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case1-1価値観的にあり得ない
【私有地で家庭菜園?! ━他人の土地に勝手に植えてはいけません!】

生活関連

2023.11.24

合理的にあり得ない
~キャリアアドバイザー青山智香の解明~第1話

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その日、青山智香はオフィス近くのカフェにいた。



打ち合わせを終えたばかりのテーブルには、まだ人の気配がある。外はいつまでたっても明るく、時が止まったような気さえする。
アフタヌーンティーを楽しむマダムたちの軽妙なトークと共に始めた打ち合わせは、気づけばハンバーグが焼ける香ばしい匂いとジュージュー弾ける肉汁の音に代わっていた。

「やばぁ、お腹減ったー!今なら、ご飯、お茶碗三杯食べれそ」

通り越したと思っていた空腹が急激に腹の底から戻ってきた。
そういえば今日は朝ごはんに持ってきたおにぎりを、胃に収めたきりになっていたんだっけ。



青山の勤める会社は大手総合人材サービスを行う企業で、彼女自身は海外事業部として外国人材を雇用する企業や雇用される側の外国人が抱える課題を解決、サポートする業務に携わっている。

根っからの世話好き、生粋の関西人、とにかく人と関わることが大好きな彼女にとって、今のこの仕事は天職である。

しかし、今日の午後は異常に忙しかった。

これからオフィスに戻り、手元の業務を整理して、明日の会議資料も作成しておかねばならない。こうして予想外に打ち合わせが長引くことは慣れっこでも、抱えているタスクが減るわけではない。

「まあ、それがやりがいってもんなんだけど…」

さっきから目の前を通過するデミグラスソースをまとった焦げ茶色の塊に、幾度となく心を奪われそうになりながらも、気を取り直して手元に視線を落とす。
読みかけの資料の隙間からケータイの画面が光り、アプリごとにメールやチャットなどの通知を知らせてくれている。
どうやら打ち合わせ中に何件か着信もあったようだ。


株式会社〇〇〇 担当A様

着信はいずれも茨城にある取引先企業からの電話だった。
今日は珍しく留守電まで入っている。
急を要する話だろうか?
経験上、だいたいこんな時はクレーム対応が多い。
良からぬ事態を想像しつつ、まずは留守電を聞いてみることにした。

青山さん!何度も電話、すみません。
実は、ダリヤさんがアパートの庭で家庭菜園をやっていて……………
不動産会社の方が訴え……………


後半は、ほとんど聞こえなかった。
いや、違う……。
担当のAさんの声も、隣の家族連れの会話もちゃんと聞こえている。
あまりのパワーワードに、思考が追い付かなかったのだ。



ダリヤさんといえば、世界一の群島国家&農業大国インドネシアはジャワ島出身の技能実習生。半年前に茨城県のとある企業に就職していった、くっきりとした目元と焼けた肌が眩しい、あの女性…。

けど、なんでまた、人様の敷地で家庭菜園なんてことを。
自分の土地ではないアパートの庭で園芸してたら、それはナニ菜園になるわけ?!

考えれば考えるほど、めまいがしてきた。
だが、この珍事、きっと大家さんや、担当のAさんだけでなく取引先企業の皆さんも驚愕したに違いない。

早急にこの事態を解明しなければ。

冷たくなったコーヒーを飲み干し、席を後にした。



デスクに戻ると、もう大半のメンバーが帰宅していた。

まずは状況を整理する。
私たちは〔(我が)家の庭で野菜などを育てること〕を〔家庭菜園〕と呼ぶ。
眼前の事態を見たままに説明すれば、今回の珍事も月並みの“それ”である。
しかし〔(他人)の家の庭で野菜を育て〕ていたとしたら、それは一体…。

検索窓に〔他人の土地〕と入れてみると、5つ目に〔勝手に畑〕と予測ワードが表示された。
色々な候補がある中で最も近しい内容と思われる。

他人の土地にまつわる事件は案外多いんだな…なんて考えながらも、ひとまず〔他人の土地 勝手に畑〕をクリックしてみた。

他人の土地の無断使用は、土地の所有者の権利を侵害する行為で、不法行為(民法709条)に基づき損害賠償請求をすることができ…(中略)…他人の土地を勝手に使用する行為は、刑法上の不動産侵奪罪(刑法235条の2)に該当する可能性があり…

収穫した野菜等を返還し、すでに消費した分や、過失によって毀損したり収穫を行った分の代価を所有者に返還する必要が生じる(民法190条1項)


ざっと検索しただけでも、家庭菜園なんていう呑気な雰囲気には似ても似つかないおどろおどろしい言葉が並んでいた。
要するに、茨城ののどかな住宅街の一角でド級の犯罪が起きている、そんな状況だ。


━外国人材の活用、雇用のハードルは、就労面の不安だけでなく生活面の問題を孕んでいることにある。

よって、まさに今起きているような事態を懸念し、外国人労働者の雇用に躊躇する企業も多い。だが、日本人労働者であれば問題が起きないかといえば、無論、その限りではない。

例えば昨今、就労シーンにおいて○○ガチャなどという言葉があるように、たとえ日本人同士であっても雇用側の企業と労働者間の問題は尽きない。
同様に、外国人雇用の場合、国籍、文化、価値観の違いによるハードルは避けては通れず、いずれも様々な折衝と相互理解により、双方、納得させていくしかないのである。

こんな時に活躍するのが青山たちのような、企業と外国人労働者をつなぐ、アドバイザー、コーディネーターといったサポート役、というわけである。

このサポート役というのが骨の折れる仕事で…ということは、また次回以降に持ち越すとして、外国人雇用だけが特筆して大変、難しいといったネガティブなイメージで括られることのないよう勤め上げること、これが青山にとってのひとつの目標となっている。




「もう、こんな忙しい時に、何してくれてんねん。実習生たちには『何事も自己判断で行動しちゃダメよ』っていつも口を酸っぱくして言うてるのに。こんなんもう、立派な警察沙汰やんかー!」

ブツブツ悪態をつきながらも、次には茨城行きの電車の時間を調べていた。

つづく

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