技能実習生の寮の基準は? 部屋の広さやルールを解説
2024.09.05
技能実習生を受け入れる際は、実習生の生活環境を確保することが必要です。
実習実施者または監理団体においては、技能実習法関係省令に従って、寮の条件について事前に確認し準備しておきましょう。
本記事では、技能実習生の寮の条件について、法令による基準値を解説します。
CONTENTS
1.技能実習生の寮・宿舎の規定とは
技能実習関係省令によると、技能実習生の待遇の基準は以下のように定められています。
“企業単独型技能実習に係るものである場合にあっては申請者が、団体監理型技能実習に係るものである場合にあっては申請者又は監理団体が、技能実習生のための適切な宿泊施設を確保していること。”
基本方針 第3章第7節において、実習実施者は技能実習生が健康で快適な実習生活を送れるように、快適な住環境を確保することが明記されています。
2.技能実習生の寮の基準は
技能実習関係省令に「企業単独型技能実習に係るものである場合にあっては申請者が、団体監理型技能実習に係るものである場合にあっては申請者又は監理団体が」とある通り、技能実習生の宿泊施設は、監理団体または実習実施企業が準備しなければなりません。
また「適切な宿泊施設」と認められるためには、前提として建築基準法上の基準を満たした「建築物」であることが必要です。
技能実習制度・運用要項をもとに「適切な宿泊施設」と認められる寮の基準、条件を確認していきましょう。
危険リスクの防止
“宿泊施設を確保する場所は、爆発物、可燃性ガス等の火災による危険の大きい物を取扱い・貯蔵する場所の付近、高熱・ガス・蒸気・粉じんの発散等衛生上有害な作業場の付近、騒音・振動の著しい場所、雪崩・土砂崩壊のおそれのある場所、 湿潤な場所、出水時浸水のおそれのある場所、伝染病患者収容所建物及び病原体によって汚染のおそれの著しいものを取り扱う場所の付近を避ける措置を講じていること”
宿泊施設は、危険性・騒音・災害や浸水の恐れといった危険リスクがある場所の付近に設置してはなりません。
屋外階段の条件
“2階以上の寝室に寄宿する建物には、容易に屋外の安全な場所に通ずる階段を2箇所以上(収容人数 15人未満は1箇所)設ける措置を講じていること”
屋外階段の代わりにすべり台、避難はしご、避難用タラップなどを設置することで、技能実習生の安全が確保できている場合も当該条件はクリアできます。
防火設備の設置
“適当かつ十分な消火設備を火災が発生した際に機能するよう実効性のある場所に設置しており、日頃から点検して適正な維持管理のための措置を講じていること”
防火設備が適切に設置され、火災発生時に実効性のあるものとして作用する状態にあることが求められます。
室内スペースの条件
“寝室については、床の間・押入等、技能実習生が実際に使用できないスペースを除き、1人当たり4.5㎡以上を確保することとし、個人別の私有物収納設備、室面積の7分の1以上の有効採光面積を有する窓及び採暖の設備を設ける措置を講じていること”
技能実習生の部屋は、1人あたり4.5㎡(3畳)以上の広さを用意しましょう。
私有物収納設備
“「私有物収納設備」については、プライバシーの確保や盗難防止の観点から、 身の回りの品を収納できる一定の容量があり、かつ、施錠可能で持出不可なものであることが必要です(個人別に施錠可能な部屋である場合を除く。)。技能実習生の私物であるスーツケースを私有物収納設備として利用しているケースがあり ますが、私有物収納設備の設置はあくまでも実習実施者の責任において行われるものであり、このような私物の利用では私有物収納設備を設ける措置を講じているとは認められません。”
技能実習生に施錠可能な個室を用意している場合は必要ありませんが、一つの部屋で共同生活をさせている場合には注意が必要です。宿泊施設を提供する実習実施企業として、技能実習生のプライバシーの確保と盗難防止に配慮する義務があります。例えば、3人部屋の場合は鍵付きのロッカーを3台用意するなどの措置が必要になるでしょう。
なお、運用要項に記載のとおり、技能実習生の私物であるスーツケースを私有物収納設備として代用することは認められません。あくまでも、実習実施企業の責任のもと措置を講じることが求められます。
寝室の条件
“就眠時間を異にする2組以上の技能実習生がいる場合は、寝室を別にする措置を講じていること ”
例えば夜勤と日勤のように、技能実習生の勤務時間が異なる場合は、寝室を分けましょう。
食堂の衛生管理
“食堂又は炊事場を設ける場合は、照明・換気を十分に行い、食器・炊事用器具を清潔に保管し、ハエその他の昆虫・ネズミ等の害を防ぐための措置を講じていること ”
技能実習生の健康に配慮し、食事をする場所の衛生管理を徹底しましょう。
バス・トイレなどの衛生管理
“他に利用し得るトイレ、洗面所、洗濯場、浴場(脱衣室を含む。)のない場合には、 当該施設を設けることとし、施設内を清潔にする措置を講じていること(各施設は一般的な機能を有する設備を設け、浴場は保温性を維持し、必要に応じ、プライバシーが守られるよう十分に配慮していること)”
共同利用ができるトイレ、洗面所、洗濯場、浴場を設置し、施設内は清潔にしておきましょう。
事業の附属寄宿舎
“宿泊施設が労働基準法第10章に規定する「事業の附属寄宿舎」に該当する場合は、同章で定められた寄宿舎規則の届出等を行っており、又は速やかに行うこととしていること”
労働基準法第10章に規定する「事業の附属寄宿舎」とは、事業者が従業員の住居として設置し、複数の従業員が寝食を共にする共同住宅を指します。
入居している従業員が一定のルールに基づいて生活している点がポイントで、製造事業者が設置する工員宿舎や会社が設置する社員宿舎が該当します。社員や独身寮のように、それぞれ独立した生活を営む施設は寄宿舎に含まれません。
共用部分の衛生管理
“宿泊施設内の共用部分については、必要に応じ、消毒するなどの衛生管理を行い、感染症の発生及びまん延防止のための措置を講じていること”
感染症の発生や拡大防止のため、消毒など共用部分の衛生管理を行いましょう。
3.技能実習生の寮についての注意点
技能実習生の寮について、その他の注意点を説明します。
技能実習生が賃貸物件を確保した場合
実習実施企業が用意した宿泊施設とは別に、技能実習生自らが宿泊用の賃貸物件を確保するケースです。この場合、技能実習生自身が費用を負担することと、先述の「適切な宿泊施設」に該当することを条件に宿泊施設を変更することができます。
なお、宿泊施設を変更する場合は、技能実習計画の変更の届け出が必要になるので覚えておきましょう。
外出や外泊の許可が必要
寄宿舎に居住する技能実習生に外出や外泊の許可は必要ありません。外出や外泊に際して使用者の承認を必要としたり、教育・娯楽などの行事への参加を強要したりすることは固く禁止されています。学生の寮生活と混同しないように注意しましょう。
4.特定技能に変更した場合の宿泊条件
技能実習生と特定技能外国人の住居基準は異なります。
特定技能外国人の住居基準は、特定技能外国人支援に関する運用要領によって以下と定められています。
“居室の広さは、一般的に我が国に相当数存在する居室の面積等を考慮し、1人当たり 7.5 ㎡以上を満たすことが求められます(ただし、技能実習2号等から特定技能1号へ在留資格を変更する場合等であって、特定技能所属機関が既に確保している社宅等の住居に居住することを希望する場合を除く。)。なお、ルームシェアするなど複数人が居住することとなる場合には、居室全体の面積を居住人数で除した場合の面積が 7.5 ㎡以上でなければなりません。”
特定技能の住居基準では、一人あたり7.5㎡以上の居室を提供しなければなりません。ルームシェアで複数人が同じ住居に住む場合には、居室全体の面積を人数で割った面積が7.5㎡以上あれば条件を満たします。
ただし、「技能実習2号等から特定技能1号へ在留資格を変更する場合等であって、特定技能所属機関が既に確保している社宅等の住居に居住することを希望する場合を除く。」という例外があります。
“居室の広さについては、技能実習2号等から特定技能1号へ在留資格を変更する場合等であって、特定技能所属機関が在留資格変更許可申請(又は在留資格認定証明書交付申請)の時点で既に確保している社宅等の住居に居住することを希望する場合であっても、少なくとも技能実習生について求められている寝室について1人当たり4.5 ㎡以上を満たす必要があります。
また、技能実習2号等を終了した技能実習生が一度帰国し、特定技能1号の在留資格認定証明書交付申請に及んだ場合においては、特定技能所属機関が既に確保している社宅等(技能実習生として居住していたもの)が当該外国人の生活の本拠として継続しているなど、当該社宅等に引き続き居住することを希望する場合については、寝室が4.5㎡以上を満たしていれば要件を満たすものとします。”
つまり、技能実習から特定技能へ移行した場合で、当該外国人が引き続き同じ部屋に住むことを希望する場合には、居室の広さが7.5㎡未満であっても寝室の広さが4.5㎡以上あれば良いということです。
5.まとめ
技能実習生に用意する寮の基準について、技能実習法関係省令に沿って解説しました。平米数の指定など、基準値が細かく規定されているため、受け入れ先である実習実施企業はしっかり確認しておく必要があります。
外国人技能実習生が日本での実習期間を健康で快適に過ごせるよう、適正にバックアップしていきましょう。
出展:1号特定技能外国人支援に関する運用要領|出入国在留管理庁
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