技能実習生は転職不可|特定技能移行で転職できる
2024.02.22
外国人を雇用する際は、在留資格の種類によって転職の可否が異なります。技能実習生(在留資格「技能実習」)の場合は、制度規定により、原則転職は認められていません。
本記事では、技能実習生の転職と、特定技能に移行した場合の転職について解説します。
CONTENTS
- 1.外国人技能実習生は原則転職ができない
- 2.技能実習2号から3号移行の場合は転職できる
- 3.技能実習制度は今後、転職可能になる?
- 4.技能実習から特定技能へ移行すると転職できる
- 5.特定技能の転職のハードル
- 6.まとめ
1.外国人技能実習生は原則転職ができない
技能実習制度は、日本で働き培われた技術や知識を母国に持ち帰る「国際貢献」を目的とした制度です。技能実習生として日本で働く際は、契約を交わした実習先の企業で働くことを条件に日本滞在が認められています。そのため、仕事の内容や働く企業に不満があっても転職することはできず、実習生を辞めれば母国に帰らざるを得ません。
ただし、原則として転職できない技能実習生も、条件を満たせば転職可能となります。
2.技能実習2号から3号移行の場合は転職できる
技能実習は、実習の段階によって在留資格が分かれています。実習1年目は「技能実習1号」、2〜3年目は「技能実習2号」となります。そして4〜5年目になると「技能実習3号」に移行し、このとき技能実習生の希望により実習実施者を変更できます。つまり転職が可能となります。
また、実習実施者が技能実習を継続できなくなった場合も、同一業種の他の企業に転籍できます。
3.技能実習制度は今後、転職可能になる?
原則として転職することができない技能実習制度ですが、今後は「技能実習3号」に移行せずとも転職できるようになる予定です。
現在の技能実習制度は、人権侵害などの問題から技能実習生が失踪するなどの問題が多発していました。このことから、政府の有識者会議は技能実習制度を廃止し、新たな「育成就労制度」に変更するとしています。
新制度は、技能実習制度の目的「国際貢献」を「外国人材の確保と育成」へと変更します。3年で一定の専門性や技能を持つ水準にまで育成し、転職についても、1年以上働いていることなどを要件に認めるとしています。
2023年11月24日の記事「育成就労制度」
4.技能実習から特定技能へ移行すると転職できる
将来的に転職が可能となる技能実習制度(新制度では育成就労制度)ですが、現在でも在留資格「技能実習」から「特定技能」に移行すれば転職は可能です。
特定技能に移行するためには、技能実習2号を修了し、技能検定3級または技能実習評価試験(専門級)の実技試験に合格する必要があります。
5.特定技能の転職のハードル
在留資格「特定技能」は自由に転職できますが、実際に転職しようとすると、そのハードルは高いと言えます。なぜなら、転職を難しくするさまざまな要因があるからです。
5-1.在留資格変更許可の申請中は働けない
特定技能外国人は転職することができますが、転職のためには在留資格変更許可申請などの手続きが必要となります。そして、申請中は働くことができません。このため、申請中の収入が途絶えてしまうといったことが転職を難しくする理由の一つとなります。
5-2.転職先の協力が必要
特定技能外国人は、出入国在留管理局が発行する「指定書」で指定された活動のみ行うことができます。指定書には企業名、特定技能の分野、業務区分などが記載されています。つまり、記載されている企業・業務でしか働けません。
そのため転職する際は、改めて在留資格変更許可申請をしなければなりません。申請は外国人本人が行いますが、転職先の受け入れ企業も多くの書類を用意するなどの協力が必要となります。この申請が許可されることで、新しい在留カードと指定書が発行され、晴れて転職することが可能となります。
5-3.外国人の要件と受け入れ企業の要件がある
特定技能外国人の転職を実現するためには、特定技能外国人が満たすべき要件と、転職先の受け入れ企業が満たす要件があります。双方がその要件を満たさなければ、転職することはできません。
特定技能外国人の受け入れ企業が前職の企業と同じ業種であれば、そのまま転職することが可能です(ただし、在留資格変更許可申請は必要)。一方、別の業種に転職する場合は、分野別の技能試験に合格する必要があります。例えば、宿泊業から外食業の企業に転職する場合は、外食業の技能試験に合格しなければなりません。
また同じ分野であっても、一部の分野では業務区分ごとにそれぞれの技能試験を設けています。例えば、建設分野「土木」で働いていた外国人が建設分野「ライフライン・設備」で働くには、ライフライン・設備の技能試験に合格する必要があります。
受け入れ企業の要件としては、12分野(14業種)のいずれかに自社の事業が該当していることが求められます。その上で特定技能外国人をどの業務内容に従事させれば要件を満たすか、技能実習2号から特定技能へ移行する外国人の場合は、どの技能実習を修了しているか、どの技能試験に合格しているか、などを確認しなければなりません。
業務区分の変更について
5-4.特定技能外国人が転職する際の手続き
特定技能外国人が転職する際は、前述したように、すでに在留資格「特定技能」を持っていても受け入れ企業が変わるごとに、新たに在留資格変更許可申請を行わなければなりません。申請においては外国人本人が用意するものとして健康診断個人票、住民税の課税証明書・納税証明書、源泉徴収票、技能試験の合格証などがあります。
受け入れ企業は雇用条件書、特定技能外国人の支援計画書、納税証明書など多数の書類を用意する必要があり、それらの書類をもとに審査が行われます。
また、前職の企業も特定技能外国人が退職する際は「特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出」「特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出」を出入国在留管理局に提出する必要があります。
6.まとめ
外国人技能実習生は、原則として転職することはできませんでした。しかし、今後、技能実習制度が新制度「育成就労制度」に移行し、これまでよりも転職しやすくなる予定です。技能実習生の雇用を検討している場合は、新制度の最新情報をこまめにチェックしましょう。
また、特定技能外国人は転職が可能ですが、転職先の業種が限られていたり受け入れ企業の協力が必要であったりと、外国人においても雇用する企業においてもハードルが高いという現実があります。受け入れ企業は、そのハードルを少しでも下げられるよう、技能実習や特定技能の制度について積極的に学んでいく姿勢が求められます。
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