全業種の人事担当者が学べる「IT業界での海外人材活用術」とは?【株式会社ネクストビート】
2025.12.03
人手不足の業界と言えば、土木・建築、介護、サービス業。製造や物流業界でも「猫の手も借りたい」状況は年々深刻化している。その解決の一手が、主にアジア圏からの「海外人材活用」だ。
在留資格「特定技能」設置をはじめとした受入れ緩和策のおかげで、海外人材とともに働く環境は整備されてきた。ただし人事担当者にとって、そのスタートを切ることは簡単ではない。採用・教育・マネジメント。言語や国民性の違いから来るコミュニケーション。「不安など全くない!」という担当者のほうが珍しいはずだ。
そこで、本連載では海外人材活用の第一線を走る企業に取材。業界・職種を問わず最適な第一歩を踏み出し、新しいビジネス共創力と競争力を得るための人事戦略とマインドセットを探る。
今回のインタビューは、保育業界の採用・経営支援や、宿泊業界の採用支援・コンサルティングを強みとするネクストビート。現在注力している領域は「IT業界の外国人就労支援」だという。ITと言えば若者にも人気で、人材が潤っているイメージもあるが……? 同社が見た、日本ならではのIT職種の採用事情から、業界を問わないすべての人事担当者が覚えておきたいノウハウのタネを紹介しよう。
■プロフィール

株式会社ネクストビート Tech Bridge Japan 部長 荻谷 亜紀 さん
「できれば……日本人がいい」は、IT職種も同じ
2013年に創業し、「保育士バンク!」「おもてなしHR」など、保育、観光といった職種特化型就職・転職支援サービスで成長してきたネクストビートは、業界ならではの人材の悩みをよく知る存在だ。
その新規事業が「Tech Bridge Japan(テックブリッジジャパン)」。「IT職種」への「海外人材」紹介サービスだという。WebエンジニアをはじめとしたIT職は人気職種のひとつだが、海外から雇用しなければ成り立たないような状況なのだろうか?
Tech Bridge Japan 部長の荻谷 亜紀さんは、業界の人材事情をこう語る。

株式会社ネクストビート Tech Bridge Japan 部長 荻谷 亜紀 さん
「IT人材の人手不足は『なり手がいない』、というより『増えていない』という状況です。ソフトウェア開発のようなIT企業のエンジニアはもちろん、近年はAIのビジネス活用の普及でAIを使いこなせる人材も求められるという全体的な需要増の状況にあります。しかし、日本は人口減少社会で人材確保が難しく、構造的な人手不足が将来ますます問題化していくのです」
経済産業省は、2030年には約79万人ものIT人材が不足すると予測している。IT分野ですら人ごとではない人材難だが、海外人材活用への不安感はどうか。ITはグローバルにビジネス展開しやすく、海外現地に作業をアウトソースするオフショア開発も活発な業界だが。
荻谷さんは、IT業務だからといって外国人に寛容とは限らないと話す。
「システムインテグレーターなど受託開発を行うIT企業は、客先に自社社員を出向・常駐させる場合もあります。クライアントと直に接するにはやはり日本人が安心、と考えるのは自然ですよね。また、エンジニアが必要になるのはIT企業だけではありません。ある程度の企業であれば、社内に情報システム部を置いてエンジニアを抱えます。その際には周囲の日本人社員とうまく働けることが条件になります。人手が必要とわかってはいても『海外人材ウェルカム』という現場は、まだまだマイノリティだと感じます」
できることなら経験を持った日本人を雇いたい……という意向があり、人材獲得競争が起きる。そのなかで人事担当者は「まったく未経験の日本人を雇い、自社で一任前に育てる」か?「すでに経験を持った海外人材を迎える」か? という選択を迫られるだろう。
もちろん、どちらが正解とは言えない。日本人採用は転職リスクが大きく、一方で海外人材はコミュニケーションの難しさが考えられる。業界を問わず、海外人材活用の悩みは共通しているようだ。
AI時代の助っ人は「インド」「バングラデシュ」人材か?

Tech Bridge Japanは、ネクストビートの新規事業として2024年にリリースした。システム開発から一般企業の情報システム部まで、国内のIT現場の海外人材ニーズを狙う。
「当社では、保育・子育てなどの『ライフステージ』領域、観光業などの『地方創生』領域、そして外国人就労支援などの『グローバル』領域を通じて、人口減少社会に貢献するソリューションを手がけています。Tech Bridge Japanの前身となる事業は2017年ごろからはじめていましたが、パンデミックで海外からの人流が止まり、一次的にストップ。2024年から現在の形にリニューアルしました。現在は独自のネットワークで人材を確保しつつ、日本語の教育支援など、就業する海外人材の方々へのサポートも手厚くしています」
荻谷さんによれば、同事業の現場からは「IT職種ならでは」の課題も見えるという。
「求められる人材・スキルはこの2年ほどで大きく変化しています。ChatGPTをはじめとした生成AIが急速にビジネスの現場へ普及したことで、業種を問わずカジュアルにソフト開発が行われるようになりました。そこで簡易なコードを書けるエンジニアの需要は鈍り、一方でプロジェクトマネジメントができる管理者層、あるいはAIで機械学習を行えるAIエンジニアといった、よりハイレベルなIT人材の需要が高まっている印象です」
海の向こうから経験豊富なIT人材を迎える取り組みは、まさに海外人材活用の最前線と言える。特定技能の人材市場ではネパール、ベトナム、インドネシアなどの人材が主流だが、Tech Bridge Japanの場合はどうか。

「累計登録者は約25,000人。IT大国でもあるインドが多くを占めます。また、バングラデシュのテックスタートアップ(Life Ark社)に出資し、IT人材供給のためのアライアンスを組んでいます。実はLife Arkの社長は、かつて当社に務めていた社員なんです」
かつて自社で働いていた海外人材が起業家となり、
関連会社としてグループ入りした。ネクストビートにとっての「海外人材活用」が実を結んだようにも見える、面白い座組みである。
「現在も当社では多国籍の海外人材が在籍しており、私の部署にもチリからのメンバーが一緒に働いています。国籍を問わずメンバーを迎えていく方針です」
見えはじめた海外人材活用「成功の法則」
長らく国内で人材マーケットを支えてきた日本にとっては、未知の存在である海外人材。我々は何から心がけるべきなのか。荻谷さんはネクストビート本体での取り組みも踏まえ、付き合い方のポイントをこう語る。
「海外人材が能力発揮できている企業の共通点は、まずはコミュニケーション方法への配慮です。私たちが日常的に使っている『あとはよろしく』というような微妙な意志伝達は海外の方には非常に難しく、たとえ日本語力がN1レベルの人材であってもなかなか間合いを読めるものではありません。指示や依頼は口頭だけでなくテキストでも明示することが大切です」
連絡系統はグローバル基準を意識すべきだろう。さらに、海外人材どうしのコミュニケーションについても有用なアドバイスが。
「もし可能であれば、複数人を採用することをおすすめします。日本人の中にひとりだけでは、どうしても肩身狭くなり、孤独も感じます。同じ国籍で年齢層が離れた人材を迎え、ジュニアとシニアを組ませるなども、手法の1つです」
人事担当は海外人材のためのコミュニティをつくるのも仕事だ。とはいえ、最初から完璧な職場を目指す必要はない。ネクストビートも、自社の職場では試行錯誤しているという。
「先日、アメリカの大学生を2ヶ月ほどインターンシップで受け入れたのですが、彼は日本語は挨拶くらいしか話せませんでした。そしてチームのマネージャーは英語は話せないという状態で……。そのため同じ会議室にいるのにリモートツールを通してAIで同時通訳をし、なんとか意志疎通を図っていたのですが、嬉しい変化が起きました。インターンが終わるころには、日本人社員の英語に対する苦手意識が大きく変化していたんです」

難しく思えても、時には周囲から強引に見られたとしても、人事は「まず動く」ことが大切なのではないか。そこから社員らがおのおの適応し、組織が変化していくことも多いからだ。
最後に荻谷さんはこう付け加える。
「海外人材活用には様々なノウハウがありますが、もっとも大きな成功法則は『経営者が本気で取り組むか』だと感じます。トップの方が海外に興味関心があり、心理的ハードルが低いケースでは組織も成功に向かいやすいですね。
人事の方はまず、少しずつ経営者とともに海外人材への偏見をなくしていってはどうでしょうか。社内で話し合うだけでなく海外人材活用のイベントに行って交流することで、モヤモヤとした『外国籍の人と働く』という活動を具体的にイメージすること。そこが第一歩だと思います」
海外人材を採用する人事担当者へ

その会社らしい、社風やカルチャーを大切にしてほしいと思います。
Tech Bridge Japanで日本企業と海外人材を繋いできて感じることは、給与だけを目的に「出稼ぎ」に来ている人は意外と少ないということです。
自分のスキルや経験が活かせるのか。居心地の良さを感じる場所なのか。会社のビジョンに共感できるかを、彼らも知りたいと考えています。
人事の担当者の方が先頭を切って、自社の価値観を海外人材に対してもどんどん発信していってください。
■取材協力
外国人採用に関するオンライン無料相談やってます!
- 雇用が初めてなのですが、私たちの業務で採用ができますか?
- 外国人雇用の際に通訳を用意する必要はありますか?
- 採用する際に私たちの業務だとどのビザになりますか?
- 外国人の採用で期待できる効果はなんですか?
上記に当てはまる企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
関連記事
もっと見る
外国人による、ナイフ持ち歩き事件、発生!!
Case20 習慣的にあり得ない
2024.07/12
いまさら聞けない!
〜レジデンストラックとビジネストラック〜
2021.09/07
関東大震災【その時、地震未経験の外国人の反応とは?】
Case4-1 経験的にあり得ない
2024.03/01
新着情報
もっと見る
全業種の人事担当者が学べる「IT業界での海外人材活用術」とは?【株式会社ネクストビート】
2025.12/03
こんな記事が読まれています
もっと見る-

技能実習生は税金を払う?外国人の所得税と住民税をわかりやすく解説
在留資格「技能実習」2025.09/04
-

技能実習生はどこに住む? 住まいに関するルールと住居形態
在留資格「技能実習」2025.05/26
-

講習は何時間必要? 技能実習生の研修を来日の前後に分けて解説
在留資格「技能実習」2025.06/22
初心者向け記事
もっと見る【無料DL】外国人採用を検討し始めた時に知るべき基礎が全てわかるガイドブック
2021.09/22
【外国人採用の基本】30種類以上ある「在留資格」とは?
2021.09/16
技能実習制度で重要な役割を担う「送り出し機関」とは?
2021.05/24
人気の記事
もっと見る-
在留資格「技能実習」
2025.09/04
-
在留資格「技能実習」
2025.05/26
-
在留資格「技能実習」
2025.06/22
おすすめキーワード





