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【アウトバックステーキハウス】本格派の味を守るキッチンスタッフは9割外国籍 人事&店長に聞く海外人材活用術

生活関連

2025.11.26

人手不足が「日常」となった現代。労働力確保のために「海外人材」の雇用に乗り出す企業が増えている。

一方で心理的なハードルは根深い。現場に手が足りないのは事実だが、どう採用するのか? 入職後は仕事をどう教えるか? トラブルは起きないのか? など、未知であるがゆえの不安は大きいだろう。

そこで、本連載では海外人材活用の第一線を走る企業に取材。業界・職種を問わず最適な第一歩を踏み出し、新しいビジネス共創力と競争力を得るための人事戦略とマインドセットを探る。

今回のインタビューは【アウトバックステーキハウス】を国内展開するオーエムツーダイニング。

本格派のステーキを提供するカジュアル・ダイニングの代表格である同店は、国内に9店舗を展開。そのキッチンは、長らく外国籍のスタッフに支えられているという。独自の海外人材活用について人事部と店長・マネージャーに聞いた。

■PROFILE

株式会社オーエムツーダイニング 人事・総務 伊藤 あゆみさん

アウトバックステーキハウス品川高輪店 マネージャー 川嶋 進之介さん

 

■本格ステーキハウスの味を支えた「スリランカ人材」

画像提供:オーエムツーダイニング

 

アウトバックステーキハウスは1988年にアメリカ・フロリダ州で創業し、2000年に日本上陸。現在、国内の全店舗を運営するのがオーエムツーダイニングである。親会社は、食肉小売・惣菜など食品製造小売・焼肉店などの外食事業を手がけるオーエムツーネットワークだ。

アンガス牛のステーキ、骨付きポークリブのグリル、名物の玉ねぎフライ「ブルーミン・オニオン」。メニューから店内デザインまで本場オーストラリアの質実剛健な文化を体現したカジュアル・ダイニングは、東京近郊、大阪、名古屋などに9店舗を展開。東京ディズニーリゾート内・イクスピアリにも店を構える。

その運営は「外国籍のスタッフなくしては成り立たない」と品川高輪店を率いる川嶋進之介・マネージャーは話す。

 

「当社ではすべての社員・スタッフを『アウトバッカー』と呼び、立場の垣根なくリスペクトしあっています。そのなかでも外国籍の方が活躍しているのが『キッチン(厨房)』です。スタッフはスリランカ、ネパール、ベトナム、バングラデシュ、中国などの社員とアルバイト。調理の責任者も外国籍がほとんどで、日本人は1割もいません」(川嶋さん)

アウトバックステーキハウス品川高輪店 マネージャー 川嶋 進之介さん

 

厨房の中は、日本語、英語をはじめさまざまな言語が行きかい、まるで異国に迷い込んだようだという。このような職場ができあがったのは、近年の在留資格緩和を受けて……ではない。さらに前からはじまっていた。

 

「きっかけは20年ほど前です。日本語をよく勉強したスリランカ人の方が当社にアルバイトで入社しました。そのスタッフが活躍して社員に昇格し、さらに紹介で優秀なスリランカ人が当社に集まってくれるようになり、各地の店舗を盛り上げてくれたのです。その方は日本人と結婚され、マネージャーとして現場をけん引しています」(川嶋さん)

 

アウトバックステーキハウスの日本での成長は、スリランカ人コミュニティの活躍とともにあったのだ。こうした非常にユニークな歴史があり、同社には自然と「外国人と働くことが当たり前」という風土ができていった。川嶋さんの言葉通り「アウトバッカー」に国籍の区別はない。

スリランカ以外の国籍の海外人材も、様々な雇用形態で入社しはじめるなか、2019年からの特定技能の制度運用開始で転機が訪れる。

■特定技能導入 採用戦略はどう変化した?

在留資格資格「特定技能」の運用は現在も各業種での海外人材活用を後押ししているが、オーエムツーダイニングにとっても例外ではなかった。同社人事・総務部の伊藤あゆみさんは、当時をこう振り返る。

 

「当社経営層は今後の人口減少などを見据え、さらなる海外人材獲得に乗りだしました。ちょうど特定技能の開始直後にパンデミックが訪れ、外食産業は不安定な状況になりましたが『将来のために、いま採用してほしい』と、人事に大きな権限を渡してくれたのです」(伊藤さん)

オーエムツーダイニング 人事・総務 伊藤 あゆみさん

 

人材への投資はある程度の時間がかかる。経営層の決断によってコロナ中の採用活動がスタートしたが、いままでスリランカ人材らの紹介で優秀なスタッフを獲得できていた同社にとって簡単な採用戦略ではなかった。

 

「特定技能を活用するには、受入れ企業としての基準、雇用契約の基準、支援体制の基準などを満たさなくてはなりません。手続きには多くの企業の人事の方々が苦労していると思いますが、私たちにとっても大きなチャレンジでしたね」(伊藤さん)

 

特定技能制度には登録支援機関や人材エージェントが大きな役割を果たす。エージェントそれぞれに紹介料や月額費用、抱えている人材の国籍や対応業種などの特色があるなかで、どのような基準で選ぶべきか悩む人事担当者も多い。伊藤さんの場合はどうだったのか。

 

「当社では最初にベトナム人材に強いエージェントさんと契約し、採用規模が大きくなるごとに契約社を増やし、現在に至ります。その過程で契約を切り替えたところもありました。いまも契約させていただいている企業様は、海外人材を長く取り扱っている大手エージェントさんです。コストは最安ではありませんが、登録支援機関もあわせて対応しており、こまめにやりとりいただける点が助かっていますね。複数社とトライ&エラーを繰り返したことで、最適なパートナーを見つけられました」(伊藤さん)

 

コミュニケーションの円滑さや自社に合った採用方法などは、一緒に作業していかなくてはわからない部分も多い。これから海外人材活用に乗り出す人事担当者の方は、日本人人材のエージェントの場合と同じように何社かの担当者に話を聞き、自社との相性も含めて長い付き合いができる企業を検討してはいかがだろうか。

 

■自立自走するチームのために企業ができること

 

オーエムツーダイニングでは特定技能の利用開始から約50名の海外人材を採用、国籍の多様化もさらに進んでいる。異なるバックグラウンドを持つ外国籍の社員の面接と教育についてのポイントはどうか。伊藤さんと川嶋さんはこう話す。



「一次面接を人事部、二次面接を各店の担当者が行っています。面接時に重視するポイントは日本人と変わらず、コミュニケーション力。相手の目を見て話しているか、ちゃんと挨拶ができるか。逆に日本語力は高い水準を求めません。N4レベル(基本的な漢字を含む読み書き/ゆっくりとした日常会話)を基準にしています」(伊藤さん)

 

「だからこそ、入社してから伸びてくれる人材を見極める、ということですね。当社の調理レベルは非常に高く、忙しく暑いキッチンで技術を習得しなくてはならない。熱意を持って壁を乗り越えられる人が必要です」(川嶋さん)

 

人事職にジョブチェンジする前は副店長を務めていたという伊藤さんは「人手が足りないからと言って、誰でもできる仕事を任せるつもりはない」と強調する。

アウトバックステーキハウスでは、肉や野菜の仕込み、グリルやフライはもちろん、ソースやドレッシング、クルトンやベーコンビッツに至るまで全て手作りだという。特に新人が苦戦するメニューは?

『ブルーミン・オニオン』画像提供:オーエムツーダイニング

 

「特に人気もありテクニックも必要なメニューは、名物の玉ねぎフライ『ブルーミン・オニオン』ですね。専用のカッターで大きな玉ねぎを加工するのですが、美しく花開くように切るには熟練の技が必要。完璧な調理ができたら『ナイス・ブルーム!』と声をかけあうカルチャーがあるんです」(川嶋さん)

 

多国籍の海外人材が集まり、お互いに仕事を教えながら高いクオリティを守っているアウトバックステーキハウス。自立自走した組織を作るためには、経営層から人事部・マネージャーまで一貫した企業側の積極性が何より重要と感じた。

 

取材の最後に、「キッチンからは料理を召し上がっているお客様は見えない。だから席の様子やお客様の声をフロントスタッフが届けるようにしている」と話してくれた。アウトバックステーキハウスを訪れたら、キッチンで働いている「アウトバッカー」を感じながら食事を。ブルーミン・オニオンを頼んだときは、ぜひ「ナイス・ブルーム!」と伝えてみてほしい。

 

■海外人材を採用する人事担当者へ

人事・伊藤さん:企業が海外人材とともに成長するには、待遇をはじめとした採用条件や、教育マニュアル、昇格基準の整備はもちろん重要です。そのためには、何より人事が「現場を知ること」だと思います。

 

店長・川嶋さん:職場が海外人材の大切な居場所になることを目指してほしいですね。彼らは私たち日本人のように、すぐに家族に会えません。だからこそ、私たちがファミリーのように接すること。仕事中は厳しい指導が必要でも、終わったら仲良く。母国に帰ってもたびたび連絡をくれる元社員がいることが誇りです。

 

■取材協力

株式会社オーエムツーダイニング

https://www.outbacksteakhouse.co.jp/company/

 

アウトバックステーキハウス 品川高輪店

https://www.outbacksteakhouse.co.jp/menu/shinagawatakanawa/dinner/

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