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case2-3症状的にあり得ない
【あなたのかぜはどこから? ―喉の痛みは銀のベンザ!】

生活関連

2024.01.19

合理的にあり得ない
~キャリアアドバイザー青山智香の解明~第3話

フジノヤマイだ!

ボクはフィリピン出身の技能実習生。名前はマシュー。日本が大好きな23歳だ。

初見の皆さんに、自己紹介をしたいところだが、ボクは今それどころじゃない。
来日して1か月、気温の変化に身体が対応できず、風邪をひいてしまった。当初に感じた喉の違和感は、くしゃみ、鼻水へと移行している。会社では田中さん監修の元、鼻うがいと格闘中だ。



土日にしっかり休養を取れば、回復するはず

そう信じて目覚めた土曜日の朝、鏡を見て驚愕してしまった。目が真っ赤に充血していて、心なしか目の奥が痛い。…痛いというかゴロゴロするというか異物感があって明らかに炎症を起こしていたからだ。

これは、一連の風邪の症状の悪化による何かなのか?確かに今朝はいつもより頭がボーっとする。しかし、特段、熱がある感じでもない。そもそも、思い起こせばボクは物心がついてからほとんど風邪など引いたことがない。もちろん持病もないTHE健康体のはずである。

「おかしいな、なんで目なんかに…?」

出窓の横の戸棚の薬箱を漁ると、フィリピンから持ってきた市販の目薬が入っていた。ちょっと目が疲れた時にいつもさしている目薬だ。カーテンの隙間から外が見える。

部屋の喚起もついでにやっておこう。
手に持った薬箱をソファーの小脇に置き、窓を開けると、春の日差しが辺り一面、降り注いでいた。洗濯物を干したら図書館に行きたい。でも、マスクはしているけど鼻をぐずぐずさせ、くしゃみを連発しているこんな姿じゃ、誰から見ても予防のマスクでないのは明らかだ。おまけに目まで真っ赤になって、こんな容姿で外を出歩いていたら病原体扱いされかねない。

考えがまとまらぬまま、ソファーに寝ころび、目薬を開封した。新品の目薬は量の加減が難しい。強く押しすぎれば予定外の液量に目がおぼれてしまう。慎重に右目の上でボトルを傾け、少しだけ人差し指に力を入れてみた。



読書が趣味のボクは、休日は専ら、近くの図書館に通っていた。土日の図書館は、家族連れや、ちびっ子たちがたくさん居て、司書さんによる読み聞かせが行われている。
本を読むのもイイし、図鑑や写真集を眺めるのもイイのだけど、この時間は子どもたちが目を輝かせている横でボクもこっそり絵本や紙芝居を楽しませてもらうのだ。



各市町村にある図書館規模の蔵書では、いくら外国人の住民が増えてきたといっても、まだまだ外国語コーナー、英字本は少ない。それでもボクが図書館に通う理由は、単に読書好き、本の匂いや図書館の空気感が好きというだけでなく、1番は、早く日本語に慣れたいという思いからだ。
特に、子ども向けの絵本は、簡単な日本語の勉強にぴったりで、道徳的な考え、勧善懲悪の世界観も好みだし、日本語の響きやストーリーに沿ったイラストも可愛らしく、毎度のことながら子どもたち以上に真剣に見入ってしまう。

先週の読み聞かせは、かぐや姫だった。
どうやら、竹取物語という古典作品がベースになっていて、現存する日本最古の物語らしい。人間が追い求めてやまない究極の理想ともいえる不老長寿。時に、不老不死の〇〇的な発想、それに類する伝説は古今東西存在するものの、不死(薬)と富士(山)が掛け合わされた、なんともウィットに富んだストーリーであった。



育ての親である、お爺さん、お婆さんに別れを告げ、月に還っていくかぐや姫。
帝の元には不死の薬が届けられる。
「こんなもの、何の意味がある!もう、かぐや姫には逢うことはできんのだ!!」
涙に暮れる帝は駿河の山の山頂で薬を燃やすよう命じた。

━その山を「ふじの山」とは名付けける。その煙、いまだ雲の中へ立ち昇るとぞ言ひ伝へたる。


薬液が目全体に行き渡るようそっと目を閉じると、子どもたちの拍手と、表紙のおじいさんの絵が浮かんだ。溢れ出た薬液は目尻をつたい、耳の脇を通って、後頭部に流れ落ちた。

この気持ち悪い液体の感触。最近味わった鼻うがいの次に気持ち悪い。

「ああ、そうか…」

連日の喉の違和感、くしゃみ、鼻水、目の充血。口、鼻、目ときたら、次は…。次は、もう、頭しかない。そういえば、今朝は頭の奥がぼんやりする気がしてたんだ。

想像した途端、力が入らなくなった。

ボクはまだ若い。若いからこそ病気の進行や転移は早いと聞く。喉から入った得体のしれないウイルスがボクの身体を蝕んでいる。道理でイマイチ薬も効かないし、温まったところでくしゃみも鼻水も止まらないわけだ。

この妙な頭のふわふわ感は、もう脳まで………。

今更、気づいても遅かった。
こんなになるまで放置していた自分を嘆いた。
こんなの、もう、とっくに手遅れだ。
ボクは…

ボクは、フジノヤマイだ!

深い深い記憶の奥底で、富士山の頂が見えた気がした。



つづく

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