【日本語検定の解説】外国人採用に活かせるスキルは?
2023.07.04
外国人を採用する際は、外国人の日本語能力を測る日本語検定試験についてあらかじめ理解しておきましょう。外国人が受験できる日本語検定は、基礎的な日本語能力テストから、ビジネスで利用できる日本語検定、日本の習慣・文化を理解するための試験までさまざまです。
そこで本記事では、外国人採用においてどのような日本語検定があって、自社業務にはどの日本語検定が必要になるか? 参考になる内容を紹介していきます。
CONTENTS
1.外国人採用では日本語検定が必要
外国人材雇用の際に注意したいのが、採用予定者の有する日本語能力です。外国人材が日本で働くためには、就労が許可される在留資格(就労ビザ)を有している必要があります。就労ビザによっては、それぞれに定められた日本語能力レベルを有していることが条件となるので、一定の日本語能力があると判断することができます。
しかし、従事する業種によっては、それ以上の日本語能力が求められることもあります。そのため、採用予定者が自社の求める日本語能力を有しているかは必ず確認しておく必要があります。
2.外国人が取得できる日本語検定の種類
外国人が日本語能力を証明する手段の1つが、日本語検定です。この日本語検定は、大きく分けると日本語能力試験と日本語検定試験があります。
なかでも、最も規模が大きいのが国内外で年2回(7月・12月)実施される「日本語能力試験(JLPT)」です。この試験は日本語を母語としない外国人を対象に日本語能力を測ることを目的とし、N1〜N5の5段階で日本語能力レベルを判定します。試験には「読む」「聞く」という言語行動に加えて、それらを実現する言語知識も必要となり、数字の小さい方が高い日本語能力を有している証左になります。
一方、日本語検定試験は普段日本人が使っている日本語をどこまで正しく理解して使いこなせているかを目的にした試験です。こちらはさまざまな団体や企業が運営しており、それぞれ目的や判定基準が異なります。ここでは、ビジネス寄りの日本語検定7個をピックアップし詳細を解説します。
日本語NAT‐TEST
日本語学校向けの教材を制作・出版している「専門教育出版」が主催する日本語検定で、日本のほかアジア10か国以上で広く試験を実施しています。試験では「文字・語彙力」「聴解力」「読解力」が問われるため、日本語能力を総合的に評価できます。
最難度の1級から最も簡単な5級までの5段階で日本語能力を判定し、それぞれの級は日本語能力試験(JLPT)のN1〜 N5に相当します。
実用日本語検定(J.TEST)
年間約6万人以上の外国人労働者や留学生などが受験している日本語検定試験です。試験は上級者向けのA〜C、初級・中級者向けのD〜E 、入門者向けのF〜Gの7段階に分かれており、合格ラインは A〜Cで1000点満点中600点、D〜Eは700点満点中350点、F〜Gは350点満点中180点となっています。
日本語能力試験(JLPT)との比較では、700点以上でN1、600点以上でN2、500点以上でN3、350点以上でN4、250点以上でN5に相当する日本語能力になります。
ビジネス日本語能力テスト(BJT)
ビジネスシーンにおける日本語能力を測る日本語検定試験で、「漢検」も運営する日本漢字能力検定協会が主催しています。試験はほぼ毎日実施され、試験結果は即日発表されるので、受験しやすいのも特徴のひとつです。
レベルは合否ではなくテストのスコアによってJ1+〜J5の6段階で評価され、目標とするレベル判定を得るまで何度でも受験が可能です。
ビジネス日本語能力テストは入国管理局から証明基準として認められており、日本語能力の証明としてスコアを在留資格認定書交付申請に記載できます。そのため、就職活動の際にも履歴書などに記載して積極的にアピールすることが予想されるので、レベル目安と認定スコアの相関関係はしっかりと把握しておきましょう。
標準ビジネス日本語テスト(STBJ)
ビジネス現場で必要となる日本語能力の測定を目的とした日本語検定試験です。そのため試験内容も、「上司の指示を理解できるか」「TPOに応じて敬語など表現の使い分けができるか」「正しい電話応対ができるか」などビジネス日本語やビジネスマナーに特化した内容になっており、日本企業で働くのに必要なビジネス用語やスキルなどもチェックされます。
判定レベルは5段階に分けられ、最高レベルがBJ1、最低レベルはBJ5となり、各レベルは概ね日本語能力試験(JLPT)のN1〜 N5に相当します。
実用日本語運用能力試験(TOPJ)
日本語教育の分野において国内外で活躍する専門家と教授が開発した日本語検定試験です。試験では日本語の文法や語彙力に対する知識量を測るだけでなく、日本文化や日系企業の習慣などへの理解力もチェックされます。
初級・中級・上級の3つの級からなる試験は、それぞれがさらにA〜Cの3段階のレベルに分けられます。なかでも上級Aを取得している場合は、日本社会や日系企業で一定の適応能力を有することが認められるほか、通訳などの仕事を担当することができます。
生活・職能日本語検定(J‐Cert)
日本語能力だけではなく、日本文化や習慣も含めて日本で生活や就業するために必要な幅広いコミュニケーション能力を判定、評価する日本語検定試験です。
そのため、日本語を母国語としない外国人にとっては自身が持つ日本語能力を試せる試験だと言えます。
検定難易度は、マスター級(C2)、上級(C1)・準上級(B2)・中級(B1)、準中級(A2.2)・初級(A2.1)、入門級(A1)に分けられます。試験内容に日本語能力検定(JLPT)にはない「社会文化」が追加されていることから、C1所持者でN1相当の日本語レベル、C2所持者ではN1以上の日本語レベルに加えて日本への高い理解を有していると解することができます。
実践日本語コミュニケーション検定(PJC)
日本で就労するのに必要とされる日本語能力検定(JLPT)のN1、N2に相当する「ビジネス会話レベル」の日本語コミュニケーション能力を測定する日本語検定試験です。試験では電話対応やクレーム、会社訪問など、日本企業におけるさまざまなビジネスシーンを想定した問題から客観的にビジネス日本語能力を判定するため、試験結果をそのままビジネス日本語スキルの指標と考えることができます。
また、日本語レベルを合否ではなく獲得スコアに応じてA+からE−までの10段階で細かく判定するのも特徴です。レベルCから日本語能力検定(JLPT)のN2に相当する日本語能力が求められるため、数ある日本語検定のなかでも試験難度の高い、上級者向けの検定となっています。
3.日本語検定と外国人の就労ビザ
現在の日本では一部を除くほとんどの就労ビザにおいて、申請時の日本語能力が必須条件とはなっていません。これは仕事内容や職場環境によって必要な日本語能力レベルが異なるためです。しかし、外国人が日本で働くためには、業務で求められる日本語能力を有している必要があります。つまり、就業ビザの申請時に、仕事内容に応じた日本語能力があることを証明しなければいけないのです。その証明方法の1つが日本語能力試験であり、日本語検定試験ですが、各就労ビザではどれほどの日本語能力レベルが求められるのでしょうか。本項で詳しく解説していきます。
技術・人文知識・国際業務(技人国)
最も多くの外国人労働者が活用している就労ビザです。申請時の日本語能力は必要条件となっていませんが、実際には仕事内容に応じた日本語能力の有無が審査されます。
具体的にはエンジニアやプログラマーなどで日本語能力試験(JLPT)のN3相当、通訳や翻訳、営業職などではN2相当の日本語能力が求められると考えられます。
高度人材
政府が積極的な受け入れを進めている、専門的な技術力や知識を有する外国人材が取得できる就労ビザです。高度人材においては、受け入れ促進を目的に「高度人材ポイント制」という制度が設けられています。
この制度では、高度外国人材の活動内容を「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」の3つに分類し、それぞれの分野において高い能力を持つ外国人材には「学歴」「職歴」「年収」などを項目ごとにポイントを設定。合計ポイントが70点を超える場合は出入国管理上の優遇措置が与えられます。日本語能力も対象となり、ビジネス日本語能力テスト(BJT)のスコアが400点以上で10ポイント、480点以上なら15ポイントが加算されます。
特定技能
人手不足が深刻な12分野で一定の専門性や技能をもつ外国人材が取得できる就労ビザです。取得条件として日本語能力テストの合格が必須となっており、日本語能力試験(JLPT)のN4以上、もしくは日本の生活場面におけるコミュニケーションに必要な日本語能力を測定する「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」のA2以上の合格が必要になります。
特定活動(第46号)
ほかの在留資格ではカバーできないさまざまな活動に従事する外国人材に適用される就労ビザで、製造業や飲食店、コンビニなどでの就労が可能になります。取得要件として日本語能力試験(JLPT)のN1、またはビジネス日本語能力テスト(BJT)で480点以上が設けられていることからもわかるように、非常に高度な日本語能力が求められます。
4.外国人採用における日本語検定のメリット
日本での就労を希望する外国人材にとってメリットの大きい日本語検定ですが、外国人採用に活用することで雇用する側にはメリットが生まれます。本項では日本語検定を受けた外国人を採用するメリットについて解説します。
日本語能力レベルが確認できる
応募者の日本語能力が明確になることで、複数の外国人が自社への就職を希望している場合に、各応募者の日本語能力を客観的に比較できます。外国人が持つ日本語能力をあらかじめ把握できると、「自社業務に問題なく従事できるか」「どの程度の日本語を理解しているか」といった入社後のリスクを減少させることができます。
出入国管理の優遇措置がある
「高度人材ポイント制による出入国在留管理上の優遇制度」では、日本語能力試験(JLPT)のN1合格者に15ポイント、N2合格者には10ポイントが付与されます。合計ポイントが70ポイント以上になると、最長5年間の在留期間が認められるなど、出入国管理においてさまざまな優遇措置が受けられます。
日本の国家試験の受験資格になる
海外の医師免許を取得している日本語能力試験(JLPT)のN1合格者には、日本の医師国家試験の受験資格が認められます。そのほかにも、看護師や薬剤師、救命救急士などの国家試験を受験するには、日本語能力試験(JLPT)のN1に合格していなければいけません。
介護士の候補者選定になる
フィリピン、ベトナム、インドネシアから看護師・介護士の候補者を受け入れる場合、EPA(経済連携協定)に従い、フィリピンとインドネシアは日本語能力試験(JLPT)N5以上に合格、ベトナムではN3以上に合格していることが条件となります。
5.まとめ
就労ビザ要件にも用いられる日本語能力試験(JLPT)をはじめとする日本語検定の受験有無は、企業にとってミスマッチを防ぐ有益な判断材料の1つになりえます。一方で、日本語能力試験(JLPT)には会話能力を測る問題がないなど、日本語検定の結果が外国人材の全てを可視化するものではありません。
また、日本語能力が高ければ良い人材というわけではなく、問題なく自社業務が遂行できるスキルを有していることが大切です。
外国人採用においては自社業務の遂行に、日本語能力と業務スキルの両方が必要となることを念頭において、自社にとって本当に必要な人材を採用していきましょう。
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