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【脱退一時金】外国人が年金加入10年以上で帰国した時の手続きと受け取り方

日本で長年働き、年金保険料を10年以上納付した外国人の方が、母国へ帰国されるケースが増えています。その際、「今まで支払った年金はどうなるの?」「脱退一時金はもらえるの?」といった疑問があります。
実は、年金加入期間が10年以上の場合、帰国時に一括で受け取る「脱退一時金」の対象外となります。しかし、それは決して掛け捨てになるという意味ではありません。10年以上加入した方は、将来、海外にいながら日本の老齢年金を受け取る権利を得られるのです。
本記事では、年金加入10年以上の外国人が帰国する際の選択肢、特に海外からの年金請求手続きについて詳しく解説します。

CONTENTS

1.年金加入10年以上で帰国する場合の年金

「脱退一時金はもらえない」=「損する」ではありません。
日本で働く外国人の多くが気にするのが「帰国するときに年金はどうなるのか?」という点ではないでしょうか。特に年金加入期間が10年以上ある場合、脱退一時金がもらえないと聞いて、不安に感じる方も多いかもしれません。ですが、それは決して「損をする」ことではありません。むしろ、将来に向けた“年金の権利”がしっかりと残るという、大きなメリットがあるのです。

1.1 脱退一時金は対象外

まず理解しておきたいのが、日本の年金制度における「老齢年金の受給資格期間は10年(120ヶ月)」というルールです。これを満たしていない外国人に限り、帰国時に納めた保険料の一部を「脱退一時金」という形で短期的に受け取ることができます。しかし、10年以上年金に加入している人はこの“受給資格”をすでに得ている状態。つまり「老後に年金を受け取る権利を持っている」ため、脱退一時金の対象外になるというのが制度のロジックです。

1.2 掛け捨てにはならない

「脱退一時金がもらえない=保険料が無駄になった」と思う必要はありません。
10年以上の加入があれば、たとえ帰国して日本に住んでいなくても、将来「老齢年金」として日本から年金を受け取ることができます。これは、日本国外に住んでいても、申請すれば年金が支給される制度であり、権利は失効しません。つまり、あなたが納めた年金保険料は「掛け捨て」ではなく、将来の資産(所得)として受け取れるものに変わるのです。

1.3 年金の加入期間が分かれ道

実際に帰国する際、「自分は脱退一時金をもらえるのか?年金を受け取る権利があるのか?」を判断するうえで、もっとも重要になるのが年金の加入期間です。

加入期間帰国後の選択肢
10年未満脱退一時金を申請可能(最大5年分)
10年以上将来、海外から老齢年金を受給可能

加入期間が120ヶ月(10年)を超えているかどうかで、帰国後の対応が大きく変わります。
自分がどちらに該当するかを把握し、それに応じた手続きを考えておくことが大切です。

最後に|日本の年金は、あなたの未来の「財産」になります

年金制度は一見複雑に見えますが、正しく理解すれば日本での働きがしっかり将来の安心につながる制度です。脱退一時金を受け取らなくても、年金の“受給権”というかたちで資産が残るという点は、大きなメリットといえるでしょう。もしご自身の年金加入状況が不明な場合は、「ねんきんネット」や年金事務所で確認することをおすすめします。

2. 「脱退一時金」と「老齢年金」の違い

日本の年金制度には、外国人労働者が帰国した際に受け取ることができる給付として、「脱退一時金」と「老齢年金」があります。それぞれ目的や対象者、給付内容が異なりますので、ここで違いを簡潔に整理します。

脱退一時金制度の目的と特徴

「脱退一時金」は、日本での年金加入期間が10年未満の短期在留外国人向けに、納めた保険料の一部を帰国時に一時的に払い戻す制度です。

  •   ● 短期的に現金化できるメリットがありますが、年金加入期間がリセットされるため、将来の年金受給資格は消失します。

  •   ● 申請は帰国後2年以内に行う必要があります。

老齢年金制度の目的と特徴

「老齢年金」は、年金加入期間が10年以上ある人に対し、原則65歳以降に生涯にわたって所得を保障する制度です。

  •   ● 短期的な現金受給はできませんが、生涯の経済的支えとなる安定的な収入源です。

  •   ● 日本国外に居住していても受給可能で、手続きは原則65歳以降に行います。

脱退一時金と老齢年金の比較表

比較項目脱退一時金老齢年金
対象者年金加入期間が10年未満の外国人年金加入期間が10年以上の外国人
給付内容一時金(一括払い)生涯にわたる年金給付
メリット短期的に現金化できる生涯にわたる安定した所得保障
デメリット年金加入期間がリセットされる(資格喪失)手続きは将来(65歳以降)に行う必要あり
手続き時期帰国後2年以内に申請原則65歳以降に申請

このように、「脱退一時金」は短期滞在者向けの保険料の払い戻しであり、「老齢年金」は長期加入者の老後の所得保障という役割を担っています。ご自身の加入期間に応じて、どちらの制度に該当するかを確認し、適切な対応を取ることが大切です。

3. 【10年以上加入者向け】海外から日本の老齢年金を請求する手続き

日本の年金は、たとえ海外に住んでいても請求・受給が可能です。加入期間が10年以上ある方は、原則65歳から老齢年金を受け取ることができます。

3.1 受給開始年齢:原則65歳から

年金の受給は原則として65歳から開始されます。なお、受給開始を早める「繰上げ受給」(ただし受給額が減額)や、遅らせることで受給額が増える「繰下げ受給」という制度もあります。

3.2 請求手続きの全体の流れ(海外からの申請)

受給開始年齢に達する約3ヶ月前を目安に請求手続きを開始するのが一般的です。主な手続きの流れは以下の通りです。

  1.   1. 年金請求書の入手

  2.   2. 必要事項の記入

  3.   3. 添付書類の準備

  4.   4. 日本の年金事務所へ郵送

  5.   5. 審査・決定通知の受領

  6.   6. 受給開始

3.3 必要な書類と主な添付書類

中心となる書類は「年金請求書(国民年金・厚生年金保険老齢給付)」通称「裁定請求書」です。

3.3.1 裁定請求書の入手方法

裁定請求書は日本年金機構の公式ウェブサイトからダウンロード可能です。また、海外在住者向けには郵送での取り寄せも対応しています。

3.3.2 主な添付書類

  •   ● 年金手帳または基礎年金番号通知書

  •   ● パスポートの本人確認ページの写し

  •   ● 受取先銀行口座の証明書類(口座名義、支店名、所在地、口座番号が分かるもの)

  •   ● 海外居住を証明する書類(住民票に相当する書類など)

  •   ● 必要に応じて戸籍謄本に代わる身分証明書など

3.4 請求書の提出先

提出先は日本国内の最終住所地を管轄する年金事務所、または日本年金機構本部となります。書類は郵送で提出してください。

3.5 年金の受け取り方法

年金は海外の本人名義の銀行口座に振り込まれます。日本円で決定された年金額は、受取国の通貨に換算されて支払われます。為替レートの変動により受取額が変動することや、銀行の手数料がかかる場合があることにご注意ください。

4. 「社会保障協定」の役割

海外から日本の年金を受け取るうえで、知っておきたいのが「社会保障協定」の存在です。これは日本と他国との間で締結された協定で、外国人労働者や国際的に働く人々が不利益を被らないよう、主に以下の2つの目的で設けられています。

① 保険料の二重負担の防止

ある国で働く外国人が自国と勤務先の国、両方で年金保険料を支払わなければならない状態(=二重加入)を防ぐため、どちらか一方にのみ加入・納付することを認める仕組みです。
これにより、不要な保険料負担を回避することができます。

② 年金加入期間の通算(期間通算)

もうひとつの重要な役割は「加入期間の通算」です。
たとえば、日本で年金を8年、自国で年金を4年加入していた場合、社会保障協定がある国同士であればこの期間を合算し、年金の受給資格(10年)を満たすことが可能になります。

この仕組みにより

  •   ● 日本では10年に満たず年金を受け取れない人

  •   ● 自国と日本の両方で年金に加入していたが、それぞれで資格を満たさない人
    も、年金受給の権利を得られる可能性が広がります。

社会保障協定を結んでいる主な国(2024年時点)

日本は以下の国々と社会保障協定を締結しています(発効済みの一部抜粋)。

  •   ● アメリカ

  •   ● ドイツ

  •   ● 韓国

  •   ● フランス

  •   ● イタリア

  •   ● オーストラリア

  •   ● ベルギー

  •   ● カナダ

  •   ● イギリス

  •   ● スペイン

  •   ● オランダ
  •  
  •   ● チェコ

  •   ● インド

  •   ● フィリピン

  •   ● ブラジル

  •   ● ルクセンブルク など

最新の協定締結国・発効状況は日本年金機構の公式ページをご参照ください。

10年以上加入者にとっての活用メリット

10年以上日本に加入していた場合でも、将来受け取る年金額が少ない場合や、自国と日本の年金制度を合わせて管理したい場合に、社会保障協定は非常に役立ちます。例えば

  •   ● 日本での受給資格はあるが、受給額が少ない
        → 自国での加入期間と合算して「自国の年金制度」から受け取る選択肢ができる

  •   ● 自国と日本でそれぞれ年金を受け取りたい
        → 各制度の受給資格を“通算で満たす”ことにより、両国からの受給が可能に

まとめ

「社会保障協定」は、海外で働いた期間を無駄にしないための大切な仕組みです。自国と日本の両方で年金を納めた経験がある方は、受給の際にどちらの制度から・どのように年金を受け取るかを戦略的に考えることが、将来の安心につながります。

5. 加入期間が10年未満で帰国する場合(脱退一時金制度)

日本の年金制度では、年金の受給資格が「10年以上の加入」と定められています。
そのため、年金に6ヶ月以上10年未満、加入して帰国する外国人を対象に「脱退一時金制度」という仕組みが設けられています。

脱退一時金とは?

脱退一時金とは、将来の年金を受け取る資格を持たない外国人に対して、支払った保険料の一部を短期的に払い戻す制度です。これはあくまで「老齢年金が受け取れない人」を対象とした清算的な制度であり、老後の保障ではなく、一時的な返金に近い位置づけです。

対象となる人

次の3つの条件すべてに該当する人が対象です。

  1.   1. 日本国籍を持たない外国人

  2.   2. 厚生年金または国民年金の加入期間が6ヶ月以上10年未満

  3.   3, 日本を出国し、外国に居住している

支給額と上限

  •   ● 支給額は加入期間に応じて段階的に決定されます。

  •   ● 上限は最大60ヶ月(5年)分までの保険料に対する一時金となります。

  •   ● 支給額の目安(厚生年金の場合)は、おおよそ数十万円程度ですが、給与水準や加入期間により異なります。

手続きの期限

帰国後2年以内に請求しなければ、脱退一時金は時効により受け取れなくなります。
手続きは郵送で、日本年金機構へ「脱退一時金請求書」を提出します。

【重要】最大のデメリット:年金加入期間がリセットされる

脱退一時金を受け取ると、その期間の年金加入記録はすべてリセットされます。つまり、将来再び日本で働いて年金制度に加入した場合でも、以前の加入期間は“ゼロ”として扱われます。これは将来的に老齢年金の受給資格を得るうえで、大きなハンデとなる可能性があります。

判断に迷ったら:受給資格が近い人は慎重に

  •   ● 「あと1~2年で10年加入に届く」

  •   ● 「将来、日本で再就職の予定がある」

このような方は、安易に脱退一時金を請求するのではなく、10年の年金受給資格の取得や、社会保障協定の活用も含めた総合的な判断が必要です。

まとめ

脱退一時金制度は、短期在留の外国人にとって便利な制度ですが、年金制度から完全に抜けることになる「一方通行の選択」です。長期的なキャリアプランや将来の生活を見据えたうえで、受け取るかどうかを慎重に検討することが大切です。

6. 企業担当者向け:外国人従業員への説明ポイント

外国人従業員にとって、日本の年金制度は非常に複雑でわかりにくいものです。しかし、企業側が丁寧に制度の概要と将来の選択肢を説明することで、不安の解消、信頼関係の構築、さらには定着率の向上にもつながります。担当者が意識すべきポイントは、従業員の年金加入期間に応じて、どのような制度が利用できるかを正しく説明することです。

加入期間が10年未満の従業員へ

この層には「脱退一時金制度」について、以下の内容を伝えることが重要です。

  •   ● 脱退一時金は、日本の年金に6ヶ月以上10年未満、加入した外国人が帰国後に請求できる払い戻し制度である。

  •   ● 支給は最大で60ヶ月(5年)分まで。請求は帰国後2年以内に本人が行う。

  •   ● メリット:短期的に保険料の一部を現金化できる。

  •   ● デメリット:その期間の年金加入記録はリセットされ、将来の年金受給には使えなくなる。

こうした「制度の目的とトレードオフ」を正しく伝えることが大切です。

加入期間が10年以上の従業員へ

この層には、以下の点を明確に伝えましょう。

  •   ● 加入10年以上であれば、将来、日本の老齢年金を受け取る資格がある。

  •   ● 海外に居住していても、65歳以降に海外から年金請求・受給が可能。

  •   ● よく誤解されるが、「掛け捨て」ではなく、将来の資産として保有される権利である。

本人の将来設計にも関わるため、年金制度が持つ長期的メリットを理解してもらうことが重要です。

加入が10年目前の従業員へ

この層には、進路の分かれ道として、以下の2つの選択肢を比較した情報提供が求められます。

  •   ● 10年まで加入する:将来的に生涯年金の受給資格が得られる(海外居住でも可)。

  •   ● 10年未満で帰国する:一時金を請求できるが、年金加入記録は失効する。

この比較をもとに、本人が納得できる選択を自ら判断できるようサポートする姿勢が大切です。

社会保障協定対象国の従業員へ

協定対象国の出身者に対しては、「年金加入期間の通算(期間通算)」という選択肢があることを補足説明しましょう。

  •   ● 日本での年金加入期間が10年未満でも、自国の年金加入期間と合算できる可能性がある。

  •   ● この制度により、自国または日本での年金受給資格を得られるケースがある。

協定国に該当するかどうかは、日本年金機構の最新情報を確認して案内することが望ましいです。

まとめ:丁寧な情報提供が信頼と定着につながる

年金に関する制度説明は、給与や労働条件と並ぶ重要な雇用管理項目です。
外国人従業員の目線に立ち、加入期間別の選択肢をわかりやすく説明することが、安心感・信頼感・企業定着につながります。担当者として、単なる制度説明ではなく、「その人の将来に関わる大切な選択をサポートする」意識を持つことが、長期的な人材活用のカギとなります。

7. まとめ:10年以上の年金加入は将来の資産、帰国後も忘れずに手続きを

外国人が日本で働き、年金に加入する期間が10年を超えるかどうかは、その後の人生において非常に大きな意味を持ちます。なぜなら、加入期間が10年に達すれば、日本の「老齢年金」を将来、海外からでも受け取る権利が得られるからです。

この年金は、「掛け捨て」ではありません。加入してきた期間が、将来の安定した資産として返ってくるということを、改めて認識しておく必要があります。
一方で、帰国後に何もしなければ、その権利を行使できません。受給開始年齢(原則65歳)になった際には、忘れずに請求手続きを行うことが非常に重要です。手続きは海外からでも可能であり、日本の制度は国外居住者も対象としています。

ただし、年金制度は非常に複雑であり、加入期間や国籍、居住国の状況によって、必要な手続きや選択肢が異なる場合があります。そのため、自分の状況に合った正確な情報を得るためにも、不明点がある場合は、日本年金機構や、年金に詳しい専門家(行政書士・社会保険労務士など)への相談を強く推奨します。

せっかく積み上げてきた年金加入の実績を無駄にしないように、早めに情報を整理し、必要な準備を進めることが、将来の安心につながります。日本で働いた努力の証としての「老齢年金」は、あなた自身の財産であり、誇るべき成果です。帰国後も、その価値を忘れず、大切に引き継いでいきましょう。

 

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