海外人材Times

外国人労働者の雇用・採用WEBメディア

検索
海外人材Times

【選ぶ日本から、“選ばれる日本”へ】―キャムコムグループが考える、海外人材にとって必要なインフラとは―

日本では少子高齢化の影響で人口が減少し、2030年には644万人の労働人口が不足するとの予測がされています。その解決の糸口として、大きな期待が寄せられているのが外国人材の活用です。2023年10月末時点の外国人労働者数は204万8675人、対前年増加率は12.4%であり、今や外国人材は日本経済にとって欠かせない存在となっています。

2024年6月14日には、技能実習に代わる外国人材の新制度「育成就労」を新設する技能実習法、出入国管理法などの改正案が成立し、外国人がより長期に渡り就労できる道が開かれました。

一方で、未だ「外国人材は安価な労働力である」との固定観念を持っている日本企業も多く、今後、貴重な人材である外国人が、働く場として日本を選ばなくなることも懸念されています。これによって、日本が経済活動を維持できなくなる未来を迎える可能性もあるのです。

今、新たな局面を迎えている日本の労働市場に必要なのは「外国人材から“選ばれる”こと」です。そのためのヒントを、過日、『外国人材を競争力に変える法 日本企業が外国から選ばれる力を持つために』を上梓した株式会社キャムコム代表取締役 宮林俊彦氏に詳しく伺いました。

――「育成就労」制度が新設された中での今後の展望とは

宮林:『外国人材を競争力に変える法(以下略)』の中でも、画一的でなく、企業ごとに合った事例を色々とご紹介させていただいております。今回は弊社のグループにおいて、日本が海外人材に選ばれるために、そして選ばれた後どう生かしていくか、という視点で行っている取り組みについてお話しすることで、今後の展望としてお伝えできると思います。

 

株式会社キャムコムに属する子会社・株式会社キャムテックでは、2023年4月1日、技能実習生や特定技能外国人などの研修を行う宿泊型施設「キャムテックエデュックアカデミー成田センター」を開設。同施設では、技能実習生たちが共同生活を送りながら日本での生活様式を学習できることに加え、イスラム教の礼拝堂も設けられるなど宗教的配慮も行われている。

―― 「キャムテックエデュックアカデミー成田センター」の運営目的とは

宮林:今後、「育成就労」という名前は変わっていきますが、現在、技能実習として各国から日本に来ていただいた外国人実習生に対して、入国から1カ月間、研修を行うための施設です。元々、施設の第一号は大阪・泉南で始まり、そこから複数箇所あったほうが良いということで、成田の拠点も追加することになりました。

同施設は、JOE協同組合といったキャムコム傘下の監理団体以外からも、技能実習生を受け入れているという。

――施設はJOEだけでなく外部の管理団体・組合からの技能実習生も受け入れる方針

宮林:もちろんJOEの方は基本的に入っていただきますが、他の監理団体・組合の実習生の方も積極的に受け入れをしております。JOEは基本的にはベトナムとインドネシアが中心ですが、他の監理団体・組合からはタイや、フィリピンなどの出身の方も受け入れており、国籍としても幅広く、それぞれの価値観の中で吸収ができる環境を作っています。

―― メディアによる情報発信から採用プロセスのサポートまで幅広いサービスを展開

宮林:私どもはベトナム、インドネシアを中心に現地法人を介して、人材の確保から外国人材の採用というプラットフォームを日本企業に提供しております。あとは海外人材が日本に来て仕事が始まった後も、安心・安全に日本で生活できるように、日本語のレベルアップを目指し語学教育に力を入れるなど、様々なサポートを実施しています。技能実習の3年間でキャリアが終わるのではなく、さらに特定技能も一号・二号とレベルアップをして、日本の生産向上に寄与できるような人になっていただきたいという思いの上で教育プログラムを充実させているのです。

―― 日本の外国人材の受け入れ拡大に合わせて「日本人の派遣」関連から「外国人材」へ事業展開

宮林:もともとグループ全体としては、「派遣」という形の中で人を支援する事業を主に行っていましたが、依然として多くの企業で人材不足という問題がありました。それにあたり、海外人材が日本を選んで働きに来ていただくための支援を、自らの事業として始めた運びになります。

 

また、キャムコムでは、技能実習生を受け入れる研修施設の運営だけでなく、技能実習生が日本へ渡航するうえでネックとなる根幹部分の問題にも解決へ向け着手をし始めている。

―― JOE協同組合にて現在進行中の「IJCプログラム」とは

宮林:「IJCプログラム」とは、技能実習生が来日する際にかかる費用負担を極小化させるという目的で、JOEがインドネシア政府と提携し行っている取り組みです。従来は、送り出し機関や悪質なブローカーが間に入ることによって、高額な教育費用や手数料が渡航前に実習生側の負担として発生しており、大きな借金を抱えたまま実習生が日本へやってくるという問題がありました。このような問題をクリアにし政府公認とすることで、技能実習生の負担をなるべく減らし、「日本で働きたい」と願う一人でも多くの方に門戸が開けるようにしていきたいと考えています。

―― 実習生の負担額50~60万円という事例もある中で、具体的に負担を減らす方法とは

宮林:JOEから無償の奨学金と、インドネシア政府から支給される教育補助金で、なるべく実習生の費用負担を小さくする仕組みを作り対応しています。応募できる方についても一般的に広く募集するのではなく、国営の職業訓練校と提携することによって、そもそも人を探すことにおいて発生する費用を削減しています。

技能実習生たちの渡航ハードルをできる限り下げるように働きかけ、そのうえで海外人材を受け入れる体制も十分に整えるといった手厚いサポートを実施するキャムコムグループ。その一方で、技能実習生を日本へ送り出す国側の現状についても伺った。

――送り出し国におけるキャムコムの取り組みへのニーズとは

宮林:例えば、インドネシア国内では失業率が10%を超えており、3000万人が仕事に就くことができていません。それほどインドネシア国内で正社員として働くということは、とてもハードルが高いのが現状です。

正社員になるには四年制大学を卒業しなければいけませんが、四年制大学に通えるのは金銭的に余裕がある人で、お金がなければ正社員になれないのか?という考えが生まれます。そこで国としては、職業訓練校を作り、そこで専門スキルを身につけた人が正社員を目指せるというシステムを作りたいのですが、国内にはそもそも仕事がありません。そのため「海外での就労を目指しましょう」というニーズと「日本側で人が足りない」ということをリンクさせます。国が育てていった技能を、結局就職ができず無駄にさせるのであれば、日本の技能実習制度を使って実施する、ということです。そのため、質の担保もできて本人たちの意欲も高いため、弊社の取り組みに対しニーズが高まっているのではないかと思います。

――JOEとして、キャムコムとして、そのほかに取り組んでいる施策とは

宮林:入り口だけでなく、仕事が始まってからいかにお客様のニーズに合った教育が施せるか、+αで期待以上の教育ができるかなど、その後の成長が大切だと思っております。

それを達成するためには、いかに適した環境を提供できるかということ、そして技能実習生のモチベーションを維持するバックアップ体制が大事だと考えています。具体的には、日本語教育をはじめとするオンラインで勉強できるコンテンツの提供や、海外人材の母国出身の社員を200名近く雇用し、パートナーのような存在として対面で相談できてフォローを受けられる体制を整えるなどの施策を行っています。

――円安などの影響により、日本での就労を希望する外国人が減少傾向にある状況下で、受け入れ国である日本のスタンスとは

宮林:これからは育成就労が法制度として一本化していく考え方が進んでいきますが、私としては、日本人には少し傲慢さがあると思っています。例えば、特定技能で日本のドライバー不足が解決されるという話があります。しかし、トラックのドライバーは危険が伴うので日本語能力試験のレベルがN4、タクシーはN3以上ないといけない上に、日本の免許も取得させるとのことでした。

これに関して送り出し国の方からは、「あれ?人材不足で困っているのは日本ではないの?」という反応になります。日本語は日本人しか喋りません。他の国では英語が普通に通じるので、元々英語が話せる人が多いフィリピンなどの国からすると、日本に来るよりも自分たちにとって都合が良く、そして割の良い働き口が日本以外にたくさんあるのです。

例えば、現在カナダの月収は120万円程と言われています。オーストラリアは月収80万円程。では日本はどれぐらい稼げるのかというと、20万円程度。他の国に対して「賃金」の面で負けているのに、「日本語を学んで来て」というのは難しいのが分かると思います。「この資格が取れないと日本には居られません」という、日本の驕った本性が垣間見える部分に感じます。

―― 「待遇に対しての要求が見合ってない」という海外人材が持つ思いの今後とは

宮林:日本が選ばれる国になる要素として一番大きいのが「待遇」、つまり「金銭」の面です。しかし金銭面について言えば、基本的には為替の関係で大きく変動していく部分もあるため、それ以外の部分を重要視したいと考えています。

日本でのライフサイクルの中で、より価値のある経験になっていくところを海外の方々に見せられれば、その先の金銭以外の面も見てくれる可能性があると思っています。

――日本が海外人材から「選ばれる国」になっていくために必要な取り組みとは

宮林:例えば、「安心・安全に働ける」という点は、他国に比べて、日本が海外人材から選ばれる理由の一つとなると思います。短期的には在留している期間の仕送り額という形で見るかもしれませんが、賃金以外の部分で我々が選ばれるように取り組んでいくことが、海外人材が日本で長く働いてみようと思うことに繋がると考えています。

国としても人材を「育成」していくことが主な目的です。海外人材に対しても、生活やキャリアなどをトータルで考えられる情報や価値を提供することができれば、まだまだ日本は海外人材から選ばれる国として残っていられるのではないかと私は思います。

外国人採用に関するオンライン無料相談やってます!

  • 雇用が初めてなのですが、私たちの業務で採用ができますか?
  • 外国人雇用の際に通訳を用意する必要はありますか?
  • 採用する際に私たちの業務だとどのビザになりますか?
  • 外国人の採用で期待できる効果はなんですか?

上記に当てはまる企業様は、ぜひ一度ご相談ください。

× 教えてタイムスくんバナー画像