どちらが時間厳守?インドネシア人VS日本人
インドネシア人留学生アプリリアのニッポン見聞録Vol.49
2025.11.26
私、伊能あやめは、日本で働きたいと願うひとりでも多くの海外の方に、負担のないクリーンな就職環境を提供できるよう日々、さまざまな業務にあたっている。今回は、我が事業部にやってきたインドネシア人留学生による見聞録をお届けしたい。
インドネシア人留学生エンリのニッポン見聞録
どちらが時間厳守?インドネシア人VS日本人

弊社では、インドネシアの名門校であり最も歴史ある日本語教育機関でもある国立パジャジャラン大学日本語学科より、インターン生を受け入れることとなった。学生らは将来、日本での就職を希望している。一方で、企業が海外の優秀な大学生を新卒で採用するメリットは、将来有望なASEAN市場に精通した人材を早期に確保できる点にある。彼、彼女らは高い学習意欲と多言語対応力を持ち、日本文化への理解も深く、異文化環境にも柔軟に対応できるため、グローバル展開を目指す企業にとっては、コストパフォーマンスに優れた戦略的な人材となる。
また、弊社で新たに開発した外国人材採用プラットフォームMintoku messeでは、そうした優秀な新卒の外国人材を求人を出すだけで現地に出向かず採用できる。
Mintoku messeは、ベトナム・インドネシアを中心としたアジアのトップ大学と提携し、
企業と海外人材をつなぐ採用プラットフォームです。日本語力や専門性を備えた理系・文系の学生と、現地に行かずに出会える仕組みを構築。提携大学内での就職相談会やマッチングイベントをMintokuが代行し、企業は求人情報を提供するだけで優秀な人材の確保が可能です。さらに、採用後の住居手配や生活サポートも一貫して対応。
“採って終わり”ではなく、定着と活躍まで見据えたグローバル採用を実現します。

部署間を越え、既にSNSマーケティング部門にて即戦力として活躍中の2人。改めて、今日はアプリリア ヌルマウリさん(以下、アプリリアさん)の見聞録をお届けする。
インドネシア人と日本人の時間感覚
海外事業部の午後は、いつもどこか慌ただしい。人の行き来、電話やキーボードを叩く音がオフィスに響いている。飛び交う会話が多言語なのも、慌ただしさを際立たせているのかもしれない。
「あやめさん……ちょっといいですか?」
弾むような声に顔を上げると、インターン生のアプリリアさんが、大きなファイルを抱えてこちらに駆け寄ってきた。彼女の濃い茶色の瞳は好奇心でいつもきらきらしている。
「どうしたの?」
「今日の会議のことなんですけど……あれって、普通でしょうか?」
——また何か気になったらしい。
私は椅子から少し身を乗り出して、続きを促した。
「日本の会議は時間に厳しいですよね。5分とか10分前には会議室に入って準備をします。研修でもそう勉強しました。ですから、始まりは時間に厳しく始まって……。でも、会議が始まると…色々と話して、長いですよね?終わりが時間を過ぎることもあります。結論を決めずに終わることもあります。日本の文化は不思議ですよね」
「ああ、そういうことね。まあ、よくあることだな…」
「やっぱりそうですよね!」
アプリリアさんは思い切り身を乗り出す。

「インドネシア人は時間にはルーズです。インドネシアの言葉で“ジャム・カレット(Jam Karet)”って言って、Jam は時、時間を、Karetはゴムという意味で、つまり“ゴムみたいに時間が伸びる”という意味です。ほら『時間は延びるものだから約束の時間に遅れるとか、キャンセルは仕方ない』そういった雰囲気の言葉ですね。
でも、会議がゆっくりして時間が過ぎることは少ないです。始まる時間は遅れても、終わりの時間はしっかり終わります。だから、何度もミーティングに参加していて変だと思いました」
私は少し笑ってしまった。たしかに、外国籍メンバーだけが集まるミーティングが長引いているようなシーンは見かけたことがない。
「じゃあ、日本の会議は長く感じたでしょう」
「長いです(笑)しかも、なんとなく様子を見ている時間が長い気がします。誰かに『それは“空気を読んでいる”んだよ』と教えてもらいました。時々、そういう空気が流れませんか?」
“ジャム・カレット”に“空気を読む”か。どの国にもおもしろい表現があるものだ。

「そうだ。あやめさん、今日のミーティングも途中で結論を出すのに、沈黙の時間がありましたよね。みんな考えてるのかな?って思ったけど……」
「あー、あれは考えてるんじゃなくて、自分が発言していいかどうか迷ってるというのもあるかもしれないね」
「えぇ!? なんで迷うんですか?」
「誰が発言すべきか…とか?もっとカタい会議のときは、上司の顔を立てるべきか、とか……?うちの部署はそんな会議はないと思うけど、会社によっては堅苦しい会議ばかりな会社もあるかもしれないね」
アプリリアさんは目を丸くした。
「そうなんですか?日本はしっかりした国という印象はありますが……。インドネシアの会議は、上司より若手の方がよく喋る時もありますよ」
「知ってる、知ってる!あのエネルギーはすごいって思うよ」
私はそう言いながら、過去の会議を思い出す。外国籍メンバーが多いミーティングは発言が活発だ。議題に対して一気に結論まで進む。曖昧な部分は残さない。一方で、日本人だけが集まるミーティングは結論を導くより、なんとなくだらだらと話していることも多い。拍子抜けするほど決断しない時もある。
「だから今日もちょっと不思議で……」
アプリリアさんは遠慮がちに言った。
「時間に正確なのに、会議だけはふわっ?としているなって」
「あはは!たぶんね、それには日本人は“失敗しないように”という意識が強いってのもあるのかなと思う。だから結論を急ぐよりも、まずい方向に行かないよう慎重になる…みたいな。あと“角を立てない”ことも重視するかな。意見を言い合うと角が立ってしまうって思っちゃうのよね。最近は、それも“建設的な意見交換”だって意識も浸透してきたけど」
「なるほど……慎重すぎますね、正確な日本人らしい感覚ですが」
「慎重すぎるのよ。本当はもっとアプリリアさんたちみたいにはっきり言った方が生産性は高いと思うんだけどね」
私が冗談まじりに言うと、アプリリアさんはほっとしたように笑った。
「あやめさん、怒ってませんか?私、いつも日本の習慣に文句を言ってるみたいですよね?」
「そんなわけないじゃない!文化の違いは気づいてくれた方が面白いし、感じることを伝えてくれたら『ああ、こんなふうに思うんだ、感じるんだ』って分かり合えるじゃない?これは次につながる“建設的な意見交換”よ」
「よかったです。そう、良い仕事をするために意見を出し合っている…みたいなものですよね」
「そうそう!次のミーティング、この調子でよろしくね」
日本人は決めない天才?!
アプリリアさんが席に戻るのを見届けると、ふっとオフィスに静けさが戻った。私はパソコンの画面に視線を落としながらも、どこか心の中が温かくなっていた。文化の違いをこんなにも真っ直ぐに言葉にできる若さと素直さ。それを受け止められる環境があることが、なんだかちょっとうれしかった。

数分ほどして、チャットの通知が小さく鳴った。
〈ミーティングの資料、最新版ができました。確認お願いします!〉
アプリリアさんからだ。
「仕事が早いなあ……」
つぶやきながら資料を開くと、議題ごとに整理され、決定事項と未決事項がはっきり区分されている。“曖昧なまま会議が終わらないように”という、彼女らしい配慮だろう。 そのとき、背後から声がした。
「またアプリリアさんと話してたでしょ」
同じチームの宮下さんが、お茶を片手にこちらを覗き込んでいた。
「うん、時間感覚の話でね。日本の会議が不思議らしいよ」
「へぇ、文化?感覚?の違いっておもしろいよね。私も昔、アメリカの友人に『日本人は決めない天才だ』って言われたことがあるよ(笑)」
「決めない天才……それ、絶対褒めてないよね。決めないっていうか、決められないって」
「さあ?どうだろう。まあ、良くも悪くも“慎重”なんだろうね」
宮下さんは笑って席に戻っていったが、私の頭にはその言葉が妙に残った。
決めない天才——。
たしかに、今日のミーティングもそんな瞬間があったような。皆が言葉を選びすぎて、結論を見出せなくなるあの空気。そこにアプリリアさんが感じた“ふわっ”とした曖昧さがあるのだろう。

資料の確認を終え、簡単な修正点をチャットに送った。
〈助かりました。ありがとう!〉
そう打つと、すぐに返事が来た。
〈こちらこそ!あやめさん、次のミーティングは私も意見を言っていいですか?〉
画面を見て、思わず吹き出した。
〈もちろん!むしろ言わなかったら心配するよ〉
すると彼女からスタンプが返ってきた。満面の笑みのキャラクターが飛び跳ねている。
ふと、次のミーティングの光景が頭に浮かんだ。結論を導き出すために、意見を言い、議題を前進させようとする彼女の姿。そして、その姿に少しずつ影響される日本人のメンバーたち。
文化の違いを“違い”として終わらせず、互いに混ざり合っていく瞬間が訪れたら、きっと今よりもっと、チームは強くなる。そんな気がした。
終
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