一重まぶたが大多数の日本人VS二重まぶたが大多数のインドネシア人
インドネシア人留学生アプリリアのニッポン見聞録Vol.51
2025.12.10
私、伊能あやめは、日本で働きたいと願うひとりでも多くの海外の方に、負担のないクリーンな就職環境を提供できるよう日々、さまざまな業務にあたっている。今回は、我が事業部にやってきたインドネシア人留学生による見聞録をお届けしたい。
インドネシア人留学生エンリのニッポン見聞録
一重まぶたが大多数の日本人VS二重まぶたが大多数のインドネシア人

弊社では、インドネシアの名門校であり最も歴史ある日本語教育機関でもある国立パジャジャラン大学日本語学科より、インターン生を受け入れることとなった。学生らは将来、日本での就職を希望している。一方で、企業が海外の優秀な大学生を新卒で採用するメリットは、将来有望なASEAN市場に精通した人材を早期に確保できる点にある。彼、彼女らは高い学習意欲と多言語対応力を持ち、日本文化への理解も深く、異文化環境にも柔軟に対応できるため、グローバル展開を目指す企業にとっては、コストパフォーマンスに優れた戦略的な人材となる。
また、弊社で新たに開発した外国人材採用プラットフォームMintoku messeでは、そうした優秀な新卒の外国人材を求人を出すだけで現地に出向かず採用できる。
Mintoku messeは、ベトナム・インドネシアを中心としたアジアのトップ大学と提携し、
企業と海外人材をつなぐ採用プラットフォームです。日本語力や専門性を備えた理系・文系の学生と、現地に行かずに出会える仕組みを構築。提携大学内での就職相談会やマッチングイベントをMintokuが代行し、企業は求人情報を提供するだけで優秀な人材の確保が可能です。さらに、採用後の住居手配や生活サポートも一貫して対応。
“採って終わり”ではなく、定着と活躍まで見据えたグローバル採用を実現します。

部署間を越え、既にSNSマーケティング部門にて即戦力として活躍中の2人。改めて、今日はアプリリア ヌルマウリさん(以下、アプリリアさん)の見聞録をお届けする。
まぶたの違い
「あやめさん、今ちょっと話しかけてもいいですか?」
昼休み。デスクで昼食をとっていると、アプリリアさんが話しかけてきた。
「もちろん。どうしたの?」
「えっと。ちょっと、文化の違いというか……私が最近気になっていることなんですけど……」
「うん?」
彼女は座る前に、なぜか私の顔をじっと観察し、何か納得したようにうなずく。
「日本に来てから思ったんですけど、日本人って、一重の人も二重の人もいろいろですよね」
「ほう、さすが女性らしい視点!まあ、そうだね。人それぞれって感じかな」
「インドネシアはほとんどの人が二重まぶたなので、日本人はどちらもいて観察しているとおもしろいです」
なるほど、そういう話か。真剣な眼差しで見つめられたので、仕事のトラブルでもあったのかとちょっとドキドキしてしまった。

ふっと力が抜ける。
文化の違いではなく、“顔立ちの違い”か。民族的な背景をたどると、東アジアと東南アジアではそもそものルーツが違うはずだ。
「日本ではいろいろなタイプの目の人がいるんだなぁって、興味深いです…」
「そうね、確かに日本人は一重も二重も、奥二重ってパターンもあるし、混ざってる感じがあるかも」
アプリリアさんはそこで、再び私の目元をじっと見つめてきた。
「でも、あやめさんは二重ですよね。くっきりしていて、すごくきれいです」
「 あ、ありがとう……」
「なんか、ぱっと見たときに“あ、日本にもこういう目の人いるんだ”って思ったんですよ」
「『いるんだ』って、そんなに珍しくなくない?二重の人も人口の…たしか3割程度はいるはずよ。今は気軽に整形できるから、遺伝的にそうじゃない人を含めたら半分か…それ以上、二重の人がいそう」
「ごめんなさい、そういう意味じゃなくて!珍しい、ではありません」
彼女は慌てて両手を振る。
「日本でも二重の人は普通にいますね。私の中の日本人のイメージって、“柔らかい顔立ち”だったので」
「なるほどね。イメージってあるものね」
「はい。インドネシア人は眉も濃い人が多いし、二重まぶたと合わさって目元の印象が強いじゃないですか」
自分の眉をつまむ仕草をしてみせる。
「でも、日本人は眉が薄かったり、まぶたも一重や二重だったり。それで、なんとなく柔らかい目元で、落ち着いて見える人が多いなぁって。私たちは、こう…ね?顔のインパクトがとても強いですから」
「異国から来ると、顔の感じひとつでもあれ?って思うことがあるってことだねぇ」
「はい。もしかすると、日本人がインドネシアに来たら同じように不思議に思うことがあるかもしれませんよ。インドネシアはオランダ人との混血も多いですから、背が高いとか、顔の雰囲気が違うとか…そんな人もいっぱいいます」
「ほう!そっか。日本はかれこれ何千年と単一民族で、どこかの国の植民地支配も受けてないものね。そういう意味では、インドネシアとは全然違った島国だね」
「そうですね。そういう背景やルーツが違うから、違うことにはやっぱり興味がわきます。そして実際に来日してから、びっくりすることがたくさんありました。そのひとつが“目の違い”だったんです」
「そういうのは、文化の話よりずっと身近な違いだものね。まさに目に見えてというか、なんというか(笑)」
「そうなんです!誰にも聞きづらかったです。生まれ持ったものの違いを聞くのは良い悪いを言ってるみたいで『失礼じゃないかな』って」
「違うものは違うから。私は、顔の違いでもなんでも、興味を持ってくれてうれしいよ?」
彼女は少し照れたように視線を落とした。
「違いに気づく」が「気づける」に
「……実は、日本に来る前、私は不安だったんです」
「不安?」
「はい。インドネシア人って見た目の雰囲気が日本人と全然違いますね。肌の色とか、目元とか、髪の濃さとか。ヒジャブも被ってますし。それで、目立ったらどうしようって」
「“変なふうに見られたらどうしよう”って感じ?」
「はい。でも、日本に来てみたら、誰もそんなこと気にしてないです。むしろ、皆さんとっても優しくて……。だから、安心しました。これでいいんだって」
「もちろんいいに決まってるわよ!まあ、日本人特有の見て見ぬふりみたいな感覚が功を奏している部分もあるかもしれないけど。でも、本音はいろいろ聞いて見たいんだからね(笑)?」
「あやめさんにそう言ってもらえると、さらに安心します」
「日本に来て、まさか“まぶた”のことで違いを感じるなんて思いませんでした。こんなに小さなところに違いがありますね」
「たしかにそうだね。私もアプリリアさんに聞かれなかったら、インドネシア人の皆さんがほとんど二重って知らなかったし!なんとなく、ぼんやり捉えていたことが今すごく明確になった感じがするよ」
「私は、仕事だけじゃなく、こういう小さなことにも気づけるようになりたいと思っています。日本に来て、皆さんと一緒に仕事をしていて、さらにそう思いました」
「その気持ち、大切にしてね」
「はい。もっと日本のことを知りたいと思います。顔のことだけじゃなくて(笑)、文化や生活や……日本の人たちの考え方とか。がんばります!あ、仕事も…」

彼女はちょっとはずかしそうに微笑み、軽い足取りで席へ戻っていった。
「なるほど。いつも文化、価値観の違いってばかり言ってるけど……その人自身をよく観察してみるっていうのもアリだよね」
違う世界から来た彼女のまっすぐな言葉は、私の日常に静かに、そして確かに新しい色を落としていた。
終
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