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ラオスには住所がないって本当?
キャリアアドバイザー伊能あやめの事件簿Vol.38

生活関連

2025.07.04

これから外国人材の雇用を予定している人もそうでない人も!!

異なる人種、文化、価値観に触れる時
― 外国人って、どんな人たちなんだろう
― どんなことに気をつけたらいいんだろう
― 日本人や日本の文化をどう思ってるんだろう
などなど、不安や疑問に思うこと、ありますよね。

この記事は、実際に起きた珍事を元に、外国人雇用の現場に携わる人々の戸惑いを描き

「外国人材の皆さんと、どんなふうにコミュニケートしたらよいの?」

のヒントが隠れる、異文化理解の橋渡しを目的としたノンフィクションストーリーです。

キャリアアドバイザー伊能あやめの事件ファイルVol.38
ラオスには住所がないって本当?

ワタシ、伊能あやめは外国人材を雇用する企業や雇用される側の外国人が抱える課題を解決、サポートする業務に携わる、いわゆるキャリアアドバイザー。日本で働きたいと願うひとりでも多くの海外の方に、負担のないクリーンな就職環境を提供できるよう日々、さまざまな業務にあたっている。
実はこれまでもメンバーとともに珍事の解明に取り組み、全国を走り回っている(これまでの珍事はこちらからどうぞ)。

ひとえに
「外国人雇用の現場は予想だにせぬ出来事の連続である」
今日はそうした珍事をつまびらかにしながら私たちの仕事を紹介していきたいと思う。

私の住所は「お寺の後ろの緑の屋根の家」

「えっ……?この紙はどうやってここに来たんですか?」

そう言って目を丸くしているのは、ラオスから来た技能実習生のスーリヤさん。彼は千葉の食品製造工場で働き始めたばかりの青年で、人柄は素朴で明るく、物覚えの早い21歳。来日前に受けていた日本語講習では苦戦していたらしいのだが、勉強熱心な性格で今では日常的に使用する言葉はある程度理解できるまでに成長していた。



この日、私はスーリヤさんを含むラオス人技能実習生たちのオリエンテーションで、生活の基本的なルールを説明していた。特に、お金にまつわること、衛生管理などは各国で状況が違うためまずは概略を説明し(といっても、来日後の研修でそうしたことは一通り学んでくるのだが)さらに、各々が住む寮での生活や職場にも考慮して、より具体的に生活に根ざした説明をするようにしている。

「日本では、すべての建物、会社やお店、家、つまり皆さんが住む寮(アパート)に“住所”があります。これは場所を特定するための正式な記号のようなものです。電気や水道、ガス会社からの請求書、保険証、市役所からのお知らせなど、大事な郵便物が届出されている住所に届きます」

数人の実習生がそれとなくうなずく中で、スーリヤさんだけは少し眉をひそめていた。

「スーリヤさん、何か分からないことがありますか?」

すると、彼は戸惑いながらこう答えた。

「ラオスは…私は……住所ないです。うちは、有名なお寺が近くでした。“お寺の後ろの緑の屋根の家”と伝えます。配達は、取りに行きます。家には……届きません」



——なるほど。以前、ラオスの送り出し機関の方からそんな話を聞いたことがあった。
多くの家庭には正式な住所表記がなく、郵便物は郵便局の私書箱に届くとか、そんな文化だと。昨今は、主要都市でオンライン注文による配達サービスが利用できるようになっているが、地方や郊外ではまだ配達文化は浸透しておらず、サービスを提供する店舗も限られているらしい。スーリヤさん以外の2人はビエンチャンというラオスの首都近郊出身のため、彼らとはちょっと反応が違うのかもしれない。

「スーリヤさん、質問ありがとう。日本では、荷物や手紙を届けたい場所の住所を書けば、配達員さんがそこのポストに届けてくれるんですよ」

「えー?素晴らしいですね。私の家も住所がありますか?」

「もちろん、ありますよ。家にポストもあるはずです」

「ああ!そうだ、そこに!(うんうん)でも…それは、お金は、高いと聞きました……」

この後、私はしばらくスーリヤさんの“(郵便)配達の仕組み”に関する質問攻めにあった。



それから数日後、スーリヤさんから連絡があった。

「あやめ先生!来ました!!」

電話が鳴り、何事かと慌てて出てみると興奮したスーリヤさんだった。

「郵便です。手紙がポストに入っていました!」

「そうですか。で、それは何の郵便物ですか?」

「それが…わからないです。漢字ですね?私の住所は201ですから、ここは住所です…あとは私の名前…ですね、これ。それから……043-××××-××××とあります」

「ああ、それはきっと相手方の電話番号ですね。市役所か、何か、そういうところから届いたんでしょう。明日、私も会社に訪問する予定ですから、持ってきてください。一緒に中を確認しましょう」

そう伝えて電話を切った。

——ラオスには住所がないってことだから、初めての経験で、さぞかしうれしかったことだろう。

「あとは中身次第だな。ふふふ」

電話番号を登録し、再び業務に戻った。



ポストに届いた謎の封書

翌日、スーリヤさんは例の封筒を持って私の元にやって来た。

「あやめ先生、これです!」

丁寧に長辺を切られた白っぽい封書。表面には『電気代のお知らせ』とある。役所関係かと思いきや、残念ながらこれは受け取って喜べるものとは言い難い“お知らせ”だ。

「スーリヤさん。これはねぇ、電気代の請求書です。中に、支払い用紙が入っていますよ。要するに『お金を払ってください』という手紙ですね」

「“でんきだいのせいきゅうしょ”? お金を払う紙……」

やや黄色味がかった支払い用紙を手に、スーリヤさんが首をかしげる。

「そう、それが“電気代の請求書”。ここにバーコードがあるから、コンビニのレジで簡単に払えます。期限が書いてあるから、それまでに払わなければなりません。オリエンテーションで話しましたね?」

「はい、そうですね。うんうん、わかりました」

請求書を大事そうに封筒にしまい、顔を上げたスーリヤさん。なぜだか、笑みを浮かべている。

「この後、私、コンビニに行く用があるんだけど、一緒に行きますか。やり方はわかると思うんだけど。ね?」

「はい、ありがとうございます!」

請求書が届いて喜ぶなど、生まれてこの方…というか、日本中どこを探してもいないだろう。

『郵便物が家(住所)に届く』——日本に生まれ育った私たちにとって、あまりに当たり前のシステム。でも、こんな日常さえ文化や習慣が違う人々にとっては、それだけで驚きであり、感動なのであろう。



スーリヤさんはその後、ポストを確認するのが日課だと聞いている。

そういえば、ラオスってその日に獲れたものをその日に食べる習慣があるって言ってたな。前に、ベトナムの子たちが常温保存しっぱなしの食べ物を食べてお腹を壊していたような気がする。食品製造会社で働いていて、食中毒騒動など禁忌!!!

「冷蔵庫だけじゃなく、冷凍保存の有用性、解凍の仕方、そもそも電子レンジの使い方、掃除機のレクチャー…なんかも、今一度しておいたほうがよさそうだ」

手帳にメモを残す。

・掃除機
・炊飯器
・電子レンジ
・食中毒!!!







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ストーリー中のキャリアアドバイザー青山智香がおこなう、寮の巡回を含むさまざまなサポートは【LifeSupport(外国人生活支援サービス)】によるもの。

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