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2024年問題を乗り越え、組織を新たなステージへ――運送業・アキタ株式会社の挑戦

生活関連

2025.12.24

今や、インターネットショッピングの利用率は7割を超える。また、日用品や食料品などが店頭で買えるようになるためには、そこに送り届けてくれる人たちの存在は欠かせない。

 

「物流」は、まさに電気や水道などと同じように、私たちの生活を支えている。

 

しかし、運送業界は様々な法制度の変更などの影響により、長年の「人材不足」に悩まされてきた。加えて「2024年問題」と呼ばれる労働時間の制限により、さらなる苦境に立たされていることは、業界関係者でなくとも耳にしたことがあるだろう。

 

そんな窮状を打破すべく、運送業界に下ろされた蜘蛛の糸が何を隠そう「海外人材」だ。

 

2024年3月に特定技能制度の対象分野へ「自動車運送業分野」が追加、同年12月より評価試験が開始され、今運送業界では多くの企業が、長年頭を悩ませ続けてきた人材不足を解消するために海外人材とどう手を取り合っていくべきか、その方法を模索している。

 

そんな業界の現状のなかで、いち早く海外人材の採用に踏み切り、ドライバー育成に取り組んできた企業が、今回登場するアキタ株式会社だ。

 

出会いの幸運に恵まれながら、試行錯誤をくり返し、運送業界の海外人材活用をリードしていくアキタの姿勢や歩みは、運送業界に留まらず、これから海外人材活用へ向かうすべての企業の道標になる。

■プロフィール

アキタ株式会社 代表取締役社長 原田謙治さん(左)

埼玉営業所 ポウデル・アルンさん(中央)

郡山営業所所長兼海外人材プロジェクト担当 佐藤尉賀さん(右)

 

■始まりは1本の電話――アキタの海外人材プロジェクト

運送業界が人材不足で悩むことになる最初の大きな転換は1990年。それまで免許制だった貨物運送事業が許可制に変わり、参入障壁が下がったことにある。運送業者の数が爆増し、ダンピングによって運賃が引き下げられた。運賃が引き下げられれば、当然これまで支払えていた給料を払うことができなくなる。ドライバーの稼ぎは減った。

さらに、2007年には道路交通法改正による中型免許の新設が行われると、高卒ドライバーが1度に運べる荷物の量に限りがある小型車にしか乗れなくなった。こうして、“労働時間が長くて大変だけど稼げる仕事”というドライバーにあった「夢」は失われていった。

 

「僕らのような実運送の会社の収益は「労働者数×労働時間×効率」という公式で計算することができます。運賃の引き下げと中型免許の新設で労働者の数が減り、2024年問題で労働時間は960時間の制限をする。工夫できるのは効率だけで、社内のDX化などで進めてはいますが、限界はありますからね。そこで、海外の方に来ていただいて労働者の数の部分をなんとかしようと、方法を考え始めました」(原田)

 

そう語るのは、代表取締役社長の原田さん。海外人材採用のプロジェクトを始動するにあたり、郡山営業所の佐藤さんが抜擢された。

郡山営業所所長兼海外人材プロジェクト担当 佐藤尉賀さん

 

「会社として海外人材の雇用という新たな選択肢について考えていかなければいけないということでしたが、業界として前例のないことですから、最初は『咄嗟の判断に関わるから日本と同じ右ハンドルの国がいいですよね』『じゃあ右ハンドルの国ってどこだ?』というところから考えていくような手探りの状態でした」(佐藤)

 

また、アキタのビジネスモデルに即した方法を模索する必要もあった。たとえば現地の送り出し機関や日本側の受け入れ期間を経由すると、当然採用コストは跳ね上がる。利益率が高いとは言い難い実運送を生業とするアキタでは、なかなか手が出しづらいものだった。

 

「最初から海外人材を頭数を増やすだけの安価な労働力とは考えていません。うちで働いてもらうからには、日本人のドライバーと同じように会社が定める品質基準をきちんと守ってもらう必要がありますから、当然日本人のドライバーと同じ給料で働いてもらいます。だから(日本人を採用するよりも)多少コストがかかるのは仕方ないにしても、日本に来てもらう分のコストがどれくらいまでなら持続可能な仕組みになるのか、佐藤とも話し合いながら今も検討と検証をくり返しています」(原田)

 

思ったように進まない事態が急転したのは、2024年の暮れ。埼玉営業所に1本の電話があった。「アキタで働きたい」というアルンさんからの電話だ。

ところが、アキタは海外向けの求人を出していたわけではなく、アルンさんが見たのもごく普通の国内向けの求人だったという。アルンさんは当時のことについて、次のように話している。

 

「昔からドライバーになりたかったんです。だから自分で大型免許も取って、いい会社を見つけたら応募してドライバーになろうと思っていました。求人を見て、電話をかけて、面接で実際に話してみて、皆さん丁寧で優しいし、自分にも合いそうだなと感じました」(アルン)

 

しかし、当時アルンさんが持っていたビザはドライバーとしての就労ができない技人国(技術・人文知識・国際業務)ビザ。アルンさん自身もそうとは知らずにアキタに電話をかけてきていた。

とはいえ、アルンさんの電話は、なかなか進まずにいた海外人材の採用プロジェクトを進める起爆剤であることは間違いない。というのも、すでに日本で8年暮らしていたアルンさんは日常会話レベルの日本語であれば問題なく意思疎通ができ、日本の文化や慣習にもある程度馴染んでいた。何より、すでに大型免許を持っていたことも大きかった。

代表取締役社長 原田謙治さん

 

「僕らは幸運でしたよ。普通は逆で、特定技能を取ってから最後に大型ですからね。だからアルンくんには特定技能試験と日本語検定に合格するためのサポートをするから、まずは内勤の仕事をしながらドライバーを目指さないかという相談をしました」(原田)

 

この申し出にアルンさんは2つ返事でうなずき、年が明けた1月からアキタの制服に袖を通すことになった。

 

■言語のサポートで成長と安心を実現

ところで、多くの企業や担当者が想像している通り、海外人材活用に乗り出す多くの企業が直面する問題のひとつに「言語の壁」がある。アキタの場合、幸運にもアルンさんの日本語は会話をする分には問題のないレベルだったが、佐藤さんたちはそれでもサポートを惜しまなかった。

 

「私は普段、郡山営業所にいるので、埼玉営業所の所長とアルンさんとの連携を密に行いながら、コミュニケーションの回数を増やすよう意識しました。LINEなどテキストでやり取りをするときも最初はひらがなを使ったほうがいいのかなと考えることもありましたが、それでは日本語検定に向けた勉強にならないので、日本人と変わらない文章でコミュニケーションを取っています。他にも日本語の勉強とコミュニケーションの強化を兼ねて業務日誌を書くようにしてもらったり、どんなことを考えているのか、常にお互いに話せるような環境整備を行うようにしていました。営業所内でも、漢字ドリルをプレゼントして添削したり、アルンさんの意欲に応じて学べる環境を整えてくれていました」(佐藤)

 

その甲斐あってか、アルンさんは日本語検定、特定技能試験ともに1発合格。現在はビザの書き換えを待ちながら、アキタのドライバーとしてデビューできるよう訓練を積んでいる。

 

「地名などの固有名詞は特別な読み方をするので難しく感じることもありましたが、漢字が分からないときは自分で調べたり、周りのみなさんが丁寧に教えてくれたりするので、困ったことはありません」(アルン)

埼玉営業所 ポウデル・アルンさん

 

当たり前のことだが、海外人材はお客様ではなく、一緒に働く仲間だ。モチベーションを上げ、成長を促していくことについて、日本人の人材と変わりはない。何でも手取り足取りサポートするのではなく、困ったときに置き去りにしないセーフティーネットのような仕組みを整えておくことが重要なのだろう。

また、アルンさんの特定技能ビザ取得をサポートし、海外人材活用プロジェクト成功へ向けた解像度が上がっていくなかで、見えてきたこともあった。

 

「アルンさんはたまたま日本語ができましたが、他の海外人材の方とオンライン面談などをしていると、自己紹介ができる程度で日本語での会話はできない方がほとんどです。そのため、今後採用を拡大していく上で日本語教育はキーポイントになると思っています。ある程度は日本語でコミュニケーションが取れないと、困ったときに周りの人に「困っている」と伝えることも難しくなってしまう可能性がありますからね。

ドライバーとして働く上で地名を読めたりする高い日本語力があるというのは仕事の幅に直結するという側面もありますし、会社側も働く側もコミュニケーションが取りやすくなることでお互いにやりやすくなりますよね。人と人として向かい合い、一緒に仕事をしていくために欠かせないことだと認識しています」(佐藤)

佐藤さんが日本語力をキーポイントだと語るのには、海外人材の日本語教育を取り巻く実情も影響している。たとえば、人材派遣会社でも日本語を教えるプランが設定されているものの、多くの場合、教育期間は半年程度だ。

 

「半年間、語学留学に行っても大して英語が話せるになるわけじゃないのと同じで、その程度の期間で十分な日本語を習得してもらうことはとても難しいと思います」(佐藤)

 

現在、アキタでは日本語学校と連携し、1年半のあいだ日本語をみっちり勉強したあとでアキタに入社するコースづくりを進めている。実現すれば、アルンさんと同じようにきちんと日本語を学んだ状態で入社することができるようになるため、双方にとって大きなプラスとなることは間違いないだろう。

 

■海外人材活用をきっかけに、さらに活性化する組織

海外人材採用のプロジェクトが走り始めたことで生まれたプラスの変化は、組織全体にも及んでいる。

 

「全体会議の場で海外人材プロジェクトの発表をする機会があり、その発表後、『こういう外国の方の応募がきていてどう対応しましょうか』『海外人材の派遣会社から営業が来ているんだけど、よく分からないから教えてほしい』などと全国の所長から相談がくるようになりました。これは海外人材活用というものに興味を持ってくれる社員が増えた証拠だと思っています。

きっとよく分からないままだと“外国人=言葉通じなくて大変なんじゃないか”という先入観を抱いてしまうこともあると思うんです。ですがそれは海外人材の1つの側面でしかなく、実際はアルンさんのように勉強意欲が高いという方も多い。まず興味を持ってもらうことによって、そういう先入観を覆すことができるようになってきた実感があります」(佐藤)

 

確かに「言語の壁」は甘く見ていい問題ではない。だが、ただ大変なだけではないことも事実だということは、アルンさんたちを見ていればよく分かる。佐藤さんが話してくれた通り、先入観を覆し、“外国人”という大きすぎる括りから抜け出すことは、近い将来、それぞれの営業所で海外人材と働くことが当たり前になったときに不可欠な土壌を作る第1歩になるはずだ。

 

「言葉や文化の違いはありますが、“楽しく働きたい”とか“認められたい”とか人間としての根本的な部分は日本人も外国人も一緒なんです。だから日本人も外国人も関係なく、みんなが負担なく働ける環境づくりをしていかなければいけないと思います。そのためには各部署と連携しながら、みんなでよりよい組織に変えていけるように考えていく。そうすれば、会社としての総合力も自ずと強くなっていくはずですから」(佐藤)

「僕は、少なくない割合のドライバーが外国人になる将来も十分にありえると思います。今は手探りでスタートを切るか切らないかのところですが、僕らとしてはそういう未来も見据えながらやっていかないといけませんね。

そのためにも、会社としては人の良心に任せるのではなく、仕組みとしてのサポートやルールをきちんと整備していく必要があります。アキタが今まで築いてきた輸送品質やサービスの質をさらに向上させながら、海外人材という新しい取り組みにも挑戦していく。その両輪をどれだけきちんと回していけるかに、組織の力が問われているんだと思います」(原田)

 

「まだまだこれからです」と原田社長は謙遜していたが、こうしてアキタが組織をあげて取り組んでいることは、アルンさんのなかにも大きな変化を生んでいる。

「まずはドライバーとして色々な仕事の経験を積みたいですが、将来は自分と同じようにアキタで働く外国人に仕事を教えられるようになっていきたいです。

アキタではみなさんがサポートしてくれて、会社も働いている自分たちの将来のことをきちんと考えてくれているので、自分も“もっと頑張らないと”、“もっと頑張りたい”と思うようになりました」(アルン)

 

アルンさんは真剣なまなざしで、アキタでの成長と日本でのキャリアアップを見据えている。アキタが採用しているのが会社の未来を担い、業界の新しいステージを切り開くための海外人材だということを、そのまなざしが証明しているように見えた。

 

■取材協力

アキタ株式会社

住所:

〒453-6110

名古屋市中村区平池町四丁目60番地の12 グローバルゲート10F

URL:https://akita-inc.co.jp/

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