【不法就労】外国人派遣で犯罪に巻き込まれるリスク_在留資格の確認義務
2021.09.06
派遣会社の利用は手続き面でのメリットがありますが、中には在留資格を偽って派遣業務を行っている企業があります。正式な在留資格を持たない人材を雇った場合、受け入れ企業まで罪に問われてしまうことも。起訴はされなかったとしても、イメージなどの面で大きなダメージになりかねません。そこで本稿では、不法就労に関わった場合のリスクについてご紹介するとともに、在留資格の確認方法についても説明していきます。
在留資格で分かれる任せられる仕事の違い
日本に住む外国人の在留資格は29種類。永住者や日本人の配偶者などの他に、就業する職種を指定して発行された在留資格もあります。外交、公用、教授、芸術といったものから、医療、教育、介護、そして技能実習もこのうちの1つです。職種ごとに区切られた在留資格の場合は、自由に転職することができません。
例えば外国にある企業から日本の事務所に転勤になった人は「企業内転勤」という在留資格で日本に滞在することになります。その人物が、日本で生活して日本語を話せるようになったからといって、そのままの在留資格で英語教師になることは許されません。英語教師として働くのには「教育」の在留資格が必要だからです。雇用する企業は必ず、在留カードとパスポートを提示させ、在留資格・期間、在留期限、資格外活動許可の有無などを確認する義務があります。
不法就労が進行する背景~派遣元(派遣会社)が在留資格を偽装する背景と外国人側の事情~
しかし実際には、在留資格を偽った不法就労がはびこっています。在留資格を偽装して派遣する企業があるためです。出入国在留管理庁によると、令和2年に退去強制手続きをとった外国人のうち70%近く、1万人以上が不法就労を行っていたことが確認されています。不法就労が発覚した外国人の70%以上は農業や建設作業、工場での現場勤務といった肉体労働に携わっていました。
不法就労する外国人労働者の考えとしては、どんな仕事でもいいから、とにかく稼ぎたい。そう考える外国人は派遣会社にとって、日本人が避けるよう仕事も任せることができ、都合がいい。このように需要と供給が一致してしまうことが、不法就労が増加傾向を見せる理由の1つです。この背景から、次項で解説していきます。
派遣元が在留資格を偽装する背景
派遣会社が積極的に偽装を行う理由は、より多くの労働者を派遣して儲けを得るためです。そのために、労働者がまだ日本に来ていない場合は、とにかく日本で働ける在留資格を取らせてしまうのです。日本で働く外国人は、「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」の在留資格を持った人がほとんど。当然ながらルールに則って働いている人が大半ですが、ここが派遣会社の狙い目になっているのも事実です。
まず派遣会社は、本物の雇用契約書と虚偽の雇用契約書を作成します。派遣先が大企業であればビザの申請が通りやすいため、虚偽の雇用契約書には派遣先を偽って記載。そして職種も、技人国で認められているSEや設計、品質管理などの仕事をすると記載して、虚偽の雇用契約書を入管に提出します。このように虚偽の書類を作成して、より多くの外国人労働者を入国させている可能性があるのです。
外国人が在留資格をごまかして働く事情
在留資格の申請には、就労予定の企業を記載する必要があります。つまり、企業の選考を受けて内定をもらっておかなければならないのです。しかし、企業からの内定を得ていても在留資格の申請が通らないことも。すると当然、内定は取り消し。日本で働くことはできなくなります。ですから、申請が通りやすいように嘘をつくという事例も発生します。
また、在留資格を持って就労しても、後々に不法就労に走ってしまう場合もあります。実際に日本に来て就業してみたら、思ったより仕事が少ない=収入が少ないという場合も多々。他にも、在留資格の期限が切れたものの仕事の少ない母国に帰りたくない場合や、技能実習先から失踪した場合などもあります。収入を得るために、許可されていないアルバイトなどをしてしまうのです。許可された以外の仕事をすること自体が違法行為なわけですから、発覚すれば相応のリスクも負うことになります。
派遣先(受け入れ企業)のリスク
在留資格を偽って労働させた場合、法令に背く行為ですから、受け入れ企業も摘発されるリスクがあります。適用されるのは「不法就労助長罪」や「資格外活動ほう助罪」です。不法就労が発覚すれば、すべての技能実習生の実習計画が白紙となり、その後も5年間の受け入れ停止となります。ですから、多くの技能実習生を受け入れている企業であれば業務の運営自体に対するダメージが大きくなると言えます。
また、罪に問われるかどうかは「誰が不法就労させたか」が焦点となるため、不法就労に気づいていなかったのであれば派遣先は不起訴となることもありえます。しかし起訴を免れた場合でも、「違法就労をさせていた企業」として報道されてしまう可能性があります。自社に過失がなくともイメージダウンは避けられないでしょう。そうならないためにも、故意ではなくとも不法就労をさせないように注意する必要があるのです。
実際に問題となったケース
不法就労が発覚し、実際に派遣先企業が起訴された事例もあります。当該企業は、日本人の人材確保が難しいことを理由に、就労資格のない外国人を雇用していました。働かせていたのは、技能実習先から失踪したベトナム人複数名。人材派遣会社から就労資格がないことを知らされていたこともわかっています。これにより人材派遣会社の社長らが逮捕。あわせて派遣先企業の社長と勤務管理担当の役員も、入管難民法違反(不法就労助長)の疑いで書類送検されました。
このケースの場合、派遣先は不法労働者と直接雇用契約を結んではいませんが、違法性を知りつつ数ヶ月にわたって働かせていたことで、企業自体も同容疑で書類送検されています。違法性を「認識していた」とこが重視されての判断となりました。
リスク回避のためにすべきこと、確認方法
上記の事例のような、違法性を知っていながら不法就労に加担することは論外ですが、そうとは知らずに就労資格のない外国人を採用してしまう可能性もあります。そうならないためにも、事前に派遣会社への確認を行いましょう。チェックしておきたいのは以下の2点です。
- 在留資格と従事する業務の間に齟齬がないか
- 出入国在留監理庁へ申請内容の確認をしているか
どの在留資格であれば自社の業務をすることが可能なのかは、確認の手間がかかりますが、外国人材を雇用するからには理解しておきたいところ。派遣元に丸投げするのではなく、知識を身に着けておくことが犯罪への関与を避ける助けになります。また、派遣会社の回答に不安がある場合は、専門家を頼るという手段も有効です。
入管法に強い弁護士や行政書士
上記で確認方法をご紹介しましたが、派遣会社への確認のみでは不安が残るという場合には、入管法に強い弁護士や行政書士に相談することをお勧めします。第三者の立場にある専門家のアドバイスがあれば安心ではないでしょうか。海外人材タイムスでは、行政書士や弁護士、人材会社を独自の基準で評価。ベストプラクティス10選としてご紹介しています。
まとめ
海外から人材を雇い入れる際には、複雑なルールがあります。もちろん、細かくチェックしていくことで不法就労は防げますし、そのための情報は書籍やインターネットでも収集できます。しかし、派遣会社や就労希望者が必ずしも正直ではないことまで考えると、受け入れ企業も知らず知らずのうちに不法就労に加担してしまいかねません。法律もからむ難しい問題ですから、専門家に任せるのが安心です。
相談すべき弁護士や行政書士を見極めるのも難しい問題ですので、ぜひ上記のベストプラクティス10選を参考にしてみてください。不法就労を防ぐことで、自社にふりかかるデメリットが予防できます。受け入れをストップせざるを得なくなる、不法就労で社名が報道されて印象が悪くなる、といった事態を防ぐためにも、有効な対策になるはずです。
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