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技能実習生寮にて流血事件、発生!
キャリアアドバイザー伊能ゆりなの事件簿Vol.12

生活関連

2025.01.03

これから外国人材の雇用を予定している人もそうでない人も!!

異なる人種、文化、価値観に触れる時
― 外国人って、どんな人たちなんだろう
― どんなことに気をつけたらいいんだろう
― 日本人や日本の文化をどう思ってるんだろう
などなど、不安や疑問に思うこと、ありますよね。

この記事は、実際に起きた珍事を元に、外国人雇用の現場に携わる人々の戸惑いを描き

「外国人材の皆さんと、どんなふうにコミュニケートしたらよいの?」

のヒントが隠れる、異文化理解の橋渡しを目的としたノンフィクションストーリーです。

キャリアアドバイザー伊能ゆりなの事件ファイルVol.12
技能実習生寮にて流血事件、発生!

私、伊能ゆりなは外国人材を雇用する企業や雇用される側の外国人が抱える課題を解決、サポートする業務に携わる、いわゆるキャリアアドバイザー。日本で働きたいと願うひとりでも多くの海外の方に、負担のないクリーンな就職環境を提供できるよう日々、さまざまな業務にあたっている。

実はこれまでもメンバーとともに珍事の解明に取り組み、全国を走り回っている(これまでの珍事はこちら)からどうぞ)。

ひとえに
「外国人雇用の現場は予想だにせぬ出来事の連続である」
今日はそうした珍事をつまびらかにしながら私たちの仕事を紹介していきたいと思う。

ベトナム式「宅飲み」

私はベトナム人技能実習生のコン。仕事は、茨城県の海産物加工工場で、干物やひらきなどの塩干しの生産・加工に従事している。この工場には、同じ技能実習生が20名ほどいて、国籍はベトナム、タイ、インドネシア、フィリピンから男女数名ずつが出稼ぎに来ている状況だ。



さて、今夜は同じベトナム人メンバー、クオンさんの歓迎会だ。同郷のメンバーが入社してくる度にこうした飲み会を開催しているが、今回は料理が得意な主賓のクオンさんが手料理をふるまってくれて、彼の住む寮に10名強(ここに、クオンさんのベトナム人の友人も参加し)が集まっている。


写真はイメージ

写真は、あくまでも実物を100倍ほど綺麗にしたイメージなので悪しからず(笑)実際は、アパートの一室に集合し、床にシートを敷いて(敷かない場合もある)料理や酒を囲んで、みな、体育座りorあぐらをかいた状態で座っている。これぞ“ベトナム式 宅飲み”
※私の手持ちの写真だと、雑多なご飯の隙間に覗くメンズの足の数々が読者の気分を害してしまいそうなので、今回はイメージカットでお送りさせていただいた。

ベトナム人は、だいたい陽気な民族で人が集まればお酒を飲むし、お酒を飲むなら人を集めるというぐらい宴会好きといえる。だいたい、飲み会のルールは「倒れるほど酔うまで飲め」が多い(※私調べ)。特に、若者が集まるとそうした無謀な飲み会をやりがちだ。

ただ、私はキャリアアドバイザーのゆりなさんに面談の度に「近所迷惑になるため寮では静かに過ごすこと」「部屋を汚損したら最悪、弁償や強制退去になること」など口酸っぱく指導され、入社当初に誓約書も書いているので、お酒も、カラオケも、どんちゃん騒ぎも大好きだけど、しっかり控えて過ごしている。



気づけば、宴もたけなわとなり、お酒も料理もなくなっていた。クオンさんの手料理がおいしく酒がすすんだこともあるだろう。お酒のペースのピークは過ぎたものの大半のメンバーがまだ飲み足りない様子で、楽しく談笑を続けている。
私はクオンさんを誘って、近くのスーパーに買い出しに出かけることにした。

近所迷惑、弁償、強制退去になってもいいの?

寮に戻ってみると、なぜか玄関のドアが開き部屋の奥で黒い人影が動き回っているのが見えた。辺りはやや騒々しく、近隣住民と思しき人々が集まり2階のクオンさんの部屋を見上げ、中にはスマホで動画撮影をしている人もいる。

明らかに何かが起きている…。

すると、開けっ放しになっていたドアから、羽交い絞めにされ、血を流した男性2人がおぼつかない足取りで出てきた。追って、刃物を持った男が登場…こちらは、クオンさんの友人のようだ。

部屋の明かりに浮かび上がる怪しげな集団は何か声を上げ、暴れているようにも見えた。

クオンさんが猛ダッシュで階段を駆け上がっていく。私も集まった人々に「すみません」と言いながら、すぐにクオンさんを追いかけた。

「その包丁を置いて。ダンさん!!!!何?何があったの?」

クオンさんが叫ぶと、ダンさんは「僕じゃない」と冷静な表情で首を横に振り、羽交い絞めにされた2人を見やった。彼らは冷え込んだ空気と足の裏から伝わる鉄板の冷たさに正気を取り戻したのか無言のままガックリと膝を折り、そのまま床に突っ伏してしまった。

「コンさん、騒ぎになってしまってごめん。彼ら、泥酔しちゃったみたいで。なんだかわからないけどいつの間にか口論が始まってて、気づいたときにはキッチンにあった包丁を振り回して暴れていたんだ。皿やガラスコップを投げたりとかして応戦したものだから、2人とも血だらけになっちゃったみたい」



やれやれというように包丁を差し出し、洋服に着いた血を手でゴシゴシするダンさん。

「じゃあ、ダンさんや他のみんなにケガはないの?」

「うん、それは大丈夫。とにかく、部屋の中がぐちゃぐちゃだから、この2人はしばらくここに置いて掃除しなきゃだよ!」

クオンさんは頷きながら、2人の介抱を私に託してダンさんと2人、部屋に入っていった。

私は、通路に転がる2人の頬をパチパチと叩いてみた。全く起きない…どころか、いびきをかいて爆睡している。

「ちょっと2人とも!このままここで寝てると凍死するよ?」

もちろんそんな言葉に目覚めるわけもなく、いびきはさらに大きくなる。

…この2人。明日、会社の人やサポートなどの関係者にこっぴどく叱られるのだろう。ただ、起きたことはしょうがないので、集まった人々に謝罪をしに行くとしよう。警察沙汰になったら大変だし。



まったく、こんなことをしていては『これだから外国人(ベトナム人)は!』と、私たちの肩身が狭くなるばかりだ…!

腹立たしい気持ちを抑え階段を降りると、こちら側にスマホを向ける人だかりに頭を下げながら駆け寄っていった。



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