ICT教育が進み、世界で活躍するポテンシャルを持つウガンダの人材
2025.11.04
若く有能な人材の宝庫として世界から注目されているウガンダ。JICA(独立行政法人 国際協力機構)では、ウガンダ情報通信技術・国家ガイダンス省(Ministry of ICT and National Guidance、以下MoICT)とともにウガンダのICTセクターを支援する「ICT産業振興プロジェクト」を実施しています。ウガンダからMoICT職員・関係者とICT企業経営者を招き、ウガンダの人材について、日本企業が彼らにアプローチする方法などについて聞きました。
ウガンダ共和国、通称ウガンダはアフリカ大陸中央部に近い、東アフリカに位置する共和制国家です。人口は約4,590万人(2024年、ウガンダ国勢調査)で、公用語は英語とスワヒリ語。自然豊かな国で、コーヒー豆やバナナの産地として知られていますが、工業・鉱業・サービス業分野などでの経済成長が著しく、近年ではICTを教育に積極的に取り入れた国家プロジェクトが注目されています。
■ゲスト
【MoICT職員】
ソフィア・ナントンゴさん:事務次官補
アモス・ムプングさん:ICTテクノロジーオフィサー
ウィンフレッド・ナンカンジャさん:テレコミュニケーション担当
【ICT企業経営者】
ロバート・ボブ・オケロさん:アフリカの次世代AIとデジタル人材を育成する企業「Maarifasasa」を経営。
ジェンキンス・トゥイノムギシャさん:企業や政府機関のDXのためのソフトウェアソリューションを提供する企業「SMS ONE」を経営。
トゥウェヘヨ・ブライアンさん:家主が安定した賃料を受け取り、借主が柔軟かつ責任を持って支払えるよう支援するプロップテックおよびフィンテックのプラットフォームを提供する企業「RentBeta」を経営。
チャガラ・エマヌエル・アガペさん:組織のサイバー脅威への耐性強化を支援し、官民を対象としたトレーニングも実施しているサイバーセキュリティ会社「Milima Technologies」を経営。(以上、文中敬称略)

有能で活力にあふれた人材
日本と文化的な共通点も
―――日本では人口減少・少子高齢化が進み、特に若い世代の労働力不足が深刻化してきました。ウガンダの現状はいかがですか?
オケロ:ウガンダは約4,590万人の人口を抱える国家ですが、国民の年齢中央値が約16歳と非常に若いことが特徴です。その一方で国内での就業先は不足しており、毎年約70万人が労働年齢に達しますが、そのほとんどが失業状態にあり、増え続ける人口に対して国内産業の発展が追いついていません。そのため、ウガンダの若い労働力が日本の企業で活躍できるよう促すことは、両国にとって有益な関係の構築につながると考えています。ウガンダの若い世代には大卒者が多く、また英語が堪能なので、日本企業のビジネスシーンでも活躍してくれることでしょう。一度ウガンダにいらっしゃれば、彼らは非常に勤勉で信頼できる人々だと感じていただけると思いますよ。
―――年齢中央値が約49歳、人口の約4分の1が65歳以上という日本の状況とは対照的ですね。ウガンダの人は勤勉、というお話が出ましたが、国民性については他にどのようなことが言えますか?
オケロ:文化的に日本とウガンダは共通点があります。日本はコミュニティを大切にし、高齢者を尊敬する文化。ウガンダも同様にコミュニティを重視し、互いに支え合う精神があります。アフリカに広く伝わる哲学のひとつに「Ubuntu(ウブントゥ)」というズールー語(南アフリカのズールー族を中心に約900万人が話す言語)があります。これは「あなたがいるから私がいる」という意味で、この精神に基づき、ウガンダでは近隣諸国に紛争が起こると、その難民を度々受け入れてきました。また私たちはさまざまな困難に見舞われてきましたが、そうした苦しい状況の中にあっても常に喜びを見つけ、生き生きとした暮らしを送るよう心がけてきました。楽観的に見えるかもしれませんが、前向きな姿勢は柔軟な発想を生む源になるとも言えるでしょう。
―――その発想力は、企業にとって大きな魅力ですね。既存のルールや手順に従うだけでなく、現場で柔軟に考え対応できる人材は、日本ではまだ十分に生かされているとは言えません。アフリカの人々に宿る精神は今後、新しいプロジェクトや商品開発には不可欠なものになりそうです。
オケロ:ウガンダは、経済開発に関しても日本から多くのことを学んできました。日本では多様な産業が花開きましたが、ウガンダもその軌跡を辿りたい、日本からさまざまな技術や知識を学びたいと考えています。
―――ウガンダ政府は今、日本との新たなビジネス関係構築に向けて積極的に取り組んでいると伺っています。地理的には欧州などの方が近いと思いますが、どのような理由で日本を選んだのでしょうか?
ナントンゴ:日本はホスピタリティにあふれた国で働きやすい、ということが大きな理由として考えられますが、それ以外の要因を挙げるなら、長年にわたるJICAの支援があったことですね。私自身、数年間一緒に働く中でで、JICAの堅実で真摯な姿勢に触れ、強い信頼関係を築くことができました。ウガンダ政府としても、日本との関係をより発展させたいと考えています。JICAはITだけでなく医療などさまざまな分野に関わっており、非常に信頼できるパートナーです。われわれは日本へ人材を提供するとともに、ウガンダに日本企業を受け入れたいと考えています。ウガンダには、ビジネスでの成功をめざすチャレンジ精神あふれる人が多いので、そのための目的地として日本が最適だと思っています。
―――日本とウガンダの相性のよさがよく分かります。逆に日本がウガンダの人々から学ぶことも多いでしょう。キャムコム代表である宮林利彦の著書『外国人材を競争力に変える法-日本企業が外国人から「選ばれる力」を持つために』とも通じる部分があるように思います。対等なパートナーとして外国人材を受け入れ、成長することはVUCA時代(*1)の突破口につながるかもしれません。
*1 変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字をとった言葉で、将来の予測が困難で変化の激しい時代のこと。企業も個人も変化に対応できる柔軟な思考力や、状況を観察して素早く判断・行動する能力が求められると言われている。
オケロ:日本とウガンダの時差は6時間。決して小さくはありませんが、日本〜ロンドンなどと比較すると少ないのが特徴です。これはウガンダ人にとっても、日本人にとってもメリットになるはず。例えば自社の業務を海外の拠点と連携して行うオフショア業務の場合でも、同じデイタイムの中で情報共有することが可能ですからね。またウガンダはアフリカ大陸の中心に位置するので、周辺諸国へのアクセスも容易です。アフリカに進出する日本企業にとっては、ハブ拠点としての機能も極めて高いと言えます。
国が積極的に推進する
若者へのICT教育
―――ウガンダ政府は近年、ICT教育に熱心に取り組んでいると聞きました。どのような背景があるのでしょうか?
ナントンゴ:ウガンダ教育省では「デジタル・ペダゴジー」という名称でICT教育に力を入れています。これは「誰も置き去りにしない」という方針のもと、教育のオンライン化や全世代のICTスキル習得を推進しています。小学生から教員まで、ICTやデジタルスキルを学ぶカリキュラムを導入し、社会的・経済的変化を起こす力を育もうとしています。
また、海外で働く人材がどのようなスキルを持っているかの検証を、政府が入念に行っていることも特色の一つ。政府は個々の人材のみならず、それを受け入れる日本企業に対しても支援を行っています。外国への人材派遣で搾取された過去の事例を教訓に、ジェンダー省や労働省が手厚い制度を整備しています。
―――デジタル領域で具体的に注目されている分野はありますか?
ナントンゴ:フィンテックやアグリテックが中心です。AIはウガンダでまだ新しい分野ですが、今後需要が高まることが予想されますので、政府も政策として積極的に取り組み始めました。
アガペ:サイバーセキュリティやソフトウェア開発においては、すでにAIが取り入れられています。UICT(日本の高等専門学校に相当する教育機関)だけでなく、教育省の下にある職業訓練校などでもAIのカリキュラムを導入し、「スキル向上」「セキュリティ管理」「イノベーション」という3本の柱を教育方針としています。
―――日本企業がウガンダの人材を活用するには、どのような方法が考えられるでしょうか?
オケロ:二つの方法が考えられると思います。一つはウガンダを日本企業のオフショア拠点と考え、業務をアウトソースする方法。この方法なら比較的少ない投資で、迅速にウガンダの人材を活用することができるでしょう。ローカルパートナーと一緒にビジネスを行うことで、若い人材を素早く育成するのも一つの方法です。ITビジネスに関して言えば、日本企業の人がウガンダを訪れて現地人材のスキルアップを促すことで、より日本の企業文化に即した能力を身につけられると思います。
二つ目の方法は、ウガンダの人が日本企業で働くことです。ウガンダには「Bizlink」(*2)というマッチングプラットフォームがあります。このプラットフォームは、海外から仕事を受注したいウガンダ企業が活用するだけでなく、日本をはじめ、海外に発注したい各国の企業が利用可能なので、ビジネスの可能性が格段に広がると言えるでしょう。
*2 ウガンダ企業と日本(海外)企業、ウガンダ人材と日本(海外)企業のマッチングを促進するためのプラットフォーム。JICAとウガンダ情報通信技術・国家ガイダンス省が連携して進める「ICT産業振興プロジェクト」の一環として開発され、①海外から受注したいウガンダ企業 ②海外に発注したい日本(海外)企業 ③海外の会社に採用されたいエンジニアなどウガンダ人 ④ウガンダの人材を採用したい日本(海外)企業の4者を対象とし、登録者・登録企業を増やしている。
サイバーセキュリティなど
新たなビジネス分野にも強み
―――ウガンダ人材が海外の企業に貢献している、具体的な成功事例はありますか?
オケロ:私が経営する「Maarifasasa」やその関連企業では、これまで約1,200名の人材をアメリカや欧州など世界中の企業に派遣してきました。今後はアジア諸国にも広げたいと考えています。ソフトウェア開発やITサポートなどが主な分野ですが、最近ではマイクロコールセンター開設などの事例もあります。
アガペ:「Milima Technologies」では2019年からサイバーアカデミーを運営しており、さまざまなハッキングに対する防衛スキルを身につけた卒業生を企業に紹介しています。その中からは6名のエキスパートが誕生しており、ドイツやドバイではサイバーセキュリティーアナリストとして活躍しています。
―――サイバーセキュリティは日本でもあまり進んでいない分野なので、需要がありそうですね。
オケロ:ウガンダでは今、6社が日本と連携した事業を行っています。日本には約1,000人のウガンダ人がいますが、そのほとんどは学生です。ICTやコールセンターなどさまざまな分野でより多くの若者がチャンスを得られるよう、今後も日本との橋渡しを続けてゆきたいと思います。
―――ありがとうございました。日本企業とウガンダの若者が協力し、ともに成長してゆく未来が創り出せたらすばらしいですね。
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