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技能実習から「育成就労」へ!—技能実習は廃止へ。新制度「育成就労」で外国人雇用はどう変わる?企業が今すぐ準備すべきこと

元入管職員の女性社労士がお届けする
~タイムス大学 外国人雇用のいろは講座⑨~

プロフィール 石野 明紀葉 先生
熊本大学法学部を卒業後、法務省福岡入国管理局にて外国人の入国・在留審査に従事。その後、地元に戻り、出産・育児を経て鹿児島大学や就労支援施設で事務職や助成金申請業務に携わりながら、行政書士および社会保険労務士の資格を取得。現在は法律事務所での勤務と並行して、あきは社労士・行政書士事務所を運営し、外国人雇用や在留資格に関する労務相談、障害年金請求を専門に、企業や個人への法的サポートを提供しています。instagramはこちらから。




先生:今日は、外国人雇用の大きな制度変更、「技能実習制度の廃止」と、新たに始まる「育成就労制度」について勉強していきます。


生徒:技能実習って、なくなるんですか?!

1. 「育成就労制度」って何?


先生

長年続いた「技能実習制度」は廃止され、新しく「育成就労制度」が始まる予定です。


生徒:「育成就労制度」と「技能実習制度」は何が違うんですか?

先生:大きく違うのはその“目的”です。「技能実習制度」はあくまでも“日本の技術を母国に伝えるための国際貢献”が建前としてありました。でも「育成就労制度」は“日本の労働力不足を補いながら、現場で育て、戦力として長く働いてもらうこと”が目的です。

生徒:つまり「実習」じゃなくて「働く人として育てる=育成」制度なんですね。

2. 技能実習とココが違う!3つのポイント

先生:では、企業にとって特に重要な変更点を以下に3つ紹介します。

 ① 転籍(転職)ができるようになる

生徒:転職って…。実習中に会社を変えられるんですか?

先生:はい。「1年以上働いた」「試験に合格した」といった条件を満たせば、本人の希望で他社へ転籍できるようになる予定です。

生徒:それって、育てた人材が他社に行っちゃう可能性もあるってことですか?

先生:その通りです。だから企業側は、これからは「選ばれる側」になる意識が必要になります。待遇や職場環境が悪ければ、人材が離れてしまう時代になります。

 ② 受け入れ企業に求められる責任が増える

先生:例えば、次のような対応が求められます。

・外国人の日本語力を伸ばす支援

・日本人と同等の処遇(昇給など)

・分野ごとの協議会への加入義務

生徒:思ったより本格的です!ちゃんと「育てる体制」がないとダメなんですね。

 ③ 最初から日本語力が求められる

先生:入国時点で最低でもN5レベル(A1相当)の日本語力が必要になります。これにより、初期のコミュニケーション不全によるトラブルを減らし、円滑な業務指導や安全教育につながることが期待されています。

生徒:トラブルを未然に防ぐ準備があるのは良いことですね。

3. 企業が今すぐやるべき準備


生徒:企業は、これから何をすればいいのでしょうか?

先生:大事なポイントを3つに分けてお話ししますね。

 ① 「選ばれる職場」になる努力

・明確なキャリアパスの提示:育成就労後の特定技能への移行、その先のキャリアについて面談等で示す。

・良好なコミュニケーション:定期的な面談の実施や、多言語でのサポート体制を構築する。

・ハラスメントのない職場環境:文化や習慣の違いを理解し、全従業員への教育を徹底する。

「この会社で働き続けたい」と思ってもらえるような対策が大事です。

 ② 育成計画をしっかり立てる

「とりあえず働いてもらう」はNG!3年後に「特定技能1号」に移行できるように計画的な準備が必要です。

育成計画の策定:
1年後、3年後の目標を明確にし、技能評価試験から逆算した育成プログラムを作成しましょう。

日本語学習の継続的支援:
入国時の要件は最低限なので業務に必要な専門用語や、同僚との円滑なコミュニケーションのため、就労後も継続的な学習機会を提供しましょう。

 ③ コンプライアンス体制の見直し

特に強調したいのが、法令遵守の徹底です!
新制度では企業の監督責任がより一層、問われることになります。適正な労務管理はもちろん、在留資格に関する手続きはこれまで以上に厳格に行う必要があります。ささいな手続きミスが、企業にとって大きなリスクとなりかねません。

専門家に相談するなど、盤石な管理体制を構築しておくことが賢明でしょう。



今日の授業のまとめ:これからは「パートナー」として迎える時代

「育成就労」制度は、日本の人手不足という喫緊の課題に対し、外国人材を“ゲスト”ではなく、共に日本の産業を支える“パートナー”として迎え入れ、育成していくという国の方針転換の表れです。

企業にとっては挑戦も伴いますが、優秀で意欲ある人材を確保・育成し、自社の持続的な成長につなげる絶好の機会でもあります。変化の波に乗り遅れることなく、今から準備を始めることが、未来の企業競争力を左右する鍵となるでしょう。

\こんな企業におすすめです/

「育成就労制度」は、外国人を“使い捨て”ではなく、共に成長する仲間として迎え入れる制度です。優秀な人材を定着させたい企業にとっては、大きなチャンスにもつながります。

・実習生を毎年入れ替えるのではなく、定着人材を育てたい企業
「育成就労制度」は、短期的な人材補充ではなく、3年間の計画的な育成と、その後の特定技能移行を前提とした長期雇用が可能です。毎年の実習生受け入れの負担を減らし、将来の戦力を社内で育てたい企業に適しています。

・外国人採用を戦略的に進めたい中小・中堅企業
転籍制度の導入により、外国人材から「選ばれる企業」になることが重要になります。採用後の育成・キャリア支援を通じて、企業ブランド力を高めたい中小・中堅企業にとって、大きなチャンスです。

・技能+語学+将来性を持った「戦力」を求める企業
制度の目的が「労働力の確保と育成」に変わったことで、日本語力や専門技能を兼ね備えた人材を長期的に活用できます。現場作業だけでなく、将来の管理職候補として育成したい企業に最適です。

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