特定技能における二国間協定(MOC)とは?国別の手続きと注意点
2026.02.16
特定技能で外国人を採用する際には、日本の入管手続きだけでなく、送り出し国との間で締結された「二国間協定(MOC)」にもとづく対応が求められます。この協定は国ごとに内容や運用が異なり、手続きの順序や必要書類を誤ると、在留資格が認められない、あるいは出国できないといった問題が生じることもあります。
本記事では、特定技能制度における二国間協定の基本的な考え方を整理したうえで、日本と協定を締結している国の一覧、国別に必要となる主な手続き、採用で押さえておくべき代表的なリスクについて解説します。
CONTENTS
- 1. 特定技能制度における「二国間協定(MOC)」とは
- 2. 日本と二国間協定を締結している17カ国一覧(2026年1月時点)
- 3. 手続きに注意が必要な国
- 4. 協定未締結国や国内採用など、例外的なケース
- 5. 二国間協定にもとづく採用で起こりやすい3つのリスク
- 6. まとめ:二国間協定を正しく理解し、特定技能の採用を確実に進めよう
1. 特定技能制度における「二国間協定(MOC)」とは
特定技能制度の適正な運用を図るため、日本政府は送り出し国の政府と「二国間協定(MOC:Memorandum of Cooperation)」を締結しています。これは正式には「協力覚書」と呼ばれ、政府間の合意文書として位置づけられます。特定技能で外国人を採用する際、この協定にもとづく手続きを無視すると、在留資格が認められないリスクが生じます。協定の有無や内容は国ごとに異なり、採用予定の国が協定締結国かどうか、またその協定で定められた手続きが何かを確認することが、採用の成功に直結します。
特に企業側が注意すべきは、協定が「法的拘束力を持たない」点と「実務上は入管審査の要件となる」点です。協定そのものが国際法上の条約とは異なるため、罰則規定が明記されないこともあります。しかし、入管は協定遵守を在留資格審査の要件とし、実務上は「協定に沿わない手続きは不許可」と判断されることがあるため、企業は協定内容を遵守する義務があると考えるべきです。特定技能制度の理解を深めるには、まず協定の目的と内容を把握することが不可欠です。
特定技能については、【在留資格「特定技能」とは? 技能実習との違いや採用ポイントを解説 – 海外人材タイムス】をご覧ください。
1.1 二国間協定の定義と主要な目的
二国間協定の目的は主に2つあります。
1つ目は悪質なブローカー排除、2つ目は外国人の権利保護です。
送り出し国と日本が協力し、情報共有や不正な保証金徴収の取り締まりを行うことで、円滑な送り出しと受け入れを実現します。
例えば、協定によっては「保証金徴収の禁止」「不当な仲介手数料の禁止」「適切な労働条件の保証」などが定められています。企業がこれらを遵守しない場合、受け入れ停止や行政処分などのペナルティが生じる可能性があるため、協定の内容を事前に理解することは企業リスクの回避につながります。
1.2 企業が協定内容を理解しておくべき理由
企業が協定内容を理解しておくべき理由は大きく2つあります。
① 採用スケジュールが大幅に遅延するリスクがある
特定技能では、日本の入管手続きだけでなく、相手国側での事前審査や許可取得が必要なケースがあります。
「日本への申請前に現地の承認が必要」という順序を守らなければ、申請自体が受理されず、最初からやり直しになることもあります。その結果、数カ月単位で採用スケジュールが遅延する可能性があります。
② 協定違反が企業に不利益をもたらす
協定違反(例:禁止されている保証金の徴収への関与)により、企業側も受け入れ停止や行政指導などの対象になることがあります。特に特定技能は、外国人の権利保護の観点から運用が厳格化されているため、企業側の対応ミスが即座に影響を及ぼすリスクが高い制度です。

2. 日本と二国間協定を締結している17カ国一覧(2026年1月時点)
2026年1月時点で、日本はアジア圏を中心に17カ国と特定技能に関する二国間協定(MOC)を締結しています。【特定技能に関する二国間の協力覚書 | 出入国在留管理庁】によると、協定締結国からの採用においては、日本の入管法だけでなく、相手国の労働法や送り出しルールも遵守する必要があります。以下が締結国一覧です。
- ● フィリピン
- ● カンボジア
- ● ネパール
- ● ミャンマー
- ● モンゴル
- ● スリランカ
- ● インドネシア
- ● ベトナム
- ● バングラデシュ
- ● ウズベキスタン
- ● パキスタン
- ● タイ
- ● インド
- ● マレーシア
- ● ラオス
- ● キルギス
- ● タジキスタン
なお、上記に含まれていない国(中国・ブラジルなど)からの採用を予定している場合は、現時点では二国間協定の対象外となります。その場合は「協定未締結国」の手続きに従う必要があります(後述)。政府は今後も必要に応じて新たな国と協定を締結する方針のため、採用国がリストにない場合は法務省や日本大使館へ確認することを推奨します。

3. 手続きに注意が必要な国
特定技能の採用実務で重要なのは、国ごとに異なる手続きの把握です。協定締結国であっても、国ごとに「日本側手続きに加えて現地で必要な手続き」があります。
ここでは、特に注意が必要な国の手続きを紹介します。
3.1 フィリピン:MWO(旧:POLO)への申請が必須
フィリピンは海外労働者保護制度が非常に厳格で、直接雇用であってもフィリピン政府認定の送り出し機関を介する必要があります。受入れ企業はまず、駐日フィリピン共和国大使館移住労働者事務所(MWO、旧POLO)に書類提出・審査・面接を受ける必要があります。
その後、フィリピン移住労働者省(DMW、旧POEA)への登録を経て、最終的に海外雇用許可証(OEC)を取得して初めて出国が可能になります。
フィリピン人材の採用については、【フィリピン人材採用のメリットと手続き|DMW・MWO申請の流れ】の記事も参考にしてください。
3.2 ベトナム:送り出し機関の推薦者表が必要
ベトナム人材を海外から呼び寄せる場合、ベトナム政府認定の送り出し機関と「労働者提供契約」を締結する必要があります。特定技能の在留資格認定証明書交付申請では、送り出し機関を通じて取得した「推薦者表(承認リスト)」の提出が求められます。
一方、日本国内にいる技能実習修了者や2年以上の課程を修了した留学生などが在留資格変更を行う場合は、駐日ベトナム大使館での承認(推薦者表の取得)が必要になります。
ただし、2年未満の課程の留学生や中退者など、一部対象者は推薦者表不要の場合もあるため、個別確認が必要です。
ベトナム人材の採用については、【ベトナム人が日本で働く理由とは?採用のメリットと注意点を解説】も併せてご覧ください。
3.3 カンボジア・タイ:大使館認証などのプロセスがある
カンボジア人材を受け入れる場合、カンボジア労働職業訓練省(MoLVT)が発行する「登録証明書」が必要です。これは認定送り出し機関を通じて申請します。
タイ人材の場合、送り出し機関利用は任意ですが、雇用契約書の在京タイ大使館認証が必要です。また、タイ出国時にはタイ労働省への出国許可申請が必要になるため、手続きの順序と期限に注意が必要です。
3.4 インドネシア:専用システム(IPKOL)への登録が必要
インドネシアはデジタル化が進んでおり、日本企業は労働市場情報システム「IPKOL」への求人登録が推奨されています。労働者側は海外労働者管理システム「SISKOP2MI」に登録しID番号を取得する必要があります。最終的に「E-PMI(移住労働者証)」を取得しなければ日本への出国が認められない仕組みです。
3.5 ミャンマー・ネパール:独自の海外労働許可証が必要
ミャンマー人材は、ミャンマー労働・入国管理・人口省(MOLIP)が発行する「海外労働身分証明カード(OWIC)」の取得が必須です。
ネパール人材も同様に、海外雇用局から「海外労働許可証」を取得しなければなりません。これらは一時帰国後の再入国時にも提示が求められる重要な書類です。
3.6 双務契約の締結が必要な「モンゴル」
モンゴル人材を受け入れる場合、日本企業はモンゴル労働・社会保障省労働福祉サービス庁(GOLWS)と双務契約を締結する必要があります。
この契約により、モンゴル側の求職者リストへのアクセス権が付与され、適切な採用手続きが可能になります。

4. 協定未締結国や国内採用など、例外的なケース
特定技能の採用において、すべての国が複雑な二国間協定の手続きを求めているわけではありません。二国間協定(MOC)が締結されていない国からの採用や、すでに日本国内に在留している外国人を採用するケースなど、標準的なフローとは異なる例外的なケースが存在します。
採用担当者が誤解しやすいのは「協定がない国なら手続きが簡単」という認識です。確かに協定未締結国では日本側に「認定送り出し機関」を介する義務がないため、企業が直接本人と契約を結ぶことが可能です。しかし、協定がないからこそ現地の手続きや法律に関する情報が乏しく、トラブル時に政府間サポートが得にくいというリスクが伴います。また、国内在住者を採用する場合でも国ごとのルールが異なるため、注意が必要です。
4.1 協定未締結国(中国・ブラジルなど)から採用する場合
特定技能の外国人が多い中国をはじめ、ブラジルや韓国などは、日本との間で二国間協定を締結していません(2026年1月時点)。そのため、これらの国からの採用においては、日本側に「認定送り出し機関」を通す法的義務はなく、企業が直接本人と契約を結ぶことが可能です。
ただし、協定がない分、採用の自由度が高い一方で現地の法律や慣習により、手続きが難航するケースもあります。特に中国では、国内の法律により公的機関を通さずに海外就労の手続きを行うことが難しい場合もあります。そのため、企業側は「日本側の手続きだけ」で完結するという前提で進めると、現地でのトラブルや採用遅延に直面する可能性があります。
また、協定未締結国の場合は、二国間協定による政府間の支援が得にくい点がリスクです。万が一、トラブルが発生しても、送り出し国政府との協力体制が整っていないため、迅速な対応が難しくなります。採用前に現地事情を把握し、リスクを分散するための手段(現地専門家の活用や、企業側での受け入れ体制整備など)を講じることが重要です。
4.2 国内在住の留学生などを採用する場合
すでに日本国内に在留している留学生などが特定技能試験に合格して就職する場合、国によっては送り出し機関を通す手続きが免除されることがあります。たとえば、ベトナム人の技能実習修了者や留学生などは、一定の条件を満たせば「推薦者表」の提出が不要になる場合もあります。
しかし、フィリピンやカンボジアでは国内在住者であっても、大使館での手続きや送り出し機関の利用が必須となるため注意が必要です。フィリピンの場合、国内在住者であってもMWO(旧POLO)などでの手続きが必要になることがあります。ベトナムでも、技能実習修了者や2年以上の課程を修了した留学生は、駐日ベトナム大使館での承認(推薦者表の取得)が必要になるケースが多く見られます。
このように、国内採用だからといって「何もしなくてよい」と思い込むのは危険です。国ごとのルールは頻繁に変更されるため、採用を進める前に必ず出入国在留管理庁の公式サイトや各国の大使館・領事館の最新情報を確認し、適切な手続きを把握することが求められます。

5. 二国間協定にもとづく採用で起こりやすい3つのリスク
二国間協定は、送り出し国側の事情により、詳細な手続きや運用が頻繁に変更される傾向があります。そのため、一度理解した協定内容でも、翌月にはルールが変わっていることが珍しくありません。採用担当者には書類対応だけでなく、こうした「突然のルール変更」というリスクを前提に、柔軟に採用を進める姿勢が求められます。
ここでは、二国間協定に基づく採用で起こりやすいリスクを3つに分けて解説します。
5.1 国ごとのルール変更に追随できないことによる申請不備
送り出し国の政権交代や省庁再編により、申請窓口や必要書類、手数料のルールが予告なく変更されることが多々あります。特に「推薦者表」や「許可証」の様式変更は頻繁に起こり、古い情報のまま申請すると不備として却下されるケースが発生します。
また、現地の情報が公用語でしか公開されないことも多く、日本国内だけで正確な最新情報を収集し続けるのは難易度が高いようです。そのため、企業は現地の最新情報にアクセスできる仕組み(現地パートナー、専門家、現地代理人)を整備する必要があります。特に、採用スケジュールがタイトな場合、情報収集の遅れは採用計画そのものを破綻させるリスクがあります。
5.2 悪質な仲介業者を利用した場合の協定違反
二国間協定の目的は悪質ブローカー排除ですが、依然として認定された送り出し機関を名乗る悪質な業者が存在します。法外な手数料を労働者から徴収している機関を利用すると、協定違反となり、企業のコンプライアンス問題に発展する可能性があります。
特に注意したいのは、認定リストに載っていることが最低条件であり、実際に適正な運用を行っているかは企業側が見極める必要がある点です。採用企業は、以下のような点をチェックすることが重要です。
- ● 労働者への手数料が適正か
- ● 労働条件が明確に説明されているか
- ● 送出し国の法令に沿った手続きが行われているか
- ● 不正な保証金徴収がないか
これらを確認せずに進めると、協定違反として企業側にもペナルティが発生する可能性があります。
5.3 手続き不備による在留資格認定証明書の不交付
特定技能の採用において、最も重大なリスクの一つは「在留資格認定証明書(COE)が交付されない」ことです。
例えば、ベトナムの「推薦者表」のように、入管への提出が必須の書類が欠けている場合、在留資格認定証明書は交付されません。また、申請自体が受理されないこともあります。
一方、フィリピンのようにビザ取得後に出国許可(OEC)が必要な国では、手続きに不備があると「ビザはあるのに物理的に出国できない」という事態に陥る可能性があります。これは採用計画に大きな影響を与え、内定者の離脱や、現場の人員不足を招くリスクがあります。
いずれにせよ、協定にもとづく手続きを無視すれば、結果として内定者を予定通りに受け入れることができなくなる重大なリスクがあります。採用を成功させるためには、協定に基づく手続きを正確に理解し、必要な書類や手続きを漏れなく完了させることが重要です。

6. まとめ:二国間協定を正しく理解し、特定技能の採用を確実に進めよう
特定技能制度における二国間協定(MOC)は、外国人労働者の保護と円滑な受入れを目的とした重要な枠組みです。協定がある国では、送り出し機関の利用義務や事前審査など、国ごとに手続きが大きく異なります。採用担当者が最新の国別ルールを把握せず進めると、書類不備や申請の遅延が発生し、在留資格の不許可や企業の法的リスクにつながる可能性があります。特に協定未締結国や国内採用の場合でも、現地の法律や手続きの確認が欠かせません。
そのため、二国間協定を正しく理解し、計画的に採用を進めることが不可欠です。国ごとの複雑な手続きや送り出し機関の選定に不安がある場合は、海外人材タイムスの無料相談を活用し、安心して採用を進めてみましょう。
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