外国人技能実習制度の法律、技能実習法の内容を知っておこう
2022.07.01
技能実習に関する法律があるって聞いたけど、そんな法律があるのでしょうか?
専門家
「技能実習法」という法律がありますよ。この記事を読みながら、法律の内容を理解してみてくださいね。
外国人技能実習生は、労働力不足の企業にとっては貴重な働き手といえます。しかし、技能実習生の本来の目的は日本で技術や知識を身につけることです。
受け入れ企業がそのことを認識していれば問題はありませんが、中には技能実習生を不当な条件で働かせる企業も見受けられ、それが問題となっている場合があります。
技能実習生に対して不正な行為をした場合、技能実習法に基づいて罰せられます。
そのようなことにならないためにも、技能実習法が制定された背景、法律の内容、違反した場合のペナルティなど、技能実習法に関する内容について理解を深めておくことが大切です。
CONTENTS
- 1. 技能実習法の背景
- 2.2017年11月に施行された内容
- 2-1. 外国人技能実習機構(OTIT)の設立
- 2-2. 技能実習計画の認定制
- 2-3. 実習実施者の届け出制
- 2-4. 監理団体の許可制
- 2-5. 技能実習生の保護
- 2-6. 優良な実習実施者、監理団体への優遇措置
- 2-7. 技能実習3号の受け入れ
- 3. 違反しないためには、違反によるペナルティについて
- 3-1. 実習実施者、監理団体の不正行為に対する罰則
- 3-2. 技能実習生の保護を怠った場合の罰則
- 3-3. 技能実習を適正に実施しなかった場合の罰則
- 4.まとめ
技能実習法はなぜ制定されたのでしょうか?
専門家
技能実習制度を本来の目的に沿って運用してもらうためです。技能実習生は、あくまでも技術や知識の習得するために来日しています。
1.技能実習法の背景
技能実習法が制定された背景について簡単に説明すると、技能実習制度を本来の目的に沿って運用することが大きな目的です。
技能実習制度が始まったのは1993年のことで、途上国の人材に日本の技術や技能、知識を伝えて、途上国の発展を図ることを目的としました。
技能実習生は、農業や漁業、建設、各種工業など、指定された職種の実習を受けられます。
しかし、技能実習制度が始まって問題になったことは、途上国の人材に技術などを伝える場というよりは、途上国の人材を安価な労働力として働かせる場となるケースが多かった点です。
事業所によっては最低賃金以下での労働が行われるなど、法令違反となるだけでなく、人権侵害も見受けられました。
このような状況では、技能実習制度の本来の目的とは大きくかけ離れてしまい、技能実習制度は名ばかりのものとなってしまいます。
本来の目的に基づいて技能実習制度を運営するために、技能実習法が制定されました。
2017年に施行された技能実習法の内容について知りたいです!
専門家
簡単に説明すると、技能実習を実施するにあたって外国人技能実習機構から認定を受ける必要がある点です。また、優良な団体に対しては優遇措置も設けられていますよ。
2.2017年11月に施行された内容
技能実習法は2017年11月1日に施行されました。
技能実習法について要点をまとめると、下記の通りとなります。
- 外国人技能実習機構(OTIT)の設立
- 技能実習計画の認定制
- 実習実施者の届け出制
- 監理団体の許可制
- 技能実習生の保護
- 優良な実習実施者、監理団体への優遇措置
- 技能実習3号の受け入れ
それぞれについて説明します。
2-1.外国人技能実習機構(OTIT)の設立
技能実習法の施行を機に「外国人技能実習機構(OTIT)」が設立されました。
外国人技能実習機構は技能実習制度が適切に運営されることを目的として設立され、主に下記の業務を行います。
- 技能実習計画の認定
- 実習実施者の届出の受理
- 監理団体の許可申請の受理
- 実習実施者、監理団体に対して監督と指導
- 技能実習生に対する援助、母国語での相談受付
これらの業務は、技能実習法が施行される前は「国際研修協力機構(注:名称は技能実習法施行時のもの。現在の名称は「国際人材協力機構」)」が行っていましたが、国際研修協力機構は監督や指導を行う権限はありませんでした。
外国人技能実習機構が設立されたことで監督や指導が可能となり、技能実習制度が適切に運営されるようになっています。
2-2.技能実習計画の認定制
実習実施者である受け入れ企業は、技能実習生一人一人の技能実習計画を作成します。計画ができあがったら、外国人技能実習機構に提出し、認定を受ける必要があります。
計画の内容が適正であると認められれば技能実習を行えます。
2-3.実習実施者の届け出制
企業が外国人技能実習生を受け入れたい場合は、外国人技能実習機構に実習実施者の届出を行う必要があります。
2-4.監理団体の許可制
外国人技能実習の監理団体になるためには、外国人技能実習機構の許可が必要となります。
許可制とした背景は、監理団体が業務の実施基準に適合している必要があること、営利目的ではなく、不正行為がない団体である必要があるためです。
2-5.技能実習生の保護
技能実習法が施行されたことにより、技能実習生に対する保護が手厚くなりました。
具体的な内容としては、最低賃金以下での労働、技能実習生に対する暴力、技能実習の強制などが禁止されていることです。これらの禁止事項が行われた場合は罰則となります。
また、先述した通り、外国人技能実習機構では技能実習生の相談を母国語で受け付けていますが、これも技能実習生の保護の一環です。
2-6.優良な実習実施者、監理団体への優遇措置
技能実習法の施行により、優良な実習実施者や監理団体に対して優遇措置が設けられました。
優良となる条件は、技能評価試験の合格率が一定水準を超えていること、技能実習生に対する支援が充実していることなどがあります。
これらの条件を項目別にポイント化して、120点満点のうち60%を超えると優良な団体として優遇されます。優良と認められると、技能実習生の受け入れ人数を通常より増やせるほか、技能実習3号の実習生も受け入れられます。
技能実習3号については、次の項目で説明します。
2-7.技能実習3号の受け入れ
技能実習3号とは、技能実習2号の次に行われる技能実習のことで、技能実習の4年目から5年目にあたります。
技能実習3号の実習生が取り組む内容は、優れた技術や技能、知識を身につけることです。
技能実習3号の受け入れは優良と認められた実習実施者、および監理団体に限られます。
技能実習で違反した場合、どんなペナルティを受けるのでしょうか?
専門家
違反した内容にもよりますが、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられるケースが多いです。
3.違反しないためには、違反によるペナルティについて
技能実習法は、技能実習を本来の目的通りに実施すること、技能実習生を保護するという目的の下に定められた法律です。
そのため、技能実習法で定められている内容に違反した場合は、罰則が科せられます。
3-1.実習実施者、監理団体の不正行為に対する罰則
実習実施者、または監理団体が不正な行為をした場合、行為の程度が比較的軽ければ「改善命令」が出されます。
ただし、重大な不正行為の場合は、監理団体の許可や実習実施者の認定が取り消されることがあります。
さらに、不正な行為をした実習実施者、または監理団体は事業者名が公表されます。事業者名が公表されると、技能実習に適さない団体とみなされるため、今後の技能実習生の受け入れは非常に難しくなってしまいます。
3-2.技能実習生の保護を怠った場合の罰則
技能実習生の保護を怠った場合は罰則を受けます。具体的な内容は下記の通りです。
(1)技能実習生に暴行を加えたり、脅迫したりして技能実習を強制させた場合
(2)技能実習に対して違約金を定めた場合
(3)技能実習が行われていない時間に、他の人と連絡を取ったり会ったりすることを禁じた場合
(4)技能実習生の許可を受けずにパスポート、または在留カードを企業や団体が保管した場合
(2)~(4)の罰則は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です。
(1)は重大な不正行為であるため、1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金に科せられます。
3-3.技能実習を適正に実施しなかった場合の罰則
技能実習を適正に実施しなかった場合も罰則を受けます。具体的な内容は下記の通りです。
(5)技能実習に関する改善命令の内容を実施しなかった場合
(6)技能実習が続けられなくなったときに、外国人技能実習機構に届出を出さなかった場合
(7)技能実習に関する帳簿書類を作成していなかった場合
(5)は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金、(6)と(7)は30万円以下の罰金となります。
4.まとめ
技能実習法は、技能実習生が技能や知識の習得を重点的に行えるようにするために制定された法律です。
法律が制定される前は、技能実習生が受け入れ企業において不当な条件で働かされるケースが見受けられ、技能や知識の習得がなかなかできない場合がありました。
法律の制定後は、原則として外国人技能実習機構の認定を受けた団体や企業のみが技能実習生を受け入れられる仕組みとなっています。
また、優良な団体や企業は優遇措置が設けられ、通常よりも受け入れ人数を増やせたり、技能実習3号の実習生を受け入れたりできるようになります。
なお、技能実習法に違反した場合は、違反した内容に応じて罰則が科せられます。
技能実習法が制定されたことにより、技能実習生は技術や知識の習得に専念しやすい環境となりました。技能実習生を受け入れる団体や企業は、技能実習の本来の目的を認識したうえで、技能実習生の受け入れを行いましょう。
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