排水溝が流れません

ワタシ、青山智香は外国人材を雇用する企業や雇用される側の外国人が抱える課題を解決・サポートする業務に携わっている、いわゆるキャリアアドバイザー。

実はこれまでも珍事の解明に取り組んできたのだが、企画が変わってワタシ自身が密着取材を受けることになってしまった（これまでの珍事はこちらからどうぞ）。



ひとえに
「外国人雇用の現場は予想だにせぬ出来事の連続である」
今日はそうした珍事をつまびらかにしながら私たちの仕事をご紹介していきたいと思う。


2023年8月26日　10：30　●●市　△△株式会社
インドネシア人技能実習生の寮にて

残暑厳しい昨夏、私はいつものように技能実習生の寮の巡回にやってきた。
今日は「部屋が臭う」との相談もあり、早めにこちら、さいたま県川口市にある寮に駆け付けていた。

インターホンを押すとトゥセラさんが元気よく飛び出してきた。

「青山先生、こんにちは。やっと来てくれましたね！」
たしかに、3週間ぶりの訪問で、通常1か月スパンであることからすると、少し早め。でも、問題が解決しないとあれば現地入りして原因の解明と対策を講じるのが私たちの仕事だ。



「で、臭いがするって聞いたけど、どうしたの？ついこの前までは、そんなこと言ってなかったのに」

そう言いながら、トゥセラさんに背中を押され台所にやってくると、いくらクーラーの効いた部屋とはいえ（いや、締め切った部屋だからか？）その辺一帯に生ごみが腐ったような悪臭が漂っていた。

今日は寮の巡回ということで、彼女が務める企業さんのご配慮で午前中に訪問の時間を設けていただいていたのだが、通常であれば日中の不在時はエアコンもついてない。物が腐るにはちょうどいい温度と湿度という状況だったはずだ。

「あ。青山先生、クサい臭いがしますか？いつも家に帰ってきて臭いが酷いから、困っていて。それから、水の流れが悪いです。壊れていますか？」

困り顔のトゥセラさん。

私は一つの仮説を立てた。

ディスポーザー、ついてないですよ！！

「もしかして、トゥセラさん、ここに余ったご飯を流してませんか？」

「はい、流します。トイレに流していたら流れが悪くなったから、今はここに捨てています」

やはりそうか…。それにしても、トイレがダメだから次は台所って危なすぎる（泣）

私はケータイで、キッチン用三角コーナーと生ごみネット、油凝固剤の画像を検索してトゥセラさんに見せながら説明した。

「料理で使った油は固めて、料理の残りは水分を切って、ビニール袋に入れてゴミ箱に捨てます。流してはいけません」



そう、これが文化の違い。
インドネシアでは残飯や料理油を近くの池に廃棄するらしい。
彼女は暫定的に？便宜的に？水で流せるっぽい所に流していたということだ。

壊れる前に気づいてよかった…！！弁償代だって馬鹿にならない。
変なところでありがたみを感じる出来事だった。

終