特定技能の外国人を採用する際に知っておくべき法律は
2022.11.01
特定技能外国人の方の採用を円滑に行うためには、それに関する法律についても知っておいた方が良さそうですね。
そうですね。法律に基づいて特定技能外国人の方を採用すれば、無用なトラブルを未然に防げます。具体的にどのようなルールを守れば良いのか、ということを理解しておきましょう。
労働力不足を解消する対策として、特定技能外国人の採用があげられます。なお、特定技能外国人を採用する場合は、法律に基づいて一定のルールが定められており、それを守ることが求められます。
特定技能外国人を採用する場合は、どんな法律が関係しているのか、また、特定技能外国人を採用する際に守るべきルールとはどんな内容なのか、という点について説明します。
CONTENTS
- 1. 特定技能の特徴は
- 2. 特定技能の分野と従事可能な業務
- 3. 技能実習との比較
- 4. 特定技能外国人採用での企業の基準に関する法律
- 5. 改正入管法のポイントと対象
- 6. 雇用契約の法律
- 7. 支援計画の策定と内容
- 8. まとめ
特定技能とはどんな制度ですか?
専門家
日本国内の労働力不足を解消するため、一定水準以上の能力を持つ外国人の方を労働者として受け入れる制度です。これにより、国内の労働力不足の解消が期待されます。
1.特定技能の特徴は
特定技能は、国内で労働力が不足している業種の人手不足解消を図るため、一定水準以上の能力や技能を有する外国人材を労働力として受け入れる制度です。
特定技能の在留資格は、外国人が有する技能の水準によって「特定技能1号」と「特定技能2号」に分けられます。 特定技能1号は特定の分野において一定水準の技能を有する外国人に付与されます。また、特定技能2号の在留資格を得るためには、熟練した技能が求められます。
在留期間の上限は、特定技能1号と2号で異なります。特定技能1号の上限は5年であるのに対し、特定技能2号は定期的に在留資格を更新すれば、在留期間の上限がないため何年でも滞在できます。
特定技能の在留資格を取得すると、どんな業務を行えますか?
専門家
各分野によって行える業務は異なります。下記に一覧で紹介しているので確認してみてくださいね。
2.特定技能の分野と従事可能な業務
特定技能の対象となる分野は、下記の12種類です。- 介護分野
- ビルクリーニング分野
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野
- 建設分野
- 造船・舶用工業分野
- 自動車整備分野
- 航空分野
- 宿泊分野
- 農業分野
- 漁業分野
- 飲食料品製造業分野
- 外食業分野
(出典:出入国在留管理庁 特定技能外国人受入れに関する運用要領)
また、それぞれの分野で従事可能な業務は下記の通りとなります。
-
介護分野
- 身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)
- 建築物内部の清掃
- 機械金属加工 主な業務内容:鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、仕上げ、プラスチック成形、機械検査、機械保全、電気機器組立て、塗装、溶接、工業包装
- 電気電子機器組立て 主な業務内容:機械加工、仕上げ、プラスチック成形、プリント配線板製造、電子機器組立て、電気機器組立て、機械検査、機械保全、工業包装
- 金属表面処理 主な業務内容:めっき、アルミニウム陽極酸化処理
- 土木 主な業務内容:型枠施工、コンクリート圧送、トンネル推進工、建設機械施工、土工、鉄筋施工、とび、海洋土木工、その他、土木施設の新設、改築、維持、修繕に係る作業
- 建築 主な業務内容:型枠施工、左官、コンクリート圧送、屋根ふき、土工、鉄筋施工、鉄筋継手、内装仕上げ、表装、とび、建築大工、建築板金、吹付ウレタン断熱、その他、建築物の新築、増築、改築若しくは移転、修繕、模様替又は係る作業
- ライフライン・設備 主な業務内容:電気通信、配管、建築板金、保温保冷、その他、ライフライン・設備の整備・設置、変更又は修理に係る作業
- 溶接(手溶接、半自動溶接)
- 塗装(金属塗装作業、噴霧塗装作業)
- 鉄工(構造物鉄工作業)
- 仕上げ(治工具仕上げ作業、金型仕上げ作業、機械組立仕上げ作業)
- 機械加工(普通施盤作業、数値制御施盤作業、フライス盤作業、マシニングセンタ作業)
- 電気機器組立て(回転電気組立て作業、変圧器組立て作業、配電盤・制御盤組立て作業、開閉制御器具組立て作業、回転電気巻線製作作業)
- 自動車の日常点検、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する業務
- 航空グランドハンドリング(地上走行支援業務、手荷物・貨物取扱業務等)
- 航空機整備(機体、装備品等の整備業務等)
- 宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の
宿泊サービスの提供に係る業務 - 耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等)
- 養殖業畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等)
- 漁業 (漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・
- 養殖業 (養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、養殖水産動植物の収獲(穫)・
- 飲食料品製造全般 (飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生)
- 外食業全般 (飲食物調理、接客、店舗管理)
ビルクリーニング分野
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野
建設分野
造船・舶用工業分野
自動車整備分野
航空分野
宿泊分野
農業分野
漁業分野
保蔵、安全衛生の確保等)
処理、安全衛生の確保等)
飲食航空グランドハンドリング料品製造業分野
外食業分野
出典:特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領
特定技能と技能実習にはどんな違いがありますか?
専門家
特定技能は労働者として、技能実習は技能を学ぶことを目的に来日しています。そのほかにもさまざまな違いがあるので説明しますね
3. 技能実習との比較
特定技能と比較されることが多い在留資格として「技能実習」があります。ここでは、特定技能と技能実習の違いについて見ていきます。
目的
特定技能とは、先述した通り、日本国内における労働力不足の解消を図るため、一定水準以上の能力や技能を持つ外国人を雇用する制度です。
一方、技能実習とは、外国人が日本で技能や技術を学び、それらを母国での業務に活かすことを目的としています。いわば、日本の技術を海外に移転することになるため、国際貢献を果たす効果もあります。
業務内容
特定技能の職種は12種類であるのに対し、技能実習の職種は86種類に及びます。
技能を習得するという点から見ると、業務を細分化した方が、一つ一つの業務を確実に学びやすくなるメリットがあります。
一方、特定技能の職種は技能実習と比べると少ないですが、一つの職種がカバーする作業内容は広いです。
また、特定技能の外国人が行う業務は、技能実習では行わない業務も含まれることから、特定技能の方が業務の幅はより広がるといえます。
在留期間
在留期間は、特定技能1号は上限が5年です。特定技能2号には上限が設けられていません。
技能実習は3号まで移行すれば、技能実習1号から3号まで通算で5年間在留できます。
転職
転職については、技能実習生は原則として認められていません。なぜなら、技能実習は技能を習得することが目的であり、転職する必要性は低いためです。
一方、特定技能は、取得している在留資格の範囲内であれば転職が可能です。
外国人の受け入れ人数
外国人の受け入れ人数は、技能実習には制限が設けられています。適正な人数に抑えておけば、指導を行いやすいためです。
特定技能は、介護と建設の分野を除き、受け入れ人数の上限は設けられていません。
外国人の受け入れ方法
外国人を受け入れる場合、技能実習は海外の送り出し機関と提携している監理団体を通じて行います。
特定技能の場合は、人材サービス会社を利用して採用する方法のほか、自社で直接採用することも可能です。
特定技能外国人の方を採用するにあたって、基準となることは法律で定められていますか?
専門家
入管法の特定技能基準省令において定められています。日頃の企業運営において法令を守っていることが重要なポイントとなります。
4. 特定技能外国人採用での企業の基準に関する法律
特定技能外国人採用での企業の基準に関する法律は入管法で定めています。
受け入れ機関自体が満たすべき基準の内容については、特定技能基準省令において定められています。
具体的な内容は下記の通りです。
- 労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
- 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
- 1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
- 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
- 特定技能外国人の活動内容に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと
- 外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと
- 受入れ機関が違約金を定める契約等を締結していないこと
- 支援に要する費用を、直接又は間接に外国人に負担させないこと
- 労働者派遣の場合は、派遣元が当該分野に係る業務を行っている者などで,適当と認められる者で
あるほか、派遣先が1~4の基準に適合すること - 労災保険関係の成立の届出等の措置を講じていること
- 雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること
- 報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと
- 分野に特有の基準に適合すること(※分野所管省庁の定める告示で規定)
(引用:特定技能基準省令)
わかりやすく説明すると、特定技能外国人を受け入れる企業では、業務に関連する法令を守っていること、労働者を不必要に離職させないなど、労働や社会保険に関連する法令の遵守が求められます。
特定技能外国人を採用した後、外国人にとって働きやすいと感じられる職場にするためにも、日頃から法令等のルールを守ることは重要といえます。
特定技能の在留資格は2018年に入管法が改正されたときに創設されたみたいですね。
専門家
よく知ってますね!その通りです。技能実習の在留資格を持つ外国人の方は、在留できる期限を迎えると母国に帰国しなければなりませんでしたが、特定技能の在留資格ができたことで資格を変更すれば引き続き滞在できるようになりました。
5. 改正入管法のポイントと対象
出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)は2018年に改正されました。
改正入管法において抑えておきたいポイントは、新たな在留資格として特定技能1号と特定技能2号の在留資格が創設されたことです。
特定技能は、指定された試験に合格し一定水準の能力や技術を有した、あるいは、技能実習2号を良好な状態で修了した外国人を対象に与えられます。
入管法改正前は、技能実習の在留資格の期限が終了したら母国へ帰国しなければなりませんでしたが、入管法の改正により、特定技能の在留資格を取得することで引き続き日本に滞在できるようになりました。
そのため、特定技能の在留資格をもつ外国人を採用したい企業にとっては、人材サービス会社を活用することで、すでに一定の技能を有する外国人を直接受け入れることができるようになりました。
特定技能外国人を雇用する場合、どんな法律を守ればいいですか?
専門家
雇用については労働基準法など、労働関連の法律を守る必要があります。外国人の方を日本で雇うなら日本の法律を守る、ということになりますね。
6. 雇用契約の法律
特定技能外国人に関連する法律としては入管法が主体となりますが、外国人の雇用に関する法律としては、労働基準法など、労働社会保険に関連した法律が適用されます。
特定技能外国人を雇用する場合は、定められた在留資格を持っていることが条件となります。
これに関しては入管法で定めています。
ただし、労働条件に関する取り決めなど、外国人との労働契約に関しては、日本の労働基準法を守らなければなりません。なぜなら、外国人が日本の事業所で働くことになるためです。
例えば、外国人に支払う賃金の額は日本人と同程度であることが推奨されていますが、最低条件としては賃金の額を最低賃金以上にすることが求められます。これは労働基準法に基づいた内容です。
外国人と雇用契約を結ぶ場合は、日本人を採用する場合と同様に日本の労働関連の法律がベースとなります。
特定技能外国人を受け入れる場合は支援が必要なんですね。具体的にはどんな支援を行えばいいですか?
専門家
事前ガイダンスの提供や出入国する際の送迎など、10項目の支援を行う必要があります。また、支援を行う前に、支援計画の策定も必要ですよ。
7. 支援計画の策定と内容
特定技能外国人を受け入れる場合は、法律で定められた内容に基づいて支援を行う必要があります。
支援する内容は下記の10項目です。
- 事前ガイダンスの提供
- 出入国する際の送迎
- 住居の確保や生活に必要な契約の支援
- 生活オリエンテーションの実施
- 公的手続き等への同行
- 日本語学習の機会提供
- 相談または苦情への対応
- 日本人との交流促進に関する支援
- 転職支援(会社都合により特定技能雇用契約を解除する場合)
- 定期的な面談の実施、行政機関への通報
(出典:法務省 1号特定技能外国人支援に関する運用要領)
上記の支援は、登録支援機関に依頼できるほか、自社で行うことも可能です。なお、登録支援機関に支援を依頼する場合は、外国人1人あたり月額3万円程度の費用がかかります。
特定技能外国人に対して支援を行う場合は、支援計画を策定する必要があります。支援計画の内容は「1号特定技能外国人支援計画書」に記載します。
計画書は、在留資格認定証明書交付申請、または在留資格変更許可申請の際に提出します。
8. まとめ
特定技能の外国人を採用する際に知っておきたい法律として入管法があげられます。入管法では、特定技能外国人の受け入れに関する規定や支援の方法などが定められています。 そのほか、労働基準法など労働関連の法律も守る必要があります。なぜなら、特定技能外国人は日本の事業所に雇われるためです。
日頃から法律を守って企業運営を行えば、周囲からの信頼度が高まります。特定技能外国人にとって働きやすい環境を作るためにも、特定技能に関連する法律の内容を理解し、法律を遵守することが重要となります。
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