【最新版】外国人雇用のメリット・デメリットと就労できるビザを解説
2024.07.09
CONTENTS
1.はじめに
近年、人手不足の解消策として外国人雇用の必要性が高くなっています。その高まりと比例して、初めて外国人労働者を雇用する際にはどのような体制で受け入れたらいいのか、疑問点も多く出てくるでしょう。
そこで本記事では、外国人雇用の動向とメリット・注意点と併せて、就労ビザ、採用フローについて解説します。
2.外国人雇用の動向
現在、日本での働き手として、外国人労働者が存在感を増しています。厚生労働省が発表した『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)』によりますと、外国人労働者数は2,048,675人で前年比225,950人増加し、届出が義務化された平成19年以降、過去最高を更新しました。対前年増加率は12.4%と、前年の5.5%から6.9ポイント上昇しています。
国籍別では、ベトナムが最も多く518,364人(外国人労働者数全体の25.3%)、次いで中国397,918人(同19.4%)、フィリピン226,846人(同11.1%)の順です。
在留資格別では、「専門的・技術的分野の在留資格」が対前年増加率としては最も大きく595,904人、前年比115,955人(24.2%)増加しました。次いで「技能実習」が412,501人、前年比69,247人(20.2%)増加、「資格外活動」が352,581人、前年比21,671人(6.5%)増加、「身分に基づく在留資格」が615,934人、前年比20,727人(3.5%)増加しています。一方、「特定活動」は71,676人、前年比1,687人(2.3%)減少しています。
(出典:厚生労働省『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和元年10月末現在)』)
内閣府発表のデータでは、就業者全体に対する外国人労働者の構成比が2008年時点では0.8%だったところ、2018年には2.2%と10年間で倍以上の増加を見せています。
(出典:内閣府『政策課題分析シリ-ズ18企業の外国人雇用に関する分析―取組と課題について―』)
その他、インバウンド需要の拡大やITエンジニアの需要増があり、外国人労働者を積極的に採用する動きは今後も拡大していくでしょう。
在留資格別では、「身分に基づく在留資格(日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・永住者・定住者)」が最も多く、外国人労働者数全体の30.1%を占めています。
外国人労働者が増加している背景としては、日本政府が少子高齢化による人手不足の対策として、積極的に外国人労働者の受け入れや就労の拡大を推奨していることがあります。
特に、特定技能での受け入れ促進や留学生の日本企業への就職支援の強化、高度外国人材の受け入れは、日本政府が主導している取り組みです。
一方、日本での就労を積極的に望む外国人にとっては、労働環境や生活環境を理由に日本を就労国として選ぶケースもあります。
3.外国人雇用のメリット
企業が外国人労働者を雇用することで得られるメリットをご紹介します。
- 人手不足の解消
- コストの最適化
- 助成金の利用
- 訪日外国人への多言語対応
- 社内グローバル化による新たな発見
- 海外進出への足掛かり
- 文化や習慣の違い、コミュニケーションの難しさ
- 外国労働者ならではの手続きやルールがある
- 安価な労働力の対象ではない
- 外国人労働者に対するサポート体制
- ビザ査証:日本入国時に提示する入国許可証。入国審査後は無効になる証明書
- 在留資格(ビザ):日本で在留するための活動内容を認める資格。就労できる在留資格を通称、就労ビザという
- 法令違反で刑に処されたことがある
- 犯罪歴などがあり素行が悪い
- 過去に強制退去となったことがある
- 銃や刀剣などを不法に所持
- 麻薬などの常用者
- 出国命令制度を利用して出国
- 永住者……法務大臣から永住許可を受けた者
- 定住者……法務大臣が一定の理由を考慮して一定の期間の居住を認めた者
- 日本人の配偶者等……日本人の配偶者や子・特別養子など
- 永住者の配偶者等……永住者の配偶者や子など
- 文化活動……収入が発生しない学術・芸術上の活動を行うための在留資格
(例)日本文化の研究者など - 短期滞在……スポーツや観光、親族に会うことなどを目的とした90日以内の滞在に認められる在留資格
- 留学……教育機関で教育を受けることを目的とした在留資格
- 研修……日本の公私の機関に受け入れられ、技能などを習得するための在留資格
- 家族滞在……「教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能2号、文化活動、留学」の在留資格をもって在留する者の扶養を受ける配偶者または子のための在留資格
- ウェブサイトやSNS等、自社で募集をかける
- 大学や専門学校から外国人留学生を紹介してもらう
- 外国人従業員や知り合いから紹介してもらう
- ハローワーク・外国人材の派遣・紹介会社や監理団体などを通じて採用をする
メリット1 :人手不足の解消
まず挙げられるのが人手不足の解消です。若い人材の確保が難しい業種にとっては、外国人材も採用の対象とすることで求職者の母数が大きくなり、望む人材に出会える可能性が高くなります。
メリット2 :コストの最適化
外国人材を採用の対象とすることで母数が大幅に増え、求人期間の短縮が期待できます。実現すれば、求人コストの圧縮にもつながるでしょう。
メリット3 :助成金利用
外国人を受け入れる際に利用できる助成金があります。国だけでなく自治体が独自で実施しているものもあるため、利用できる制度を有効活用するといいでしょう。
メリット4 :訪日外国人への多言語対応
外国人労働者は母国語に加え、日本語や英語なども話せるマルチリンガルであることも珍しくありません。政府は観光を国の政策の一つに掲げており、日本を訪れる外国人旅行客の数は増加の一途をたどっています。その中で、多言語対応の需要はさらに高まっていくでしょう。外国人の従業員が職場にいることで、その国の文化や価値観を踏まえたスムーズな接客が可能となります。
メリット5: 社内グローバル化による新たな発見
外国人労働者は、日本人とは違った独自の背景を持っています。そのような人材が社内にいることで、その国特有の文化や知識、技術などから新たな発見やアイデアが生まれ、事業領域が新たな発展を見せる可能性もあるのです。
メリット6 :海外進出への足掛かり
海外へのサービス展開やグローバル化を検討している企業にとって、現地の法律や習慣、言語の問題は大きな壁です。そこで、進出を予定している国をよく知っている外国人従業員がいれば、言語面や文化面などで有利といえます。海外ビジネスの展開を予定している企業にとって、関連する国の言語や習慣を熟知している外国人材の雇用は必須でしょう。
4.外国人雇用の注意点
外国人雇用が増加する一方で、外国人雇用特有の難しさも存在します。ここでは、外国人労働者を雇用する際の注意点を解説します。
注意点1 :文化や習慣の違い、コミュニケーションの問題
文化や習慣の違いを理解していないと、思わぬトラブルにつながることがあります。悪気がなくともお互いに不愉快になってしまうことや、場合によっては法律問題に発展することもあるでしょう。また、日本は察しの文化といわれますが、多くの外国人にとっては理解が難しく、日本語の理解度によっては会話そのものが成り立たないことも考えられます。具体的な指示を現場に周知しておけば、行き違いをなくしトラブルを未然に防げるでしょう。日頃から相手の文化への理解を心掛け、尊重と柔軟な対応を意識することが大切です。
注意点2 :外国労働者ならではの手続きやルールがある
外国人労働者受け入れの際は、雇用に関する手続きや就労ルールなどの知識を習得する必要があります。外国人の受け入れに精通した担当者がいない場合は、外国人材の紹介専門会社や、外国人の雇用に詳しい行政書士に相談して解決しましょう。
注意点3 :安価な労働力の対象ではない
さまざまな法整備がなされ、優秀な人材として認識され始めている外国人労働者ですが、「安価で労働環境が多少悪くても働いてもらえる」と考えている企業もまだまだあるようです。日本人に不人気の職場は労働環境が厳しいことも多く、不足する労働力を補うために外国人を雇用しようとするところもあります。
まず、日本人と同様に最低賃金は順守しなければなりません。これを無視することは違法となります。また昔とは違い、日本とアジア各国の平均賃金の差は狭まりつつあります。
さらに「技能実習生」においては、給与の他に監理団体や送り出し機関などへの監理費用が発生することを理解しておかなければなりません。
注意点4 :外国人労働者に対するサポート体制
外国人の雇用をスムーズに行うためには、受け入れ先企業に十分な支援体制があるかどうかが重要になります。具体的には、以下のような支援が求められます。
初めて日本にやってくる外国人は、生活など慣れないことばかりです。仕事に専念してもらえるように、管理部門や現場でのサポートが欠かせません。また精神的なケアも必要でしょう。いまだに外国人労働者に対する差別やいじめなどの問題があります。言葉が通じず暴力で指導をしたり、暴言や差別用語で精神的な攻撃をしたり、宗教上の行為を不当に制限したりと、外国人労働者からの相談は後を絶ちません。
また、習慣や文化の違いによるトラブルでよくあるのは、時間や生活上の優先順位についてです。日本では、遅刻や欠勤に関する規律、組織やタスクなどを重要視する傾向があります。一方で、時間に対してルーズなのんびりした国民性の国もあれば、家族との時間を確保するために残業をしない・休暇を取るといった、仕事よりも家族を優先する価値観の国もありますし、給与分の仕事以上はしなくて良いという考え方の国もあります。このように、労働時間や賃金交渉などでギャップが生じる可能性が往々にして存在するのです。
しかしこれらはあくまで傾向であり、決めつけるべきものではありません。また、文化や習慣、価値観の違いを理解した上で関係を構築する必要があるのは、異文化交流の基本です。
面接や試用期間で本人自身の考えや習慣、文化の違いなどを把握し、業務に対して適正かどうかを判断しましょう。
5.外国人を雇用できる就労ビザとは
在留資格とは「日本に合法的に滞在するための資格」のことを言い、一定の身分や地位があるということを認めた「入管法」における法的根拠を持つ資格です。
慣例的に在留資格を「ビザ」と呼ぶことがありますが、本来ビザと在留資格は別物です。
在留資格には29種類あり、目的に合わせた在留資格を取得することによって、許可された期間まで日本に滞在し所定の活動を行うことが可能となります。
外国人労働者が必要とする就労可能な在留資格は、就労に制限のない身分系の資格4種類と、就労内容に制限のある資格19種類です。身分系の在留資格には、永住者の他に日本人や永住者と結婚した場合に取得できる資格などがあります。具体的には次章でご説明します。
5-1.在留資格取得の要件
在留資格取得要件は在留資格ごとに異なりますが、基本的に日本国籍を取得していない人は取得対象者となります。ただし、以下に該当する人物は、そもそも入国許可が下りないため、海外現地の外国人材を雇用する際には注意が必要です。5-2.在留資格の種類
在留資格は大きく分けて、活動内容や在留期間などの制限を受ける在留資格(活動資格)と活動制限の少ない身分または地位に基づく在留資格(居住資格)の2種類があります。就労ビザは前者に含まれますが、活動資格の中には就労が認められていないものもあります。外国人労働者を雇用する際には、活動内容に合った在留資格を取得しているかどうか確認しておきましょう。
居住資格 | 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者 |
活動資格 | 外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習、文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在、特定活動 |
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5-2-1.就労に制限のない在留資格
地位や身分に基づく在留資格では、就労は制限されていません。日本人と同様に職業の選択の自由があり、どのような職業に就くことも可能です。
5-2-2.原則として就労できない在留資格
下記の在留資格は、原則として就労することができません。外国人雇用の際には注意が必要です。
ただし、文化活動・留学・家族滞在の在留資格に限っては、「資格外活動の許可」を受ければ一定の範囲内で就労が可能です。上記資格を持った外国人の応募があったときには、必ず資格外活動の許可を得ているかを確認するようにしてください。
5-2-3.ケースによって就労可能な在留資格
特定活動は、法務大臣が個々の外国人に対して活動を指定して認める在留資格です。ワーキングホリデーや、外交官の家事使用人なども含まれます。活動内容にはさまざまなパターンがあり、一概に就労できる在留資格とは言えません。
外国人を採用する場合は、「その在留資格が就労可能であるか」を念頭に、就労指示書の内容をよく読み「就労できるか・できないか」「どの範囲で就労できるのか」といった点の確認をしましょう。確認の仕方が分からなければ、採用以前に出入国在留管理庁へ問い合わせてください。
5-2-4.就労ビザまとめ
以下に、就労可能な在留資格の中で、活動内容に制限がある19種類についてまとめています。在留できる期間や認められている活動の範囲などは下記を参考にしてください。
外国人が日本で就業する場合、活動内容が在留資格の範囲内でなければなりません。また、在留資格で許可されている時間数を超えた労働や、認められていない活動に従事することは不可能です。
例えば、技術・人文知識・国際業務の在留資格では「ホテルで清掃をする」「居酒屋で接客をする」といった単純労働は認められません。このような単純労働に従事させた場合は、資格外活動として不法就労助長罪に問われ、企業も処罰の対象となる可能性があります。
外国人労働者を受け入れる際には、在留資格やその資格で認められている活動範囲に十分に気を付けましょう。
6.外国人雇用に必要な準備と手順
外国人労働者の雇用は、日本人とは違う手続きや確認が必要です。在留資格によって多少の違いはありますが、一般的には以下のような流れで進めます。ここでは、採用までの手順について説明します。
【外国人採用のフロー】
【外国人採用のフロー】
STEP1 求人募集/選考/内定
STEP2 労働契約の締結(雇用契約書作成)
STEP3 在留資格(就労ビザ)申請・変更 ※国内在住者は不要な場合も有り
STEP4 入社の準備 ※住居手配などの環境面、在留資格によっては事前ガイダンスの研修、渡航など
STEP1:求人募集/選考/内定
外国人労働者の採用が最も効率的に行える方法は、日本の人材紹介サービスや外国人採用に精通したエージェントを利用することです。在留資格申請や変更の手続きだけでなく、受け入れがスムーズに運ぶようトータルでサポートをします。
STEP2:労働契約の締結(雇用契約書作成)
応募から内定まで進んだら、雇用契約書を作成します。応募してきた外国人労働者が在留資格を持っているかどうかを確認し、給与や業務の内容について双方がよく話し合ってから雇用契約を結びましょう。その際、雇用契約書や労働条件通知書などは必ず書面で契約し、本人へ配布することが義務付けられています。違反した場合、企業側が責任を問われます。
STEP3:在留資格(就労ビザ)申請・変更 ※国内在住者は不要な場合もあり
雇用契約を交わしたら、本人に就労ビザの取得が必要かどうか確認します。
外国人労働者は雇用される際、就労ビザ(就労できる在留資格)を持っていなければなりません。申請自体は外国人本人が行うものの、企業側にも用意しなければならない書類があるのです。
就労ビザを申請した後、出入国在留管理局による審査が行われます。審査は外国人労働者と受け入れ企業の両方が対象です。企業の審査項目は、企業規模や安定性、外国人労働者の雇用実績、外国人労働者が担当する業務内容などです。審査にかかる期間は外国人労働者と企業によって異なりますが、平均すると1カ月ほどかかります。
STEP4:入社の準備 ※住居手配などの環境面、在留資格によっては事前ガイダンスの研修、渡航など
在留資格申請を行い許可が下りるまでの間に入社準備を進めます。特定技能などの在留資格の場合は、事前にオリエンテーションを実施しましょう。海外現地から採用する場合は、在留資格の許可が下りてから渡航という流れになります。
7.まとめ
外国人労働者の受け入れは、人手不足の解消や採用コストの改善などのメリットがある反面、異文化摩擦やそれに伴う現場の負担増、在留資格によって就労できる業務が異なることなど注意すべき面もあります。また、在留資格についてよく把握しておく必要があります。
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