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技能実習生の問題|賃金不払い・失踪の実態と育成就労制度への展望

技能実習生の受け入れ企業の73.3%で法令違反が確認され、失踪者も後を絶たない。こうしたニュースを聞き「技能実習生の受け入れはリスクが高い」と感じていませんか?しかし、問題の多くは事前に原因を理解し、正しい対策を講じることで防ぐことが可能です。

本記事では技能実習生に起こる6つの問題と、その背景にある5つの原因を解説します。さらに、企業が取るべき5つの対策や、新制度「育成就労制度」への移行についても分かりやすく説明します。最後まで読めば、技能実習制度に関するあらゆる不安が解消され、外国人材を貴社の貴重な戦力として、そして真のパートナーとして迎えるための具体的な道筋が見えてきます。

CONTENTS

1.データで見る技能実習制度の真実

日本の技能実習制度は、表向きには「国際貢献」や「技術移転」を目的としていますが、実態は安価な労働力確保の手段として機能しているとの指摘が絶えません。この章では、制度が抱える問題が個別の事例にとどまらず、制度全体の構造に根ざしたものであることを、客観的なデータをもとに明らかにします。

1.1 失踪者数の急増とその背景

法務省出入国在留管理庁によると、2023年には過去最多となる9,753人の技能実習生が失踪しました。2024年には6,510人とやや減少しましたが、依然として高い水準にあります。

出典:出入国在留管理庁 技能実習生の失踪者数の推移

この背景には、劣悪な労働環境や人権侵害、高額な手数料による借金など、実習生が逃げざるを得ない状況が存在しています。

1.2 労働基準法違反が常態化

厚生労働省の調査では、2023年に監督指導を受けた10,378の事業場のうち、73.3%にあたる7,602箇所で労働基準法などの法令違反が確認されました。

出典:技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(令和5年)

違反の主な内容は、機械の安全基準の不備、割増賃金の未払い、健康診断に関する対応の不備などであり、制度を利用する企業の多くで適切な労務管理が行われていない現状が浮き彫りになっています。

1.3 賃金不払いの実例

同様の調査によるとある建設会社では、外国人技能実習機構からの通報をきっかけに調査が行われ、実習生を含む9人に対して時間外労働の割増賃金が支払われていないことが判明しました。是正勧告後、合計約40万円の未払い賃金が支払われた事例もありました。
これは氷山の一角であり、報道されていない違法な待遇も多く存在すると考えられます。

2.技能実習生に起こる6つの問題

データで示された深刻な状況は、実際に多くの実習生が直面する具体的なトラブルとして表れています。以下に、代表的な6つの問題を分類して解説します。

2.1 労働安全の問題(労災隠し・危険業務)

実習生の中には、安全教育を受けないまま危険な業務に従事させられるケースが多くあります。労災が発生しても、企業がそれを隠す「労災隠し」も発生しており、法令違反に加え、労働者の命を脅かす深刻な問題です。

2.2 賃金・労働時間(残業代未払い・36協定違反)

実習生の中には、残業代が支払われない、もしくは36協定を締結せずに違法な長時間労働をさせられるなど、基本的な労働法令が守られていないケースが多く見られます。

36協定の詳細は、以下の記事をご確認ください。
外国人労働者とのトラブルや法律違反の火種!?労働時間や残業の制限について知っておこう

2.3 人権侵害(パスポート取上げ・暴力・ハラスメント)

一部の企業では、「逃亡防止」を口実にパスポートや在留カードを取り上げるなどの違法行為が横行しています。また、暴力やセクハラ、パワハラといった深刻な人権侵害も報告されています。

2.4 私生活のトラブル(住環境・孤立)

狭く不衛生な寮での生活、地域社会との関わりの欠如、過度な天引きなど、生活面でも実習生は困難な状況に置かれています。こうした状況は、精神的ストレスや孤立感を深める要因となっています。

2.5 失踪(借金と労働環境)

実習生が失踪する最大の原因は、来日前に母国の送り出し機関に支払った高額な手数料です。返済のために過酷な環境に耐えようとしますが、限界を迎えた末に失踪へと追い込まれるのです。

2.6 犯罪への関与(不法就労・闇バイト)

失踪後、生活の糧を得るために不法就労に走る実習生もいます。中にはSNSで募集された「闇バイト」に手を染め、特殊詐欺などの犯罪に巻き込まれるケースも増えています。

3.なぜ問題が起きるのか?制度を支える5つの構造的要因

前述した数々の問題は偶発的に起きているわけではありません。制度の構造そのものに根本原因があります。以下の5つに分類して、その実態を解説します。

3.1 制度の建前と実態の乖離

制度の目的は「国際貢献」ですが、実態は「人手不足の穴埋め」です。多くの企業が技術移転ではなく単純労働力として実習生を使っており、制度の理念が形骸化しています。実習生も専門性を得ることなく、母国でのキャリアに活かせないケースが多く見られます。

3.2 悪質な送り出し機関の存在

母国の送り出し機関やブローカーによる高額な手数料・保証金の要求は深刻です。こうした借金が、実習生を「辞めたくても辞められない」状態に追い込み、不当な扱いを受け入れざるを得ない状況を生んでいます。

送り出し機関の問題点は、以下の記事をご確認ください。
技能実習のうちの送り出し機関とは、国ごとに何が違う?

3.3 機能不全に陥る監理団体

監理団体は、制度上は受け入れ企業を監視・指導する役割ですが、企業から監理費を受け取るビジネスモデルであるため、適切な監視が行われない場合があります。

監理団体の構造と課題については、以下の記事をご確認ください。
【技能実習】監理団体とは?役割と見極め方

3.4 企業側のコンプライアンス意識の低さ

法令の理解不足や、実習生に対する適切な労務管理体制が構築されていない企業が多数存在します。また、言語や文化の壁によって、実習生とのコミュニケーションが不足し、ハラスメントや誤解が生じることもあります。

3.5 実習生側の情報不足と孤立

多くの実習生は、日本の法律や権利について十分な情報を持たずに来日しています。加えて、相談できる相手がいない孤立した状況に置かれやすく、トラブルが表面化せず、深刻化する原因となっています。

このように技能実習制度は、単なる労働力政策として運用されることで、数多くの人権問題や違法行為を生んでいます。制度の建て直しや代替制度の検討が進められていますが、まずはこの制度の構造的問題を正しく理解し、関係者一人ひとりが当事者意識を持つことが大切です。

4.技能実習生の受け入れ問題を未然に防ぐ!企業が今すぐできる5つの対策

技能実習制度が抱える問題は、制度全体の構造的な課題に起因していることを前章で見てきました。しかし、そのような中でも、受け入れ企業の取り組み次第で多くのトラブルを未然に防ぐことが可能です。
本章では、技能実習生を受け入れる企業が、明日から実践できる5つの具体的な対策を紹介します。これらのアクションを通じて、実習生との信頼関係を構築し、安定した受け入れ体制を実現するためのノウハウを提供します。

4.1 労働関連法規の遵守体制を構築する

技能実習生を受け入れるうえで、まず最優先すべきは法令の厳守です。これは企業の社会的責任であると同時に、実習生を保護するための最低条件でもあります。

  •   ● 労働時間の管理はタイムカードや勤怠システムによって正確に行い、サービス残業は厳禁とすること。

  •   ● 割増賃金(残業代)や最低賃金の遵守も必須であり、計算ミスや未払いは重大な労働違反となります。

  •   ● 36協定の締結・届出と、就業規則の作成・周知も忘れてはなりません。

  •   ● 安全衛生体制の整備(定期的な安全教育や設備点検)も重要です。

これらを実行することで、法令違反によるトラブルを回避でき、実習生が安心して働ける環境を提供できます。

4.2 実習生との定期的な1on1面談を実施する

技能実習生は、言語・文化の違いや孤立感から、悩みを抱えても相談できないケースが少なくありません。そのため、定期的な1on1面談(月1回以上)の実施が有効です。
面談では、業務上の問題だけでなく、住環境や人間関係、体調の変化など生活面にも踏み込んでヒアリングを行いましょう。ポイントは、「詮索」ではなく「傾聴」です。
必要に応じて通訳を配置する、または母国語ができる社員や支援団体と連携するなどして、実習生が本音を話しやすい環境づくりを心がけてください。

4.3 母国語対応の相談窓口の設置と周知を徹底する

「相談してもどうせ意味がない」「相談したら不利益を受ける」といった不安を抱える実習生は多くいます。そのため、母国語で対応可能な相談窓口の設置が重要です。
窓口の内容には以下を含めましょう。

  •   ● 企業内の相談担当者(母国語対応または通訳付き)

  •   ● 監理団体の連絡先

  •   ● 外国人技能実習機構(OTIT)の相談窓口

  •   ● 地域の支援NPO・団体

これらを母国語で記載したリーフレットや掲示物として常に目に入る場所に提示し、相談しても不利益は一切ないことを明示的に伝えることが信頼構築の第一歩です。

4.4 日本人従業員に対し、異文化理解研修を実施する

実習生とのトラブルの多くは、法令違反よりもむしろ日常のコミュニケーションのすれ違いや文化・価値観の違いに起因するケースも多くあります。
したがって、技能実習生を受け入れる企業では、全従業員に対する異文化理解研修の実施が極めて有効です。

研修で取り扱うべき内容例

  •   ● 実習生の出身国の文化・宗教・生活習慣

  •   ● タブーとされる行為・言葉

  •   ● 非言語コミュニケーション(表情、ジェスチャーなど)の違い

  •   ● 多文化共生の基本姿勢

技能実習生の受け入れは一部の担当者だけでなく企業全体のプロジェクトであるという意識の醸成が必要です。研修を通じて、職場全体での相互理解が深まり、良好な職場環境が築かれます。

4.5 優良な監理団体を選定する

技能実習制度の運用において、監理団体の質が制度の成否を大きく左右します。優良な監理団体は、受け入れ企業と実習生の両者にとって強力な支援パートナーになります。
監理団体を選ぶ際は、以下の3つのポイントを確認してください。

  1.   1. 許可の種類を確認:「一般監理事業」の許可を取得しているか。

  2.   2. 行政処分歴の有無:過去に指導・処分を受けていないか。

  3.   3. 提携先の送り出し機関の信頼性:現地政府の認定を受けているか、不当な手数料を徴収していないか。

このように、監理団体の選定は単なる外注先の選択ではなく、制度全体の質を左右する根幹部分です。

監理団体の選び方について詳しくは、以下の記事をご確認ください。
【技能実習】監理団体とは?役割と見極め方

5.技能実習制度は廃止へ ─ 新制度「育成就労制度」とは

2024年6月、政府は技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労制度」を創設する法律を成立させました。これにより、日本の外国人材受け入れ政策は大きな転換点を迎えます。
新制度の最大の特徴は、「人材育成」と「人材確保」の両立を目的として掲げた点にあります。これまでの「国際貢献」を建前とした制度とは異なり、実際の労働力不足への対応を正面から認めた制度設計がなされました。
特に企業にとって重要なのは、実習生の転籍(転職)が一定条件下で可能になるという点です。これは、「働きやすい職場」「選ばれる企業」でなければ、労働者が定着しないという競争環境の中に置かれることを意味します。

育成就労制度の概要は、以下の記事をご確認ください。
【新制度】育成就労制度とは?技能実習からの変更点を解説

6.【まとめ】技能実習生の問題を解決し、信頼できるパートナーとして迎えるために

技能実習制度をめぐる問題の多くは、制度そのものの構造的な歪みに加え、受け入れ企業側の理解不足や準備不足に起因するものです。しかし、今回ご紹介したように、適切な対策を講じることで、問題を未然に防ぎ、実習生と信頼関係を築くことは十分可能です。
法令の遵守、日常のコミュニケーション改善、異文化理解の促進、そして適切な監理団体の選定など、これらを総合的に整えることで、制度の中でも安定した運用が可能になります。
ただし、制度は大きく変わろうとしています。育成就労制度への移行に備え、企業も一層の体制整備が求められます。

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