行列ができるラーメン店

ワタシ、青山智香は外国人材を雇用する企業や雇用される側の外国人が抱える課題を解決・サポートする業務に携わっている、いわゆるキャリアアドバイザー。

実はこれまでも珍事の解明に取り組んできたのだが、企画が変わってワタシ自身が密着取材を受けることになってしまった（これまでの珍事はこちらからどうぞ）。



ひとえに
「外国人雇用の現場は予想だにせぬ出来事の連続である」
今日はそうした珍事をつまびらかにしながら私たちの仕事を紹介していきたいと思う。


2023年4月16日　深夜
タイ人技能実習生と人気ラーメン店へ行く

暑さも寒さも彼岸までと言うが、４月になり2週間が過ぎてもなお、朝夕は肌寒い。
今日は、〇〇人技能実習生のマイさんたちと久しぶりの交流会。お酒大好きメンバーが集い、居酒屋を２軒はしごして〆の候補にあがったのは、ラーメンだった。タイ人のみんなも日本のラーメンは好みらしい。
「熱々の激辛ラーメン、最高じゃ～ん」と向かった先でそれは起こった。



お店に到着すると、こんな時間にもかかわらず顔を赤らめ〆のラーメンを目当てにやって来たであろう人々で賑わっていた。
少し待つと、バラバラと数名の客が爪楊枝片手に外へ出てきた。同時に店内に居た数名の列がはけ、外にたむろしていた３人組が店内に移動していった。残ったのは、若い男女のグループと、サラリーマンと思しき年配の男性、さらに２組ずつのカップルのざっと十数名ほど。

すると、我がグループの男性ノニさんが、列を追い越し３人組の後ろに続いて入店して、券売機のメニューを物色し始めたではないか。その素振りはまるで遅れてきた４人目のメンバーが合流したかのようだった。



何かおかしい…。
しかし、その３人組は特に気にするでもなくラーメンに餃子やチャーハンと、サイドメニューを選んでいる。追い抜かされた列の人々も、くゆらせたタバコの煙の先を眺めていたり会話に興じていたりして全く気がついていない様子だ。一方、こちらに残ったメンバーも気にも留めずに会話を続けている。

ノニさんは、ついにお目当てのラーメンと餃子セットのチケットを購入してしまった。すると、こちらに居たメンバーたちもタイミングよく話題がなくなったのか、ふらりと列を追い越し店内へ入って行った。

え？あなたたちはノニさんに用事なの？単に、列を追い越したの？
てか、追い越されたら追い越されたで、先に待ってた人も何か言ってくれー！



「すみません。後ろに並ぶんでッ！注意するだけなんでッ！！」私は慌てて列の皆さんに頭を下げながら入店した。ノニさんをはじめ、そこに居た皆さんがギョッとしてこちらを見る。

「ちょっと、みんな何やってるの？外で皆さん並んでるじゃない。順番に入らないとダメでしょう？」

「え？誰も注意しなかったから『良い』ではないですか？ダメは、注意しますね？」
悪びれるでもなく、ノニさんが弁明し他のみんなも頷いている。

そういうことちゃうねん…。行列があったら今までこうしてきたということか？私は背筋がゾッとした。

「あのね、揉めなきゃOKじゃないんだよ。日本では先着順に並ぶという習慣があるの。それが、当然の決まりなの。」

こうして、私たち４人は寒空の下、改めて列に並び直したのだった。



終