【最新】外国人労働者数200万人超え! 外国人雇用状況の推移を解説
2024.07.18
厚生労働省『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)』によると、外国人労働者数は初の200万人超えとなり、外国人材の受け入れが顕著となっています。少子高齢化による人材不足で待ったなしの状況が続いており、今後も外国人雇用の動きはますます活発化するでしょう。
本記事では、最新の外国人雇用状況、外国人労働者が増えている理由について解説します。
CONTENTS
1.外国人雇用の背景
2013年以降、全規模・全産業の人手不足が高まり現在に至るまで、特に中小企業の人手不足感が強い状況が続いています。日本政府は、人手不足が深刻化する産業分野に対して外国人雇用を促進する取り組みを行い、2019年4月には「出入国管理及び難民認定法」が改正され、在留資格「特定技能」が追加されました。
特定技能では、人手不足の産業12分野で雇用ができるようになり、1号から2号への移行で中長期の雇用も可能な仕組みとなっています。
少子高齢化に伴い、日本政府は人手不足の対策として積極的に外国人労働者の受け入れや就労の拡大を推奨しています。
特定技能での受け入れ促進をはじめ、留学生の日本企業への就職支援の強化や高度外国人材を対象としたポイント制による優遇措置など、外国人雇用を進めるための取り組みが行われている最中です。
また技能実習制度については、目的と実態の乖離や実習生を取り巻く社会問題によって技能実習制度の廃止という流れに進んでおり、2027年からの施行を目標に新しい制度として「育成就労制度」への変更が予定されています。
2.外国人労働者の雇用状況の推移
外国人を雇用する際は、外国人の雇用状況について概要を把握し、採用活動に役立てましょう。
厚生労働省『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(2023年10月末時点)』によりますと、外国人労働者数は、2,048,675人で前年比225,950人増加となり過去最高を更新しています。対前年増加率は12.4%と前年の5.5%から6.9ポイント上昇しています。
ではさらに詳しく、在留資格別、国籍別、産業別、都道府県別のデータを確認しましょう。
在留資格別
外国人労働者数を在留資格別で見ると、「専門的・技術的分野の在留資格」が対前年増加率として最も大きく595,904人、前年比115,955人(24.2%)増加しました。
「専門的・技術的分野の在留資格」には、「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」が含まれます。
次いで多いのが「技能実習」で412,501人、前年比69,247人(20.2%)増加、「資格外活動」が352,581人、前年比21,671人(6.5%)増加、「身分に基づく在留資格」が615,934人、前年比20,727人(3.5%)増加しています。
「身分に基づく在留資格」には「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」が含まれます。
一方、「特定活動」は71,676人、前年比1,687人(2.3%)減少という結果となりました。
なお「専門的・技術的分野の在留資格」のうち、「特定技能」の外国人労働者数は138,518人、前年比59,464人(75.2%)増加しています。
特定技能は前年比で大幅な増加率となっており、技能実習の廃止予定の影響か特定技能で外国人を採用する企業が増加傾向にあります。
国籍別
外国人労働者数を国籍別に見ると、ベトナムが最も多く518,364人で、外国人労働者数全体の25.3%を占めています。次いで、中国397,918人(同19.4%)、フィリピン226,846人(同11.1%)、ネパール145,587人(同7.1%)の順です。
対前年増加率が大きい国籍として、インドネシアが56.0%(43,618人)増加、ミャンマーが49.9%(23,690人)増加、ネパールが23.2%(27,391人)増加となっています。
過去には中国人の雇用が圧倒的に主流となっていましたが、2020年の日本における中国人労働者数は419,431人で、国籍別では初めてベトナムに抜かれ第2位となりました。
一方、ベトナムの増加率に次いで、フィリピン、ネパールなど東南アジア諸国の人材が増加傾向にあります。
日本学生支援機構が実施している「外国人留学生在籍状況調査」では、2023年5月1日現在の外国人留学生数は279,274人で、そのうち中国国籍が115,493人、ネパールが37,878人、ベトナムが36,339人の順となっています。
中国、ベトナムに次いで、ネパール国籍の留学生または就労者が日本国内で増加しています。
産業別
外国人労働者数の産業別の割合で見ると、「製造業」が552,399人(27.0%)、「サービス業(他に分類されないもの)」が320,755人(15.7%)、「卸売業、小売業」が23,555人(12.9%)、「宿泊業、飲食サービス業」が233,911人(11.4%)、「建設業」が144,981人(7.1%)となっています。
「製造業」と「建設業」ではベトナム人の採用が最も多く、「宿泊業、飲食サービス業」では、日本語レベルが高いネパール、ミャンマーが増加傾向にあります。
特に飲食業は食べ物を扱う業務であるため、宗教上の配慮に問題のない国籍の外国人が採用されやすいようです。
都道府県別
外国人労働者数を都道府県別に見ると、東京が542,992人で、外国人労働者数全体の26.5%を占めています。次いで、愛知210,159人(同10.3%)、大阪146,384人(同7.1%)となりました。
都道府県別の対前年増加率では、青森が28.7%、北海道が27.4%、秋田が26.5%と高くなっています。
3.特定技能・留学生が増加中
外国人雇用状況のデータを見ると、特定技能や資格外活動(留学生)の動きが活発化しており、在留外国人数の動きに大きく影響している在留資格です。
特定技能の雇用状況
2023年10月末時点の特定技能の雇用状況は、受け入れ総数138,518人(6.8%)で、そのうちベトナム人が最も多く69,462人となっています。次いでインドネシアが25,589人です。
産業別では、「製造業」が62,043人(44.8%)で一番多く、次いで「医療、福祉」21,346人(15.4%)、「建設業」12,333人(8.9%)の順となっています。
都道府県別では、愛知県14,121人、東京都12,443人、大阪府11,216人となっています。愛知県は、自動車産業を中心に工場などで働く外国人労働者が多く、特定技能での受け入れに影響しています。愛知県で外国人雇用が最も多いのは、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」で5,432人でした。東京都では「外食業」での雇用が多く3,978人です。
留学生の雇用状況
資格外活動は2021年以降急増しており、そのうち多くを占めているのが外国人留学生で273,777人(13.4%)です。産業別に見ると、外国人アルバイトを多く採用している業界は「宿泊業、飲食サービス業」で114,018人(32.3%)、そのうち留学生が95,023人(34.7%)となっています。
特にホテル業界では留学生アルバイトを採用している企業が多く、インバウンド対策として英語と日本語ができる留学生の需要が高くなっています。
人手不足の産業では、外国人留学生のアルバイトが貴重な労働力となっている状況です。
特定活動は減少
特定活動は、法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動です。特定活動は、出入国管理及び難民認定法を改正しなくても新たな在留資格として設定することが可能です。
例えば、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって帰国が困難な外国人に、特定活動の在留資格を付与する特例措置が行われています。
外国人雇用状況のデータでは「特定活動」は71,676人、前年比1,687人(2.3%)減少となっていました。しかし2022年より国際便の運航が通常に戻り、外国人の往来ができるようになったことで特定活動による特例措置はなくなりました。その影響が特定活動の減少の理由の一つとして考えられます。
4.外国人労働者が増えている理由
では続いて、外国人労働者が増えている理由について確認していきましょう。
外国人の採用活動が活発化している
人手不足の産業では、外国人雇用で人材獲得を始めている企業が増えています。外国人社員を採用することで、人手不足解消だけでなく、社内環境を活性化しグローバル化や海外への足掛かりになる効果もあります。その上、外国人採用活動に必要な助成金・補助金が活用できるメリットもあるのです。
少子高齢化に伴い深刻化する人手不足には、外国人社員が欠かせない状況が続いています。
特定技能外国人が増加している
在留資格・特定技能は、人手不足の産業分野を対象として設立されています。一定の技能および日本語能力基準を満たした外国人を採用することが可能です。
在留期間によって1号と2号があり、1号では、従事する産業分野別に設定されている技能評価試験の合格や日本語レベルN4以上が取得要件として求められます。
一方、特定技能2号では、家族帯同が認められたり支援機関が不要になったりと1号よりも自由度が高くなり、日本での永住資格を取得しやすくなるメリットもあります。
特定技能では従事できる業務範囲が幅広く、単純作業を兼ねる仕事にも就くことが可能であるため、外国人の採用活動を行う際、特に注目されている在留資格です。
中国に次いで多くの国籍が増えている
日本で働く外国人労働者の多くを占めていた中国に次いで、現在はベトナムが外国人労働者数の25%を占めており、日本企業の労働力として活躍しています。
ベトナム人が急激に増えてきた背景には、2017年に改正された技能実習制度によって、今まで技能実習生の主流であった中国人実習生が母国の経済成長によって減少し、その代わりにベトナム人実習生の採用を積極的に行うようになった経緯があります。
現在では、中国人を超えてベトナム人が外国人雇用状況のトップに入っており、次いでフィリピン、ネパール、ブラジル、インドネシアの順で、日本で働く外国人の国籍が多様化してきています。
中国人の雇用状況については、特定技能での在留数は少なく8,782人ですが、「技術・人文知識・国際業務」では113,016人で、他の国籍を抜いて一番多い数値となりました。
外国人の就職支援が整備されている
日本政府は、外国人雇用において就職支援や補助金などのサポートを行っています。
主な就職支援内容は以下の通りです。
-
高度外国人に対する職業相談・職業紹介
外国人を雇用する事業主への雇用管理に関する指導・援助
- 就職ガイダンス(入学後早い段階から受講可能なものを実施)
- インターンシッププログラムの提供
- 就職面接会の実施
- 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
- 雇用関係助成金
- キャリアアップ助成金
- 労働条件等関係助成金
- 国際化促進インターンシップ事業
- 外国人雇用管理アドバイザー制度
- 国際研修協力機構(JITCO)のサービス
- 製造業外国従業員受入事業
- 就労ビザ(19種類)
- 身分系ビザ(永住者、定住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等の4種類)
- 資格外活動許可でアルバイト・パート(28時間以内/週)
外国人留学生向けには、特に以下の支援を行っています。
また、助成金・補助金制度については以下のプランが提供されています。
助成金
補助金(支援制度)
5.外国人が就労できるビザ
日本で働く外国人は就労でき、なおかつ会社の業務に適用される在留資格を取得することで、日本での活動が許可されます。
現在、日本国内で就労が認められるビザは、以下の通りです。
就労できる在留資格を通称「就労ビザ」といい、現在19種類あります。
1.外交:日本国政府が接受する外国政府の外交使節団、領事機関の構成員、条約または国際慣行により外交使節と同様の特権及び免除を受ける者またはこれらの者と同一の世帯に属する家族の構成員としての活動
2.公用:日本国政府の承認した外国政府または国際機関の公務に従事する者またはその者と同一の世帯に属する家族の構成員としての活動
3.教授:大学教授、助教授、助手など
4.芸術:作曲家、作詞家、画家、彫刻家、工芸家、写真家など
5.宗教:僧侶、司教、宣教師などの宗教家など
6.報道:新聞記者、雑誌記者、編集者、報道カメラマン、アナウンサーなど
7.高度専門職:現行の外国人受け入れの範囲内にある者で、高度な資質・能力を有すると認められるもの
8.経営・管理:会社社長、役員など
9.法律・会計業務:日本の資格を有する弁護士、司法書士、公認会計士、税理士など
10.医療:日本の資格を有する医師、歯科医師、薬剤師、看護師など
11.研究:研究所等の研究員、調査員など
12.教育:小・中・高校の教員など
13.技術・人文知識・国際業務:理工系技術者、IT技術者、外国語教師、通訳、コピーライター、デザイナーなど
14.企業内転勤:同一企業の日本支店(本店)に転勤する者など
15.介護:介護福祉士の資格を有する介護士など
16.興行:演奏家、俳優、歌手、ダンサー、スポーツ選手、モデルなど
17.技能:外国料理の調理師、調教師、パイロット、スポーツ・トレーナー、ソムリエなど
18.特定技能:特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能、熟練した技能を要する産業に従事するもの
19.技能実習:海外の子会社などから受け入れる技能実習生、監理団体を通じて受け入れる技能実習生
上記19種類の就労ビザの他にも、身分系ビザ「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の4種類の場合は、就労制限なく働くことが可能です。職種や業務内容についても制限がありません。
また、留学生ビザや家族滞在ビザは就労できるビザではないため、別途資格外活動許可を取ることでアルバイトやパートが可能になります。
6.まとめ
日本国内では人手不足の解消策として外国人雇用の動きが進んでいます。外国人雇用状況では、在留資格・特定技能や留学生、高度人材などの雇用が増加傾向にあり、ベトナム人を筆頭に、フィリピン、ネパール国籍の雇用が増えてきています。産業別では製造業での受け入れが多く、都道府県別では愛知県や東京都で外国人が多く活躍している状況です。
外国人労働者が増えている理由には、国が取り組む外国人の就職支援や助成金の提供など、採用活動がしやすい環境が整備されていることがあります。
これから外国人雇用を検討されている事業者の皆様は、『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ』の推移をチェックして、外国人の採用活動に役立てましょう。
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