飲食業で外国人を雇用できる在留資格
「技人国」と業務範囲
2023.07.20
飲食業界で外国人労働者を雇用する際は、在留資格「技術・人文知識・国際業務(技人国)」について確認しましょう。「技人国」で従事できる業務範囲のルールについては、採用時のポイントとなりますので合わせて確認しましょう。
本記事では、飲食業で外国人を雇用できる「技人国」とそのほかの在留資格について解説していきます。
CONTENTS
1.飲食業で外国人雇用するには「技人国」は使える?
コロナ禍以降、より人手不足が顕著になっている飲食業界では、これまで以上に外国人の積極的な採用が増えています。外国人労働者がレストランや居酒屋などの飲食店で就労する場合は、その業務に応じた在留資格を取得する必要があります。
2.「技人国」で従事できる飲食業の業務
在留資格「技人国」は、外国人の母国の文化と業務に関連性がある場合や、大学や専門学校で学んだ技術・知識(学歴・職歴)が関連する業務でなければ取得できません。つまり「技人国」で雇用できるのは、飲食チェーン企業の本社スタッフなどに限られ、単純労働とみなされるホール業務や調理などの仕事での雇用はできないので注意しましょう。
2-1.事務・管理職(本社スタッフ・マネージャーなど)
「技人国」で雇用できる業務内容には、飲食店を多店舗運営する本社スタッフや会社のマネージャー、スーパーバイザーが挙げられます。ほかに店舗管理やマーケティングの仕事や、外国人客が非常に多く、日常的に翻訳・通訳の必要性がある場合も「技人国」を取得できる場合があります。
「技人国」では本社スタッフやマネージャーなどでの雇用に限られるということは、つまり、飲食店を経営する企業が一定以上の規模である必要があります。
2-2.兼業で働くことはできない
事務や管理職業務での雇用を前提に「技人国」を取得した場合、その業務を行いながら接客や調理の仕事を兼業することはできません。したがって、マネジメントに関わるとはいえ、店舗で働く店長などでの雇用は実質的に難しいといえるでしょう。
なお、「技人国」の在留資格で店舗スタッフの仕事をさせると、入管法違反(不法就労助長)となるので注意が必要です。
3.飲食業で外国人雇用できるそのほかの在留資格
飲食業で在留資格「技人国」での外国人雇用は、その業務内容が限定されることを説明してきました。しかし、飲食業に従事できる就労資格は「技人国」以外にも「技能」「特定活動46号」「特定技能」があり、それぞれで従事できる内容が異なります。
3-1.「技能」
熟練の技術を活かして日本で働くことができるのが在留資格「技能」です。「産業上の特殊な分野」の知識と実務経験のある外国人労働者が対象となり、飲食業の場合は「調理師」が該当します。外国人調理師として雇用する条件としては、本国で調理の実務経験が10年以上あることが求められます。
なお、単純労働に従事させることはできないので、調理補助や清掃などの業務は該当しません。
3-2.「特定活動46号」
日本の大学を卒業した高い日本語能力を持つ外国人留学生が、日本で就職するための在留資格が「特定活動46号」です。飲食業、製造業、小売業、ホテル・旅館業、タクシー業、介護業などの職業が該当し、「技人国」よりも幅広い業務が認められています。外国人客に対して通訳を兼ねた接客業務(日本人への接客も含む)などが業務内容の例となり、清掃や調理補助などの単純労働も含まれますが、単純労働のみでの雇用は認められません。
「特定活動46号」を取得するためには、日本の4年制大学・大学院を卒業していることのほか、日本語能力検定N1かBJTビジネス日本語能力テスト480点以上をクリアしていること、もしくは大学・大学院において「日本語」を専攻して大学を卒業したことが必須条件となっています。
3-3.「特定技能」
各省庁が選んだ人手不足と認められる業界で外国人労働者が働ける在留資格が「特定技能」です。飲食業も該当し、レストランや居酒屋、カフェ、テイクアウト専門店などさまざまな業態で雇用可能です。調理や接客、清掃などの単純労働はもちろん、店舗管理や原材料の仕入れなど幅広い業務に従事できます。
採用の幅が広がる「特定技能」の取得に学歴や職歴は不用ですが、日本語能力検定N4以上の認定が必要です。
4.就労資格がなくても雇用できる外国人労働者
ここまで飲食業で雇用できる在留資格「技人国」「技能」「特定活動46号」「特定技能」について説明してきましたが、最後にこの4種類の在留資格以外でも雇用できる外国人労働者の条件「資格外活動許可」と「身分系の在留資格」についても解説します。
4-1.「資格外活動許可」を取得した外国人
「資格外活動許可」とは、取得した在留資格で許可された活動以外の活動を行いたい場合に申請します。具体的には在留資格「留学」や「家族滞在」など、就労することができない在留資格を持つ外国人が働きたいときに利用します。
ただし、条件として就労活動できる時間の上限が「連続した7日間で28時間まで」と定められています(留学生の場合、夏休みなど長期休暇中は1日8時間まで(7日間で40時間が目途)。
4-2.「身分系の在留資格」を持つ外国人
身分系の在留資格とは「永住者(日本の永住権を取った外国人)」「日本の配偶者等(日本人と結婚している外国人など)」「永住者の配偶者等(永住者と結婚している外国人など)」「定住者(日系人やその配偶者など)」の総称です。これらの在留資格を持っている外国人は就労するにあたりなんの制限もありません。つまり新規に就労資格を取得する必要がなく、単純労働を含むどのような業務でも雇用できます。
しかし、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格を持っている方が配偶者と離婚すれば、これらの在留資格を更新できなくなるので雇用継続にあたっては注意する必要があります。
5.まとめ
飲食業で「技人国」の在留資格で外国人を雇用する場合は、その業務内容が事務や管理職などに限定されるので、従事する仕事の内容をしっかりと確認する必要があります。接客やホール業務、料理補助などは、本記事で解説した「技人国」以外の在留資格での採用を検討するとよいでしょう。
飲食業で外国人労働者の採用活動を行う際は、在留資格により従事できる業務とできない業務があることを把握することが大切です。
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