技能実習生の労働時間上限と勤怠管理の方法
2024.04.16
日本で働く技能実習生。日本の高い技術を学び、将来的には母国に戻って習得した技術を生かした仕事で母国の発展に貢献したいという思いで働いています。当然のことですが、技能実習生も雇用管理する際には日本人と同様に労働基準法が適用されます。
しかし、労働基準監督署が行った調査では労働基準法違反が見つかるケースも多くみられます。もし違反が見つかった場合は罰則が科せられるので十分な注意が必要です。
今回は技能実習生の労働時間について詳しく見ていきましょう。
CONTENTS
1.技能実習生の労働時間の上限は?
労働時間の厳守は勤怠管理における基本中の基本。気付かないまま働かせて、うっかりオーバーしていた……ということがないよう、通常の労働時間はもちろん残業時間もしっかり管理しましょう。
1-1. 1日8時間、週に40時間が原則
労働基準法や最低賃金法、雇用保険法などは、日本人も外国人も同じ条件が適用されるのです。
労働時間の条件も労働基準法に定められている通り、原則的に1日あたりの上限は8時間、1週間で40時間が規定労働時間となっています。労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。たとえば午前9時始業の場合、1時間の休憩時間を含めて午後6時には終業する必要があります。
1-2.残業は36協定による
技能実習では、その目的を労働力の需給の調整手段ではなく、技能の修得とされているため、原則として時間外労働(残業)、休日労働、深夜労働は前提になっていません。ただし、やむを得ない事情があり、労働関係法令の範囲内であれば残業を課すことも認められています。この場合の条件も日本人と同じです。
残業が可能な協定としては「36協定」というものがあります。労働基準法36条に定められていることからこう呼ばれている協定ですが、規定労働時間を越えて労働させる場合は雇用者と労働組合または労働者の代表が、この協定を結んでから労働基準監督署に届け出ないといけません。
また残業の際には、通常の時間給よりも25%増しの賃金を支払う必要があります。
2.労働基準法を違反してしまったら?
労働時間の原則は上記の通りですが、他にも以下のような決まりがあります。
・週1日の休日、または4週間を通じて4日以上の休日が必要
※農業・畜産・水産業の事業場は労働時間、休憩および休日に関する規定の適用を除外
・商業・映画・演劇業・保健衛生業・接客娯楽業で労働者が1~9人の事業場は、週44時間、1日8時間まで労働可能
・雇用契約に基づく技能実習生の講習時間は労働時間に含む(企業単独型)
・「入国時の講習」 (団体監理型) 終了後、別の講習を義務付ける際、その時間は労働時間となる
・労働時間の管理は、労働者の出勤日ごとの始業・終業時刻をタイムカードや記録で確認できるようにする
・年次有給休暇は6カ月以上継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して付与する
こうした労働基準法を守った上で、残業をさせるためには先述した36協定を結ぶ必要があります。万一、労働基準法を違反した場合は企業に6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます。他の労働者への影響も避けられず、生産性が下がることはもちろん、企業イメージが低下することも考えられるので注意しましょう。
3.技能実習生の労働時間の管理方法
労働基準法を違反しないためにも、企業には技能実習生の労働時間を管理する必要があります。最近では勤怠管理アプリなどもあるため、以前よりもコストや手間をかけることなく導入できるようになりました。
3-1.勤怠管理システムを利用
適切に勤怠管理するため、タイムカードに記録された労働時間を勤怠管理表などに手作業で入力する方法もありますが、効果的な方法は勤怠管理システムを導入することです。
技能実習生用の勤怠管理システムを導入する際には、以下の点をチェックするといいでしょう。
・多言語対応のシステム
・アラート機能が備わったシステム
・有休管理が可能なシステム
技能実習生は外国人であるため、多言語に対応していることがマスト。そして業務時間が長すぎる際には、アラートが鳴ることや有給休暇の管理システムがあるとより使いやすいと言えるでしょう。
3-2.自己申告制の説明
企業によっては出勤簿で管理している場合もあるでしょう。最も手っ取り早く導入できますが、いかんせんアナログのためミスが多い管理方法となります。
また、技能実習生の中には日本語が苦手な人材もいるため、相手が理解しているか、しっかり確認することが必要となります。さらにアナログな管理システムのため、定期的に法令違反を起こしていないかのチェックも必要です。
3-3.残業は36協定による
技能実習生に残業をさせる場合に必要となるのが36協定。「月45時間・年間360時間」を時間外労働の上限とするもので、協定を結んでいれば上限時間までは残業させることが可能になります。
さらに特別条項として、臨時的な特別な事情があり、労使が合意する場合は年間720時間まで上限を引き上げることも可能となります。ただし、「時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満」「時間外労働と休日労働の合計が、2~6カ月平均すべてで80時間以内」「時間外労働が月45時間を超えるのが年6カ月以内」という付帯条件も付くため、協定を結ぶ際には注意しましょう。
ただし前述の通り、技能実習はそもそも時間外労働(残業)を前提としていないため、特段の事情がない限りは避けるのが本来の形です。
※ソース
36協定とは? 残業の上限規制や罰則、特別条項をわかりやすく解説
4.技能実習生の労働時間のトラブルが増加
技能実習生の労働時間については、基本的に外国人でも日本人労働者と同じように労働基準法や最低賃金法、雇用保険法などが適用されていますが、実態は違反しているケースが多々見られます。例えば2021年度の長野労働局では、約8割の事業場で法令違反していることが発覚。このような事例は氷山の一角と思われ、技能実習制度自体の是非が問われる事態となりました。
まとめ
真面目な働き者が多い技能実習生は、ついつい労働時間が長くなってしまいがちですが、たとえ実習生本人の意思だとしても労働基準法や最低賃金法、雇用保険法などに違反すると雇用者に罰則が科せられます。法令通りの時間で実習させられるよう、雇用者は細心の注意を払いましょう。
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