なぜ深刻化する人手不足? 現状と原因、解決策を解説
2024.05.14
日本の産業分野では、人手不足が深刻化しており社会問題となっています。 では、なぜ人手不足が起きているのでしょうか。その背景と原因、解決策などを解説します。
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日本の人手不足の背景と現状
帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2024年1月)」によりますと、正社員の人手不足は52.6%とのことです。業種別では、ITエンジニア不足が顕著な「情報サービス」が77.0%でトップとなり、過去最高を更新する高水準になっています。
なお、正社員の人手不足割合で、上位10業種は以下の通りとなっています。
「情報サービス」が最も深刻な人手不足となっており、次いで「建設業」「旅館・ホテル業」と続いています。順位による差はあるものの、全体を通して5〜7割の企業が人手不足の問題を抱えている状況です。
また、非正社員の人手不足の割合は29.9%と出ています。業種別では「飲食店」が72.2%とトップとなり、次いで「人材派遣・紹介」が62.0%と6割超となっています。
「2024年問題」が懸念されている建設業、物流業、医療業では、人手不足企業の割合はそれぞれ約7割となっています。
正社員においては、物流業(道路貨物運送業)で72.0%、医療業で71.0%、建設業では69.2%の企業が人手不足を感じているという結果です。
医療業の人手不足については、勤務医が同関連法の対象となり、看護師の働き方改革にも大きく影響しています。医療業の人材確保や定着を狙いとする賃上げは、診療報酬の改定幅によって左右されるケースが多く、業界特有の背景に悩んでいる現状もみられます。
深刻化する人手不足の原因
では、深刻化する人手不足の原因について、以下のポイントで確認していきましょう。
・少子高齢化による労働人口の減少
・新型コロナウイルスの影響
・有効求人倍率の上昇
・DX化の遅れ
・働き方の変化
少子高齢化による労働人口の減少
人手不足の大きな原因は、少子高齢化による労働人口の減少です。生産年齢人口に該当する15〜64歳の人口の減少が大きな要因となっています。
生産年齢人口(15〜64歳)は、2065年には約4,500万人となる見通しで、2020年と比べ約2,900万人の減少となります。
さらに2065年には、老年人口(65歳以上)の割合が約4割になるのに対して、生産年齢人口の割合は約5割に低下すると予測されています。
新型コロナウイルスの影響
新型コロナウイルスの影響で、外出制限や水際対策による入国制限などが始まり、旅行や観光、外食などを控える状況が続きました。コロナ感染拡大は、各業界の経営に大きく影響し、人材の解雇や倒産など、事業縮小する企業などもありました。
一方、いったんコロナ収束後、回復の兆しが見られる飲食業や、インバウンド効果を得ているホテル・旅館業では、新たに人材を確保するのに苦戦している状況です。
有効求人倍率の上昇
有効求人倍率1倍は求人数と求職者の数が等しく、1倍を上回ると求職者よりも求人数が多いことになり、人手不足を意味します。
令和5年11月の有効求人倍率は1.28倍で、令和5年12月の有効求人倍率は1.27倍、令和6年1月の有効求人倍率は同じく1.27倍です。有効求人倍率は1倍以上を推移しており、人手不足の状況が続いています。
DX化の遅れ
DX化の遅れは、人手不足に大きく影響しています。DXの重要性が高まる一方、DXのための人材不足やビジネスモデルの変革が進まない状況となっています。
このままDX化が遅れると、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が発生する可能性があると経済産業省は予測しています。
したがって、DX促進は急務となっていますが、それ以前に、DX人材が少ないという課題があります。
働き方の変化
終身雇用や年功序列の雇用形態が、今の時代にそぐわず、若い世代は多様な働き方を求める傾向にあります。転職を好意的に受け入れる企業も増えており、フリーランスや副業といった働き方も浸透してきています。
また、リモートワークやワーケーションなどオンラインで仕事ができる方法もあり、会社への貢献を最優先として働く母数が減少しています。
人手不足で厳しい産業分野
厚生労働省「労働経済動向調査(令和5年2月)の概況」によりますと、労働者の過不足状況では、特に「医療・福祉」「建設業」「運輸業・郵便業」で人手不足感が高いという結果となっています。
「医療・福祉」で66%、「建設業」58%、「運輸業・郵便業」で57%の割合となっています。
運輸業・郵便業
運輸業・郵便業の人手不足の主な原因は、ドライバーの高齢化、宅配便の需要の増加、厳しい労働環境、時間外労働の上限規制などがあります。
ドライバーの平均年齢は、大型トラックが47.5歳、中小型トラックが45.4歳で、全職業の平均が42.2歳であるのに対し、高齢化の問題があります。また、宅配便の需要が急激に伸びているため、ドライバーが不足している状況です。さらに、運輸業・郵便業の労働時間が超過しているのに、賃金水準が低く待遇が悪いことも、求職者の集まりにくさと現社員の離職率の高さに影響しています。
建設業
建設業では、労働人口の高齢化や、建設業のイメージから若者層から敬遠される傾向があることなどが、人材不足につながる要因となっています。また、厳しい労働条件に合わない給与水準の低さも、人材が集まらない理由になっています。
一方、建設業の需要は増えている傾向にあり、大規模なプロジェクトの計画や災害対策への支援業務など、建設業で働く人材確保が急務となっています。
したがって、建設業では人材の需要と供給のバランスが崩れており、現社員の業務負担が多くなる一方で、新しい人材を確保するのが厳しい状況が続いています。
医療・福祉業
医療・福祉業界で、人手不足が顕著なのは介護業界です。介護職の人材不足は、2025年度までは毎年5万人規模、2040年度には毎年3万人が予測されています。
介護業の人手不足は、労働環境の厳しさと低賃金による雇用など、雇用条件が悪いという問題に起因しているようです。
日本の人材確保対策
厚生労働省は、人材確保の取り組みとして、雇用管理改善支援、マッチング支援、能力開発支援を通じ、人材不足が顕在化している分野への対策を促進しています。
特に人材不足の深刻化が増している以下の産業分野に対して、施策を講じています。
看護分野
「医療勤務環境改善支援センター」による医療機関の勤務環境改善に関する支援を行います。医療スタッフの離職防止や医療安全を確保するために、働き方改革の促進と、個々のニーズに応じた専門家チームによる総合的な支援をワンストップで受けることができます。
また、人材確保対策コーナーやナースセンターでは、看護分野の求人と求職者の効果的なマッチングを図っています。
介護分野
介護人材を確保するために、雇用管理改善支援、雇用管理マニュアルの作成、事務作業の効率化、介護講習や相談の受付、助成金の活用、求人と求職のマッチング支援や介護職員の能力開発の支援などを行っています。
保育分野
職場環境の改善、保育士の処遇改善、雇用管理の研修、求人と求職のマッチング支援、各種の教育訓練機関で保育士の育成支援、保育士資格の取得支援や研修の実施などを行っています。
建設分野
建設事業主などに対する助成金の利用、雇用管理の改善、入職を促す研修、建設業における労働力需給調整システムの導入、人材確保対策コーナーにおけるマッチング支援など、建設業の事業者が活用できる支援策が提供されています。
人手不足の解消策
続いて、人手不足を解消する対策について確認しましょう。
労働条件の改善
人手不足となっている産業では、厳しい・きつい仕事であるのに賃金水準が低いという共通点があります。仕事の厳しさに比例しない給与では、定着して働くことが難しく、離職につながるケースも多くなります。
長時間労働の問題に関しては、労働基準法の改正により残業時間の上限が規制されるため、仕事のできる時間と仕事量のバランスを考えて雇用管理を見直すことが急務となっています。
また、若い労働力を確保するためには、年功序列を見直して、成果や能力に見合った雇用管理を検討することが必要となっています。
IT化の促進
人手不足を解消するには、人の代わりに業務を効率化できるITの導入が効果的です。業務の自動化や効率化は、デジタル技術によって解消される作業がたくさんあります。
IT活用によって、経費や人件費などのコスト削減につながるケースもあります。
女性や高齢者の雇用
労働人口の減少により、女性やシニア層の求人も増加傾向にあります。
育休期間を経て仕事に復帰する女性が増えているため、優秀な人材が再雇用で確保できるケースもあります。また女性ならではの気配りや発想が仕事上のメリットにつながることや、コミュニケーション能力を発揮して活躍できる職場もあります。
シニア層を採用する場合は、社会経験が長く、安心して仕事を任せられることや離職リスクが低いことなど、高齢者ならではのメリットがあります。
外国人労働者の受け入れ
人手不足の解消策として、在留資格「特定技能」が2019年に設立され、12の産業分野で外国人を雇用できるようになっています。特定技能では、1号で5年、2号に移行した場合は在留期間の制限なしで滞在することが可能です。
政府は、2024年から5年間で、特定技能の外国人を上限80万人超で受け入れることを公表しています。
外国人労働者を雇用するためのチェックポイント
外国人を雇用する際は、以下のポイントを確認して採用活動を進めましょう。
在留資格
日本で働く外国人は、就労できる在留資格の取得が必要です。在留資格には、日本で活動する内容が決まっているため、会社で従事する業務内容との整合性や雇用期間に合わせて在留期間を確認しましょう。また、学歴や実務経験の条件などについても確認が必要です。
法務省の調査による在留資格別で多いのは、1位:永住者、2位:技能実習、3位:技術・人文知識・国際業務です。(令和5年6月末現在)
入管法改正
外国人を雇用する際は、入国管理法について確認が必要です。また、入管法改正に対しては、随時、変更内容に合わせて外国人社員の雇用管理を行うことが必要です。入管法のルールに違反した場合は、罰則が科せられますので注意が必要です。例えば、外国人に不法就労をさせたり、不法就労をあっせんしたりした罪「不法就労助長罪」に該当した者は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金の対象となります。
外国人雇用の社会問題
外国人技能実習生の失踪は、社会的な問題となっています。国際貢献を目的とした技能実習制度が、単なる労働力確保の手段となっていることが指摘されている部分です。日本政府は、2024年以降、技能実習制度の廃止や新制度「育成就労制度(仮称)」の創設など、外国人人材の人権保護や労働環境の整備のために改革を促進する予定です。
日本語能力
外国人の日本語能力は、在留資格別に条件が決められています。 「特定技能」は日本語能力N4以上、「技術・人文知識・国際業務」はN1~N2レベル相当、「高度専門職」は高度人材ポイントが加算され、N1(BJTスコア480点以上)で15ポイント、N2(400点以上)で10ポイントが付与されます。 採用する外国人に必要な日本語レベルを確認し、採用後も社内で日本語講習を行ったり、日本語上達に役立つ対策を行ったりすることも大切です。人材紹介会社
人材紹介会社に依頼する際は、外国人雇用に特化した会社を選びましょう。
外国人の求人、面接日程の調整、ビザ申請や入国サポート、採用後の対応についてなど、外国人雇用におけるノウハウを持って人材紹介を行っています。
海外からの採用には、直接雇用では難しいプロセスがあるため、適切な人材紹介会社が仲介することで手続きをスムーズに行うことができます。
まとめ
人手不足の問題解決は急務となっています。国が取り組む支援の利用や労働環境の改善、デジタル化の導入、外国人雇用など、多様な採用方法で人材確保につなげていきましょう。
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