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入管法改正案が廃案に。今後の入管法改正はどうなる?

生活関連

2022.06.20

日本国内の不法残留者の増加を抑制する対策として、2021年2月に入管法改正案が国会に提出されました。

しかし、入管法改正案は人権保護の観点から反対の声が根強く、改正されることなく2021年5月に廃案となっています。

では、2021年2月に提出された入管法改正案とはどのような内容で、具体的にどのような経緯で廃案になったのでしょうか。今回の記事では、入管法改正案が廃案になった背景や、入管法改正案の問題点などについて解説します。

CONTENS

  1. 1.入管法改正案とは
  2. 2.入管法改正案が廃案になった背景
  3. 3.廃案となった入管法改正案の問題点
  4. 3-1.難民保護の観点に反する
  5. 3-2.監理措置が設けられる
  6. 3-3.送還を拒否すると罰則を受ける
  7. 4.未だ課題が残る入管法
  8. 4-1.収容の問題は依然として解決しない
  9. 4-2.諸外国と比較すると日本の難民認定率は低い
  10. 5.まとめ

1.入管法改正案とは

入管法改正案が廃案になった背景について理解するためには、まず入管法改正案がどのような内容であったかを知る必要があります。

法務省出入国在留管理庁によると、2021年2月19日に国会へ提出された入管法改正案のポイントとしては、大きく分けて以下の3つが挙げられています。

  • 在留が認められる人を適切に判別する
  • 在留が認められない人は迅速に送還する
  • 長期間にわたる収容を解消し、適切な処遇を実施する

そもそも入管法改正案が作成された背景は、日本国内にとどまる不法残留者が増加しており、それに対処するためです。日本に入国する外国人は年々増加傾向にありますが、それにともなって不法残留者も増加傾向にあります。

不法残留は違法行為であるため、不法残留者が増えるほど、日本で生活する人にとっては安心・安全な生活がおびやかされる原因にもなりかねません。

初めて日本を訪れる外国人が不法残留者の影響を受けることなくスムーズに入国できること、そして日本に住む人が安心して生活できることを目的として入管法改正案は作成されましたが、この期待とは裏腹に廃案へと至ります。

2.入管法改正案が廃案になった背景

もともと批判も多かった入管法改正案ですが、廃案となった決定的な出来事はスリランカ人の女性が収容施設で亡くなったことでした。

スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんは2017年に留学の在留資格で日本に入国しましたが、日本語学校を除籍された後は所在不明になり、不法残留となっていました。その後、2020年8月に自ら静岡県の交番に出頭し、施設に収容されることとなりました。

施設に収容された後、ウィシュマさんは体調不良を訴えて仮放免の申請をしますが、入国管理局は逃亡される可能性があるとして仮放免の申請を拒否しました。

その後、ウィシュマさんの体調はさらに悪化し、死亡してしまったのです。

ウィシュマさんが死亡してしまったことは、出入国在留管理庁の対応に問題があると、大きな批判を集めました。本来であれば、原因の究明を明確に行うべきですが、それが行われなかったために同庁に対する不信感が高まり、改正法案は廃案となりました。

3.廃案となった入管法改正案の問題点

廃案となった入管法改正案の問題点としては、以下が挙げられます。

  • 難民保護の観点に反する
  • 監理措置が設けられる
  • 送還を拒否すると罰則を受ける

ここでは、それぞれの問題点について説明します。

3-1.難民保護の観点に反する

入管法改正案の問題点は、難民保護の観点に反する点です。

日本は難民条約に加盟しているため、難民はもちろんのこと、難民申請者も送還することができません。

現行の法律では、難民申請を行っていれば申請回数にかかわらず送還されることはありません。しかし、改正法案では難民申請が3回目以降の場合は出入国在留管理局の判断によって送還することができます。

難民申請中の人をむやみに送還してしまうと、その人は送還先で危険な目に遭ってしまうことも十分にありえます。難民申請者を保護するという観点から見ると、入管法改正案は理にかなっていないといえるでしょう。

3-2.監理措置制度が設けられる

監理措置とは、不法残留者が逃亡することのないよう、監理人による監理を行う措置制度のことです。

改正案に監理措置が盛り込まれた理由は、不法滞在者が収容施設に長期間収容されてしまうことを防ぐためです。たとえば、難民申請の手続きを行っている外国人は送還できないため、収容施設に長期収容されることになります。

監理措置が設けられると、施設外で監理人による監理を受けて生活する形となるため、長期収容の問題は解決します。

しかし、ここで問題になるのは、「監理人を誰にするか」という判断を出入国在留管理庁が行う点です。監理人には、親族などの支援者や弁護士が選ばれることもあり、監理人となった場合は入管庁の指示に従って不法残留者を監理する立場となります。

監理人は不法残留者の生活について監督し、入管庁に報告する義務を負います。そして、仮にこれらの義務を果たすことができない場合は、罰金などの罰則を負ってしまうことになります。

つまり、本来支援者であるはずの親族や弁護士が、罰則を恐れるあまりに支援ができないといった問題が生じるのです。反対に、適切な対応を取らないことで支援者が罰則を受ける可能性もあるなど、様々なリスクが考えられ、倫理観も問われる形となりました。

3-3.送還を拒否すると罰則を受ける

入管法改正案では、送還を拒否した場合、1年以下の懲役もしくは20万円以下の罰金を科せられます。

不法残留者が送還を拒否する理由としては、本国に送還されると命が危険にさらされる可能性があるためです。

日本で難民として認定されれば、本国で危険におびやかされることなく安全な生活を送れます。しかし、強制送還に従わざるを得ない状況では、不法残留者の人権が保護されなくなってしまいます。

4.未だ課題が残る入管法

入管法改正案は廃案となりましたが、同法案が廃案になっても収容の問題、そして難民認定率の低さがすぐに改善する兆しはみられません。

それでは、それぞれの問題についてみていきましょう。

4-1.収容の問題は依然として解決しない

不法滞在者の増加と収容の長期化の問題について、NHKのサイトでは以下のように報じています。

2021年1月時点で、日本に不法に滞在している外国人は8万2868人と、この5年間で2万人以上増えている。そして国外退去処分を受けた外国人が、送還を拒否することで、入管施設での収容が長期化するケースが相次いでいるのだ。

(中略)

およそ6割は、収容が半年以上に及んでいる。中には8年を超える収容者もいるという。

(引用:NHK 政治マガジン 2021年6月2日付)

収容の長期化を解決するため、入管法改正案には「在留が認められない人は迅速に送還する」という内容が盛り込まれました。

同法の改正案は、不法残留者の人権が保護されないという見方から廃案となりました。しかし、それにともなって、収容の長期化を解決する方法については解決の糸口が見えない状態となっています。

4-2.諸外国と比較すると日本の難民認定率は低い

日本の難民認定率は世界的に見ると低い状況です。

出入国在留管理庁が公表している「難民認定者数等について」によると、2019年、2020年の難民認定申請者数、難民と認定した外国人の数は以下の通りとなります。


※左より、「年」「難民認定申請者数」「難民認定者数」
2019年:1万375人 44人
2020年:3936人 47人

【出典】
出入国在留管理庁
令和元年における難民認定者数等について
https://www.moj.go.jp/

令和2年における難民認定者数等について

https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/07_00003.html

上記の数値をもとに日本の難民認定率を計算すると、2019年は0.4%、2020年は1.2%となります。

2020年は、2019年と比べると難民認定申請者数が大きく減少したため、難民認定率が若干上昇しています。しかし、諸外国と比べると日本の難民認定率は著しく低くなっています。

諸外国の難民認定率を調べるために、難民認定者数と難民認定申請者数はUNHCR Refugee Population Statistics Databaseのデータを参照します。データは2020年のものです。


※左より
「国名」「難民認定申請者数」「難民認定者数」「難民認定率」
アメリカ 23万8320人 1万8177人 7.6%
イギリス 4万1034人 9108人 22.2%
ドイツ 12万2136人 6万3456人 52.0%
フランス 14万2394人 1万8868人 13.3%
カナダ 2万5975人 1万9596人 75.4%

【出典】
UNHCR Refugee Population Statistics Database

https://www.unhcr.org/refugee-statistics/download/

上記に挙げた国の難民認定率を見ると、最も低いのがアメリカで7.6%、最も高いのはカナダで75.4%です。難民認定率は各国でばらつきがありますが、いずれの国も多くの難民を受け入れていることがわかります。

しかし、日本の難民認定率はわずか1%前後にとどまっており、上昇の兆しはなかなか見られないのが現状です。

5.まとめ

入管法改正案は日本国内の不法残留者の増加を防ぐことを主目的として作成されましたが、難民問題など人権保護の観点から批判を集めた形となり、最終的に廃案となりました。

しかし、同法の改正案が廃案になったとしても、収容の長期化に関する問題、難民認定に関する問題は残ったままとなります。

不法残留者の増加は、日本で生活する人にとって不安をもたらす原因となる一方で、不法残留者の人権を守ることも大切です。

今後、これらの問題の解決を図るために、前向きな議論を重ねていくことが必要でしょう。



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