日本語能力試験(JLPT)N1・N2とは?レベル別の難易度を解説
2025.07.22
日本での就職や進学、あるいは外国人材の採用において、日本語能力を客観的に示す指標として最も広く用いられているのが「日本語能力試験(JLPT:Japanese-Language Proficiency Test)」です。特に最高レベルの「N1」は、高度な日本語能力の証明として認知されています。一方で、「日本語検定」という名称の試験もあり、違いが分かりにくいと感じる方もいるでしょう。
この記事では、主にJLPTに焦点を当て、N1からN5までの各レベルで求められる具体的な能力、難易度、学習目安、そして「日本語検定」との明確な違いを解説します。JLPTの結果を自身のキャリアや企業の採用活動にどう活かすべきか、そのヒントを提供します。
CONTENTS
1. 日本語能力試験(JLPT)の基本情報
日本語能力試験(Japanese Language Proficiency Test, JLPT)は、日本語を母語としない人を対象に、日本語能力を測定・認定するための国際的な試験です。1984年に開始され、現在では世界最大規模の日本語試験として定着しています。
この試験は、国際交流基金と日本国際教育支援協会が共同で実施しています。試験の主な目的は、日本語学習者の学習成果を測定し、社会的・教育的場面で活用可能な客観的な能力指標を提供することにあります。
試験は以下の3つのセクションに分かれています。- ● 言語知識(文字・語彙・文法)
- ● 読解
- ● 聴解
- ● 言語知識(文字・語彙・文法)
各セクションを通じて、日本語を「読む」「聞く」力を中心に評価します。ただし、「話す」や「書く」能力は直接測定されません。
受験資格については原則として、「日本語を母語としない人」が対象です。年齢や国籍、学歴などによる制限はなく、誰でも受験可能です。
試験は年に2回、7月と12月に実施され、日本国内および海外約80か国で開催されています。特にアジア諸国では受験者数が多く、グローバルな人材育成にも役立てられています。2. よくある疑問:「日本語検定」とJLPTの違いは?
JLPTと混同されがちな試験に、「日本語検定」がありますが、両者は目的や対象者、試験内容が大きく異なります。
比較項目 JLPT 日本語検定 対象 主に非母語話者 日本語使用者全般(母語話者含む) 目的 日本語コミュニケーション能力の測定 総合的な日本語運用能力・知識の確認 試験内容 言語知識・読解・聴解(会話力は問わない) 漢字、語彙、文法、敬語、表記、意味など多岐にわたる レベル構成 N1(最難)〜N5(最易) 1級(最難)〜7級(最易)
JLPTは、「日本語を使って生活・仕事をする能力」を測る実用的な試験であるのに対し、日本語検定は、「日本語を正しく理解し使うための知識」に重きを置いています。たとえば、敬語の正確な使用法や語句の細かい意味の違いを問うのは日本語検定の特徴です。
したがって、日本語を外国語として学ぶ人にはJLPTが適しており、教育・公務・文章校正など正確な日本語運用が求められる職種には日本語検定が有用です。
3. 【レベル別徹底ガイド】JLPT N1~N5 難易度・できること・活用法
JLPTは5つのレベルに分かれており、N5が最も易しく、N1が最も難しいとされています。以下、それぞれの特徴を解説します。
N5
- ● 認定目安:基本的な日本語をある程度理解できる
- ●できること:ひらがな・カタカナ・簡単な漢字の読解、挨拶、短い会話の理解
- ● 学習時間:150時間〜
- ● 活用例:日本語学習の入口、一部のアルバイトでの参考
- ● 合格率:50〜60%
- ● 認定目安:基本的な日本語をある程度理解できる
N4
- ● 認定目安:基本的な日本語を理解できる
- ● できること:簡単な文章の読解、ゆっくりした会話の理解
- ● 学習時間:約300時間〜
- ● 活用例:特定技能在留資格、日本での生活
- ● 合格率:37〜45%
- ● 認定目安:基本的な日本語を理解できる
N3
- ● 認定目安:日常的な日本語をある程度理解できる
- ● できること:やや自然なスピードの会話、新聞見出しの把握
- ● 学習時間:約450時間〜
- ● 活用例:接客業、生活の安定
- ● 合格率:37~47%(年・国別で幅あり)
- ● 認定目安:日常的な日本語をある程度理解できる
N2
- ● 認定目安:幅広い場面の日本語をある程度理解できる
- ● できること:新聞記事や解説の読解、自然なスピードのニュース理解
- ● 学習時間:約600時間〜
- ● 活用例:事務職、大学進学、就労ビザ申請
- ● 合格率:36~40%
- ● 認定目安:幅広い場面の日本語をある程度理解できる
N1
- ● 認定目安:高度な日本語を理解できる
- ● できること:評論・論説の読解、講義・ニュースの詳細理解
- ● 学習時間:約900時間〜
- ● 活用例:専門職、通訳翻訳、大学院進学
- ● 合格率:30~32%
- ● 認定目安:高度な日本語を理解できる

4. 最難関「JLPT N1レベル」とは?詳細と合格の価値
以下に「JLPT N1レベルの具体的な試験内容、求められる能力、合格の意義」についてまとめます。
JLPT N1レベルの詳細と合格の意義
1. 試験科目と時間配分
- ● 言語知識(文字・語彙・文法)・読解:110分
- ● 聴解:55分
合計165分の試験時間で、幅広く高度な日本語能力を測定します。
- ● 言語知識(文字・語彙・文法)・読解:110分
2. N1合格に必要な知識量の目安
- ● 漢字:約2,000字
- ● 語彙:約10,000語
このレベルでは、多様な語彙と熟語、複雑な文法構造を理解し使いこなすことが求められます。
- ● 漢字:約2,000字
3. N1レベルの読解力
- ● 論理的かつ複雑な構成の文章を理解できる能力
- ● 抽象的・専門的な内容を含む評論や論説文を読み取り、主旨や詳細、筆者の意図まで把握できる力
- ● 論理的かつ複雑な構成の文章を理解できる能力
4. N1レベルの聴解力
- ● 自然なスピードの会話やニュース、講義などを聞いて理解できる能力
- ● 話し手の意図や感情、話の論理構成まで捉えられる高度な聴解力が求められます。
- ● 自然なスピードの会話やニュース、講義などを聞いて理解できる能力
5. N1の難易度分析
- ● 合格率は30%台と低め
- ● 語彙や文法の範囲が非常に広く、読解・聴解問題も高度で複雑な内容が多いことが主な理由
- ● 高度な言語運用能力が必要なため、学習時間も多く(約900時間以上)かかります。
- ● 合格率は30%台と低め
6. 旧日本語能力試験「1級」との比較
- ● 旧1級とN1は同等レベルだが、現在のN1はより実用的なコミュニケーション能力を重視
- ● 旧1級が専門的知識を問う傾向が強かったのに対し、N1は現代のビジネスや学術、日常生活に広く対応できる力を測定
- ● 旧1級とN1は同等レベルだが、現在のN1はより実用的なコミュニケーション能力を重視
【レベル比較表(まとめ)】
レベル 認定目安 できること例 合格率 学習時間目安 主な活用場面 N5 基本的な日本語をある程度理解 ひらがな・カタカナ・簡単な挨拶・自己紹介 約50%前後 約150時間~ 日本語学習入門、一部アルバイト N4 基本的な日本語を理解 身近な話題の文章読解、ゆっくり会話理解 約40%台 約300時間~ 特定技能要件、日常コミュニケーション N3 日常的な日本語をある程度理解 新聞見出し概要把握、やや自然な会話理解 約40%台 約450時間~ 接客業務、日本生活適応 N2 幅広い場面の日本語を理解 新聞記事読解、自然な会話・ニュース理解 約40%台 約600時間~ 事務職、サービス業、大学・専門学校進学 N1 幅広い場面で使われる日本語理解 複雑な評論文読解、自然なニュース・講義理解 約30%台 約900時間~ 専門職、通訳・翻訳、大学院進学、国家資格 7. N1合格がもたらす具体的なメリット
- ● 就職や昇進での大きなアドバンテージ
高度な日本語力を証明できるため、専門職や管理職など幅広い職場での評価が高い - ● 高度な学術活動への参加が可能
大学院進学や研究発表など専門的な場面で必要とされる日本語力を有することを示す - ● 社会的信用の向上
日本語能力の国際的な証明として信頼度が高く、履歴書や資格証明書として価値がある
- ● 就職や昇進での大きなアドバンテージ
JLPT N1は、日本語能力の最高峰レベルを示す試験です。論理的かつ複雑な文章の読解力や、自然な会話速度での聴解力が求められ、合格率が低いことからもその難易度の高さがうかがえます。合格は、ビジネスや学術、社会生活において高い評価を受けるだけでなく、自己の言語能力の証明としても非常に意義深いものとなるでしょう。

5. 企業向け:JLPT結果を採用基準に活用する際の注意点
日本語能力試験(JLPT)は、日本語を母語としない人々の日本語力を測定するための国際的な基準です。企業が外国人材を採用する際、その客観的な指標としてJLPTの級を参考にすることは一般的になりつつあります。
しかし、JLPTの結果のみで人材の日本語力や業務適性を判断することには、一定のリスクや限界があります。ここでは、JLPTを採用評価の一指標として“正しく”活用するために、注意すべきポイントを5つ紹介します。注意点1:JLPTレベル ≠ 実践的な会話力・ビジネス会話力
多くの企業が誤解しやすいのが、「N1=完璧に日本語が話せる」というイメージです。たしかにN1は、最上級レベルの読解・聴解力を持つことを示していますが、JLPTは基本的に「読む」「聞く」の能力を測る筆記中心の試験です。
そのため、会話力、特にビジネス特有の敬語・言い回し・対人表現などについては測定されていません。現実には、N1合格者でも自然な雑談や商談、電話応対などに苦手意識を持つ人もいます。対応策:
- ● 面接時に簡単なロールプレイ(電話対応、来客応対など)を取り入れる
- ● スピーキング評価や現場での実技試験も参考にする
- ● 面接時に簡単なロールプレイ(電話対応、来客応対など)を取り入れる
注意点2:業務内容に適したレベル設定が重要
JLPTのレベルはN5(初級)からN1(最上級)まで5段階あり、それぞれに求められる日本語力は異なります。しかし、すべての業務にN1が必要というわけではありません。例えば
- ● マニュアルに沿って機械操作を行う工場作業ならN4〜N3で十分な場合もあります。
- ● 顧客対応の窓口業務や文書作成業務ならN2以上が必要になることもあります。
- ● 技術職・研究職では、日本語力より専門知識や英語の方が重視される場合もあります。
- ● マニュアルに沿って機械操作を行う工場作業ならN4〜N3で十分な場合もあります。
対応策
業務の特性・使用言語・必要な読解・会話のレベルを洗い出し、ポジションごとに適切なJLPTレベルを設定する。【職種別の参考例】
職種 推奨JLPTレベル 軽作業/製造ライン N4〜N3 接客業・販売員 N3〜N2 事務職(社内文書対応) N2以上 通訳・翻訳業務 N1 技術職(IT・機械等) N3〜N2(専門知識優先) 注意点3:日本語能力以外のスキル・経験も評価する
JLPTはあくまでも“日本語力の一側面”を示す資格です。業務適性を総合的に評価するには、以下のような他の評価軸も重視する必要があります。
- ● 実務経験・専門スキル
- ● 学習意欲や適応力
- ● チームとの協調性
- ● コミュニケーション力(日本語以外も含む)
- ● 実務経験・専門スキル
対応策
書類審査ではJLPTをチェックポイントとしつつも、面接・実技評価・性格診断などを通じて総合評価を行う。注意点4:日本のビジネス文化への適応力は別
日本独特の職場文化(報連相、上下関係、集団意識など)は、日本語力とはまた別のスキルや理解が求められる分野です。例えば、JLPT N2合格者であっても
- ● 報告や相談のタイミングがわからない
- ● 上司への敬語が適切でない
- ● チームでの協働や時間厳守に慣れていない
- ● 報告や相談のタイミングがわからない
といったことは日常的に起こり得ます。
対応策
採用後すぐに「ビジネスマナー研修」や「報連相研修」などを導入したり、先輩社員によるOJT(On the Job Training)やメンター制度を活用し、日本の職場文化への適応をサポートする。注意点5:入社後の継続的な日本語サポートの有効性
外国人社員が安定して活躍するためには、入社後も日本語力の維持・向上をサポートする仕組みが必要です。JLPTの級は“ある時点の能力”を示すものですが、継続的な学習によってさらに実践的な力が身につきます。
有効なサポート例
- ● 社内の日本語研修プログラム(週1回の会話練習等)
- ● eラーニング教材の提供
- ● スピーキング練習会や言語交換の機会づくり
- ● 日本語学習支援制度(資格取得支援金など)
- ● 社内の日本語研修プログラム(週1回の会話練習等)
特に中堅以上の企業では、こうした育成型の制度を整えて定着率向上・戦力化につなげているケースが増えています。
このように、JLPTの級だけで判断せず“その人が職場で実際に活躍できるか”という視点から、バランスの取れた採用と育成を進めていくことが、企業にとっても、外国人材にとっても、長期的な成功につながります。

6. まとめ:JLPTを理解し、日本語能力の指標として正しく活用しよう
JLPTは、日本語を母語としない人の日本語コミュニケーション能力を測るための国際的な標準指標です。N5からN1までの5つのレベルで構成され、それぞれが示す能力水準や難易度を正しく理解することが重要です。特に最高レベルのN1は高度な日本語能力を示しますが、JLPTの結果だけでその人の全ての日本語運用力を判断することは避けるべきです。実際の会話力やビジネスでのコミュニケーション能力、さらに他のスキルも合わせて評価する必要があります。
個人にとってJLPTは学習目標の設定や日本語能力の証明に役立ち、企業にとっては採用基準の設定や人材評価の一助として有効に活用できます。ただし、適切なレベル設定や面接などでのコミュニケーション能力の確認も重要です。
日本語能力に関して疑問がある場合や、外国人採用におけるレベル設定など、具体的な問題については専門家への相談がおすすめです。

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