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在留資格「特定技能」とは? 技能実習との違いや採用ポイントを解説

日本は今、少子高齢化による深刻な人手不足に直面しています。特に中小・小規模事業者においては、有効求人倍率が高い水準で推移しており、国内の労働力だけで人材を確保することが困難な状況です。このような社会背景から、これまで原則として認められてこなかった分野においても、即戦力となる外国人材を受け入れるために2019年4月に創設された在留資格が「特定技能」です。

本記事では、外国人を採用する際に知っておきたい特定技能について、技能実習との違いや採用する際のポイントを解説します。

CONTENTS

1.在留資格「特定技能」とは?

1.1 制度創設の背景:日本の深刻な人手不足

厚生労働省が発表した「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)の最新データによると、現在の外国人労働者総数は230万2587人で前年より25万3912人増加しました。

また、直近5年間の外国人労働者数の推移は以下の通りです。

届出が義務化された平成19年以降過去最多を更新しており、前年からの増加率は12.4%でした。

参考)「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和6年10月末時点)

出典)「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和6年10月末時点)

さらに産業分野別に見ると、最も多く外国人労働者を受け入れているのは製造業で、59万8,314人(全体の26.0%)を占めています。次いでサービス業が35万4,418人(15.4%)、卸売業・小売業が29万8,348人(13.0%)となっており、人手不足が深刻な分野で特に外国人労働者の活用が進んでいることが明らかです。

外国人労働者が増加している背景には、日本の少子高齢化による労働力不足や、特定産業での深刻な人手不足が大きな要因として挙げられます。さらに、企業のグローバル化の進展や、インバウンド需要への対応といった経済環境の変化も、外国人材の受け入れを後押ししているといえるでしょう。

2.在留資格「特定技能」とは

在留資格「特定技能」について、概要を説明します。

2.1制度の目的

特定技能制度は、人手不足が深刻な特定産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を即戦力として受け入れることを目的とする在留資格です。

特定産業分野に指定されている12分野14業種は、業務内容に単純労働を含むことから既存の在留資格では外国人雇用ができませんでした。そのため、2019年4月に新たな在留資格として特定技能制度が導入されました。

2.2受け入れ分野

「特定技能1号」の受け入れ対象となる分野は、当初12分野でしたが、2024年4月に以下の4分野が新たに追加され、現在は合計16分野となっています。

2.3特定技能の受け入れ分野(16分野一覧)

  1.   1. 介護

  2.   2. ビルクリーニング

  3.   3. 素形材産業

  4.   4. 産業機械製造業

  5.   5. 電気・電子情報関連産業

  6.   6. 建設

  7.   7. 造船・舶用工業

  8.   8. 自動車整備

  9.   9. 航空

  10.   10. 宿泊

  11.   11. 農業

  12.   12. 漁業

  13.   13. 自動車運送業(2024年4月追加)

  14.   14. 鉄道(2024年4月追加)

  15.   15. 林業(2024年4月追加)

  16.   16. 木材産業(2024年4月追加)

また、在留資格「特定技能」には、「特定技能1号」と「特定技能2号」があります。

1号と2号の違いは、以下の通りです。

【比較表】特定技能1号と2号の違い(2024年版)

 

特定技能1号

特定技能2号

在留期間

通算上限5年(更新可)

上限なし(在留期間の更新が可能)

受け入れ分野数

16分野

11分野(介護は対象外)

永住権の取得

不可

要件を満たせば可能

技能水準

相当程度の知識・経験が必要

より高度な熟練した技能

日本語能力

日本語能力試験等での確認が必要

不要(技能で確認)

家族の帯同

原則不可

配偶者・子の帯同が可能(要件あり)

受け入れ機関の支援義務

支援計画の策定・実施が義務

義務なし

在留資格の更新

最長5年まで可能(1年、6か月などごとに更新)

無期限に更新可能

技能試験の実施主体

分野ごとに異なる(各業界団体などが実施)

各分野の管轄省庁または団体

制度の目的

即戦力の外国人材による労働力確保

長期的な労働力確保・技術継承の担い手

2.4雇用形態

特定技能外国人の雇用形態は、原則正社員かフルタイムの直接雇用と決められており、週5日、30時間以上の勤務が必要です。派遣雇用は認められていません。ただし、農業分野と漁業分野だけは例外として派遣雇用が認められています。

2.5特定技能と技能実習との違い

技能実習は、あくまで「実習」という名目であり、発展途上国への技能移転という国際協力が目的。そのため、「労働者」としての位置づけではなく、企業側の転籍や自由な転職は基本的に認められていません。

一方、特定技能は、労働力不足を補うことが目的で、労働者としての在留資格。待遇や労働条件も日本人と同等にする義務があります。

 

技能実習

特定技能

制度の目的

開発途上国への技術移転(国際貢献)

日本の深刻な人手不足分野への労働力確保

主な対象者

技能習得を目的とする実習生

即戦力として働く外国人労働者

在留資格の性格

「研修」が中心で、労働は二次的な位置づけ

明確に「労働」を目的とした在留資格

対象業種・分野

約80職種・150作業(比較的限定的)

16分野(業種によっては特定技能2号もあり)

在留期間の上限

原則最長5年(1号:1年+2年+2年)

特定技能1号:通算5年まで

特定技能2号:上限なし

家族の帯同

不可

1号:不可

2号:条件を満たせば配偶者・子の帯同可能

移行・変更の可否

原則として他業種・他企業への転籍不可(制限あり)

転職・分野内の変更が可能(要件あり)

労働者としての位置づけ

実習生(保護されるべき立場)

労働者(労働法に基づいて就業)

技能評価

技能実習評価試験により確認

分野別の技能試験・日本語試験で確認

監理団体の関与

監理団体(組合など)が必須

受け入れ機関が直接雇用・支援(登録支援機関の利用も可)

制度の背景

国際協力として1993年に創設

人手不足対策として2019年に創設


将来的な永住やキャリア形成を考慮する場合、特定技能(特に2号)の方が道が開けやすい制度設計となっています。

3. 企業が特定技能人材を採用するメリットと義務

3.1 特定技能を採用する企業の3つのメリット

  1.   1. 深刻な人手不足分野で即戦力確保が可能
          特定技能ビザは即戦力が期待できる制度設計で、産業現場の即戦力化に直結します。

  2.   2. 長期雇用を見据えた人材確保が可能
           特定技能2号では在留期間の更新が無制限のため、長期的な定着や技術継承の可能性が高まります。

  3.   3. 適法な外国人雇用による企業リスク低減
          正式な雇用ルートで外国人労働者を受け入れるため、不法就労やビザ違反リスクがありません。

3.2 企業に義務付けられる「10項目の支援内容」

特定技能1号の外国人に対し、以下の10項目にわたる支援計画の策定および実施が法律で義務付けられています。

 

  1.   1. 事前ガイダンス(来日前の準備事項の案内)

  2.   2. 出入国時の送迎(空港等での出迎え・見送り)

  3.   3. 住居確保・生活契約支援(賃貸契約やライフライン手続きの支援)

  4.   4. 生活オリエンテーション(銀行、公共交通、医療など日本生活の基本案内)

  5.   5. 公的手続き等への同行(市役所、税務署、保険窓口などへの付き添い)

  6.   6. 日本語学習の機会提供(研修や語学クラスなど)

  7.   7. 相談・苦情への対応(相談窓口の設置など支援体制)

  8.   8. 日本人との交流促進(社内交流会や地域交流など)

  9.   9. 転職支援(非自発的離職時)(雇用継続が難しい場合の支援)

  10.   10. 定期的な面談(相談やフォローアップの実施)

3.3 支援業務を委託できる「登録支援機関」とは

すべての支援を登録支援機関へ委託することが可能です。
特に、過去2年以内に中長期在留者(就労ビザなど)の受け入れや管理を適正に行った実績がない企業は、すべての支援義務を登録支援機関へ委託することが必須となります。
登録支援機関とは、国が定める基準を満たした専門業者で、支援業務の質と責任を担保できると認められた機関です。

3.4 日本人と同等以上の条件で雇用する

特定技能外国人は労働者として雇用されます。日本人従業員と同等以上の条件を整備・提供することが求められます。給与や福利厚生において差別のない、公正な待遇が義務付けられています。

3.5 外国人が特定技能を取得するための要件

特定技能1号を取得するためには以下の要件が必要です。

  •   ● 技能試験に合格すること(分野別の実技・筆記試験など)

  •   ● 日本語能力の確認(日本語能力試験や技能実習修了レベルの証明)

  •   ● 受け入れ機関が支援計画に基づく支援を確約・実施していること

これらの手続きを満たした上で初めて、特定技能在留資格の交付対象となります。

 

3.5.1 特定技能評価試験および日本語試験に合格する

分野別に実施される「特定技能評価試験」に合格する必要があります。
※試験内容は、現場作業や業務に関する技能・知識の確認が中心。

日本語能力については、以下いずれかの試験に合格する必要があります。

  •   ● 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)

  •   ● 日本語能力試験(JLPT)N4以上

これらは「特定技能1号」を取得するための基本的要件です。

 

3.5.2 技能実習2号を良好に修了する

「技能実習2号」を良好に修了していれば、特定技能評価試験と日本語試験は免除されます。ただし、次の条件を満たしている必要があります。

  •   ● 技能実習期間中に大きなトラブル(失踪・規律違反など)がなかったこと

  •   ● 技能実習修了時に実習実施機関および監理団体から良好な評価を受けていること

修了後は、同一分野・業務で「特定技能1号」へスムーズに移行できます。

詳細はこちらの記事を参照してください。

4.特定技能外国人を採用するルート

特定技能外国人を採用する具体的なルートとしては、すでに日本にいる外国人の在留資格を変更するか、海外から現地採用して特定技能の在留資格を取得するかの二つのルートがあります。在留資格の変更をする場合は、試験が免除される技能実習からの移行が一般的ですが、在留資格「留学」から特定技能へ移行することもできます。

4.1技能実習から特定技能へ移行

先述の通り、技能実習2号を良好に修了することで特定技能へ移行できます。引き続き日本で働きたいと考える技能実習生には、切り替えを勧めるといいでしょう。

4.2留学から特定技能へ移行

技能実習からの移行のように試験免除にはなりませんが、技能試験と日本語試験の両方をクリアすることで在留資格「特定技能」へ移行できます。

在留資格「留学」からの移行パターンは「技術・人文知識・国際業務」が一般的ですが、就労ビザのため、学歴に大卒以上などの条件があります。そのため、試験だけで移行できる特定技能も「留学」からの選択肢の一つにできます。

4.3海外から現地採用

海外で特定技能試験が行われている分野は、現地採用することが可能です。ただし、現地での採用は、当然ながら外国語での募集が必要であるなど自社ですべて対応するのは難しい場合があります。現地の送り出し機関や人材紹介会社を利用することもできますので、必要に応じて検討してください。

5.【2025年最新動向】育成就労制度の創設と特定技能のこれから

5.1 分野別・都道府県別受け入れ状況

特定技能外国人の分野別受け入れ状況、都道府県別受け入れ状況、技能実習制度の受け入れ状況は以下の通りです。

分野別受け入れ状況

分野名

特定技能1号

特定技能2号

合計

介護

44,367人

0人

44,367人

ビルクリーニング

6,140人

3人

6,143人

工業製品製造業

45,183人

96人

45,279人

建設

38,365人

213人

38,578人

造船・舶用業

9,665人

74人

9,739人

自動車整備

3,076人

3人

3,079人

航空

1,382人

0人

1,382人

宿泊

671人

4人

675人

農業

29,157人

174人

29,331人

漁業

3,488人

2人

3,490人

飲食料品製造業

74,380人

158人

74,538人

外食業

27,759人

105人

27,864人

自動車運送業

0人

0人

0人

鉄道

1人

0人

1人

林業

0人

0人

0人

木材産業

0人

0人

0人

出典:出入国在留管理庁『特定技能制度運用状況(令和6年12月末)』

 

都道府県別受け入れ状況

都道府県

特定技能外国人数

愛知県

20,757人

大阪府

16,543人

埼玉県

15,530人

千葉県

15,185人

東京都

14,920人

神奈川県

13,645人

茨城県

12,872人

北海道

10,869人

福岡県

8,962人

兵庫県

8,941人

その他

113,523人

出典:出入国在留管理庁『特定技能制度運用状況(令和6年6月末)』

 

技能実習制度の受け入れ状況

分野名

受け入れ人数

介護

約28,400人

建設

約24,433人

農業

約17,000人

製造業

約40,000人

その他

約100,000人

出典:出入国在留管理庁『技能実習制度運用状況(令和5年6月末)』

 

5.1.1今後の展望と課題

受け入れ目標とのギャップ: 特定技能制度の受け入れ目標人数は、分野によっては実際の受け入れ人数が目標に達していない状況です。特に新たに追加された「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」などの分野では、受け入れが進んでいないため、今後の受け入れ促進が課題となります。

地域別の偏在: 都道府県別では、愛知県や大阪府、埼玉県などの都市部での受け入れが多く、地方での受け入れが少ない傾向があります。地域間のバランスを取るための施策が求められます。

技能実習制度からの移行: 技能実習制度から特定技能制度への移行が進んでいますが、移行に伴う課題や支援体制の整備が必要です。

5.2 技能実習制度の廃止と「育成就労制度」への移行

技能実習制度は、2024年6月に育成就労法が成立し、今後3年以内(2027年頃まで)に廃止されます。代わりに「育成就労制度」が新たに創設され、技能実習の目的や運用方法が大きく変わります。

技能実習制度は当初「開発途上国への技術移転」を目的としていましたが、実態は低賃金労働の温床となり人権問題が多発しています。こうした問題を踏まえ、より適切な労働環境の確保と人権保護を重視した新制度に移行する必要が生じました。

5.2.1 目的①:人権配慮の強化

技能実習生は転職が原則禁止されており、不当な労働環境に耐えざるを得ないケースが多数報告されています。新制度では本人の意思に基づいた転職(転籍)が一定条件のもと認められるようになり、労働者の権利が大幅に強化されます。

5.2.2 目的②:人材育成と人材確保の両立

技能実習制度はあくまで「国際貢献」という名目が強く、実際の日本の労働力不足対策には不十分でした。育成就労制度では「日本国内での人材育成」と「日本経済の人材確保」を明確に目的化し、労働者が長期間安心して働ける環境を整え、安定的な人材供給を目指します。

5.3 技能実習制度との主な違い

5.3.1 ① 転職(転籍)の緩和

  •   ● 技能実習制度では、基本的に受け入れ先企業での就労に限定され、転職は原則禁止。

  •   ● 育成就労制度では、就労開始から一定期間(1~2年程度)経過し、技能や日本語能力の一定水準を満たせば、本人の意思で転職・転籍が可能。

これにより、不適切な労働環境からの早期脱出や、より適正な労働条件を求める権利が保障されます。

 

5.3.2 ② 特定技能への移行を前提とした育成計画

  •   ● 新制度の育成期間は原則3年。

この期間内に、「特定技能1号」の水準に達することを目標とした体系的な育成計画を企業が策定・実施します。
また、育成就労制度と特定技能制度の間に断絶がなくなり、外国人労働者が段階的にステップアップしやすくなります。これにより、技能レベルの向上と長期的な日本社会への定着が期待されます。

 

5.3.3 ③ 監理団体の要件厳格化

技能実習生を管理する監理団体は、過去に人権侵害や管理不行き届きが問題視されてきました。新制度では、監理団体はより中立的な立場の「監理支援機関」として再認可が必要となります。これにより、監査機能の強化や透明性の向上が求められ、外国人労働者の保護がより確実になります。併せて、企業と労働者双方の安心感を高める仕組みづくりが進められます。

このように、育成就労制度の導入は日本の外国人労働者政策の大きな転換点となり、企業や外国人労働者双方にとってより良い環境づくりが期待されています。具体的な運用ルールや手続きは今後さらに詳細が示されるため、最新情報のキャッチアップが重要です。

6.まとめ

今回は、在留資格「特定技能」について、制度の内容から技能実習との違い、採用のポイントまで説明しました。従来の在留資格では不可能であった単純労働にも従事できる特定技能は、人手不足が深刻な企業や事業所にとって救世主となるかもしれません。また、日本で働きたい外国人にとっても、特定技能2号に移行すれば将来的に上限なしで在留でき、母国から家族を連れてくることも可能になります。企業、外国人の双方にメリットが大きい特定技能を積極的に使って、人材確保に努めてみてはいかがでしょうか。

 

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