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バングラデシュの宗教|雇用前に知るべきイスラム教の注意点

近年、多くの日本企業で活躍の場を広げているバングラデシュ人材。彼らとの協働を成功させる鍵は、国民の約91%が信仰するイスラム教への深い理解にあります。しかし、「ラマダン中は?」「お祈りの時間はどうする?」など、具体的な対応に悩む担当者様は少なくありません。本記事では、バングラデシュの宗教事情の全体像から、イスラム教の基本教義、そして職場ですぐに実践できる具体的な配慮までを網羅的に解説します。宗教的背景を正しく理解し、信頼に基づいた良好な関係を築きましょう。

CONTENTS

1. データで見るバングラデシュの宗教構成

まずはバングラデシュの宗教事情の全体像を、最新の公的データを元に端的に解説します。

【バングラデシュの宗教構成(2022年国勢調査より)】

宗教

信者人口

割合

イスラム教(スンニ派)

約1億5,036万人

約91.0 %

ヒンドゥー教

約1,313万人

約7.95 %

仏教

約100万人

約0.61 %

キリスト教

約50万人

約0.30 %

その他(シーク教・アニミズム等)

約20万人

約0.12 %

出典:2022年国勢調査(Bangladesh Bureau of Statistics)より

1.1 イスラム教(スンニ派):91.0%

バングラデシュの人口の約91%がイスラム教徒(ムスリム)であり、これは国民の10人に9人がムスリムであることを意味します。憲法上、バングラデシュはイスラム教を国教と定めています(1988年改正で明記)。
ただし、信教の自由も保障されており、他宗教の信仰も法的に認められています。信仰されているイスラム教の宗派は、そのほとんどがスンニ派です。これは、世界中のムスリムの約9割がスンニ派であるという国際的傾向とも一致しています。

1.2 ヒンドゥー教:7.95%

ヒンドゥー教は、バングラデシュにおいてイスラム教に次いで2番目に多い宗教です。
2022年国勢調査では、全国の約7.95%(約1,313万人)がヒンドゥー教徒であると報告されています。この宗教構成は、バングラデシュがかつてインド文化圏の一部だった歴史に起因しています。ヒンドゥー教徒の多くは、現在でもインド国境付近の南西部や西部に多く居住しています。

1.3 その他(仏教・キリスト教など):1.1%

イスラム教・ヒンドゥー教以外にも、以下のような少数宗教が存在します。

 

  •   ● 仏教:約0.61%(主に南東部チッタゴン丘陵地帯の少数民族が信仰)

  •   ● キリスト教:約0.3%(カトリックとプロテスタントが中心)

  •   ● その他(シーク教、アニミズムなど):約0.1%

バングラデシュの憲法第41条では、すべての市民に信仰と宗教実践の自由を保障しています。したがって、こうした少数宗教も法的には保護されており、国として一定の宗教的多様性を持っています。

1.4 【補足】なぜイスラム教徒が多いのか?独立の歴史的背景

現在のバングラデシュの宗教構成は、1947年のインド・パキスタン分離独立に大きく影響されています。当時、イギリス領インドは、宗教(ヒンドゥー教とイスラム教)を基に以下のように分割されました。

 

  •   ● ヒンドゥー教徒が多数の地域 → インド

  •   ● イスラム教徒が多数の地域 → パキスタン(西パキスタンと東パキスタン)

バングラデシュはこのとき、東パキスタンとしてイスラム国家パキスタンの一部となりました。その後、1971年の独立戦争を経て、バングラデシュとして独立しましたが、住民の大多数はそのままイスラム教徒でした。このように、政治的・宗教的な線引きによって、宗教構成が固定された歴史的経緯が現在の姿を形作っています。

2. バングラデシュのイスラム教 3つの特徴

バングラデシュにおけるイスラム教は、一括りにせずその背景や文化的特色を理解することが重要です。ここでは、バングラデシュのイスラム教を理解するために特に押さえておきたい3つの特徴を解説します。

2.1 特徴①:多数を占める「スンニ派」

イスラム教には大きく分けて「スンニ派」と「シーア派」という二大宗派があります。その本質的な違いは、「預言者ムハンマドの後継者(指導者)を誰にすべきか」という考え方にあります。

 

  •   ● スンニ派は、預言者の後継者は有力な弟子やコミュニティが選ぶべきだと考えます。

  •   ● 一方、シーア派は、預言者の血筋を引くアリーとその子孫こそ正当な後継者と信じています。

バングラデシュのイスラム教徒のほとんどはこのスンニ派に属しており、世界のムスリムの約9割を占める最大の宗派です。

2.2 特徴②:中東とは違う「穏健派」と呼ばれる理由

バングラデシュのイスラム教文化は、しばしば中東の厳格なイスラム国家と比較して「穏健派」と評価されます。
その理由には、以下のような地理的・文化的背景があります。

 

  •   ● バングラデシュは中東から離れた南アジアに位置し、古くからヒンドゥー教や仏教など多様な宗教文化と共存してきました。

  •   ● 土着の文化や地域社会の伝統がイスラム教と融合し、柔軟で寛容な信仰スタイルが形成されています。

ただし、「穏健」という表現は決して信仰が薄いことを意味するわけではありません。バングラデシュのムスリムは非常に敬虔で信仰心が篤く、宗教的価値観を生活の中心に据えています。したがって、彼らの信仰に対しては尊重と敬意を払うことが最も重要です。

2.3 特徴③:信仰の根幹をなす「六信五行」

イスラム教徒の信仰と生活の基盤は、「六信」と「五行」という教えにまとめられています。これは全ムスリムに共通する基本的な信仰と実践です。

六信(信じるべき対象)

  1.   1. アッラー(唯一神):唯一絶対の神を信じること。

  2.   2. 天使:神の使者である天使の存在を信じること。

  3.   3. 啓典(コーラン):神がムハンマドに授けた聖典を信じること。

  4.   4. 預言者:ムハンマドを含むすべての預言者の教えを信じること。

  5.   5. 来世:この世の後に訪れる死後の世界の存在を信じること。

  6.   6. 定命(運命):すべての出来事が神の意志によって定められていることを信じること。

五行(実践すべき義務)

  1.   1. 信仰告白(シャハーダ):唯一神とムハンマドの預言者性を宣言する。

  2.   2. 礼拝(サラート):一日に5回の定められた礼拝を行う。

  3.   3. 喜捨(ザカート):経済的に余裕のある者が貧しい者に施しを行う。

  4.   4. 断食(サウム):ラマダン月に日の出から日没まで断食をする。

  5.   5. 巡礼(ハッジ):経済的・体力的に可能な場合、一生に一度メッカへの巡礼を行う。

これらの「六信五行」は、バングラデシュのムスリムの生活・価値観を形作る重要な柱であり、次章の「生活・価値観」の理解につながります。

3.【具体例】宗教がバングラデシュ人の生活・価値観に与える影響

バングラデシュのイスラム教の教えは、日々の生活や個人のアイデンティティに深く根付いています。ここでは、宗教が具体的にどのように生活や価値観に影響を与えているのか、6つの側面から解説します。

3.1 食事:ハラルとタブー(豚肉・アルコール)

イスラム法に基づき、食べてよいものは「ハラル」、禁じられているものは「ハラム」と呼ばれます。
特に以下は明確なタブーです。

 

  •   ● 豚肉:イスラム教では豚肉を一切口にしません。

  •   ● アルコール:飲酒は禁じられており、アルコール分を含む調味料(例えばみりん)やゼラチンなど豚由来成分が含まれる食品にも注意が必要です。

これらの制限は食文化だけでなく、買い物や外食の際にも大きな影響を与えています。

3.2 礼拝:1日5回の祈りと金曜礼拝の重要性

ムスリムは1日5回、日の出前から夜までの決まった時間帯に聖地メッカの方向を向いて礼拝(サラート)を行います。
おおよその時間帯は以下の通りです。

 

  •   ● 夜明け前(ファジュル)

  •   ● 正午(ズフル)

  •   ● 午後(アスル)

  •   ● 日没後(マグリブ)

  •   ● 夜(イシャー)

特に金曜日の正午に行われる集団礼拝「ジュムア」は男性にとって重要で、社会的な義務として広く守られています。

3.3 断食:ラマダン期間中の生活リズム

イスラム暦第9月にあたるラマダンでは、日の出から日没まで飲食を断つ「断食(サウム)」が行われます。断食の目的は、信仰心を高め、貧しい人々の苦しみを理解し分かち合うことにあります。この期間中は夜型の生活になり、日中の活動が控えめになるなど生活リズムが大きく変わります。

3.4 祝祭:2つのイード(祝祭)の過ごし方

バングラデシュでは年間で特に重要な祝祭として、以下の二つの「イード」があります。

 

  •   ● イード・アル・フィトル(ラマダン明けの祝祭)

  •   ● イード・アル・アドハー(犠牲祭)

日本の盆や正月のように、多くの人が帰省して家族や親戚と過ごし、祈りや贈り物の交換が行われる特別な期間です。

3.5 服装:男女で異なる肌の露出への考え方

公共の場では男女ともに肌の過度な露出を控えることが慎み深さの証とされています。

 

  •   ● 男性は長ズボンや長袖を着用することが一般的。

  •   ● 女性は体のラインが出にくいゆったりした服を着て、髪を覆うスカーフ(ヒジャブ)を身につけることが多いです。

これらは宗教的・文化的な規範であり、職場や公共の場で配慮が必要です。

3.6 価値観:人間関係を重んじ、楽観的な国民性

バングラデシュ人は個人よりも家族や共同体との絆を重視します。また「インシャアッラー(神が望むなら)」という言葉に象徴されるように、物事を神の意志に委ねる楽天的な気質が強いです。このため、仕事や生活において計画が柔軟であったり、時間感覚が日本と異なる場合もあります。文化的な背景として理解し、柔軟な対応が求められます。

4.【シーン別】バングラデシュ人材と働く上での実践的配慮

宗教や文化の理解を踏まえ、日本の職場で具体的に配慮すべきポイントを、5つのシーンに分けて解説します。

4.1 採用・面接:確認すべき項目と質問の注意点

  •   ● 企業側は、礼拝時間の確保などの対応方針を事前に提示し、応募者に必要な配慮があるかどうかを確認する方法を推奨。

  •   ● 一方で、信仰の熱心さなど個人の宗教心を詮索する質問(例:「信仰は熱心ですか?」)は不適切であり避けるべき。

4.2 勤怠管理:礼拝時間の確保とラマダン中の勤務体系

  •   ● 礼拝時間:1回あたり数分のため、休憩時間内や業務に支障のない範囲での離席を認める形で配慮可能。

  •   ● ラマダン期間中:断食に伴う体力低下を考慮し、残業を減らす、時差出勤を許可するなど柔軟な勤務体系の導入が効果的。

4.3 休暇管理:イード期間の長期休暇への対応

  •   ● イード(祝祭)は家族と過ごす重要な期間であり、多くのムスリムが帰省を希望。

  •   ● 年間の業務計画にイード期間を織り込み、有給休暇の計画的な取得を促すなど、事前の調整が不可欠。

4.4 食事環境:社員食堂や懇親会で注意すべきこと

  •   ● 社員食堂:豚肉やアルコールを使わない「ムスリムフレンドリー食」の提供や、食材の原材料表示(ピクトグラムなど)で安心感を提供。

  •   ● 懇親会:アルコールの強要は避け、ハラル対応の飲食店やベジタリアンメニューが充実した店の利用を心がける。

4.5 職場環境:礼拝スペースの設置と男女間のコミュニケーション

  •   ● 礼拝スペース:静かな会議室の一角や空きスペースを提供すれば十分。メッカの方向を示すシールを貼るなど、簡単な工夫も喜ばれる。

  •   ● コミュニケーション:男女間での不要な身体的接触は避けるべき。安易な握手や肩を叩く行為などは控え、相手の文化的背景を尊重することが重要。

5. 知っておきたい少数派宗教(ヒンドゥー教など)の祭り

組織の多様性を尊重し、バングラデシュの少数派であるヒンドゥー教徒の従業員がいる可能性にも配慮することが重要です。彼らが大切にしている祭りを理解しておくことで、適切な休暇対応や職場環境づくりが可能となります。

5.1 ドゥルガープージャ

ヒンドゥー教で最大規模の祭り。秋に数日間にわたって盛大に執り行われます。家族や共同体で祝うため、休暇を希望する従業員がいることを想定し、配慮が必要です。

5.2 ホーリー祭

春の訪れを祝う「色の祭り」として知られ、参加者が色粉や色水をかけ合って楽しむ華やかな祭典です。身分や性別に関係なく盛り上がる祭りで、文化的背景の理解が職場のコミュニケーション促進にも役立ちます。

6. よくある質問(FAQ)

採用担当者や現場のマネージャーから特によく寄せられる具体的な疑問に、Q&A形式で簡潔に回答します。

6.1 Q. お酒の席に誘っても大丈夫?

  1. A.
    バングラデシュの多くのイスラム教徒は飲酒を控えますが、職場の懇親会などに参加を希望する人もいます。本人の意思を尊重し、「飲めないこと」を前提に気軽に声をかけることが望ましいでしょう。

6.2 Q. 贈り物で避けるべきものはある?

  1. A.
    豚皮製品、アルコール類、犬の置物などは宗教的な理由で避けるべきです。代わりに、ハラル認証のあるお菓子や果物などが喜ばれます。

6.3 Q. 写真撮影は自由にしてもいい?

  1. A.
    イスラム教では偶像崇拝を禁止しているため、人物、特に女性の写真を撮る際は必ず事前に本人の許可を得ることが最低限のマナーです。

7. 【まとめ】宗教への深い理解が、バングラデシュ人材との共存を成功させる

本記事では、バングラデシュの宗教構成の全体像から始まり、イスラム教の特徴、日常生活への具体的な影響、さらに職場での5つのシーン別実践的配慮について解説しました。バングラデシュ人材との良好な関係を築くためには、彼らのアイデンティティの根幹をなす宗教への深い理解と敬意が不可欠です。これこそが、信頼関係の礎となり、共に成長できる職場環境の基盤となります。

しかし、多様な人材それぞれに最適な環境を自社だけで構築するのは容易ではありません。労務管理や組織づくりで課題を感じた場合は、専門家の知見を活用することが成功への近道です。

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