東京五輪後も実習生は不可欠! 働く環境の改善に取り組む「建設分野」の仕事とは?
2021.06.17
建設業とは、建設工事の完成を請け負う仕事のこと。建設分野で担われる仕事は、大きく「土木」と「建築」の二つに分けられます。
【土木】公共的・公益的な設備や施設の建設(例: インフラの建設、災害時の復興)
【建築】生活を便利で快適なものにする建物の建設(例: ビル、住宅、学校、競技場)
どちらでも建造物をつくる工程は多岐に渡り、それぞれの工程に「職人」が配置されていますが、実際に現場で働く職人以外にも、納期や予算を管理する「現場監督」「施工管理」も重要な役割を果たしています。
本稿では、建設業で技能実習が認められている職種と作業内容、労働環境改善の取り組みを見ていきます。
技能実習生が働ける22職種と33の作業
建設分野において、技能実習生の受け入れが認められている職種は以下の22種です。
- さく井: 井戸を掘る
- 建築板金: 金属板を加工して屋根工事や外壁、ダクト、水回り工事などを施行する
- 冷凍空気調和機器施行: 冷凍空気調和機器の設置・施行等に携わる
- 建具製作: 建具全般の製作を行う
- 建築大工: 木造住宅などの木造建築物を主に製作する
- 型枠施行: コンクリートを流し入れ、固めるために使用される型枠を製作・施行する
- 鉄筋施行: 鉄筋を組み立てる
- とび: 高所作業を専門とする職人の仕事
- 石材施行: 石材加工と、石張りを行う
- タイル張り: タイルを張る
- かわらぶき: 瓦を屋根に葺く
- 左官: 土壁や漆喰で建築物を仕上げる
- 配管: 水、蒸気、ガスなどの流体を配送するため、管、継手、弁等を取り付ける
- 熱絶縁施行: 機器・配管からの熱の損失を防ぐため、各種の保温保冷剤を加工して取り付ける
- 内装仕上げ施行: 床、壁、天井の仕上げ工事のほか、カーテン・ブラインドの工事を施行する
- サッシ施行: サッシを取り付ける
- 防水施行: 雨水や生活用水などの漏水を防ぐための工事を行う
- コンクリート圧送施行: 生コンクリートをコンクリートポンプにより所定の型枠内などに圧送し、流し込む
- ウェルポイント施行: ウェルポイントを地盤中に多数打ち込んでウェルポイントポンプを作動させ、地下水を汲み上げ地下水位を低下させることにより、地盤改良を行う
- 表装: 壁紙や襖、屏風などを仕立てる
- 建設機械施行: 掘削機械(油圧ショベル:バックホウ)を使用して走行操作、施工作業及び点検作業を行う
- 築炉: 化学工場や製鉄所などで使用されている工業用炉の製造及び修理
これら22職種の中で、技能実習生が従事できる作業は以下の33種。
- パーカッション式さく井工事作業
- ロータリー式さく井作業
- ダクト板金作業
- 内外装板金作業
- 冷凍空気調和機器施行作業
- 木製建具手加工作業
- 大工工事作業
- 型枠工事作業
- 鉄筋組立て作業
- とび作業
- 石材加工作業
- 石張り作業
- タイル張り作業
- かわらぶき作業
- 左官作業
- 建築配管作業
- プラント配管作業
- 保温保冷工事作業
- プラスチック系床仕上げ工事作業
- カーペット系床仕上げ工事作業
- 鋼製下地工事作業
- ボード仕上げ工事作業
- カーテン工事作業
- ビル用サッシ施行作業
- シーリング防水工事作業
- コンクリート圧送工事作業
- ウェルポイント工事作業
- 壁装作業
- 押土・整地作業
- 積込み作業
- 掘削作業
- 締固め作業
- 築炉作業
職場環境改善の動き
近年、日本の建設業界は、2020年東京オリンピック・パラリンピックのために急激に人材不足となりました。それを補うために国交省が時限的措置として2017年頃から始めたのが「外国人建設就労者受け入れ事業」。これは2020年末で終了しましたが、それまでに就労を開始した外国人は、最長2022年まで受け入れ企業と雇用関係を結んで、建設業に従事することもできます。
しかし、建設業は主に肉体労働であり、危険を伴う上、指導者の高齢化が進み、独特の職人文化もあるため、言語や生活習慣などが異なる若い外国人技能実習生が従事するには、ツライ職場環境と言えるでしょう。
2017年に失踪した実習生の数は7,000人以上と、それまでの5年間で3.5倍に増加。建設業における失踪者数は、実習生を受け入れている職種の中で最も多かったため、建設分野の実習生を保護することが求められていました。
そのような背景の中で、国土交通省は2019年7月5日に「建設関係職種等に属する作業について外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則に規定する特定の職種及び作業に特有の事情に鑑みて事業所管大臣が定める基準等」を公布。これにより、以下の3つの基準が追加されました。
1.技能実習を行わせる体制の基準
- 申請者が建設業法第3条の許可を受けていること(※許可を受けた建設業の種類と技能実習の職種は必ずしも一致している必要がない)
- 申請者が建設キャリアアップシステムに登録していること
- 技術実習生を建設キャリアアップシステムに登録すること
2.技能実習生の待遇の基準
- 技能実習生に対し、報酬を安定的に払うこと
3.技能実習生の数
- 技能実習生の数が常勤職員の総数を超えないこと
東京オリンピック・パラリンピックの開催を巡っては不確定な状況が続いていますが、外国人技能実習生は、慢性的な人手不足に悩まされる建設業界にとって、今後も不可欠な存在になりそうです。
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