりになんとか謝罪しようとしている姿に安堵する。
こういう場面には何度も出くわしてきたが、言葉が通じる、通じないではなく、気持ちが伝わることが何より大切。
集まった皆さんも、耳を傾け懸命に意図を汲み取ろうとしてくれていた。

「ダリヤさん、物件管理会社の皆さんがおっしゃるように、日本語も聞き取れてないし、状況を理解してなかったようです。彼女の母国であるインドネシアはあまり土地に対する意識もなく、家庭菜園が当たり前の文化の中で生まれ育ってきたので、いけないことをしているという意識がなかったようなんです。こんな形でたくさんの方を巻き込み、ご迷惑おかけしてしまって、本当に申し訳ないです」

改めて事の経緯を説明する。

「ということは、私らが呼びかけたのも『なんや、怖いオジサンが話しかけてくる!』思ったっちゅうことかな」大家さんが、全員の顔をぐるりと見まわす。

「やだ、お父さんったら、名乗りもせずに声かけたの?こんな強面のオッサンが道端で急に話しかけてきたら、そりゃ私でもビビるわぁ!マジ、ウケるー!」

娘さんが大笑いしながら大家さんの肩をバシバシ叩く。
つられて、大家さんもみんなも笑い出した。

どこかぎこちなく漂っていた空気が、瞬時に和んだ。

『娘さん、ホンマありがと!みんな、ありがと!!』合格発表に来た親子よろしく、ダリヤさんの手を強く握りしめていた。



「ダリヤさん、こっちがトマトで、こっちがキュウリですよ」 プランターを指差しながら、ラベルを貼っていく。

「そんで、あっち側に寄せたプランターに植わってるのが、ジャガイモね。もう小さい子たちは植えられないからこれで食べちゃって!」

謝罪を終え、皆さんをお見送りしたのち、二人でホームセンターへ向かった。
程よいサイズのプランターを買い占め、家に戻って大小さまざまに育った苗を植え替えていた。植え替えたばかりの苗には、たくさんの水をやらねばならず、ダリヤさんはじょうろを持って部屋を行き来している。今や、何も知らない野菜たちは収穫の時期を迎え、種から植えたとは思えないほど立派に育っている。

「さすが、農家の娘やなー!」
振り返ると、溢れんばかりに水を汲み、両手でじょうろを抱えたダリヤさんが大きく頷いている。

たぶん、ろくに聞いちゃいない。いや、もしかしたらわかってないかも(笑)
ダリヤさんはせっせと水やりを繰り返している。

ベランダはこの夏、育った野菜たちでいっぱいだ。向こう側に見える田畑の緑も、この水を欲しているかもしれない。



立ち上がり、室内に戻るところでポケットが震えた。洗面台にダッシュして手を洗っていると、震えが止まった。
けっこう長めのコール。誰だろう?
濡れた手でポケットからケータイをつまみだすと、再びブルッと震えて画面が光る。

“(株)××〇〇 人事部長B様”

まさかの九州!
指先から、次の事件の匂いがした。



価値観的にあり得ない
【私有地で家庭菜園?! ━他人の土地に勝手に植えてはいけません!】
おしまい

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