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【専門家コラム】外国人労働者を取り巻く環境の変化

昨今報道にて日本にいる技能実習生等が劣悪な環境下で強制的な労働を余儀なくされている…等のニュースを頻繁に目にするようになりました。

業界の方からすると「あれは一部の悪質な監理団体や実習実施者、送出機関がやっていることで、うちは健全に事業を取り組んでいるから問題ない」と思われている方も多いでしょう。

ただ、いわゆるクリーンな監理団体や実習実施者であっても“これまで問題が発生していないから、これからも今のやり方で問題がない!”と単純に言えなくなるような大きな変化が起こりつつあります。

例えば、“RBA”という言葉をご存じでしょうか?

電気電子機器関係の実習実施者との取引が無ければ、耳にしたことが無い方も多いかもしれません。 RBAとは“レスポンシブル・ビジネス・アライアンス”の略で、「電気電子機器製品に関わるサプライチェーンにおいて、労働環境が安全であること/労働者に対して敬意と尊厳をもって処遇すること/環境へ配慮すること等の目的を確実にするための基準“をさします。
この基準は、エレクトロニクス産業およびそのサプライチェーン全てが対象となります。

ここまで聞いても技能実習に何が関係あるの?と疑問に思われるかもしれません。


では、少しRBAの中身をみてみましょう。

RBAは“労働・安全衛生・環境・倫理・マネジメントシステム”という5つの項目から成り立っています。 その一つ“労働”には下記の一文があります。

「人材斡旋業者またはその委託先業者の就職斡旋手数料、または雇用に関わるその他の手数料について、労働者がそれらを支払う必要があってはならない。 労働者がこうした雇用に関連する費用を支払ったことが判明した場合は、その費用は当該労働者に返金されなければならない

この一文を読んで思い当たる点がありませんか?

「ベトナムをはじめとする送出機関が技能実習生から徴収する手数料はどうなるの?」

そのとおりでこの定めは技能実習生の手数料等にも関わってきます。

「でも、ベトナムでは法律で送出機関が本人から3,600US$(日本円で約40万円前後)を徴収することが認められているのでは?」と思う方もいらっしゃるでしょう。

こちらもそのとおりです。
ただし、RBAは国際的な業界基準となるため、たとえベトナムや日本の法律で認められていたとしても、国際的な企業と取引する場合はRBA基準が優先されるのです。


もし、親会社から今後この基準を遵守するように通達が来た場合はどうされますか?
現在技能実習中の技能実習生に対して手数料を全額返金することとなった場合は、誰がそのコストを負担しますか?

このような事例は決して電気電子機器業界に限ったことではありません。
既に様々な業界や大手企業も同様の取り組みを始めています。

今年の9月にNHKが“国内大手企業が加盟する団体が技能実習生などを受け入れた際に企業が守るべき具体的なルールをまとめた”と報道があったことをご記憶の方もいらっしゃると思います。
これは“The Consumer Goods Forum”という国際的な業界団体の日本組織である“日本サスティナビリティ・ローカル・グループ”が作成した「技能実習生・特定技能としての外国人労働者の責任ある雇用ガイドライン」をさします。


こちらも中身をのぞいてみましょう。

このガイドラインは技能実習・特定技能外国人を雇用するまたはその予定をしている実習実施者(そのサプライヤー・製造委託先含む)に適用され、外国人を雇用する際に取り組むべき項目となります(全16項目)。

1.関係法令の遵守

  全ての労働者には仕事を行う国・地域の雇用に関わる法律が適用され、使用者はその
  サプライチェーンにおいても関連法令を遵守する各種法人・個人と取引を行うこと

2.人権の尊重

  使用者は外国人労働者の直面する、法的・社会的・文化的・宗教状況を理解するように
  努め、尊厳と尊敬をもって接すること

3.外国人労働者雇用方針の策定

  使用者は外国人労働者の専門家や市民社会と協力し、外国人労働者の雇用に関する
  方針と行動計画を策定すること

4.仲介業者等(送出機関・監理団体・登録支援機関等)の利用

  使用者が外国人を雇用する際は、本ガイドラインに同意し、労働者の権利を遵守する
  適切な許可を持った仲介業者等を利用すること

5.強制労働、差別の禁止等

  使用者は全ての労働者を強制的な労働から保護し、外国人労働者を他の労働者と差別
  し不利にならないよう平等に扱うこと

6.仲介手数料とその他関連費用の制限

  募集や斡旋にかかる費用、渡航費用など全ての採用に関連する費用は使用者が負担し、
  外国人労働者から徴収しないこと

7.雇用条件

  使用者は、外国人労働者の理解できる言語で、明確な労働条件通知書および雇用契約書
  を作成し、渡航前に労働者の同意のうえで契約を結ぶこと

8.採用時の研修など

  使用者が労働者を雇用する際に必要な研修は、労働者の金銭的負担や差別・ハラスメント
  のないように行うこと

9.労働基本権

  使用者は外国人労働者が、労働組合に加入し団体交渉をしたり、従業員代表制などに
  参加したりする権利を保証すること

10.労働者の強制労働からの自由

  使用者は外国人労働者の自由な外出、休暇の取得・一時帰国を認め、強制的な貯金を
  させないこと

11.身分証明書等の保管の禁止

  使用者は、外国人労働者のパスポート等私文書を取り上げたり保管したりしないこと

12.賃金及び労働時間

  使用者は雇用契約書等で定められた期日に、法令に則った適切な時間外労働の対価を
  含んだ適切な額の賃金を、労働者に直接支払うこと

13.安全衛生

  職場環境と生活環境は、衛生で安全が確保される必要があり、使用者はそのためのトレ
  ーニングを外国人労働者の理解できる言語で行うこと

14.苦情処理制度

  使用者は、報復や解雇など不利益を被らずに、外国人労働者が理解できる言語で利用する
  ことができる、信頼性のある相談窓口や法的な救済制度を利用できるようにすること

15.契約終了・解雇

  使用者は、契約途中であっても、労働者の自由意思による退職・転職を尊重し、使用者
  理由の解雇の際は適切な手続きと支援を行うこと

16.帰国費用

  外国人労働者の帰国費用(契約終了後の帰国、再雇用の一時帰国、使用者の瑕疵による
帰国)は、使用者が負担すること

全てに目を通されてみて、いかがでしょうか?
16項目全てに問題がないと胸をはって言える方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?

例えば、あなたが実習実施者の場合、“募集や斡旋にかかる費用、渡航費用など全ての採用に関連する費用”は貴社が全額負担されてますでしょうか?
同じく、貴社サプライチェーンに属する各法人と提携している監理団体/送出機関が、“関係法令を遵守しており、外国人労働者から募集・斡旋手数料を徴収していないか”を常時確認されてますでしょうか?

一方あなたが監理団体の場合、既に実習実施者は“これらの基準を満たす監理団体(送出機関)の選定”を進めているかもしれません。

今後ますますグローバル化が進む社会において、SDGsをはじめ国際的な基準の整備が進みつつあります。
これは決して大手企業にだけかかる課題ではなく、サプライチェーンに属する中小企業も世界基準でのモノサシで比較される時代が来ています。

これからも今までのやり方で本当に大丈夫ですか?

宮谷 聡

株式会社FIVEGATE 代表取締役

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