特別永住者とは?永住者との違いや雇用するメリットを徹底解説
2025.10.23
外国人材の採用を検討する企業にとって「特別永住者」と「永住者」の違いは非常に重要です。この二つの在留資格は、一見似ているようで、法律上の根拠や雇用時の手続きに大きな違いがあります。本記事では、両者の違いを明確に解説します。この記事を読めば、特別永住者雇用に関するあらゆる疑問が解消し、採用活動をスムーズに進めるための具体的な方法が分かります。
CONTENTS
- 1. 特別永住者と永住者の違いとは?6つの視点で徹底比較
- 2. 特別永住者・帰化との違い
- 3. 永住者との違いを6つの視点で徹底比較
- 4. 特別永住者を雇用する際の4つのメリット
- 5. 永住者と帰化との違い
- 6. 特別永住者に関するよくある質問と回答
- 7. 特別永住者と永住者の違いを理解して、スムーズな採用活動へ
1. 特別永住者と永住者の違いとは?6つの視点で徹底比較
特別永住者や永住者の在留資格は、一見似ているようで実際には大きく異なります。特に雇用を検討する企業側にとっては、制度の違いを正しく理解しておくことが重要です。
本記事では、特別永住者と永住者の違いを「法的な位置づけ」「取得条件」「証明書の違い」「再入国の取り扱い」「退去基準」「雇用手続き」の6つの視点から徹底解説します。
1.1永住者とは
永住者とは、在留資格の種類の一つです。他の在留資格と大きく異なる点は、日本での活動や在留期間が制限されないことです。例えば、日本で働く場合に職種や業種の制限がなく長期滞在がしやすくなります。永住者の在留資格を取得する場合は、出入国在留管理庁で永住許可申請の手続きが必要になります。
では、ここで、永住者に関わる言葉を整理しておきましょう。
・永住者:在留資格の名称
・永住許可:出入国管理及び難民認定法第22条により法務大臣が外国人に在留資格「永住者」を許可すること
・永住権:外国人が在留期間を制限されることなく滞在国に永住できる権利のこと
2. 特別永住者・帰化との違い
続いて、永住者とよく間違えやすい「特別永住者」と「帰化」との違いを確認しましょう。
2-1.特別永住者
特別永住者とは、1991年11月1日に施行された「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」に定められた在留資格を持つ外国人のことです。特別永住者の対象は、日本が第二次世界大戦で敗戦した際にサンフランシスコ平和条約により、日本国籍を失った人たちです。主に、韓国人、朝鮮人、台湾人が取得している在留資格です。また、特別永住者の子孫や、両親のどちらかが特別永住者である場合は、特別永住許可を申請できます。なお、特別永住者は、在留カードの交付はなく、特別永住者証明書が交付されます。
2-2.特別永住者のメリット
歴史上の特別な背景をもとにして永住権が与えられている特別永住者には、他の在留資格にはないさまざまなメリットがあります。まず、特別永住者は在留期限を気にする必要がありません。無期限の在住が認められているため、他のビザのように更新を忘れると不法滞在になるような事態は発生し得ないのです。そのうえ就労制限もないため、違法でない限りは好きな仕事に好きなだけ従事することができます。役所での公的手続きも日本人同様に行えますし、その他の手続きについても他の外国人に比べれば格段に簡単です。また特別永住者は外国人雇用状況の届け出の対象からも除外されており、手続き忘れを心配しなくて済むという雇用側のメリットもあります。
2-3.特別永住者が注意すべき点
日本に在留する間は多くの優遇措置が受けられる特別永住者ですが、ひとたび日本を出国し、国外に滞在する際には注意が必要です。再入国許可を得ずとも日本に戻ってこられるのは2年までです。これを「みなし再入国許可」といいます。有効期間は延長できないため、2年以内に再入国しない場合は特別永住者の在留資格を失う可能性があります。
2-4.帰化
帰化とは、外国人が日本国籍を取得することです。帰化許可後は日本人として生活できるようになります。帰化の場合は、主に以下の内容ができるようになります。
・日本の戸籍が作れる
・日本国籍になるので在留資格が不要になる
・母国への退去強制がなくなり日本国内での所轄になる
・参政権が持てる
・日本のパスポートになる
一方、永住者は、国籍を変えずに「永住者」の在留資格を取得することです。日本では二重国籍が認められていないため、帰化する場合は元の国籍を手放すことになり、永住者は国籍の変更は不要です。
2-5.特別永住者も帰化できる
特別永住者も希望があれば帰化は可能です。ただし、それにはいくつかの要件があります。たとえば、両親と一緒に帰化する、もしくは両親のいずれかが日本国籍を有している場合を除き、未成年者は帰化できません。20歳以上かつ母国における成人年齢に達している必要があります。また、素行が不良であったり、威力妨害など憲法違反を企てていたりする場合も難しいでしょう。生活保護などに頼らず、独立した生計を営めることも要件です。きちんと税金を納め、法に違反することもなく、日本国民として問題のない人物であることが求められます。また、日本は原則として二重国籍を認めていないため、母国の国籍を持っている人は離脱手続きも必要です。

3. 永住者との違いを6つの視点で徹底比較
3-1. 特別永住者と永住者の定義と法律上の違い
法的根拠の違い
- ● 特別永住者:入管特例法に基づく在留資格。
第二次世界大戦前から日本に居住していた在日韓国・朝鮮人およびその子孫に与えられる特別な地位です。 - ● 永住者:出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づく在留資格。
日本に長期滞在し、所定の条件を満たした外国人に対して与えられます。
取得の考え方の違い
- ● 特別永住者:歴史的背景に基づいた「身分の継承」が主な根拠であり、原則的に審査なしで資格が与えられるケースが多い。
- ● 永住者:下記のような厳格な審査をクリアする必要があります。
- ○ 素行が善良であること
- ○ 独立した生計を維持できること
- ○ 日本の国益に適合すること
- ○ 素行が善良であること
詳細はこちらの記事をご確認ください。
(在留資格「永住者」とは? 取得要件と帰化・特別永住者との違いを解説)
3-2. 取得条件の比較
特別永住者の取得条件
- ● 1991年11月1日時点で、旧入管法下の特定在留資格(協定永住など)を持っていた者、またはその子孫。
- ● 原則として出生によって取得される「身分型」の資格です。
永住者の取得条件
- ● 原則として10年以上継続して日本に在留していること(配偶者の場合は短縮あり)
- ● 素行が善良であること
- ● 安定した収入と生活基盤があること
- ● 公共の負担にならないこと
- ● 税金や保険料を適切に納めていること
このように特別永住者は「過去の歴史的事情」により在留が認められた人々、永住者は「現在の実績と信頼」によって在留が許可された人々、と整理できます。
3-3. 特別永住者証明書と在留カードの違い
外国人の身分や有している在留資格などを確認する方法として、在留カードがあります。在留カードは永住者を含む中長期に渡って正規に日本に滞在する外国人に対して発行されるものですが、特別永住者には発行されません。
その代わりに、特別永住者には在留カードと同様の役割を持つ特別永住者証明書が発行されます。そのため、永住者が特別永住者証明書、もしくは特別永住者が在留カードを所有している場合は偽造の疑いが出てきます。在留カードや特別永住者証明書は採用時の在留資格確認で使用しますので、よく覚えておきましょう。
3-4. 再入国許可の有効期間と手続き
再入国許可の有効期間
- ● 特別永住者:最長6年
- ○ みなし再入国許可の場合は2年まで
- ○ みなし再入国許可の場合は2年まで
- ● 永住者:最長5年
- ○ みなし再入国許可は1年まで
手続きの違い
- ● 特別永住者:再入国時の審査では、パスポートと特別永住者証明書の確認のみ。上陸拒否事由の審査なし。
- ● 永住者:上陸拒否事由に該当していないかの審査が行われる。過去の犯罪歴等によっては再入国できないケースも。
まとめ:
特別永住者の方が、再入国に関して優遇措置を受けている点が顕著です。
3-5. 強制退去(強制送還)の基準
特別永住者:
- ● 強制退去の対象は非常に限定的です。
内乱罪、外患誘致罪など、国家の安全に関わる重大な犯罪に該当する場合に限られます。 - ● 一般的な犯罪や違法滞在では、原則として強制退去の対象とはなりません。
永住者:
- ● 入管法第24条に基づき、以下のような理由で強制退去の対象となることがあります。
- ○ オーバーステイ(在留期限切れ)
- ○ 不法就労
- ○ 1年以上の懲役・禁錮刑に処された場合
- ○ 公共の秩序を乱す重大な違法行為
- ○ オーバーステイ(在留期限切れ)
- ● 約20項目以上の退去理由が規定されています。
まとめ:
特別永住者は法的保護が厚く、永住者は相応の責任と遵法意識が求められる在留資格であることがわかります。
3-6. 雇用上の手続きの違い
在留カードの確認義務
- ● 特別永住者:雇用時に在留カードの確認義務はありません。
→ 事業主の確認作業が不要となり、事務負担が軽減されます。 - ● 永住者:在留カードの確認が法的に義務付けられています。
→ 雇用契約締結時に有効期限や在留資格の確認が必要です。
外国人雇用状況の届出
- ● 特別永住者:ハローワークへの「外国人雇用状況届出」の対象外。
- ● 永住者:雇用時・離職時にハローワークへの届出が必要です。
詳しくは以下の記事をご参照ください。
[外国人労働者の受け入れ制度とは?雇用のメリット・デメリットを解説]
[最新版:外国人雇用のメリット・デメリットと就労可能なビザを解説]

4. 特別永住者を雇用する際の4つのメリット
日本国内で外国人材の雇用を進める企業にとって、「特別永住者」は非常に安定性が高く、実務負担が少ない人材として注目されています。ここでは、採用担当者や人事担当者が押さえておきたい、特別永住者を雇用する際の4つのメリットを具体的に解説します。
4-1. 就労制限がない
特別永住者には、他の在留資格(例:技術・人文知識・国際業務、特定技能、留学など)に見られるような職種や業種に関する就労制限が一切ありません。通常、外国人を雇用する際には「在留資格の範囲内で働かせなければならない」という制限がつきものです。
例えば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人は、工場ライン作業や接客業などに就かせることはできません。
しかし、特別永住者であればそのような制限がなく、製造、営業、事務、接客、IT開発など、あらゆる職種に配置可能です。この自由度は、企業の組織構成や人員配置において大きな柔軟性をもたらし、欠員補充や急な部署異動にも柔軟に対応できます。
結果として、人材確保の選択肢が広がると同時に、外国人採用におけるリスクも大きく軽減されます。
4-2. 雇用時の在留カード確認義務の適用除外
外国人を雇用する際、事業主は在留カードの確認義務を負っています(雇用対策法・出入国管理法に基づく)。これは「不法就労助長罪」を防ぐための仕組みですが、特別永住者の場合、この義務は適用除外とされています。特別永住者は「特別永住者証明書」という別の身分証明書を所持しており、在留カードは発行されません。そのため、企業は在留資格の確認作業やカード更新の管理から解放されます。
この確認作業の簡素化は、人事・採用担当者にとって大きな利点です。
- ● 雇用時に確認すべき書類が限定的
- ● 在留期限や更新日を管理する必要がない
- ● 不備による罰則リスク(例:不法就労助長罪)を回避できる
こうした背景から、特別永住者は「採用の手間が少なく、法的リスクも低い外国人材」と言えます。
※詳細は [外国人の在留資格とは?種類一覧・ビザとの違い・就労可否を解説]
4-3. 外国人雇用状況の届出義務の適用除外
外国人を雇用・離職させた際には、事業主がハローワークに対して「外国人雇用状況の届出」を行うことが法律で義務づけられています(雇用対策法第28条)。しかし、この届出義務も特別永住者には適用されません。これは実務上、以下のようなメリットをもたらします。
- ● 雇用時・退職時の書類提出作業が不要
- ● ハローワークへの届出漏れによる罰則リスク(30万円以下の罰金)を回避
- ● 入退社のたびに行っていた報告業務の工数削減
このように、特別永住者を採用することで、人事部門の事務作業を軽減しつつ法令順守が保てる点は大きな強みです。特に、複数拠点で多数の外国人を雇用している企業にとっては、管理業務の簡素化が生産性向上に直結する可能性もあります。
4-4. 通称名の登録と公的書類への記載
特別永住者は、法的には外国籍のままですが、日本式の通称名(例:山田太郎)を住民票やマイナンバーカードに記載することが可能です。
これは企業にとって、次のような実務的利点があります。
- ● 社会保険加入、給与計算、住民税手続きなどにおいて、日本人従業員と同じように処理できる
- ● 通称名で銀行口座が開設でき、給与振込がスムーズ
- ● 社内システム上の氏名管理が一貫して運用可能
また、取引先とのコミュニケーションや顧客対応の場面でも、日本語の氏名を名乗ることで違和感なく受け入れられるケースが多く、業務上の摩擦も最小限に抑えられます。
このように、事務手続きの簡便さと職場での円滑な人間関係形成という2つの観点から、通称名の活用は企業にとって大きなメリットとなります。
5. 永住者と帰化との違い
帰化とは
帰化とは外国人が日本国籍を取得し、日本人になることを指します。その際、日本では二重国籍が認められていませんので、帰化にあたって外国人は出身国の国籍(保有していれば他の国籍も)を失うことになります。
生まれた国は違えども日本人になるわけですので、当然ながら権利は日本人と同等です。日本のパスポートが発行され、選挙権も与えられるので選挙で投票することも可能になります。
永住者との違い
国籍を変更し日本人として日本に在留する帰化に対して、永住者は外国籍のまま日本に在留するところが大きな違いです。日本に住んでいるなど、就労の制限という点ではどちらであってもそこまで変わりません。
ただし、例えば将来的に母国に帰国する場合、永住者は国籍変更がないのでそのまま帰国できますが、帰化は母国への帰化手続きが必要です。再度の帰化申請でも国によっては日本よりも高いハードルが設定されているケースもあります。
帰化は人生を左右するほど高いリスクのある行為でもあるので、自社都合で安易に帰化をすすめることは絶対にやめましょう。
詳しくはこちらの記事をご確認ください。
【外国人の在留資格】永住権から帰化について

6. 特別永住者に関するよくある質問と回答
6-1 Q1. 特別永住権は何世代まで引き継がれますか?
A:特別永住権は世代制限がなく、子孫が続く限り引き継がれます。
出生時の申請手続きが必要ですが、制度上の制限はありません。
6-2 Q2. 特別永住者の国籍はどこですか?
A:日本国籍ではありません。主に韓国・朝鮮籍の方が多いです。
日本国籍を取得するためには、別途「帰化申請」が必要です。
6-3 Q3. 雇用する際に確認すべき書類は何ですか?
A:在留カードの提示は不要ですが、特別永住者証明書の確認が一般的です。
また、通称名を使用している場合は、住民票やマイナンバーカードも確認書類として有効です。
7. 特別永住者と永住者の違いを理解して、スムーズな採用活動へ
特別永住者は、歴史的な背景により認められた極めて限定的な在留資格であり、永住者とは異なる法律・制度が適用されています。たとえば、就労制限がない、在留カード確認や届出義務が不要、通称名の使用による事務負担の軽減などが挙げられます。こうした理由から特別永住者の雇用は、法的リスクが低く、実務負担も小さいという大きな利点を企業にもたらします。
こうしたことから外国人採用を本格化させたい企業、人材確保に課題を抱える人事担当者にとって、特別永住者は積極的に採用を検討すべき対象であることがわかりますね。
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