技能実習生(介護)とは?受入れ要件・育成法などを解説
2025.09.30
深刻な人材不足に直面する介護業界において、「技能実習生」の受け入れは重要な選択肢の一つです。しかし、介護分野特有の要件や、適切な育成・支援方法について、不安や疑問を持つ事業者も多いのではないでしょうか。
この記事では、介護分野における技能実習制度の基本から、受け入れに必要な詳細な要件、準備プロセス、現場での指導ポイント、そして特定技能や介護福祉士へのキャリアパスまでを解説していますので今後の「育成就労」制度への移行も見据え、適切な受け入れと育成計画を策定しましょう。
CONTENTS
- 介護現場における技能実習制度の基本と現状
- 介護技能実習生を受け入れるための詳細要件
- 介護技能実習生の受け入れプロセス:準備から実習開始まで
- 介護現場での技能実習内容と指導・支援のポイント
- 介護技能実習生のキャリアパス:特定技能や介護福祉士への道
- 介護分野における技能実習制度の課題と今後の展望(育成就労)
- まとめ:介護技能実習制度の理解と適正な運用、将来への備え
介護現場における技能実習制度の基本と現状
介護分野で技能実習制度が導入された背景と目的
介護分野で技能実習制度が導入された背景には、介護人材の深刻な不足という社会的背景があります。技能移転を通じた国際貢献を目的としつつ、介護人材確保の一環として2017年に対象職種に追加されました。日本の介護技術・知識を習得した人材を母国で活かしてもらう狙いがあります。
「技能実習生(介護)」の位置づけと役割
技能実習生(介護)は、技能実習計画に基づき、介護施設などで実践的な介護スキルを習得する外国人です。労働者として雇用され、労働関連法令が適用される存在ですが、あくまで「技能などを学ぶ実習生」であり、単なる労働力ではない点に注意が必要です。
介護分野での技能実習生の受け入れ状況データ
介護分野における技能実習生の受け入れ人数の推移を確認します。

上表は、介護職種における技能実習計画の新規認定件数の推移です。認定を開始した平成30年以降は増加傾向にありましたが、令和2年をピークに減少しています。

出典)外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について|厚生労働省
他の在留資格(特定技能(介護)、EPA介護福祉士候補者など)との比較では、2024年3月時点で特定技能と合わせて技能実習が外国人介護職員全体の約8割を占めています。

令和4年のデータによれば、主な送り出し国はベトナムが最も多く、次いでインドネシア、ミャンマー、フィリピンなどが上位国でした。
技能実習生の区分(1号・2号・3号)と介護分野での在留期間
技能実習制度は1号・2号・3号の3区分に分かれています。
|
|
実習年数(在留期間) |
目的 |
|
技能実習1号 |
1年目 |
知識・技能の習得 |
|
技能実習2号 |
2~3年目 |
技能の習熟 |
|
技能実習3号 |
4~5年目 |
習熟した技能の熟達 |
1号から2号、2号から3号の移行には、技能評価試験に合格し、各号の計画を修了する必要があります。介護分野ではこれに加え、日本語能力試験N3相当レベルの試験合格も求められます。なお、介護分野の在留期間は通算で最長5年です。
介護技能実習生を受け入れるための詳細要件
【技能実習生側】満たすべき要件
- ● 日本語能力レベル(N4相当以上、入国時・移行時)
○ 介護業務では、身体ケアのみならず、利用者との円滑なコミュニケーションが欠かせません。そのため、他の分野にはない固有の要件として日本語能力要件が課されてます。入国時には日本語能力試験N4相当以上、2号移行時にはN3相当の日本語能力が必要です。ただし、国や団体によっては入国時からN3相当を求めるケースもあります。
- ● 介護分野に関する職務経験や学習経験(必要な場合)
○ 国によっては、母国での介護関連業務経験や養成コース修了などが要件となる場合もあります。
- ● 健康状態や年齢などの基本要件
○ 介護業務に耐えうる心身の健康状態があること、原則18歳以上であることが求められます。その他各国や監理団体の基準が設けられている場合もあります。
【受け入れ企業(実習実施者)側】満たすべき要件
- ● 対象となる施設・事業所の範囲(訪問系は除く)
○ 受け入れの対象となる施設は、特養、老健、グループホーム、デイサービスなどの入所・通所系介護保険サービス事業所です。開設後3年以上の運営実績などが求められる場合もあります。訪問介護・訪問入浴などの訪問系サービスは対象外です。
- ● 技能実習指導員・生活指導員の配置義務と要件
○ 受け入れ企業には、実習指導員および実習生の生活面での相談役となる生活指導員を配置する義務があります。なお、実習指導員には、5年以上の実務経験を持つ常勤介護職員、介護福祉士などを配置します。
- ● 受け入れ可能な人数の上限(常勤職員数に応じた枠)
○ 事業所の常勤介護職員数によって定められている受入れ人数枠を遵守し、超過しないよう注意しなければなりません。
- ● 経営状況や労働保険・社会保険への加入状況
○ 安定した経営を維持し、各種保険への適正な加入を促します。
- ● 適切な技能実習計画の作成能力
○ モデル計画などを参考に、個別具体的な計画を作成する能力が必要です。
監理団体の要件(介護分野での実績など)
技能実習生の受け入れは、支援や監査を行う監理団体にも要件があります。介護職種の取扱いが可能な監理団体であること、そして3号の受け入れには一般監理団体の許可を得るために介護の専門知識や受け入れ実績が必要です。

介護技能実習生の受け入れプロセス:準備から実習開始まで
もっとも利用の多い団体監理型で介護技能実習生を受け入れる流れについて解説します。
Step1: 信頼できる監理団体の選定と加入
介護分野の実績、サポート体制、費用などを比較検討し、監理団体を選定・加入します。
Step2: 求人申込みと候補者の選考(面接など)
監理団体を通じて送出機関へ求人を提出し、候補者の募集・選抜を行います。具体的には書類選考や面接(現地またはオンライン)を実施し、日本語能力や意欲などから業務への適正を確認します。
Step3: 技能実習計画の作成と認定申請(OTITへ)
内定者に基づき個別技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構(OTIT)へ計画認定を申請します。
Step4: 在留資格関連手続き(入管へ)
計画認定後、入管へ在留資格認定証明書を申請します。交付を受け、本人へ送付し現地でビザ(査証)申請を行います。
Step5: 実習生の入国前後の講習(日本語、介護導入など)
送出機関による日本語・介護基礎の入国前講習と、監理団体などによる法定講習:日本語、生活、法的保護、介護導入などの入国後講習を行います。
Step6: 配属と介護現場での技能実習開始
講習修了後、実習実施企業(または施設)へ配属され、技能実習計画に沿ったOJTを開始します。
介護現場での技能実習内容と指導・支援のポイント
技能実習計画に基づくOJT:具体的な介護業務内容
食事・入浴・排泄介助などの身体介護、生活援助、レクリエーション、記録などの業務スキルを段階的に習得することを目指した指導計画を実行します。
技能実習指導員の役割と効果的な指導方法
直接的な介護技術指導、安全管理、実習日誌の確認・指導を行います。分かりやすい指示出しや丁寧なフィードバックを心がけるほか、状況に応じて指導員自ら手本を示すなどの対応も必要です。
生活指導員の役割と生活面でのサポート(住居、相談対応)
日本での生活ルール指導、健康管理、各種悩み相談への対応から住環境の整備、地域住民との橋渡しまで、生活全般をサポートします。
日本語能力向上のための継続的な支援
介護現場で使う専門用語やコミュニケーション方法を指導します。同時に、学習機会の情報提供や学習モチベーション維持への配慮も継続的に支援していくことが求められます。
メンタルヘルスケアと異文化理解の促進
慣れない環境下でのストレスを軽減する策を講じ、相談しやすい雰囲気を作ることは大切です。文化の違いを理解し尊重する職場全体の意識を醸成するのも企業の重要な役割といえます。
介護技能実習生のキャリアパス:特定技能や介護福祉士への道
技能実習から「特定技能(介護)」への移行プロセス
技能実習修了後のキャリア選択肢の一つとして、特定技能(介護)への移行ルートがあります。
- ● 移行の要件(技能実習2号良好修了など)
○ 技能実習2号を「良好に修了」していることが要件です。
- ● 試験免除のメリットと注意点
○ 特定技能評価試験が技能試験・日本語試験ともに免除されます。ただし、介護分野のみ別途介護日本語評価試験への合格が必要になりますので注意してください。
- ● 特定技能へ移行するメリット(長期就労、転職可など)
○ 在留期間が通算5年に延長されるほか、同一分野内であれば転職が可能になるメリットがあります。
技能実習ルートでの「介護福祉士」国家資格取得について
技能実習経験を活かして国家資格である介護福祉士を目指す道筋もあります。
- ● 受験資格を得るための要件(実務経験3年以上+実務者研修修了)
○ 技能実習期間を含む3年以上の実務経験と450時間の実務者研修修了が要件です。
- ● 実務者研修の内容と受講サポート
○ 研修は、人間の尊厳と自立、介護の基本・過程、医療ケアなど20科目の座学と演習で構成されます。受講には費用や研修時間確保に対する企業の支援が欠かせません。
- ● 介護福祉士資格取得後の在留資格「介護」への移行メリット
○ 在留期間更新の上限が撤廃され、永続的な就労が可能になります。また、家族帯同や訪問介護への従事ができるメリットもあります。

介護分野における技能実習制度の課題と今後の展望(育成就労)
介護現場特有の課題(コミュニケーション、夜勤、精神的負担など)
認知機能や身体的制約がある利用者との高度なコミュニケーションの必要性、夜勤業務への適応など、介護現場では身体的・精神的負担に対する配慮が不可欠です。特に看取りなど精神的に負荷の高い場面のケアは、より丁寧に行う必要があります。
技能実習制度全体が抱える問題点と介護分野への影響
低賃金、長時間労働、人権侵害などの問題は介護分野でも起こりうるリスクです。技能移転という制度目的と労働力確保の実態は介護分野においても乖離を生んでいます。
新制度「育成就労」への移行と介護分野への影響予測
現行の技能実習制度は、新制度「育成就労」へ移行することが決定しています。具体的な施行時期は未定ですが、2027年までの施行を目指して方針策定が進められています。(※2025年8月時点)
- ● 育成就労制度の概要と目的(人材育成+確保、人権保護)
○ 新制度の基本的な考え方は、人材育成と確保の両立です。また転籍自由化を筆頭に人権保護強化を図ります。
- ● 転籍制限緩和などが介護人材の流動性に与える影響
○ より良い条件を求めて転職者が増加する可能性があり、介護業界内での人材移動活発化が予想されます。
- ● 受け入れ企業に求められる対応の変化
○ 特定技能1号への移行を目指した人材育成が制度目的化されたことにより、人材育成計画の重要性が増大し、キャリア支援の強化が求められるようになります。選ばれる企業であり続けるための魅力ある職場づくりも一層不可欠でしょう。
まとめ:介護技能実習制度の理解と適正な運用、将来への備え
介護分野での技能実習生受け入れは人材確保の一助になります。ただし活用にあたっては、制度の正しい理解と適正な運用が大前提であり、実習生の権利保護、育成とキャリア形成支援の視点が欠かせません。法令遵守、良好なコミュニケーション、実習生が働きやすい環境整備への取り組みを重ねることは受け入れ企業の責務と言えます。あわせて今後予定されている育成就労制度への移行を見据えた準備を行い、変化への対応力を高めていきましょう。
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