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不法就労助長罪で初犯ならどうなる?罰則と対応策を解説

外国人材の雇用が拡大するなか「不法就労助長罪」で企業が摘発される事例が増加しています。特に初めてのケースでは「初犯だから大丈夫だろう」と安易に考えてしまうかもしれません。しかし、この罪は初犯であっても懲役刑や高額な罰金が科される可能性があり「知らなかった」という言い訳は通用しません。

本記事では、不法就労助長罪で初犯の場合に科される罰則、罪に問われる具体的なケース、そして重要な予防策と発覚後の対応について、専門的な視点から解説します。

CONTENTS

1. 不法就労助長罪とは? 初犯でも成立する罪の基本

不法就労助長罪とは、外国人を不法就労させる行為を助長する事業者やあっせん者を処罰する規定で、入管法(出入国管理及び難民認定法)第73条の2に定められています。

具体的には、次のような行為を対象とします(第73条の2第1項):

  1.   1. 事業活動に関し、外国人を不法就労活動に従事させること

  2.   2. 外国人を不法就労活動に従事させるため、それを自己の支配下に置くこと

  3.   3. 業として、上記の不法就労活動または支配下行為に関するあっせんを行うこと

また、不法就労であることを知らない・気づかなかったという主張は、原則として免責理由にはなりません(過失も処罰対象となる)。ただし、法律上「過失がない」ことが証明できる例外もあり得ます。このため、仮に企業が知識不足や確認漏れという“過失”だったとしても、不法就労助長罪が成立しうることを前提に、事前のチェック体制を強化しておく必要があります。

2. 不法就労助長罪に該当する3つの典型的なケース

以下は、実務上特に注意すべき典型例です。いずれも「意図的」であるかどうかを問わず、雇用主側の確認義務を怠ったことが問題となります。

2.1 ケース1:不法滞在者や被退去強制者を雇用する

  •   ● 在留期間が切れた者(オーバーステイ状態)を引き続き雇用する

  •   ● 退去強制処分が決定されている外国人を雇用・就労させる

これらは「在留資格を有しない外国人を就労させる」典型的な不法就労です。企業がその状態を知っていた、または知り得る注意義務を怠った場合、不法就労助長罪が成立します。
たとえその外国人が偽の在留カードを提示していた、または虚偽の説明をしていたという場合であっても、企業側に相応の注意義務があれば責任を問われうることがあります。

詳細は以下の記事をご確認ください。
オーバーステイとは? 罰則や再入国の条件、在留特別許可を解説

2.2 ケース2:就労が許可されていない在留資格の外国人を雇用する

  •   ● 在留資格が「留学」「家族滞在」「短期滞在」など、原則として就労を認められていないもの

  •   ● 例外的に「資格外活動許可」が与えられているかどうかを確認しないまま就労させる

在留カード上に「就労制限あり」「就労不可」などの記載がある場合は、資格外活動許可欄を裏面で確認する必要があります。資格外活動許可がない者を雇用したり、無許可就労を認めたりする行為は、不法就労助長罪として処罰対象となります。資格外活動許可については出入国在留管理庁のHPからこちらをご確認ください。また、外国人アルバイトを採用する際の資格外活動許可のチェックにはこちらの記事を参考にしてください。

2.3 ケース3:許可された活動範囲を超えて業務をさせる

  •   ● 在留資格に基づいて許可された業務や範囲・時間を超えて働かせる

    •     ○ 例:技術・人文知識・国際業務の資格を持つ者を、許可外の単純労働に従事させる

    •     ○ 例:留学生アルバイトを法定の 週 28時間(原則)を超えて働かせる

こうした行為も、不法就労助長罪に該当します。雇用主には、在留資格ごとの就労範囲・上限時間を理解し、それを遵守させる義務があります。重要なのは、これらの行為が意図的であるか否か、あるいは雇用主の善意・無知であっても、不法就労助長罪が成立する可能性がある点です。つまり、「知らなかった」あるいは「見落とした」は、通常の言い訳にはなりません。

3. 不法就労助長罪の初犯で科される罰則と不起訴の可能性

3.1 法定刑は懲役3年以下または罰金300万円以下

現行法(2025年5月以前)における不法就労助長罪の法定刑は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(あるいはその併科)です。この罰則は、初犯であるかどうかに関わらず適用されうるもので、初犯だからといって軽くされるわけではありません。
ただし、報道などでは、将来的に罰則の 厳罰化(懲役5年以下・罰金500万円以下) が検討されているとの指摘もあります。

3.2 悪質性が高いと判断されれば実刑判決の可能性も

初犯であっても、行為の規模・期間・反復性・被害額・意図性などが重く評価されると、執行猶予なしの実刑判決や高額な罰金が科されることがあります。過去には、飲食店チェーンでの時間超過勤務や、複数店舗での違法雇用を長期間継続した事案で、相応の処分が報じられています。

3.3 不起訴処分となるケースとその条件

すべての摘発が起訴されるわけではありません。企業による予防措置や対応の誠意が、不起訴判断を左右する可能性があります。たとえば、次のような事情があると不起訴とされる可能性が高まります。

  •   ● 採用時・雇用時に在留カード等の確認を複数人で行う体制を整えていた

  •   ● 偽造カードによるトラブルが巧妙かつ見破りにくいものであった

  •   ● 発覚後、速やかに当該外国人との関係を断ち、捜査への全面的な協力を行った

  •   ● 過失が軽微で、悪質性が乏しいと判断されるケース

ただし、これらはあくまで可能性であり、実際に不起訴とされるかどうかは検察の判断・事情次第となります。

4. 【事例紹介】不法就労助長罪で実際にあった摘発事例

実際の事例を通じて、どのような行為が摘発対象となるか、処罰がどのようなものかを具体的に見ることで、リスク感を持ちやすくなります。

4.1 事例①:飲食店での留学生アルバイトの時間超過

有名ラーメンチェーン「一蘭」が、複数店舗で留学生に法定の 週 28時間を超える勤務をさせたとして、社長らが不法就労助長容疑で書類送検された事例があります。この事例では、利益を優先して勤務時間制限を超えさせたと見なされたことが、悪質性を評価される要素となりました。

4.2 事例②:大手食品メーカーでの資格外活動

「国際業務」などの在留資格を持つ外国人を、許可範囲外の工場作業などに従事させた事例も摘発されています。たとえ在留資格自体が就労可能なものであっても、許可される業務範囲を超える業務を強いることは違法とされます(参考)。慢性的な人手不足を理由としていたケースでも、違法行為が正当化されることはありません。

4.3 事例③:建設現場での不法就労

建設現場で就労資格を持たない外国人を働かせたとして、解体業者や建設業者の代表取締役が逮捕された事例が報じられています。このような事例では、雇用形態が非正規あるいは下請け関係であっても、実態として不法就労を助長した事実があれば摘発対象となります。

5. 不法就労を未然に防ぐための具体的な確認方法

不法就労助長罪を回避するには、採用時および雇用継続時において、在留資格・カード確認・チェック体制を徹底することが不可欠です。

5.1 在留カードの原本確認と偽造の見分け方

  •   ● 原本確認:在留カードのコピーでは不十分であり、必ず原本を確認する必要があります。

  •   ● 偽造チェックのポイント(例示):

    1.     1. 傾けると色が変わるホログラムの有無

    2.     2. 透かしや微細な文字・模様

    3.     3. 表記ミス・フォント・印刷ズレなどの異常

    4.     4. IC チップ読み取りが可能なものについては、読み取り可能性のチェック

これらを複数の視点でチェックできる社内ルールを整備することが望ましいでしょう。

5.2 就労制限の有無と資格外活動許可の確認

  •   ● 在留カード表面の「就労制限の有無」欄を必ず確認

  •   ● 「就労不可」と記されている場合は、裏面の資格外活動許可欄に「許可あり」の記載があるかどうかを把握

  •   ● 資格外活動許可がある場合でも、その範囲(時間・職種上限など)を遵守させる必要あり

この確認を怠ると、見かけ上は就労可能と見える在留資格であっても不法就労になることがあります。

5.3 公的ツール(アプリ・サイト)の活用

これらを組み合わせた多角的チェックを導入することが、企業が不法就労助長罪リスクから自社を守る有力手段となります。

6. 不法就労が発覚してしまった場合の初動対応

不法就労の事実を認識した場合は、問題を放置せず、速やかに関係を断ち、被害を最小限に抑えるための初動対応が極めて重要です。具体的には、当該外国人との雇用契約を適切に解除し、関係行政機関へ報告・相談することで、企業のコンプライアンス遵守の姿勢を示す必要があります。

6.1 速やかな雇用契約の解除

不法就労が発覚した時点で、当該外国人を就労させることは違法となります。直ちに就労を停止し、状況に応じて次のような雇用契約の解除を検討します。

  •   ● 懲戒解雇:就業規則に違反し重大な問題があった場合

  •   ● 普通解雇:信頼関係が破綻したと認められる場合

いずれにしても、労働法や契約書に則った手続きが必要です。

6.2 出入国在留管理局への報告と出頭の推奨

企業に報告義務はありませんが、地方出入国在留管理局への報告を行うことで、法令遵守姿勢を明確にできます。また、当該外国人には「出国命令制度」の活用を促すことも重要です。自ら出頭すれば、原則として収容されずに帰国することができます(条件あり)。

7. 不法就労助長罪に関するQ&A

これまでの内容を踏まえ、企業担当者が疑問に思いやすいポイントをQ&A形式で解説します。

7.1 Q1. 不法就労と知らなくても罰せられますか?

はい。 過失であっても、在留資格や就労資格を確認していなければ処罰の対象です。
処罰を免れるのは、過失がなかったと合理的に証明できる場合に限られます。

7.2 Q2. 初犯の場合、罰金の相場はいくらですか?

具体的な相場はありませんが、過去の事例では20万〜100万円前後の罰金が多く、
悪質性が高い場合は、上限の300万円に近い金額が科されることもあります。

7.3 Q3. 従業員の独断だった場合、経営者も責任を問われますか?

場合によっては法人自体に罰金が科される(両罰規定)ことがあります。
従業員任せにせず、社内に確認体制や教育制度を整えていたかどうかが重視されます。

7.4 Q4. 派遣労働者が不法就労だった場合、誰が責任を負うのですか?

派遣元・派遣先の双方に確認責任があります。
派遣先企業にも、派遣された外国人の在留資格を確認する義務があるため、「任せきり」は通用しません。

7.5 Q5. 摘発後の刑事手続きはどのように進みますか?

多くのケースは在宅事件(逮捕されない)として処理されます。
警察による事情聴取や資料提出の要請があり、その後、検察官が起訴・不起訴を判断する流れです。

8. まとめ:法的リスクを回避し、健全な外国人雇用を実現するために

不法就労助長罪は、初犯であっても企業に深刻なダメージを与える可能性がある重大な違反です。経営者や人事担当者は、以下のポイントを常に意識する必要があります。

  •   ● 採用時には必ず在留カードの原本を確認

  •   ● 就労可能かどうか、在留資格の範囲を理解

  •   ● 偽造対策や確認ツールの活用

  •   ● 万一発覚した際には早急に関係を断ち、関係機関に報告

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