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契約を打ち切って外国人労働者を解雇する場合、必要な手続きや知っておくべきこと

契約を打ち切って外国人労働者を解雇する場合、必要な手続きや知っておくべきこと

やむを得ず外国人労働者を解雇しなければならない場合、どのような流れで行えばいいのでしょうか。

外国人労働者の解雇は、定められたルール通りに行わなければ法律違反になることがあります。解雇に関する決まりを理解しておく必要があります。

 

外国人労働者の雇用中、やむを得ない事情によって解雇しなければならないこともあるでしょう。


しかし安易な解雇は遠く離れた国で働く外国人労働者にとって大変な恐怖と困難を与えてしまうものです。当然、不当な解雇は法律で認められていませんし、どうしても外国人労働者を解雇する場合は必要な手続きを踏むことが義務付けられています。


この記事では、外国人労働者を解雇する場合に必要な手続きと注意点について説明します。

CONTENTS

  1. 1. 外国人労働者に適用する日本の解雇ルール
  2. 2. 外国人労働者の解雇に関する法令
  3. 3. 外国人労働者が解雇されるケース
  4. 4. 妊娠や出産などの理由では解雇できない
  5. 5. 解雇に必要な手続き
  6. 6. 解雇で起こるトラブルと対策
  7. 7. 解雇された外国人の在留資格はどうなる?
  8. 8. まとめ
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外国人労働者の解雇はどのような場合に考えられるのでしょうか。

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度重なる無断欠勤や社内での迷惑行為が目に余るなど、客観的・合理的な面からみて正当な理由がある場合は解雇の対象となります。

1.外国人労働者に適用する日本の解雇ルール

日本の企業に勤務している外国人労働者を解雇する場合は、日本の法律に基づいて解雇します。

“労働者の解雇に関しては、労働契約法第16条において下記の通りに定められています。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする”
引用:労働契約法(◆平成19年12月05日法律第128号)

上記の条文から考えると、従業員を解雇できるのは客観的にみて合理的な理由があり社会通念上相当である場合といえます。

言い換えるなら、正当な理由があれば労働者を解雇することに問題はありません。
具体的な事由としては、下記が挙げられるでしょう。

  • 遅刻や無断欠勤が多い
  • 協調性がなく、社内で迷惑行為を繰り返している場合
  • 社内外で何らかの犯罪におよんだ場合
  • 入国管理局から在留資格を取り消された場合

1-1.解雇の種類

解雇の種類は、次の3種類が挙げられます。
  • 普通解雇
  • 整理解雇
  • 懲戒解雇

普通解雇

普通解雇とは、労働者の能力不足や迷惑行為などが原因で解雇することです。労働者が業務中の失敗で上司に迷惑をかける程度では、普通解雇に至ることはほとんどありません。ただし、労働者に対して繰り返し教育しても能力の向上がみられなかったり、労働者が毎日のように迷惑行為を繰り返したりしている場合は、解雇の事由になり得ます。

そのほか、外国人労働者の在留資格が取り消された場合の解雇も普通解雇に含まれます。外国人労働者の在留資格が取り消された状態で雇用を続けてしまうと、企業側は不法就労を認めていることになり「不法就労助長罪」という罪に問われてしまうため、解雇は必要な対処といえます。なお、不法就労助長罪は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられます。

整理解雇

整理解雇とは、景気の悪化などでやむを得ず業務を縮小しなければならない場合、コストを抑えるために労働者を削減する解雇のことです。企業は整理解雇より前に経営を立て直すなどの努力をする必要はありますが、それでも立て直せない場合に整理解雇をするのが一般的です。

ただし、整理解雇をする際、外国人労働者ばかりを解雇すると差別的な扱いとみなされてトラブルの原因になりかねません。企業側には労働者の能力をきちんと考慮した上での正当な整理解雇の実施が求められます。

懲戒解雇

懲戒解雇とは最も厳しい処置であり、労働者が重大な犯罪行為、背信行為に及んだ場合などに実施されるものです。懲戒解雇をする理由としては、社内において再び同じような過ちが起きないようにすることや、厳しく対処することで社会から見た企業の信頼低下を少しでも防ぐためといったことが挙げられます。

業務時間内・外、問わず、雇用している労働者が重大な罪を犯し、企業に影響が及ぶとみなされる場合は懲戒解雇を行うことがあります。

2.外国人労働者の解雇に関する法令

外国人労働者も日本人労働者同様に、労働基準法3条が適用されます。外国人であることを理由に解雇するなどの差別的取り扱いは許されません。

“使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。”
引用:労働基準法 第三条| e-Gov 法令検索

また、解雇が認められるには労働契約法の定めにある相当程度の理由が必要です。
無期雇用の労働者か有期雇用の労働者かで条文が異なりますので、一つずつ確認します。

2-1.無期雇用

無期雇用労働者の解雇は、労働契約法16条が適用されます。

“解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。”
引用:労働基準法 第十六条| e-Gov 法令検索

2-2.有期雇用

一方、有期雇用労働者の解雇は、労働契約法17条1項の適用を受けます。日本に出稼ぎに来ている外国人労働者の多くは外国人技能実習生や特定技能外国人ですが、これらの外国人は有期雇用されているケースが多いため注意が必要です。

“使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。”
引用:労働基準法 第十七条一項| e-Gov 法令検索

無期雇用が「合理的理由」かつ「社会通念上相当」であると認められれば解雇できるのに対し、有期雇用は「止むを得ない事由」がないと解雇できません。

これは、あらかじめ企業と労働者が合意して雇用期間を定めている以上、労働者は、契約期間中の雇用保障を求めるのが当然という考え方があるためです。そして企業もまた、契約期間中の雇用義務を果たすべきと考えられています。

3.外国人労働者が解雇されるケース

結論から言うと、有期雇用労働者の解雇が妥当と判断されるケースは極めて稀であり、ほとんどが違法になると言っても過言ではないでしょう。つまり、外国人労働者においても能力不足などの事由は「やむを得ない事由」とは判断されないのが一般的です。

その中でも、「やむを得ない事由に該当する」として例外的に解雇が認められた数少ないケースを3つ紹介します。
外国人労働者の解雇を検討する際の参考にしてください。

  • 業務上の犯罪行為があった場合
  • 私傷病で長期にわたり休業し、就業できるようになる目途が立たない場合
  • 経歴を詐称して雇用された場合

4.妊娠や出産などの理由では解雇できない

妊娠や出産などを理由とする解雇は、男女雇用機会均等法9条3項において禁止されています。
外国人技能実習生や特定技能外国人も同様に本法が適用されます。

“事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和22年法律第49号)第65条第1項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第2項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。”
引用:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律|条文|法令リード

つまり、外国人労働者が妊娠や出産などにより業務に従事できなくなったとしても、事業者は当該外国人を解雇することはできません。

妊娠・出産などにかかる技能実習生の取り扱いについては、出入国在留管理庁のサイトに掲載されているとおりです。
引用:出入国在留管理庁「技能実習生の妊娠・出産について」

技能実習生が実習終了を希望しない限り、事業者は技能実習を中断し、再開の目途が立てば実習の継続に向けてフォローする必要があります。なお、技能実習の中断は日本で出産するしないにかかわらず可能です。

5.解雇に必要な手続き

外国人労働者を解雇する場合に必要な手続きとしては、下記が挙げられます。
  • 解雇予告をする
  • 解雇理由証明書を発行する(外国人労働者から請求された場合のみ)

そのほか、必要に応じて下記の書類も提出します。
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の提出
  • 雇用保険被保険者資格喪失届の提出
  • 外国人雇用状況届出書の提出

5-1.解雇予告をする

日本人・外国人を問わず普通解雇や整理解雇の場合、従業員を解雇する際は事前に解雇予告をします。解雇予告は、解雇する日の30日前までに行わなければなりません。なお、解雇予告をせずに解雇する場合は、労働者に対して30日分以上の解雇予告手当を支払うことで解雇とみなされます。

5-2.解雇理由証明書を発行する

外国人労働者から「解雇理由証明書を発行してほしい」と依頼を受けた場合は、解雇理由証明書を発行しなければなりません。

5-3.健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の提出

外国人労働者が健康保険、および厚生年金保険に加入していた場合は、年金事務所に健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届のほか、外国人労働者が持っていた健康保険被保険者証を添付して提出します。

外国人労働者から健康保険被保険者証を受け取れなかった場合は、健康保険被保険者証の代わりに「健康保険被保険者証回収不能届」を提出します。

5-4.雇用保険被保険者資格喪失届の提出

外国人労働者が雇用保険に加入していた場合は、ハローワークに雇用保険被保険者資格喪失届と離職証明書を提出します。離職は不要であると申し出た場合は、離職証明書の提出は不要です。

5-5.外国人雇用状況届出書の提出

外国人労働者が雇用保険に加入していない場合は、ハローワークに外国人雇用状況届出書を提出します。



解雇に必要な手続き

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外国人労働者を解雇するときに起こり得るトラブルとその対策について教えてください。

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トラブルの原因としては、不当解雇と訴えられることや解雇予告をせずに解雇することなどが挙げられます。その対策についてはこの項目で説明します。

6.解雇で起こるトラブルと対策

外国人労働者を解雇するときに起こり得るトラブルの例としては、下記が挙げられます。
  • 外国人労働者から不当解雇であると訴えられる
  • 解雇予告をせずに解雇をしてしまった
  • 期間の定めのある労働契約中に労働者を解雇した

それぞれの事例について説明します。

6-1.外国人労働者から不当解雇であると訴えられる

外国人労働者から不当解雇であると訴えられると、企業側が損害賠償請求を受けることがあります。外国人労働者から不当解雇と訴えられないようにするためには、客観的・合理的な観点に基づいて解雇することが大切です。

具体的には、遅刻や無断欠勤、協調性に欠けた行動が多いなど、会社側にさまざまな迷惑をかけていることが挙げられます。企業側が、外国人労働者を客観的・合理的な観点に基づいて解雇し、解雇の理由を明確に説明できれば、外国人労働者からは不当解雇だと訴えられにくくなります。

6-2.解雇予告をせずに解雇してしまった

解雇予告をせずに解雇してしまうと、トラブルの原因になりかねません。

前述した通り、解雇予告は解雇する30日前までに行わなければなりません。なぜなら、外国人労働者が急に解雇された場合、収入の目途が立たなくなり生活が困難になってしまうためです。また、解雇予告を行うことは労働基準法で定められているため、解雇予告を行わなければ外国人労働者から訴えられる可能性があります。

もし、解雇予告をせずに解雇せざるを得ない場合は、30日分以上の解雇予告手当を支払うことで解雇とみなされます。解雇予告をせず、しかも解雇予告手当を支払っていない場合は法律違反となり、6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられるため、注意が必要です。

6-3.期間の定めのある労働契約中に労働者を解雇した

労働契約の内容によっては、期間の定めのある労働契約が締結されることがあります。期間の定めのある労働契約に関しては、労働契約法第17条において下記のとおりに定められています。

“使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない”(引用:労働契約法)

期間の定めのある労働契約を締結している場合、原則として労働者を解雇できません。解雇できるのは、労働者が会社に多大な迷惑をかけている場合など、やむを得ない事由がある場合に限られます。期間の定めのある労働契約を締結している労働者は、労働契約において期間が定められていない労働者と比べると、解雇しにくいことを理解しておきましょう。

7.解雇された外国人の在留資格はどうなる?

万が一、やむを得ない事由により外国人労働者を解雇した場合、当該外国人の在留資格はどうなるのでしょうか。
技能実習と特定技能の2つの在留資格別に見ていきます。

7-1.技能実習

技能実習生の転職は、原則不可です。雇用契約を締結した受け入れ企業で就労することを前提に在留資格が与えられているため、解雇されれば在留資格を失い、母国へ帰国しなければなりません。

例外的に他の企業に転籍できる場合も、受け入れ企業側の事情により技能実習制度の趣旨に沿えない特別な事情があると判断された場合に限られています。

7-2.特定技能

技能実習生と異なり、特定技能外国人は転職が可能です。ただし、在留カードとともに交付される指定書に就業先が記載されているため、在留資格変更許可申請をして、指定書の就業先を変更する必要があります。

特定技能外国人は、解雇されても在留資格変更許可申請により転職が可能なため、日本に滞在し続けることができます。

8.まとめ

やむを得ない事情で外国人労働者を解雇しなければならない場合、客観的・合理的な理由に基づいて解雇すること、そして、通常の場合は解雇の30日前までに解雇予告が必要となります。例えば、無断欠勤や遅刻が多かったり、協調性に欠けて頻繁に迷惑をかけていたりしている場合は解雇の理由となります。

しかし、もし解雇の理由が客観的・合理的なものでなければ、外国人労働者から訴えられる可能性があるため、正当な理由がない限り安易に解雇はできません。

解雇をする場合は、解雇の事由を確認し、法律で定められた解雇のルールに基づいて行うようにしましょう。



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