人前での叱責は万死に値する!?
2026.03.03
みなさん、こんにちは。
教えてタイムスくんのコーナーです。
今日は「日本」と「諸外国」における価値観の違い=“人前で怒る(怒られる)”ことに対する感覚の相違 から起きた事件を伊能あやめが解決していきます。
日本は集団主義が強い国なんですよねー。思い返せば学校や家庭(兄妹間)とかで「あなたたち、連帯責任よ!」ってシーン、懐かしく感じますが、個人が強い諸外国ではそうした見せしめ的教育はなされてこなかったんだろうな、と思いますね。
キャリアアドバイザー「伊能あやめ」:外国人雇用に取り組む企業や雇用される側の外国人人材が抱える課題を解決・サポートする業務に携わる弊社のキャリアアドバイザー。過去に青山智香と共に解決してきた事件はこちらから。 マリアさん:フィリピン出身の技能実習生。
注意と叱責の境界線
「あやめさん、聞いてください。今日のマリアさん…ちょっと仕事にならないかも。朝から一言も喋らず、機械みたいに無表情で作業してて。挨拶しても無視。話しかけても無視。これ、私、何かやらかしましたかね!?来週に響くといけないから今日中に解決したくて…」
今週もラストスパート!な、金曜日の昼下がり。外回りを終え社に戻りながらコーヒー休憩を取っていると、惣菜製造販売会社の杉本さんから連絡が入った。
マリアさんといえば、先月あの工場で働き始めてかなり“イイ感じ”なんじゃなかったかしら。面談でも順調ってことだったし……だいたい、温和な彼女が怒るなんて相当な地雷を踏んでしまったのかもしれない。土日を跨ぎたくない気持ちもよくわかる。私は今来た道を引き返し、東へ車を走らせた。
工場に着くと、杉本さんが出迎えてくれた。
「あやめさーん!こっちです。いやあ、わざわざすみません」
「いえ、いいんですよ。ちょうど隣町にいたのでもう現場に来ちゃったほうが早いかと思って。それで?」
「あれから色々考えてたんですけど。もしかすると昨日の出来事が怒らせちゃったのかなって。いや、でも、そんなつもりはなかった…んだけどなあ」
「ほら、杉本さんも優しいから……。ね?大丈夫ですよ、そんなに慌てなくても。私は実習生たちがとんでもない自己主張をしてきた現場も見てきたし、そうでない場合もあるし、いろいろありますから。そもそもバックグラウンドが違うから、齟齬も生まれやすいんで。ちゃんと話せば解決できますから安心してください!それで、何があったんです?」
「ああ、はい。心当たりで言うと……。昨日、新しいサラダのパッキング作業で、彼女が野菜の配分を少し変えてたんです。彩りが悪いからって。でも、マニュアル厳守が基本じゃないですか。ある物で見栄えよく配置するならいいんですが、特定の野菜を多く取りすぎると後が足りなくなるんでね。今までマリアさんには別のラインに入ってもらってたから、こういうことは最初に教えておかないとってのもあって」
「なるほど。それで、どんな感じで注意したんでしょう」
「ええ、だから、他の実習生もいて、ついでにみんなへ周知するきっかけにもなるから『マリアさん、勝手なジャッジはしないで。ここではそういうセンスは要らないから、マニュアル通りにやってくださいね』って。……そしたら、気付けば今この状態です!」
「うーん、なるほど。よく理解できました。それはもしかすると彼女の仕事への誇りとか、能力的なこと?を人前で否定したって感じなのかも。注意されたというよりは、プライドを傷つけられたという感覚なんだと思います」
「いえ、そんなつもりじゃ……! 彼女が優秀だからこそ、今後の仕事も見据えてフォローしたつもりだったのに」
「特に、みんながいるところでってのが良くなかったかなって。たしかに、その場のみんなも『じゃあ自分も気をつけよう』ってなるシーンだったんじゃないかって思うんですが、フィリピンや多くの諸外国だと“人前での叱責”…いえ、私は杉本さんが怒ったとは思ってないんですが、それってタブーなんですよ」
人前では褒めよう
私は杉本さんを引き連れ、休憩中のマリアさんを呼び出した。
「マリアさん、少し話せる?」
私が声をかけるとマリアさんはこちらを一瞥(いちべつ)し、杉本さんとは目を合わせずにこくりとうなずいた。
「あのね、マリアさん。杉本さんから状況を聞いたんだけど……」
すると私の言葉を遮るようにマリアさんが話し始めた。
「私、恥ずかしかったです。杉本さんは私をみんなの前で、自分勝手と決めつけました。それと、センスがない?悪い?みたいなことも言いましたね。だから…この会社で働けません。辞めます。昨日から考えてます」
「待って、マリアさん、落ち着いて。たしかにそうね。杉本さんはその場で注意したかもしれない。でもそれって、その場のその状況じゃないと正しく伝わらないから注意したし、みんなが聞いてたら何度も同じことを言って回らなくていいじゃない?だから、そうしただけなの。決して怒ってもいないし、マリアさんが新しいラインで困らないように教えてくれたのよ?」
「は…はい………」
黙り込むマリアさん。
杉本さんが慌てて続く。
「マリアさん、ごめんなさい。怒ったつもりはないんだ。たしかにちょっと言い方がきつかったかもしれない、工場じゃマスクしてるから目だけしか見えないし……そう感じさせたの、それは謝る。だけど……そう、怒ったつもりはないんだ」
互いに次の言葉を探すように沈黙する2人。たぶん、すれ違いはこれで解消した。あとは“これから”だ。
「マリアさん?言い訳するわけじゃなくって、日本ではけっこうこれが普通の感覚なのよ。なんなら昔は上司が公衆の面前で部下を叱責するなんてこともあったから。でも、それは良くないってわかってきて日本の文化も変わってきてる。だから以降、気をつけるわ。マリアさんもそんな怒らないで、楽しく仕事しましょうよ」
「そう、マリアさんの仕事ぶりは、私が1番評価してるから!これからリーダーになっていってもらいたいからフォローしたつもりだったんだ。今後は気をつける……だから、今回は許してほしい」
するとマリアさんが杉本さんの目をまっすぐに見て微笑んだ。
「わかりました。私はリーダーになります。だから、早く、正確に仕事を覚えます。いいですよね?」
さすが、切り替えが早いのが彼女の良さである。こちらが唖然としていると、スタッと立ち上がりお礼を言うと、足早に工場へと戻って行った。褒められると伸びる…これは、だいたいの外国人(いや日本人も?)に共通するところだろう。
さて、今回は「どんどん人前で褒める、注意するときは1対1で感情的にならないよう努めて」これが外国人と仲良くやっていく&成長を促す秘訣であることを、読者のみなさんにも知っていただければと思う。
#人前で叱る
終
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