関東大震災【その時、地震未経験の外国人の反応とは?】
Case4-4 経験的にあり得ない
生活関連
2024.03.22
これから外国人材の雇用を予定している人もそうでない人も!!
異なる人種、文化、価値観に触れる時
― 外国人って、どんな人たちなんだろう
― どんなことに気をつけたらいいんだろう
― 日本人や日本の文化をどう思ってるんだろう
などなど、不安や疑問に思うこと、ありますよね。
この記事は、実際に起きた珍事を元に、外国人雇用の現場に携わる人々の戸惑いを描き、
「外国人材の皆さんと、どんなふうにコミュニケートしたらよいの?」
のヒントが隠れる、異文化理解の橋渡しを目的としたノンフィクションストーリーです。
異なる人種、文化、価値観に触れる時
― 外国人って、どんな人たちなんだろう
― どんなことに気をつけたらいいんだろう
― 日本人や日本の文化をどう思ってるんだろう
などなど、不安や疑問に思うこと、ありますよね。
この記事は、実際に起きた珍事を元に、外国人雇用の現場に携わる人々の戸惑いを描き、
「外国人材の皆さんと、どんなふうにコミュニケートしたらよいの?」
のヒントが隠れる、異文化理解の橋渡しを目的としたノンフィクションストーリーです。
合理的にあり得ない
~キャリアアドバイザー青山智香の解明~第4話
>第1話はこちらから>>第2話はこちらから
>>>第3話はこちらから
解決
20××年 、23時を過ぎた頃、それは起きた。私はベトナム人技能実習生。
突き上げるような縦揺れと、立っていられないほどの横揺れ。しかも数分にわたる振動。
家中の物がガラガラと音を立て、浮き上がり、あらぬ方へ飛んでいく様は、この世の終わりと死を予感させた。
逃げてくる間も余震に襲われ、その度に立ち上がれないほどの恐怖を感じた。
誰かが「こっちだぞー!」と声を上げ誘導してくれる方にひた走った。
持ってきた荷物も、手や膝も泥だらけになり、どうにか公園にたどり着くと、既にたくさんの人たちが集まっていた。
誰か知っている人は居ないだろうか?
ぐるりと見回すと、ひと際大騒ぎしている集団があった。目を凝らす。近づいていくとベトナム語で何かまくしたてているような声が聞こえてくる。
声の正体は、同じ寮の男性3人だった。
彼らは入社前研修で学んだことなどすっかり忘れ、毛布にくるまり、寮を飛び出しまっしぐらにこの公園に向かってきたらしい。
「ここに居たんだね。大丈夫?」
3人の顔が一斉にこちらを向き、安堵の雰囲気が伝わった。皆、手を握り、口々に互いの無事を確かめ合う。
今日は月明りがあってよかった。人の顔が見えると心なしかホッとする。自分はまだ生きている。世界もまだ終わってない。
公園には他の国の外国人もたくさん居て、なぜか母国の家族に中継を始めようとする人、ただただ叫ぶ人、それらの人をなだめる人など、慣れない地震に戸惑う人々の様子が見て取れた。
隣で同じ部屋のBさんがずっと泣いていて、私も泣きたい気持ちになりながらも、会社の人たちと安否確認の連絡を取り合っていた。ここでも、心配と励ましの言葉が続き、人の優しさ、有難さを感じた。
さて、あの恐怖から2-3時間は経っただろうか。
これから、駆け付けてくれた青山さんと共に寮に戻る。部屋で壊れた物、危険な状態にある物など確認、処理してライフラインのチェックをしなければならない。
地震後しばらくは、再び大きな揺れがくる可能性も踏まえて部屋には入らず安全なところに居るよう指導されていたため、今、室内がどうなっているかわからない。余震の頻度も減り、揺れもじっとしていなければ感じないほど小さくなっていた。
━人生初めての地震。
ベトナムは地震がなく、日本に来て、研修や防災訓練で学んだ。
揺れている時は、頭を守る行動を取る。絶対に慌てて逃げないこと。
今回、棚の上の段ボールが落下していた。中身がインスタント食品の類だったため被害はなかったが、棚の上に物を置く場合は固定するなど工夫が必要だ。もしくは物は置かないこと。通路が塞がれ、逃げられない可能性がある。
また、防災グッズはいざという時にとても役に立つ。
これがなかったら動揺して手ぶらで逃げるところだった。いくら救助が来るといっても、万が一、自分ひとりで、誰も居ない場所に避難しなければならない時には間違いなく安心だ。そして、こうした事前準備が非常事態にどのぐらい効果的か、今回、身をもって体験した。
最後に貴重品。
これは一般的に言われていることだが、私たち外国人は在留カードやパスポートも大切だ。こうした貴重品は収納場所を決めておいて、いざという時に探し回らなくて済むようにしておきたい。
寮までの道は、民家の庭の壁が崩れたり、落下した鉢が散乱していたりと危ない箇所が多く、途中から大通りに出て遠回りして帰ることになった。
青山さん自身も着の身着のままで、きっと自宅や家族、知人の様子が心配なはずなのに、私たちを励ましながら先導してくれている。
寮に着くと、オーナーさんや近所の人たちが集まり、大きな物を運び出していた。
私たちが帰ってくる前に、共有スペースの危ない物を外に移動させているという話しだった。
部屋に入ろうと玄関を開けると、世界が崩壊するかのような物音や見たこともない光景が反芻した。
また地震が来たらどうしよう………。
不安に駆られ、足が止まり、しゃがみこんでしまった。
男性陣3人も、同時に立ち止まる。
「4人とも、私たちが居るから大丈夫だからね。何かあったら助けにくる。サポートもする。今日だって避難できた。また、防災訓練も実施する。ひとりじゃないよ?」
青山さんが、背中をさすってくれた。
そうだ、きっと大丈夫だ。
地震が来たらまた同じように避難すればいいんだ。今回の経験を活かして対策しておこう。訓練にも参加しよう。
そうすれば、きっと……。
立ち上がり、そっと一歩、踏み出した。
経験的にあり得ない
【関東大震災 ━地震未経験の外国人の反応とは】
終
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ストーリー中のキャリアアドバイザー青山智香がおこなう、寮の巡回を含むさまざまなサポートは【LifeSupport(外国人生活支援サービス)】によるもの。
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