海外人材Times

外国人労働者の雇用・採用WEBメディア

検索
海外人材Times

海外人材8割超のアパートメントホテル【MIMARU】が教える 人事担当者が持つべき心構え

生活関連

2025.11.19

人手不足が「日常」となった現代。労働力確保のために「海外人材」の雇用に乗り出す企業が増えている。

一方で心理的なハードルは根深い。現場に手が足りないのは事実だが、どう採用するのか? 入職後は仕事をどう教えるか? トラブルは起きないのか? など、未知であるがゆえの不安は大きいだろう。

そこで、本連載では海外人材活用の第一線を走る企業に取材。業界・職種を問わず最適な第一歩を踏み出し、新しいビジネス共創力と競争力を得るための人事戦略とマインドセットを探る。

今回のインタビューは、アパートメントホテル「MIMARU(ミマル)」を展開するコスモスホテルマネジメント

従業員の大部分を海外人材で運営し、インバウンド宿泊客から絶大な支持を得る独自のホスピタリティの秘密に迫った。

 

■PROFILE

株式会社コスモスホテルマネジメント 人事部 部長 東 真紀子さん

 

インバウンド特化のホテルに不可欠だった「海外人材」

「MIMARU」は大和ハウスグループのコスモスホテルマネジメントが運営するアパートメントホテルだ。2018年に第一号ホテルをオープン。特定技能制度の制定と同時期になる。同社人事戦略を統括する東真紀子さんは事業概要をこう語る。

 

「『MIMARU』は不動産デベロッパーであるコスモスイニシアの新規事業として誕生しました。その運営会社として設立されたのが当社・コスモスホテルマネジメントです。
ブランドの特徴は、日本への『家族での中長期滞在』に最適な広さとサービスです」

 

インバウンドに人気の宿泊施設は、ラグジュアリーホテルから伝統的な旅館、民泊まで多種多様なマーケットだ。大和ハウスグループでもダイワロイネットホテルをはじめ国内外に拠点を持つが、MIMARUは独自のコンセプトを打ち出す。


「事業の起点は、日本の多くのホテルが「訪日旅行者向けではない」という課題意識でした。日本の都市部ではコンパクトな客室に1~2名での宿泊、料金も1名あたりで設定されることが当たり前ですが、訪日旅行者には家族で一緒に旅行し、数日~数週間滞在される方が多くおられます。そうしたお客様向けには、宿泊料金も人数単位ではなく、客室単位で設定されるホテルが主流なのです」

 

インバウンドの旅行スタイルでは定番のひとつである「多人数・中長期」に対応したホテルが、日本の都市部には極めて少なかった。効率性を優先して、1〜2人用の間取りのホテルばかり作られていたわけだ。ビジネスの領域ではよく見かけるガラパゴス状態がホテル業にも起きていたことになる。「ならば自ら作るべき」という発想で企画された「MIMARU」だが、最大の課題のひとつが旅のパートナーともなる「ホテル人材の採用」だった。

 

「そこでサービスをする従業員は、インバウンドの母国語や英語を話せる語学力、日本のオススメスポットを案内できるだけの日本への理解・興味・熱意、そしてもちろん日本語力が必要になります。そこまでのスキルが揃った人材を、国内だけで大量に採用することは難しいことは容易に想像できました。では、海外から集めるしかないと」

 

インバウンドが最大限リラックスし、暮らすように長期滞在するホテルのために海外人材が不可欠だった。多くの企業が直面する「人材難」の究極の形が、コスモスホテルマネジメントに起きていたと言える。

その採用の苦労からは、業種・規模を問わない企業にとって格好の見本となるノウハウが学べる。

 

手探りの採用活動から見えた「世界にとっての日本」

創業期の2010年代後半は、日本とも距離が近い韓国・台湾を中心に、人事部員が人材エージェントとともに現地に飛び、直接採用を行った。現在は台湾・ネパール・アメリカ・韓国・中国・インドネシアなど38の国と地域のスタッフが集まり、ゲストの国籍バランスを考えながら採用活動を進めている。

その過程で、海外人材側のニーズや思いも明らかになっていった。

 

「いままで面接で、数百人の海外人材に会いました。そのなかで『なぜ日本で働くのか』『人材の方々にとって、日本はどうみられているのか』を教えていただきましたね。国籍を問わない全員から聞かれたのが、日本の『安心・安全』。社会インフラが整い、治安がよく、戦争がない。差別もひどくはなく、心理的にも安全です。多様な価値観に寛容で、LGBTでも生きていける、自由がある国だと」

 

日本で働けば高い収入を得られる、というだけではない。昨今の不安定な国際情勢を見れば改めて感じる、この国の日常がいかに平和で、貴重な環境であるか。その象徴とも言えるのが日本の豊かなカルチャーだ。

ポケモンの世界に泊まれるコンセプトルーム「ポケモンルーム」はインバウンドにも人気

 

「アニメや映画などのクールでKAWAII『ポップカルチャー』が好きだ、という海外人材の方がとても多いです。日本は憧れを抱かれているのだと気づきました。そうした興味は、インバウンドの顧客を日本へご案内するときの原動力ともなります」

 

一方、海外人材ならではの面接の難しさも聞いた。事業開始当初は「最初は全員を一次面接した」というコスモスホテルマネジメントの人事部は、自社が求める海外人材をどのように見つけ出してきたのか。

 

「賃金が高いから出稼ぎをしたい、日本文化が好きだから働きたい、というだけではやはり就業が難しく、マッチングしにくいですね。特に文化的な違いを感じる場面は、『いままでの失敗経験』をなかなか話してくれないことでしょうか。良いことだけを言うようにエージェントに指導されてもいるのだと思いますが、私たちはどうやって失敗から立ち直ったかを一番知りたいのです。そこにホテル人材に必要な『人間性』が出ますから」

 

採用する側の人事も、自社に必要な人材を見抜くためのコアな質問を持つことが重要だろう。試行錯誤を繰り返し、人材エージェントとも協議しながら、徐々にMIMARUにふさわしいホスピタリティを精査できるようになっていった。言語力はN2以上、英会話も高い水準とするなど独自の基準を設けている。

 

「現在は人材像を明確化し、人材エージェントに共有しています。エージェントさんが独自に見つけてきた人材が当社にマッチするようになったのは、ここ3年のことです。あわせて新卒としてホテル専門学校などと連携し、学校推薦もはじめています」

 

今後の人材戦略の課題は、国籍の多様化だという。あえて国籍をまとめたほうがコミュニケーションなどがとりやすいようにも思うが、なぜ38の国と地域から集まっているのか?



「理想は、国籍の偏りなく運営できること。就業面では、職場内でひとつの国籍の割合が大きいと、そのコミュニティが大きな影響力を持ってしまったり、他の国籍の方々とやりにくさが出る可能性もあります。従業員どうしの関係性を円滑にする意味でも、偏りがないことは重要です。

サービスクオリティの面でも、世界中からいらっしゃるゲストに対応するために多くのバックグラウンドの人材を歓迎したいと思います。

とはいえ、ゲストの中でも多くの割合を占めるアメリカ人・オーストラリア人の人材は給与面でもなかなか採用しにくいことが悩みです。これからも人事戦略をアップデートしていかなくてはと思います」

 

このようにして、フロントスタッフの8割以上を海外人材が務めるホテル「MIMARU」が運営されている。

海外人材活用の第一歩としては、まずは人事がリソースを割いて人材ひとりひとりと出来るだけ多く向き合うことだと感じた。その先に企業ごとに独自の人材戦略が育まれていくからだ。

 

教育とポテンシャル発揮 『WOW!』を生むマネジメント方針

入社後の海外人材の能力発揮にあたってはどうだろうか。企業側から見れば、異文化の人材がうまく活躍してくれるのか、会社のルールに従えるのか、などの心配も大きい。

東さんは「海外人材の不安の解消」と「相互理解」の2点を挙げる。

 

「当社はまず、海を越えてやってきた海外人材の不安に向き合いたいと思います。うまくとけこめるのか、彼らも不安なのです。自分と同じ国の人が働いているのだろうか、憧れた日本が、本当にイメージしていた場所であるのか。実務面では住居の問題。入国前に住む場所を契約するのはまず無理です。そこで当社では入国1ヶ月はマンスリーマンションを仮住まいとして会社負担で提供し、その期間に家を探すサポートをします。こうした制度作りが、定着率やその後の能力発揮につながると考えています」

 

他国ほどではないとしても、日本にも「差別」がある。海外の方に直接的な苦手意識がない日本人にも、知らないことは必ずあるだろう。まずは雇用側が海外人材に対して持っているバイアスを社員同士で話すなどして自覚したい。 

「相互理解」という点ではどうか。

 

「強く伝えたいのは、海外人材には日本人からは生まれにくい、優れた発想力があるということです。『WOW!』と思わず驚かされるサービス精神を、何度も見てきました。

例えば、ゲストが部屋が明るくて寝にくいと聞けば、Amazonで遮光カーテンを買って自分でとりつけたり。忘れ物をしたゲストのために、旅行中の行動ルートを割り出して駅まで受け取りにいき、空港まで届けたり。こうした彼らの『突拍子もない予想外の発想』と、驚くべき行動力を企業は評価し、サービスに還元していかなくてはなりません」 

 

未知の人材とともに働くがゆえの面白さである。しかし、予想を超える行動力は、言い換えると「リスク」ではないだろうか? 社内ルールとの折り合いやマネジメントの方針はどうなっているのか。

 

「ポテンシャルを活かすには、ルールを緩め、権限を委譲して自由に行動させるだけでは不足です。当社では毎月、すばらしいスタッフの取り組みを『グッドエピソード』として社内で共有していますが、そうして評価された行動を必ず振り返り、手順に取り入れています。こうした管理側の努力もセットで考えるべきでしょう。

だからこそ、当社ではマネジメント層の負荷が非常に高くなります。今後の私たちのビジネスの成長は、管理職の成長にかかっているとも考えています。ホテルマネージャーやエリアマネージャーは社内昇格の海外人材がほとんどであり、部下のメンバーから厳しくサーベイを受けながら幹部として成長しているところです」

 

同社のホテルマネージャーの外国籍割合は9割を超えるという。海外人材を集め、そのなかから管理者が育つ。日本人が外国人をマネジメントする時代は終わっていくかもしれないとも思わせる、先進的な体制である。

では、日本人である我々には何ができるのだろうか? 最後に東さんはこう付け加える。



「人事の立場として、コスモスホテルマネジメントという会社が従業員に与えるメリットは何なのか、ということを常に考えています。そのカギが企業の『ビジョン』なのではないでしょうか。当社は、『私たちは、世界中の人々に最高の体験と喜びを提供します。従業員の夢と幸福を追求します。常に新しい価値をつくりだすことで社会に貢献します。』という経営理念を持っていますが、多国籍の人材に支えられる当社にとって『従業員の夢と幸福』は、ものすごく多様です。だからこそ、その実現を目指し世界中の人材が参加するに値する会社でありたい。海外人材からも『選ばれる』企業にならなくてはと思います」

 

現在、海外人材活用は「日本人不足の穴埋め」の一手として見られている。

それは決して間違いではないが、採用方針・就業規則・人事評価・マネジメントなど企業の創意工夫によっては、いままでにない「競争力」にもなる人材だと、コスモスホテルマネジメントの取り組みは教えている。

 

ーー 人事担当者にとっては、この上なくやりがいのある時代ではないだろうか。

 

海外人材を採用する人事担当者へ

株式会社コスモスホテルマネジメント 人事部 部長 東 真紀子さん

私がコスモスホテルマネジメントにジョインしたのは、52歳の時でした。

前職はアパレル小売企業の人事担当で、従業員は全員が日本人。私自身、今でも英語は話せません。自分のキャリアをあと10年と考えたときに、最後に大きなチャンスに挑んでみたいと、当社への転職を決断しました。

でも、海外人材の方々のほうが、私より大きなジャンプをしているんですよね。海を越え、未知の異文化に飛び込んできています。意識のアップデートが必要なのは私たちのほうではないでしょうか?

日本人と海外の人には、絶対に「違い」があります。それを日本人のルールにあてはめず、対話を重ね、楽しんでみてほしいと思います。彼らは、私たちを固定観念から自由にしてくれる「天窓」のような存在です。思わぬ日本の素晴らしさも気づかせてくれるのです。

彼らに「ぜひこの仕事に参加したい」というメリットを提供し、企業としての志を高く持って、ともに持ち味を生かし、前進していく。当社だけでなく、日本社会全体が「海外人材活用によって成長できる」ようになればと願います。

 

■取材協力

株式会社コスモスホテルマネジメント

https://www.cigr.co.jp/chm/index.html

アパートメントメントホテル MIMARU

https://mimaruhotels.com/ja/

外国人採用に関するオンライン無料相談やってます!

  • 雇用が初めてなのですが、私たちの業務で採用ができますか?
  • 外国人雇用の際に通訳を用意する必要はありますか?
  • 採用する際に私たちの業務だとどのビザになりますか?
  • 外国人の採用で期待できる効果はなんですか?

上記に当てはまる企業様は、ぜひ一度ご相談ください。

× 教えてタイムスくんバナー画像