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【専門家コラム】海外人材獲得競争が激化? アジアの高齢化の実態

専門家コラム

2022.03.09

技能実習生に関する報道や、コンビニや飲食店で外国人の店員が増加している様子を見て、以前よりも多くの外国人が労働に従事しているように感じる方も多いと思います。
それに伴い、「日本人労働者VS海外人材」や「劣悪な労働環境の改善」、「国内の生産人口の低下」といった海外人材に関する多くの議論がなされてきましたが、そのほとんどが日本国内の文脈においてなされている現状があります。

実は、東アジアでは少子高齢化が非常に深刻化していて、東南アジアでも東アジアほどではないですが、同様の現象が起こりつつあります。ここでは、アジアでの少子高齢化の現状を理解することで、「海外人材」というイシューを国内的な文脈だけでなく、国際的なそれにおいても捉える視点を提供します。

1. アジアの高齢化の概観

※高齢化率の定義は、一般的な、65歳以上の人口が総人口に占める割合とします。


上図をご覧いただくと、直近の2020年以降で、急速にアジアで少子高齢化が進行することは一目瞭然です。韓国は出生率の低下が深刻で、比較的日本のメディアに登場することからもご存知の方も多いかもしれません。2020年時点で出生率が0.84で、日本の1.34より非常に深刻で、2050年には日本と同等レベルに達する見込みです。(※1)

1:日本経済新聞「韓国、2020年に初の人口減 出生率が過去最低更新」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM231MW0T20C21A2000000/



高齢化に関しては、一般的に下記の指標が用いられます。

  • ① 高齢化率7-14% :「高齢化社会」
  • ② 高齢化率14-21% :「高齢社会」
  • ③ 高齢化率21%- :「超高齢社会」

上記に従えば、現在活発に日本へ人材を供給しているベトナムでさえも、2020年時点ですでに「高齢化社会」に突入していて、その後10年強で「高齢社会」となります。端的にいって、この先継続して人材を海外へ供給することが難しくなることは明らかです。もちろん、ベトナムに先んじて技能実習生が多かった中国も、ベトナムよりもさらに早期に同様の状況が発生するでしょう。

今回比較に用いたアジアの10の国・地域全体を俯瞰すると、約10年後の2030年には、ほぼ全ての国・地域が「高齢化社会」に突入し、そのうち半数が「高齢社会」になり、2050年には、9割が「高齢社会」に突入します。猛スピードでアジア全体の高齢化が進行しているといっても、過言ではありません。

2. アジアの高齢化の日本の労働市場への影響

さて、上記のような様相が日本の労働市場にどんな影響を与えるでしょうか?完全に未来を想像することは難しいものの、いくつか論点を提示したいと思います。

競争の激化

まず直感的に想像できることは、現状日本で起きてる海外人材の獲得競争が激化することです。日本以外の国々でも海外人材へのニーズが高まるため、他の国との獲得競争が激しくなり、ひいては国内の競争も厳しくなる可能性があります。

先に触れた韓国との獲得競争はすでに開始されており、制度上の利点やK-POPの流行などで韓国を海外の労働先として選択する海外人材も増加しています。(※2)
韓国も、日本の技能実習制度が抱えている問題に近いものが以前ありましたが、最近は対策や制度の改善と拡充が進んでいます。(※3)
日本も2019年度より特定技能制度を創設しましたが、海外人材に対する支援で不十分な側面があり、これからより議論を活性化する必要がありそうです。そうでない場合、アジアの人材獲得競争で、今後大きな痛手を追うことになるかもしれません。

2:AERA dots「10代ベトナム人「働きたい国」日本ではなく韓国のワケ」
https://dot.asahi.com/aera/2019072500024.html?page=1

3:SYNODOS「韓国の非熟練外国人労働者の受け入れにみる日本の政策へのインプリケーション」
https://dot.asahi.com/aera/2019072500024.html?page=1https://synodos.jp/opinion/international/23800/

人材供給の減少・多様化

ご想像の通り、国家がある程度発展し、かつ高齢化が進行して自国の人材不足が進めば、他国に人材を提供する余裕はなくなります。実際、中国は技能実習生が最も多かった時期がありましたが、近年は減少傾向が続いています。(※4)
他方、ベトナムは直近最も人材を日本へ提供していますが、国の急速な発展とそれに伴う高齢化は、この傾向を鈍化させることが予想されます。
このような「中国→ベトナム」のような人材を提供する国・地域のマジョリティの変化が、これから進む可能性があります。その場合、10年後は中国でもベトナムでもない第三国が日本への海外人材提供の中心となるかもしれません。


4:厚生労働省「国籍別技能実習生数の年次推移」『外国人技能実習制度の現状、課題等について』p.3
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/fiber/ginoujisshukyougikai/180323/3_mhlw-genjyoukadai.pdf

3. 今後を見据えて

これまで見てきた現状や未来予測を踏まえ、日本としてはどういう方策を模索していくべきでしょうか?

まずは、「アジアで選ばれて当たり前の国」という前提が崩れはじめていることを認識する必要があるでしょう。東アジアで海外人材の獲得競争が激化し、東南アジアも高齢化が進行中なので、これまで以上に日本を労働先として選択する誘引が低下する可能性が高いです。

それでは、その状況の中で選ばれる国となるにはどういったことが必要でしょうか?例えば、上述の韓国の事例では、国を挙げての韓国語教育の普及がなされており、海外の労働先として韓国を選択する理由の一つとなっているようです。日本も2019年に「日本語教育推進法」が成立しましたが、まだまだ制度が効果的に運用されるには時間がかかりそうです。もっとも、この制度が事業者へ日本語教育の責務を課している点では、韓国よりも踏み込んだ施策のため、より運用が拡充していけば可能性がある制度とも言えます。

このような国・自治体と事業主が実効性を担保するかたちで公式・非公式に海外人材の労働環境や生活向上に努めていくことで、アジアの人材獲得競争時代が到来しようとも、選択される日本になりうるのではないでしょうか。

清島 良介

ボンド株式会社
COO(最高執行責任者)

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